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【金乱】

【金乱】あらすじ ~教えて! ニキ教官~

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6/26 時点!
遂にアリアドネ作戦開始だぜ!
酒池肉林攻略に向けて、内部の人々を救助するぜ!
サブフェーズと本部シナリオで展開していくぜ!

ニキ・グレイツ(lz0062

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4/1時点!
レヴェル共が『黄金の霧の地に行けば救われる』だのほざいてるぜ!
そいつらを取り締まるぜ!
『黄金の霧の地』は南陽インソムニア『酒池肉林』じゃね? ってハナシだ!

ニキ・グレイツ(lz0062
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4/28時点!
レヴェル共の取り締まりをしつつ、インソムニア『酒池肉林』の調査任務だ!
敵と戦ったり、地形調査したり、そういう情報収集ターンだな!
ゴー! ファイト!

ニキ・グレイツ(lz0062
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5/15時点!
酒池肉林のナイトメアって、囚われてる人間を糧にして強ぇんじゃね!?
ってことで、でっかく救助作戦する予定だぜ!
今はそれに備える期間だぜ!

ニキ・グレイツ(lz0062
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6/16時点!
紫電重工の新型アサルトコアが来たぜ!
飛娘(フェイニャン)っていう二刀流特化と飛行適性機体と、
飛娘々(フェイニャンニャン)っていう飛行特化型特別機体だ!

ニキ・グレイツ(lz0062

CODE:Ariadne(6/26公開)

●生還の為に
 南陽インソムニア『酒池肉林』――かの地を攻略するには、どうしても大規模な攻略作戦が必要だ。
 しかし、何も考えずに大戦力を投入すれば、酒池肉林内部そこかしこに配置されている救助対象市民を戦闘に巻き込む危険性がある。

 ナイトメアの超再生力が人々を糧としている上で成り立っているのであれば、人々の救助は必要不可欠である。それも集中的かつ一挙に大人数を救助するような。
 そこで問題となるのが、膨大な再生力を誇り事実上『倒すことができないナイトメア』の存在である。連中はライセンサーたちの妨害・排除に動くことだろう。
 なので救助作戦の傍ら、救助が円滑に進むように、この倒せない存在を引きつける・足止めをする陽動部隊が必要となる。

 救助部隊は、できるだけ戦闘を避け、戦いをしかけられても逃げながら、人々の救助に専念を。
 陽動部隊は、倒せぬナイトメアを一秒でも長く引き付け・足止めする為の泥沼の耐久戦を。

 今はまだ、『倒す為の戦い』は不要だ。
 今求められるのは、『次に勝つ為』の戦略である。

 CODE:Ariadne――アリアドネ作戦。

 それは魔境の怪物を討ち、迷宮から生かして帰す為の作戦。


●天女の権能

「待たせたな」

 アリアドネ作戦を前に、北方部隊長ハシモフ・ロンヌスのところへ紫電重工代表、紫電 帝が現れた。
「ようやっと最終調整が終わった。――完成したぞ、飛娘シリーズの特殊MODが」
「ご苦労だったな。で、どうなったんだ」
「これを見ろ」
 帝は資料を手渡した。

 MS-02『飛娘(フェイニャン)』、及びMS-02S『飛娘々(フェイニャンニャン)』専用MOD。
 ディメンションデブリから解析した技術を、イマジナリーシールドに付与することで、酒池肉林内部の黄金の霧への抵抗力を得る。
 効能:酒池肉林内部での抵抗力低下を無効化。
     シールド修復作用を向上。
     視界阻害を完全無効化。

 なおディメンションデブリによる異世界の技術であるため、現時点において類似出自を持つ飛娘シリーズにのみ効能は限定されている。

「酒池肉林へ出撃する全ての飛娘シリーズパイロットへ無償提供する。うちの『お得意様』なら活用できるはずだ」
「なるほど……視野阻害無効化はデカいな、今回の救助作戦でかなり有用そうだ」 
 救助対象の発見、斥候、奇襲防止、使い方は様々だ。後は現地におけるパイロットがどう扱うか、である。
 さて――人類側の準備は整った。帝はモニターに表示されている酒池肉林を見やる。
「怠惰、停滞――……俺の最も嫌うもんだ。まあこれは俺が技術屋だからってのもあるだろうが」
「無限の安寧……何もしなくていい無責任と停滞、ただ雛鳥のように口を開けて受動を飲み続けることは、魅力的に見えるが、な」
 ハシモフは同意の意味合いを込めて呟いた。

 何もせず、何もなく、ただただ微睡むことはきっと楽だ。
 だが、そこには何もない。何も生まれず、何も起きない。それは悲しみや痛みが生まれない側面もあるけれど――……息を吸って吐くことだけが、生きることではないのだろう。人間という生き物に、生まれてしまったからには。

 しかし一度浸ってしまった者にとっては強烈な麻薬のような快楽で。
 アリアドネ作戦において救助された者らに関しては、SALFや各行政機関において責任を持って管理する予定である。たとえ「助けられたくなかった」と向こうがどれだけ叫ぼうとも――インソムニアを切り崩す為に必要なことなのだ。これ以上ナイトメアに跳梁跋扈させない為にも、「助けた後にどうするか」にまごついて手出しを躊躇っている猶予は、ないのである。

 ――かくして、ヒトが挑むは堕落の魔境。
 黄金絢爛に彩られ、停止を謳う悪魔の庭。



<バルペオル>
●堕落の深淵
「まだ諦めてないのか……」
 救ったところで貶されて、倒せぬ相手に辟易して。喜びも達成感もない作業だろうに。
 それでも諦念せずに挑んでくるのか?
 健気なものだ。
 いいだろう。

「その勤勉に、心から敵意をくれてやろう」


『了』

(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)

過去のストーリー

●Belphegor
「……なあエンピレオ、俺たちはいつまで続くんだ?」
「いつまで? 妙なことを言いますね。進化に終点などありませんよ」
「お前は……終わりがなくていいの? 永遠に辿り着かないゴールへ、走るのって、さぁ~……いや、お前はそれでいいタチだったな……」
「果てがないからこそ挑むのですよ。停滞は怠惰です」
「……大したもんで。じゃあ俺は怠惰でいいや~……」
「バルペオル」
「ンだよ」
「またザルパ君に叱られますよ」
「……ブーメラン投げてんじゃないよキテレツが。ノルマは達成したからいいだろ。俺は寝る」
「そうですか。ではまた、バルペオル」
「ああ、『酒池肉林』は自由に使っていいから。おやすみエンピレオ。……起きた時に死んでたらさよーなら」

 エンピレオという『門(インソムニア)』でこの世界に来て、ザルパに命令されたことの最低限をこなして、終わったから寝て――  今、起きた。

「……あれ。まだ人類、生き残ってたの? ったく皆もっと働けよ俺の分まで……はぁ」

 その溜息は金色の煙となり、黄金絢爛たる不眠城を満たしていく……。



●黄金の済度

 ――黄金の霧の地に行けば救われる。

 中国を中心に、都市伝説めいてまことしやかに囁かれる、そんな噂。
 最初は些細なものだった。小さな小さな与太話だった。

 だが――【堕天】事件の収束後から、その噂は大きくなり始めていた。

 同時に発生する、中国を中心とした行方不明事件。
 遂にはナイトメア事件としてSALFの目に留まることとなる。

 SALFによる調査の結果、件の噂を吹聴しているのは、人類救済政府をはじめとするレヴェル達であると判明。
 同時に、『黄金の霧の地』とは南陽インソムニア『酒池肉林』ではないか、とするのがSALFの見解である。

「南陽インソムニア、『酒池肉林』か……」
 北方部隊長ハシモフ・ロンヌスは情報部からの報告書に眉根を寄せた。
 ハシモフは北方部の者ではあるが、南陽インソムニアを中心としたナイトメア支配地域は、ロシアのナイトメア支配地域と隣接している。本件において北方部は積極的だ。
「武漢防衛戦……泉州防衛戦……、どうも嫌なことを思い出すな」
 ハシモフに答えたのは、MS-01J『飛燕』を代表機体とする紫電重工が代表、紫電 帝。彼の表情もまた重い。

 ――2041年、モンゴルがナイトメアに占領される。SALFが参戦するも戦果をあげられず、難民の保護に終始する形となる。 一部難民はSALFを通じて各国に保護される。
 ――2042年、武漢防衛戦。抵抗空しく2ヶ月で陥落。日本への撤退作戦が行われる。
 ――2050年、泉州防衛戦。中国南部がナイトメア支配地域となる。

 この泉州防衛戦の結果に伴い、「日本に戦域が拡大する危険性がある」と日本政府の国策により、紫電グループのアサルトコア開発部門「紫電重工」に技術者が集められたのだ。

「ロシアのに比べりゃインソムニアの規模こそ小さいが。……まあロシアにゃ二つもあったんで比較対象としては不適切とはいえ」
 ハシモフは『酒池肉林』に関する書類をめくる。かの地は確かに、外見は『黄金の霧』に閉ざされている奇異なインソムニアである。酒池肉林という悪趣味な名称は誰が呼び始めたのかは不明だが――
「ロクでもない予感がするのは確かだな」
 あのエンピレオの『隣人』を務めており、【堕天】事件時に一切干渉してこなかった、というのもハシモフの不快感を引き立てるファクターだ。人間の感性ではおよそ理解できないモノがある。

 ――兎角。

「酒池肉林の情報収集は順次。まずはアホな噂を垂れ流す『馬鹿(レヴェル)共』の取り締まりだ」
 全く敵対者に対して口が悪い。ハシモフの言葉に帝は少しだけ肩を竦め、口を開いた。
「こちらも酒池肉林攻略に向けて、開発中のアサルトコアの開発を急がせよう」
「ほう、新作か」
「詳細は企業秘密だがな」
「そういえばノヴァ社も――」
 あ。ハシモフはムッと唇を閉ざした。アルビナに「まだナイショにしておいてね」と言われたことを思い出していた。帝は「聞かなかったことにする」という眼差しで、ハシモフを一瞥した。



『了』

(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)

●帰還者の報告

 ――先行調査部隊が無事に帰還した。

 その知らせを受け、実際に帰還したライセンサーの顔を見て、SALF北方部隊長ハシモフ・ロンヌスは心から安堵した。だがそれは厳格な表情の下に隠し、一同を見渡す。
「危険な任務だったが、まぁお前達なら生還も当然か」
「いえいえ、ぶっちゃけ死ぬかと思いましたヨ?」
 イリヤ・R・ルネフ(la0162)は苦笑する。
 南陽インソムニア『酒池肉林』。まだ情報がほとんどない中での偵察はまさに地獄だった。
 管理エルゴマンサーのバルペオル、そして酒池肉林内部のナイトメア。それらの戦力はライセンサーの想像を超えていたのだ。
「……攻撃、した、けど……命中したし、ダメージも与えたはず、なんだけど、……すぐに治癒した、感じが」
「そうなんですよハシモフ隊長っ! バルペオルだけじゃなくて他のナイトメアもそうで! あんなのとどうやって戦えばいいんですか!?」
 常陸 祭莉(la0023)と野武士(la0115)が、バルペオルやナイトメアを攻撃した際の実感を述べる。傍らのモニターには、バルペオルやナイトメアとの交戦時の映像が映されていた。
「その上、霧が濃すぎて大人数での行動が困難そうね……連携に支障が出るし、最悪の場合は落伍者や小隊孤立の危険性もあるわ」
 ツギハギ(la0529)が言葉を重ね、額を抑える。『酒池肉林』ではこれまでのように、大規模作戦による大戦力で物を言わせることも難しいだろう。
「あの『超回復』をどうにかしない限り……正直、僕らに勝ち目はないかと」
 佐和 千昂(la3236)が溜息のように言った。現状、『酒池肉林』はあまりにも難攻不落である。

 けれど――ああも『無欠』すぎると、何かしらからくりがあるはずなのだ。

「現地調査を続けて、もうちょっとデータを集めないことには、なんとも言えないのだわ……」
 アルバ・フィオーレ(la0549)はまとめられた資料を見渡しつつ、眉尻を下げる。その傍ら、アンヌ・鐚・ルビス(la0030)は明らかにしょげた顔をしていた。
「それにしたってお宝が『ない』って。『ない』ってどういうことよ……」
 ぶつぶつ。どうやら彼女にとってかなりショッキングな出来事だったようだ。
 さて一方で、レイヴ リンクス(la2313)は「ふむ」とあごをさする。
「【堕天】の時のように、外部へ積極的な攻勢をかけてくる存在ではないようですが……代わりに外部から自発的に向かう市民がいるのが厄介ですね」
 レイヴはこれまでの【金乱】関係任務の報告書を思い返す。そして自らが参加した任務も。「レヴェル対応の任務は引き続き続行する。連中を根絶やしにするまでな」とハシモフが答えた。
「……『酒池肉林』は確実に危ないんですが、でもババーンとアクティブに危なくはないというか、でもやっぱり危ない場所で、その、うーん、なんというか、なんというか……」
 桜壱(la0205)は左目のアイカメラにぐるぐる模様を表示する。
「――毒のようです」
 ポツリ、言葉を継いだのはマクガフィン(la0428)だった。

 酒池肉林――それは美しい見目で人を呼び、その心に付け込み、染み渡り、蝕んでいく毒。

「ああ。どんな理由や事情があろうと、かのインソムニアを放置するわけにはいかない。レヴェル共が躍起になって活動している現状、後回しにすればますます連中をのさばらせる危険性もある」
 ハシモフは重く頷いた。

 ――酒池肉林にて眠る人間は、何かしらの理由で『行き詰ってしまった』者ばかりだけれど。
 無理矢理にでも救助することは、彼らにとって残酷なことかもしれないけれど。
 それでも彼らがナイトメアの糧となり、あるいは人々の不安を煽り、悪意を蔓延させ、そのことで新たな悲劇が生まれるのならば看過はできないのだ。

「そもそもあそこは人類の領土だった。不法侵入不法滞在しておいて、バルペオルめ笑わせる」
 ハシモフは不快気に鼻を鳴らした。そして改めて、危険な任務に名乗り出てくれた優秀なる一同へと向き直る。
「兎角――此度はご苦労であった。本件に手得た情報は直ちに全ライセンサーへ共有、迅速に本格的な調査任務を開始する。お前達の活躍にも期待しているぞ」

 とはいえ――難攻不落の不眠城。倒せる目処のない怪物の巣窟。救いを拒否する救助対象達。士気の上がらない条件ばかりが揃っている。
 なればこそとハシモフは告げるのだ。

「……案ずるな。我々は必ず勝利する。いいか、人生ってのは多少『傲慢』な方が生きやすいんだよ。お前達も幾らかは傲慢でいい。傲慢に戦い、傲慢に護り、傲慢に救え。以上だ」



『了』










(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)


●報告と対策と
 報告書『【金乱】眠る前にお遊びを』――
 報告書『【金乱】轟嵐磊落、樹海の糸』――

 ナイトメアは、酒池肉林内に囚われている人間を食らう。
 捕食とは、補給でもある。

 ナイトメアは、とんでもない再生力を誇る。
 デタラメな能力だからこそ、永久機関的に気軽に得られるものではあるまい。

「バルペオルの能力からして、囚われてる人達からエネルギーを摂取してるように感じるんだよ」
 ヴァルヴォサ(la2322)はそう語った。実際、バルペオルもそのことを仄めかすようなことを口にしていた、と。
「……囚われている人々こそが、ナイトメア達の再生力の『糧』、ということですか……?」
 報告書を生真面目に熟読しながら、ヨランダ=エデン(la3784)がおずおずと言う。
 だったら、とclover(la0874)が身を乗り出した。
「じゃあ、酒池肉林の人達をバーッとガーッと救助すれば……!」
「せやかてどないすんねん? 人を助ける為には、あのえげつないナイトメアとどう足掻いてもバッティングやで」

clover

てくたん
 てくたん(la1065)が、ウサギ耳のような部位で器用にタブレット端末を操作しながら言う。「うごごご」とクローバーは頭を抱えた。
「ブン殴ってやればよいのです、えらいひとが『汝右の頬を打たれたら、そこですかさずクロスカウンター』と言っていたのです」
 アンリエッタ・賽松(la3087)は堂々と言ってのける。「ストロングスタイルすぎまんがな」とてくたんが肩(?)を竦めた。

 さて――銘々に報告を終えたライセンサー達の視線は、SALF北方部隊長ハシモフ・ロンヌスへと向けられた。

「大規模な攻略作戦をするにしても、そこかしこに配置されている救助対象を戦闘に巻き込む危険性がある。元より――彼らは『救助対象』だ」
 見殺しにするなどSALFとしてはできない、と念押しした上でハシモフは続ける。
「ナイトメアの超再生力が人々を糧としている上で成り立っているのであれば、集中的かつ大きな規模の救助作戦が必要だな。
 そこで問題となるのが――懸念の通り『倒せないナイトメア』だ。救助作戦の傍ら、救助が円滑に進むように、この倒せない存在を引きつける・足止めをする陽動部隊が必要となるだろう」
「陽動……でもそれって、壮絶に危険なミッションじゃないっすか……!?」
 白玉 纏(la0406)が苦い顔を浮かべる。なんせ相手は『倒せない』。無尽めいた泥沼の耐久戦を強いられることとなるだろう。
「そうだな。陽動部隊にはかなりのリスクを背負ってもらうことになる……だが」
「四の五の言ってられる戦況でもない、と」
 狭間 久志(la0848)が静かに言う。元より侵略者との戦いは、そんな戦況続きであることを久志は理解していた。「うむ」とハシモフが頷く。
「【堕天】という奈落を超え、至高天を踏破し――だけでなく、各地のインソムニアを討つことができたお前達なら、『できる』。できると踏んで、俺は今の作戦を口にしたのだ」
 ゆえにこれは無茶でも無謀でもない――ハシモフはこれまでのライセンサー達の尽力を知っている。
「救助作戦に当たって戦力を揃える必要がある。だが……現状は逼迫する状況多発している。戦力編成が整うまでは、お前達にはできることをできるだけやって貰うぞ」
 それには新たに酒池肉林へ向かう者の阻止、引き続きの調査などが含まれる。
「【堕天】の流星作戦の時みたいに、作戦名はあるのか?」
 強張る空気をほぐすように、詠代 静流(la2992)が軽く問うた。ふむ、とハシモフはしばし考え――

「――『CODE:Ariadne』。アリアドネ作戦、だ」

 それは魔境の怪物を討ち、迷宮から生かして帰す為の作戦。


●Baal peor

「……へえ。諦めないのか……」

 黄金魔境の深淵、バルペオルは静かに座している。

 色々な世界に君臨してきた。
 倒せない――そんな絶望から攻略を諦められた世界もあった。
 酒池肉林を救いと定義し、屈服してきた世界もあった。

詠代 静流

<バルペオル>
 直接的な脅威度が低いからと放置されたので、その間にたっぷり糧を揃えて『手が付けられない状況』に追い込んでやったこともあった。
 いつか勝てると希望を抱いた連中が、純粋に力圧しで攻めてきたので、ことごとく皆殺しにしてやったこともあった。

 たくさんの宣戦布告。たくさんの希望。たくさんの勇気。
 どれもこれも、いずれ絶望へ至り、諦念に満ち、怠惰へ堕ちた。空虚となった。

 飽きるほど繰り返してきた、似たような侵略の日々。
 無間を繰り返しても、結果はいつも同じだったが。

 ――今度こそ違うのか?

「克ってみな、人間」

 悪魔は嗤う。



『了』



(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)


●新たな戦力!

「――これが紫電重工最新型アサルトコア、MS-02『飛娘(フェイニャン)』だ」


紫電 帝
 紫電重工代表、紫電 帝はそう言って、モニターに一つのアサルトコアを映し出した。
 MS-02――兄機にあたるMS-01『飛燕』と比べれば一回り小柄な機体だ。どことなく女性型を思わせるフォルムをしている。
 他のアサルトコアと比較すると、ブースターや無骨な装甲など『いかにも科学的な』要素があまり見られない点が目を引く。無骨よりも流麗、といった表現が似合う。
 だがなによりもその機体を印象付けるのは――『腕が四本ある』ことだ。しかもその腕は肩に接合しておらず、『浮いている』。

「美しいだろう。――だが、美しいだけではないのだ」

 飛娘は人体の関節構造を無視し、舞うように武具を取り回すことができる、二刀流特化機体。白兵戦闘の攻撃性を追求した、苛烈な機体。
 更に飛娘は飛行適性を有する。独自の飛行プログラムは、従来のような飛行でのパフォーマンス低下が一切ない。

「これらはIMDによる反重力制御による挙動だ。……制御にかなりコツがいるピーキーめな機体なんで、ライセンサーの中でも実力者向けの機体であると想定している。
 とはいえ、まだロールアウトにはもう少しの調整が必要だ。特に飛行面においてまだ課題が多く――」
 帝が説明をしている只中だった。会議室にSALF職員が駆け込んできて、真っ青な顔でこう言ったのだ。

「たっ大変です! 空に穴が!!」



●掴めるものなら藁でも掴め
 中国辺境に『大規模な時空の歪み』が観測された。
 よもや【FI】のような放浪者集団の出現、はたまたナイトメアの侵略か――と思いきや、現れたのは大量の『ガラクタ』であった。瓦礫のような見た目の、本当に、ガラクタでゴミ。ある世界の放浪者には『クズ鉄』とでも呼べばピンとくるだろうか。
 さながら……『宇宙ゴミ(スペースデブリ)』ならぬ『異界ゴミ(ディメンションデブリ)』とでも呼ぶべき代物だろうか。
 これも、この世界が『特異点』だからだろうか?

 ――さてどうする、このディメンションデブリ。

 声を上げたのは紫電重工だった。確かにアレはただのガラクタにすぎないが、中には新しい技術に役立つものや貴重な素材が含まれている可能性がある。もちろん何の役にも立たなさそうなスクラップも多いのだが……それを放置するのもよろしくない。

 かくして、紫電重工が中心的依頼者として、このディメンションデブリを収集する任務が発動した。
 かのメガコーポは新作アサルトコア『飛娘』開発に向けて、このディメンションデブリが役立てないか画策しているのだ。もちろん、得た技術は独占するのではなく、他のメガコーポにも共有する予定だ。

 ……そんな中。
 ある日、帝の元に届いたディメンションデブリの解析結果が、彼のアイデアと職人魂に火を点けた。

「――これが紫電重工最新型アサルトコア特別機体、MS-02S『飛娘々(フェイニャンニャン)』だ」

 帝はそう言って、モニターに一つのアサルトコアを映し出した。
 それは先日の飛娘とほぼ同じ機体だが、腕は一対であり――羽衣のような光の帯を纏う、なんとも幻想的な機体であった。

「む。待て紫電、つい先日に飛娘とやらを発表したところではないか。それに前回のものとほとんど見た目が同じではないか」
 モニターから帝へ視線を移し、北方部隊長ハシモフ・ロンヌスは片眉を上げる。帝は愚問と言わんばかりに小さく鼻で笑った。
「言ったじゃねえか、これは特別機体。ディメンションデブリから解析したデータで、反重力制御機能を更に強化――飛娘の飛行適正を拡張し、空戦特化型としたタイプである。……代わりに二刀流機能はなくなったが」
 飛娘々については量産が難しい機体であり、限定生産品となることを帝は付け加えた。実戦特化というよりも、どちらかというと浪漫型と言わざるを得ない部分もある、と。
 しかし。帝は真っ直ぐにこう告げるのである。

「空を飛ぶこと。……誰だって、一度ぐらいは憧れたことはあるだろう?」

 空を自由自在に翔けること。それは全ての人類の憧れだろう。誰だって一度は夢見たことがあるはずだ――雲に乗ってみたいとか。傘を広げて階段から飛び降りてみたりとか。こんなご時世だ。そんな夢がちょっとだけ叶うぐらいの心の自由が許されたっていいじゃないか。

「……反重力制御飛行……酔いそうだな」
 ハシモフは手元の資料を見ながら呟いた。「おう」と帝はしれっと言う。
「酔うぞ。俺は壮絶に吐いた。人生であんなに吐いたのは昔カキにあたった時以来だな」
「お、おう」
「ライセンサーはガッツのある連中だ、どうにかなるだろ」
「そういう問題じゃ……」
「安心しろ。テストパイロットへは我が社のエチケット袋を無料で提供する。何も問題はない」
「いや……、」
 それでいいのかと少し心配になったが、さておき飛娘と飛娘々のスペックは本物だ。
 問題は――それをライセンサー達がどう使いこなすか、であるが。



『了』

(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)
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