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【エオニア王国】

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諸君! エオニアのミーベルはこれから旬だ! そのまま食べても良し、スイーツにしても良し! 
我が国のミーベルの味を、世界中の人々に知ってもらいたい!

エオニア王国農林水産大臣:ドニス・アンセル

Story 02(6/30公開)

●小さな白い花に、幸せを願って
 エオニアの港で、大きな船が出港の時を待っていた。
 乗り込むのはジューンブライドの期間をエオニアで過ごした人々だ。
「皆様、今回はお楽しみいただけましたでしょうか? それではまた、いつでもこの国にお帰り下さい……どうぞ、行ってらっしゃいませ!」
 リゾート施設「ランテルナ」オーナーのオルハ・バートンはそう声をかけ、帰国の途に就く旅行者達に手を振る。
 そして船の出港時刻に差し掛かると、港に集まった人々が楽器を手に、華やかなエオニア音楽の演奏を始めた。
 海外からの来訪者たちを見送るために集まった、地元の有志たちだ。
 船に乗る人々が彼らに向かって手を振り返す。
 その手には白く輝く真珠――王国特産の「エオニアパール」が輝いていた。

「ジューンブライドのイベント、あっという間に終わってしまいました……なんだかまだ、心がふわふわしています」
 エオニア王国王女パルテニア・ティス・エオニス(lz0111)はそう、ライセンサー達に語った。
 その傍らにはいろいろな花とエオニアで咲いた青い薔薇を織り交ぜたプリザーブドフラワーのブーケがあった。
 合同結婚式に参加した花嫁・花婿から贈られたもののようだ。
「我がお祝いの花がこのまま枯れてしまうのは寂しいと言ったら、皆が作ってくれたのです。幸せのお裾分け……我の宝物です」
 パルテニアはそう言ってはにかむ。
 エオニア中のカップルの門出となった合同結婚式を彩ったのは、ライセンサー達がつくった「サムシング・フォー」のアイテムだった。
 白い銀梅花(マートル)の花やエオニアの季節の花々を引き立てる鮮やかな青は、王国の幸せな時間を彩り、花嫁・花婿、そして式の列席者達の心に刻み込まれた。

「ははうえー! あねうえもみて! らいせんさーのおにいさんとおねえさんだよ!」
 パルテニアの弟、4歳の王子アガピオスがネット配信された動画を観ながらはしゃいだ声を上げる。
 エオニアで撮影されたファッションイベント企画の動画は各国で話題となった。
 ベッドの上でアガピオスと共にその動画を観ながら、母である王妃が「素敵ね」と目を細める。
 病気がちな王妃だが、ジューンブライドの期間はいつもより調子がよかったようだ。
「この国でウェディング衣装に袖を通してくださった方もたくさんいたそうね。楽しんでいただけたかしら……」
 首都「エオス」の一角ではジューンブライドに合せた市場も開かれ、多くのライセンサー達も足を運んだという。
 さらに、エオニアのとある村の花畑では「花祭り」が開かれ、花嫁たちをダンスで送り出すイベントにはたくさんの人々が集まった。
 ジューンブライドのエオニアの楽しげな様子を聞いた王妃は「私も行きたかったわ」と口にした。
「ライセンサーの皆さんに出会ってから、元気になりたい理由がたくさんできたの。復興し続けるこの国と一緒に、私も生まれ変わりたいわ。それにパティもピオスも、いつかどなたかの花嫁・花婿になるんですものね」
 いらっしゃい、と呼びよせ、王妃――かつての「薔薇の花嫁」はパルテニアとアガピオスをぎゅうっと抱きしめる。
 幼い王女と王子はきゃーっと嬉しそうな笑い声を立てた。

●そして、新たな季節がやってくる
 ジューンブライドの余韻を残したエオニア国内には、少しずつ真夏の気配が近づいている。
 ノルトブローゼ村内の遺跡には、大きく育ち始めた草を刈るなどし、早くもバカンスのシーズンにやってくる観光客を迎える準備をする人々の姿があった。
「……ここもかつては、厄介なナイトメアが巣食っていたようだが、今は多くの人々が訪れる祈りの場となっている。君達にも見えているかね? SALFが、ライセンサーが守ったものには、『未来』がおとずれているのだよ」
 エオニア支部司令ヨルゴス・アンドレースは「ハーデース地下神殿」の薄暗い洞窟の中に佇み、亡き人々に向かってそう語りかける。
 死んだ人は皆、ハーデースの治める死者の国に迎え入れられ、洞窟に祀られた神の前で祈りを捧げればその声をあの世にいる大切な人に届けてもらえる――この場所には、そんな言い伝えがあるのだ。
「どうか見ていてくれ、これからのエオニアを……! 君達の死は……君達の犠牲は……決して、無駄になどならないのだ。いや、絶対にさせない!」
 ヨルゴスは何かを堪えるように大きく息を吸い、顔を上げた。
 ナイトメアと戦い、志半ばで散っていったたくさんのライセンサー達、そして5年前のエオニア襲撃の犠牲となった大勢の人々――彼らに対し、ヨルゴスも新たな誓いを胸にしたのだろう。

「ふーむ! ランテルナのジューンブライドは銀梅花にちなんだメニューが振る舞われていたのか! これからは夏真っ盛りだ! 宴ではぜひ、ガッツリした精のつくものを考えたいものだな! 例えばランテルナの庭で牛一頭を丸焼きにして振る舞うのはどうだろうか?!」
 王城の会議室でそう張り切る農林水産大臣ドニス・アンセルに対し、会議の参加者から「それはちょっと……」という声が上がった。
 近々、エオニアを支援する国々の王族を招き、ランテルナでその御礼としておもてなしの宴が開かれるらしいのだが……。
「ドニス大臣、ライセンサーの皆さんがモデルをしたランテルナでのお式の報告をオーナーのオルハ殿から聞いたであろう」
 パルテニアがそう、あきれ顔を浮かべた。
「クラシカルなチャペルでの華やかな挙式、明るいローズガーデンでのガーデンウェディング、夜はガラス張りの温室で星の下でのシンプルモダンな宴、そして船の上でのウェディング……ランテルナはそういう『夢』を叶える場所なのじゃ」
「は……! おっしゃる通りでございます、王女!」
「お客様には何人もお年頃の姫様達がいるのじゃ。繊細な乙女心を理解できぬようでは、嫌われてしまうぞ?」
 自分もいつかこんな場所で結婚式をしてみたい――お客様にもそう思ってもらえるかもしれないのに、雰囲気をぶち壊してはいけない。
 そう言って諫めるパルテニアの前で、ドニスはどんどん小さくなっていった。

「じゃが、ドニス大臣の言う事も分かるのじゃ。この国に来た人々がエオニアのいいところを知って、元気になって帰る……我も、エオニアがそんな国になればいいと思う」
 パルテニアは王城のテラスから身を乗り出し、空を見上げた。
 飛行機が大きな音を立て、首都を横切っていく。
 ステラ国際空港を発した旅客機が来訪客を乗せ、ヨーロッパへと帰っていくのだろう。
「飛行場もきれいになって、ステラでのイベントも盛り上がったのじゃ。これからもっともっとたくさんの人がエオニアを訪れるであろう」
 パルテニアが下を見下ろすと、街の子供たちが手を振っていた。
 手を振り返し、パルテニアは笑顔で声を上げる。
 共に頑張ろうぞ、と。
「ライセンサーの皆様に守っていただいたエオニアがいい国になれるかどうか! 我と皆が、これからどうしていくかにかかっているのじゃからな!」
 
 エオニアに、夏がやってくる。
 活気を取り戻しつつあるこの国の人々の未来を、そして世界の人々の守るために、自分達も歩み続けよう。
 ライセンサー達はその思いを新たにし、ジューンブライドのエオニアを後にしたのだった。

(執筆:九里原十三里
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)

過去のストーリー

●エオニア王国の夢見る王女
 ──城が燃えていた。

 人々の悲鳴が、獰猛なナイトメアの叫び声が、遠くから聞こえてくる。
 そしてパルテニアの目の前には、自分を庇って怪我をした父が、倒れていた。
「だれか、だれかおらぬか! ちちうえが、しんでしまう! ……だれか、たすけて!」
 必死に叫んだけれど、その声は届かない。父は既に息絶えていた。

「……誰か、助けて!」

 それでも諦めきれずに叫んだ所で、王女パルテニア──パティはふと夢から目覚めた。

「パルテニア様。大丈夫ですか? うなされていたようですが」
 王女の秘書兼家庭教師のエレクトラが、心配そうにパティの顔を覗き込む。
「大事はない。少し、悪い夢をみた」
 ……あれがただの夢だったら、どんなによかったか。憂いを帯びた眼差しで、パティは小さく溜息を零した。


 地中海の中心、シチリアとクレタの間に浮かぶ島国・エオニア王国。
 豊かな自然と海の幸、温暖な気候に恵まれ、ミーベルという特別な果実がたわわに実る、穏やかな国だった。
 しかし五年前、アフリカからやってきたナイトメアの大群が、エオニアを襲った。
 結果、首都エオスが壊滅。国王や有力議員といった首脳陣も全滅した。エオニアは幼い王女パルテニアを国主にすえ、SALFとEUの力を借りて、何とか国としての体裁を保っている。
 少しづつ国は復興に向かっているが、まだ西部の方は戦火の爪痕が色濃く残っていて、国の財政も貧しい。
 そんな厳しい国を代表する王女パルテニアは、わずか10歳だった。


 政務を終えた後、パティは真っ先に母の元に通った。王妃は5年前の襲撃後、パティの弟を産んでから、ずっと体調を崩したまま、寝たきりだった。
「母上。お加減はいかがですか?」
「最近寒かったから、熱がでていたけれど、もう大丈夫よ」
 大丈夫と言っているが、その顔色は紙のように青白い。
「ごめんなさい。パティ。貴方に無理をさせてしまって」
「いえ。大丈夫です」
「あねうえ。えほんが、よみたいの」
 スカートの裾をつかまれ、パティが振り向くと、4歳の弟アガピオスが本を抱えて見上げていた。
「ピオス。パティは公務で疲れているのです。無理を言ってはいけません。パティ。もう休みなさい」
 母の言葉に甘えて、パティは自室に戻った。
 身支度を整えて、ベッドに倒れ込むと、ぎゅっと枕を抱える。
 ピオスが可哀想だ。あの子は豊かだったエオニアの風景も、父の顔さえ知らない。でもそれは、エオニア王国の国民も同じなのだ。あの戦いで家族を、職を、住処を失った者が大勢いる。
 また豊かだったエオニアを取り戻したい。民の笑顔を見たい。そう思ってパティなりに出来ることは頑張っている。
 しかし、あまりに幼く、できる事は限られていた。

「……誰か、助けて」

 思わず本音が零れて、慌てて唇をぎゅっと噛みしめる。代わりに枕元に置かれたアルバムを手に取ってめくった。

 アルバムの写真は、昨年夏に行われたミーベルステファノスという祭りの風景だった。
 暗い話ばかりのこの国で、民に明るい話題を提供するために、SALFのライセンサー達の手を借りて、途絶えていた伝統のお祭りを復活させた。
 元々は女神へ捧げるために、ミーベルという果実をぶつけ合う祭りだったが、今の貧しいエオニアに、食べ物を粗末にする余裕はない。ライセンサー達の手によって、新しい祭りへと生まれ変わった。
 瞼を閉じると思い出す。賑やかなパレードとライブ、夜空に浮かんだランタン、鮮やかに描かれたアートペイント、美味しいミーベル料理、それらを楽しむ国民達。
 みんなが笑顔で幸せそうで、パティもとても楽しかった。

 大丈夫。この国はライセンサーが守ってくれる。彼らはこの国の英雄なのだから。そう信じながら眠りについた。
 笑顔あふれる平和なエオニア王国、そんな幸せな夢の世界に浸って。



●ヨーロッパ戦線の片隅で
 エオニア支部司令・ヨルゴス・アンドレースは用意された書類に目を通しながら、アイザック・ケイン(lz0007)の報告を聞いていた。
「欧州全体において、人類救済政府の活動はひとまず落ち着いたようです。まだ、影に潜伏している者は大勢いるでしょうが」
「世界中に広がる組織だ。そう簡単に無くなりはしない。他の戦域の様子はどうだ?」
「イベリア半島からイタリアにかけては、概ね問題なし。ギリシャ・トルコ方面も善戦しています。問題は……」
「……クレタか」
 ヨルゴスはそう呟いて、大きく溜息をついた。
 昨年秋、クレタ島支部をナイトメア達が襲撃した。ギリシャ支部の英雄と言われていたディミトリア・サマラキスは、実はエルゴマンサーに食われて擬態されていて、内部からナイトメアを手引きしていたのだ。
 ライセンサー達の活躍により、なんとか支部は守り切ったものの、ディミトリアを優遇していた支部長は解任。副支部長が繰り上がりで支部長についたが、能力はともかく、性格にやや問題があった。
 おかげでクレタ支部は未だにバタバタと落ち着きが無く、故に近隣の支部であるエオニア支部の負担は増大していた。
「いくら末端のライセンサーをかき集めても、上が問題あってはどうにもならん。もう少しマシな人材が来ないものか……」
「昔、クレタ島支部長をしていた人材を、呼び寄せると聞いています」
 そう言うアイザックの表情は硬かった。

 アフリカとヨーロッパの間に横たわる、地中海の国々は、ヨーロッパ戦線と呼ばれている。
 30年前、カイロ防衛戦にて国連軍の致命的な敗北により、アフリカ全土はナイトメアの支配下に置かれた。
 以後、アフリカから北上する敵を叩き続け、ヨーロッパの平和を守り続けた地域で、エオニア以外にも、犠牲になった国は少なくない。

 ちらりと窓の外を眺めるアイザックの視線の先にカイロがあった。
 アイザックの祖父はカイロ防衛戦で戦死した。あの戦いに敗れていなければ、アフリカの統治権を放棄していなければ、もっとヨーロッパの平和は安定していたかも知れない。
 その責任をとる。それがケイン家の悲願となった。父も兄も戦場に散り、残されたのはアイザック一人だけだ。
 アフリカに住んでいた人々は、難民となってヨーロッパに流れ着き、30年たった今もまだ、苦しい生活を余儀なくされていた。
 先日クレタであった人々もそうだ。アフリカに帰る日を夢見て、苦しい日々をなんとか耐え凌いでいる。
 だから、いつかアフリカの地を、人類の手に取り戻さないといけない。そう誓っている。

 気持ちを切り替えて、アイザックは報告を続けた。
「王女からも連絡が。ライセンサーに対して国として最大限に便宜を図る故、よろしく頼むと」
「そうか……。国の復興で大変な時期に、我々のことも気にかけてくれるとはな」
 そう言いつつヨルゴスは眉間に皺を寄せ、また溜息をついた。
 10歳の王女が可哀想だと思わずにはいられない。
 ヨルゴスもこの国の生まれだったが、作戦任務の為に他国に行っている間に、エオニアが大襲撃にあって、祖国を守れなかった。その苦い記憶に今も悩ませられている。
 1年前にエオニアに戻ってきたが、未だ昔のエオニアに比べると、国全体の空気は暗い。
「エオニアの国民だけでは、復興は進まない。エオニア王国の復興のための任務を、積極的に出すように」
「わかりました」

 少しづつ、エオニア王国は前に進もうとしている。しかし、ナイトメアの脅威が、いつこの国を襲うかわからない。
 エオニア支部はエオニアを守るためだけではなく、アフリカ大陸に対するSALFの前線基地でもある。
 王女が夢見る、民が平和に笑顔で暮らせる国になるために、SALFの協力が必要不可欠だった。


(執筆:雪芽泉琉
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)

●ウェディングシーズンを迎えるエオニア
 初夏のエオニア王国に、銀梅花(マートル)の花が咲き始めた。
 この時期に国の人々が楽しみにしているのが、王国の若者たちの「6月の結婚式(ジューンブライド)」だ。
 エオニア王国は「未来を担う若者たちを全力で祝福したい」としており、またこの機会にエオニアで結婚式を挙げる海外からの来訪者も歓迎したいという。

 そんな中、エオニアのノルトブローゼにあるリゾート施設「ランテルナ」のオーナーであるオルハ・バートンからライセンサー達に対し、こんな連絡が入った。
「これまでエオニアの復興のための任務に携わってこられたライセンサーの皆様に、私どもからこの機会に『お返し』をしたいのです。ということで……いかがでしょう? 皆様の中にエオニアで挙式したい方はいらっしゃいませんか?」
 もし、ランテルナのローズガーデンや敷地内にある「ランテルナ遺跡」の美しい景観の中で挙式をしたいライセンサーのカップルがいればぜひこの機会に!
 オルハや従業員たちはそのために準備を始めているようだ。
「もちろん急なお話ですし、まだ結婚は早い、初々しいカップルもいらっしゃると思います。『ドレスアップして記念写真を撮影したい』という方も大歓迎です。また、私ども以外にもエオニアには様々なイベントを企画している者がおります。ぜひ、いらしてください」

 エオニアでのイベント――その一つが、王国の主催する「合同結婚式」だった。
 ナイトメア襲撃後の復興の最中にあるエオニアには経済的に苦しく、結婚式を挙げる費用のない若いカップルも多い。
 そのため、国が「6月に結婚したい」というカップルを首都エオスに集め、大規模なパーティーを開くことにしたのだ。
 花嫁花婿を祝福する余興を行ったり、ごちそうを楽しんだり、ダンスに参加したり。
 ライセンサー達もイベントに参加し、エオニアでの「お祝いの日」を一緒に祝福したり、楽しんだりする事でより一層この王国の魅力を知ることができるだろう。

「合同結婚式には我も参加します。我もいつか……どなたかの花嫁になる日が来るかもしれません。だから今は、エオニアの花嫁や花婿が幸せになれるよう、心から祝福をしたいと思っています」
 そう話すエオニア国主・王女パルテニア・ティス・エオニス(lz0111)の手には白い銀梅花の花があった。
「マートルは花嫁に『愛』や『繁栄』をもたらすというお祝いの花だと、ヨーロッパの王族の方が教えてくださいました。ライセンサーの皆様にもどうか、幸せが訪れますように……」
 エオニアにはこの時期、たくさんの花が咲く。
 花嫁を幸せにする銀梅花とエオニアで摘んだいろいろな花を組み合わせれば、きっと結婚式を彩る美しいブーケやコサージュを作ることができるだろう。

「パルテニア様のお母上がご結婚された際は、お衣装も披露宴会場もたくさんの薔薇で飾り……それはそれは美しい花嫁姿でございました。我ら国民はあの方を『薔薇の花嫁』と称えたものです」
 とあるエオニアの国民は懐かしそうに語る。
 そして、いつかパルテニアもきっと――そう期待しているようだ。
「王女もお母上と同じく美しくご成長なさるでしょう。あの方が『薔薇の花嫁』になられる日が……ああ、何と待ち遠しい事か」

 エオニアの花嫁達もパルテニアの母親にあやかり、自分も美しい「薔薇の花嫁」になれるよう、今から準備をしているという。
 白、ピンク、赤。
 これからの時期に咲き誇る自分に合った色の薔薇の花を選び、花嫁衣裳を飾る。
 そして胸をときめかせ、花婿のもとへ向かうのだ。

●王国は、負けない
 エオニアは最近、再びナイトメアによる襲撃を受けた。
 5年前の襲撃の再来か。
 ようやく復興の道を歩み始めたこの国が、再び悪夢にのまれてしまうのか――。
 アフリカからの脅威の到来は国主パルテニアをはじめ、エオニア王国の人々を大いに動揺させた。

 しかし――エオニア王国はライセンサー達により救われた。
 エオニアが2度目の悪夢を見る事はなかったのである。
 そしてその事は、王国の民に対し勇気を与え、「歩き続ける」という意識を呼び覚ました。

「諸君! 何度でも言おう! 我々一般国民はライセンサーと違い、ナイトメアと直接戦闘することは出来ない! だが、奴らに気持ちで負けるようなことがあっては絶対にならんのだ!」
 エオニア王国の農林水産大臣ドニス・アンセルは国民に向かい、そう力強く呼びかける。
「昔から我らがそうしてきたように、ミーベルを育て、野菜を育て、そして魚を獲って生きる! 子ども達に教育をさせ、よく働く者を称え、若者の結婚を祝福し、老人を敬い、先祖が残してくれた文化を大切に守る! ここは我らの国なのだからな!」
 そうだ、エオニアは、ほかならぬ自分達の国なのだ――。
 国民はドニスの声に「当然だ!」「やってやろう!」と応え、農具を手に畑へ、工具を手に廃墟と化した街へ繰り出し、船を海へと漕ぎ出していく。
 特産の果物「ミーベル」はこれから収穫期を迎え、さらにエオニアの海では国を復興させるため、真珠の養殖など様々な新たな試みが生まれている。
 さらに、地域によって特色ある様々な村や町がそれぞれに観光客を受け入れ、もてなすことができるよう動き出していた。

「あねうえ、まだぁ?」
「もう少しですよピオス。頑張って歩きましょうね」
 パルテニア王女に手を引かれ、4歳のアガピオス王子が森の中を進んでいく。
 その後ろには王女の秘書兼家庭教師のエレクトラが従っている。
「こんなに深い森の中を歩いたのは初めてです。アグネテ殿、本当にこの先なのですか?」
「ええ。ライセンサーの皆様と一緒に見つけた秘密の場所なのです。絶対に、感動していただけますよ」
 考古学者アグネテ・ディエスが3人を先導して歩きながら進んでいくと、やがて海の音が聞こえ始めた。
 たどり着いたのは宝石のように美しい潟湖(ラグーン)――「ペルセポネーの入り江」であった。

「この場所は、『ハーデース地下神殿』という全長12kmにも渡る地下洞窟の遺跡にある、海側の入り口なのです」
 今までは地上側の入り口から鍾乳洞を歩かなければたどり着けなかったが、パルテニアや多くの国民に見てもらえるよう、外側から来られるルートを開拓したのだとアグネテはいう。
「ノルトブローゼやエオニアの北部地区にはこういった、エオニアにしかない独自の遺跡が数多く残っています。こういった遺跡を大切に保全していくのも、これからのエオニアにとって大切な事です」
「そうですね。パルテニア王女やアガピオス王子には、他の遺跡もぜひ見ていただきたいものです」
 エレクトラは真っ白な砂浜の上で楽しそうに遊ぶパルテニアやアガピオスの姿を見つめ、微笑んでいた。
 自分が治める国に、どんな魅力があるのか。
 幼い姉弟にそういったことをしっかりと学ばせていくのも、家庭教師であるエレクトラの仕事なの だ。

「このエオニアにはほかにも、イスラムの文化を色濃く残す村や、素晴らしいワインが造られている村、芸術的な街並みが残る村、美味しい料理の文化がある村など、外国の方々には知られていない魅力的な場所がたくさんあります」
 エレクトラはそう口にした。
「ぜひ多くの方にこの国を訪れて欲しいですね。そして、ライセンサーの皆様に守っていただいたこの国がしっかりと歩き出したことを、知っていただきたいものです」
 この国を建て直し、そしてこれからもっともっと盛り上げていかなければならない。
 そのためにエオニアの人々は今、スタートを切ったのだ。

(執筆:九里原十三里
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)
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