1. グロリアスドライヴ

  2. 広場

  3. 【DD】

【DD】

Story 02(9/2公開)

●ウィーン、8月

 オーストリア、ウィーン、8月某日、快晴。
 猛暑の日本と比べれば随分と涼しい。

 ――ふあ、とコノリ(la3367)は夏空にアクビをひとつ。
 少年はEXISで武装している。いつだって戦える。けれど佇まいには戦意のセの字もなく、警備というよりも暇つぶしの状態であった。
(ここで襲ってくるんなら結局、対立だ)
 冷めた淡紅色がチラと『会場』を見やる。あそこにいるのだろうオリジナルとやらが、そこまで愚かでないと思いたい。
(でなくば神には相応しくない)
 内心で呟き――「それにしても」と心の言葉を頭の片隅で続けた。
(ナイトメアの意見の割れ方、性格が出てるのかな……)

 ウィーンのそこかしこには、数多のライセンサーが警備として巡回している。
 その甲斐あってか、あるいはそもそも『あちら側』に戦意はないのか――ナイトメアによる被害は報告されていないし、連中が暴れ出す気配も感じられない。
 ニュートラリダ達は交渉に来たのだ。ここで手駒が暴れてしまえばそれは完全に向こうの落ち度となり、交渉どころではなくなってしまう。それを向こうも把握している、のだろう。おそらくは。
 とはいえ、だ。ナイトメアはナイトメア。人類にとっては脅威である存在が『居る』。警戒に越したことはない。

「ナイトメアを連れてきておるとは……厳重な警戒よのう」
 神楽 出雲(la3351)は沈黙している下位ナイトメアらを見渡し、呟く。
(拙者達を信用しておらぬのであろうな)
 オリジナル達は「丸腰で現れれば危害を加えられる」とでも危惧しているのだろうか。それもやむを得ないのかもしれない。人類とナイトメアは戦争状態なのだから。
 そう、『戦争状態』――そんな中でどのような対話が行われているのだろう。あの場には出雲の仲間達、小隊『Howl Dragon』の面々もいる。
 仲間達の対話の邪魔をさせぬ為にも。出雲は引き続き、警戒を続ける。

「こーら、こっちじゃないわよー?」
 ふらふらと適当に歩き回るナイトメアについては、ローゼリア・イリス(la2944)がその進路上に立ち塞がり、ホーリーライトの輝きで目立ちながら市街地に入らぬよう誘導する。
 無用に刺激して大事態にならぬよう、能動的攻撃は絶対にしない――ローゼリアをはじめ、ライセンサー達の方針はまとまっていた。戦意がないのはナイトメア側も同じのようで、ローゼリアが進路を阻めばナイトメアはその場で停止して沈黙する。
「ふう……」
 戦意がないのは分かっているが、いつ襲われてもおかしくはない。一抹の緊張感と共に、乙女は小さく息を吐いた。

「うまいものはいいっすねえ」
 一方で――超菜 ノト(la0800)はのほほんとしていた。ライセンサーの中には料理をこさえてきた者がちらほらとおり、彼らからの差し入れがあった。ノトが手にしているのは揚げたてのコロッケだ。ほくほくで、イモの甘味が堪らない。
 とはいえ任務中は任務中。警戒は怠ってはいない……けれど。偶然にも、ふらふらとマンティスが近くを歩いているのを見かける。敵意があって行動している訳ではないだが、注視はしておく。そうしてそれがこっちを向けば、ノトは手にしたコロッケを差し出してみるのだ。
「喰ってみやすか?」
 しかしナイトメアはそのままノトを通り過ぎてしまう。人とナイトメア、食性は完全に異なるのだろうか――なんて、想いを馳せた。

「全く……対話の場でのドンパチだけは頼むから勘弁してくれよ……」
 ヴォルフガング・ブレイズ(la2784)はそうこぼしながらも、ウィーンの警備にあたっていた。EXISを所持こそしているが、あくまでも自然体で。相手側に無用なプレッシャーを与えたり刺激したりしないように。しかし守護者として威風堂々、譲れないものは胸に秘める。
 ヴォルフガングをはじめ、ナイトメアを刺激しないようにと一同は立ち回っている。ウィーンの8月は刻一刻と、嘘みたいに平和に過ぎていく。日本であれば蝉がたいそううるさいが、ウィーンの夏は静かなものだ。
 このまま平和に事が済めばいいのだが。ヴォルフガングはそう思いながらも、自らのすべきことを成してゆく。

「交渉の場の邪魔はさせぬよ」
 V・V・V(la0555)はHN-01『カルディナール』に搭乗し、会場門前にて文字通りの『門番』となっていた。
 HN-01は護りに特化した機体。それにこの巨体はそれだけでバリケードにもなる。門番にはうってつけだろう。アサルトコア用ライフル、シュトライヒェンM061を手に、重厚な鉄兵士は凛と立つ。
 現時点で武器の出番はなく、この先もなさそう、ではある。けれど『万が一』に備え、ファオドライは気を引き締め続けている。
「さて、和平は成るのか……」
「――ええ、中ではどんな話し合いがされているのかしらね」
 呟きに応えたのは、同じく会場周辺を警備していたイーリス・セールイ(la3420)だった。淑女の日傘を差し、晴天に映える淡い空色を手持無沙汰にくるりと回す。
「ふむ、そなたは対話には向かわなかったのか?」
 興味があるならばなぜ、とファオドライはHN-01内で問う。イーリスは影の下でくすりと笑んだ。
「今更、彼らと話すことはないわ。私はただの傍観者、この戦いの結末を見届けられればそれでいい。……それにしても、」
 視線を彼方のナイトメアへ。ふっと湧いた疑問を口にした。
「この尖兵達はどうやって生み出されてるのかしらね。その為だけの世界でもあるのかしら?」
「さあ、どうでしょうね」
 そう言ったのは、カルディナールと共に門を護るBD-01PTのパイロット、伊藤 毅(la0675)である。
 ナイトメアをぶっ飛ばしたい――そう願ってSALFに志願した毅は、幾らか暇そうにしながらもこの任務に就いていた。オンラインにした通信機からは他の仲間達からの連絡が入ってくる。異常なし、異常なし、どれもこれも異常なし。もはや駐車した車で聞くラジオのようなものだった。
「……状況了解。ドラゴン01異常なし」
 この言葉を繰り返すのも何度目か。首をストレッチの為に回し、一息。モニタリングされている会場を一瞥する。
(今更、なにしに来たのやら……首尾一貫してほしいもんだ、敵ならな)

 ――怪訝。警戒。懐疑。

 楊 嗣志(la2717)もまた、複雑な想いで会場の方を見ている者の一人だった。
(話し合ったとしても、約束が守られる保障がない)
 ザルバ、テルミナス。彼らの言動を思い返せば、どうしても不信を抱いてしまう。そもそもが人類を『餌』という下等種として接してきた連中なのだ。唐突に甘い言葉を用いられても、罠ではないかと身構えるのが当然の反応だろう。
(……あちらからすれば、出向く人間は『対等な交渉相手』ではなく『サンプル』だろうな)
 だからこそ、だ。もしも連中が掌を返した時に、護りたいものを護れるように。嗣志は警戒心を緩めることなく、巡回と警備を行う。

(この世界のことはこの世界の奴らと……若い連中で決めるべきだ)
 狭間 久志(la0848)はそう思う。彼がいるのは会場内だ。物々しさで対話に水を差してはならないと気配を殺し、もしもに備えて隙は見せない。ナイトメア側の横槍はもちろん、人類側の反ナイトメア思考の者の感情暴発にも久志は警戒していた。
(さて、どうなるかね……)
 久志としては別段、この対話の結果であれば、どちらかが死滅するまでの徹底抗戦でも構わなかった。ただひとつ切に願うのは、この世界の選択が悪意で覆らないこと。そして『そう』させない為に、久志は警戒を研ぎ澄ませる。理想主義でも浪漫主義でもないけれど、明日が昨日よりいい方が、ずっといい。


●二つの種族の対話の行方

「――そもそも、貴方達の目的の第一義はなんですか」


ヨランダ=エデン

<ニュートラリダ>
 ヨランダ=エデン(la3784)は座したているオリジナル・ナイトメア――現在ウィーン市街をぶらついている『本体』ではなく、彼女が置いていった『端末』だが――に問いかける。
「こうして戦中に会談を望むのは、むしろナイトメア陣営が苦しんでいる証左。人類側に『今こそ叩き潰す好機』と教えるようなもの。傲慢に真意を濁すのはやめなさい……決断を迫られているのは、貴方達の方です」
 望むのは講和か、撤退か、それとも玉砕か。ヨランダは相手の真意を探るべく、昏い眼差しでニュートラリダを見つめた。相手がどうしたいのか、それを気にしている者は他にもいた。
「我としては講和を望んでいる。たとえば不可侵条約のようなものなど。我としてはお前達が興味深い、ゆえに抹殺されるのはもったいない。ゆえにこうしてここに来たのだ。――テルミナス、クライン、お前達も返事を」
 端末だからだろうか、その声に抑揚はなくどこか事務的だ。ニュートラリダが命じれば、 次にテルミナスが粛々と「ニュートラリダ様と同意見です」と言い、次にクラインが眉根を寄せてこう言った。
「理想を言えば講和です。できるとは思っていないので、現実的な意見を言うならば撤退ですが」
「――ということだ。ついでに『玉砕』はまずありえぬ」
 ニュートラリダそう言って……さて。

「して尋ねるが。……これが地球式のもてなしか?」

 満漢全席。ニュートラリダは卓上にずらずらずらりと並べられている料理の数々に、ゆるりと首を傾げた。幾人かのライセンサーが用意したものだった。カレーからコロッケからケーキからサラダから緑茶に紅茶にコーヒーにアイスに中華に――「デパ地下の総菜コーナーかここは」とSALF北方部隊長ハシモフ・ロンヌスは額を押さえて溜息を吐いた。
「……どうぞ」
 卸 椛(la3419)――食べ物を用意したライセンサーの内の一人――は所狭しと並んだそれらを、客人(厳密には『人』ではないが)に勧める。
 ならばとニュートラリダは、目の前のケーキに載っているイチゴを一粒、指で取った。しげしげと眺め、口に放る。咀嚼はなかった。ごくんと飲み込むような様子も。それだけで、ニュートラリダという存在がどれだけ人間とその常識からかけ離れた構造かを如実に物語る。同時に、毒殺されるやもということを全く恐れていない自信が見て取れた。
「――なにか?」
 集まる人間らの固唾を飲むような眼差しに、少女の姿をした超越存在は片眉をもたげてみせる。
「あー……お前達ナイトメアの味覚についてこいつらは聞きたいようだ」
 ハシモフが代弁する。「そういうことか」とニュートラリダは納得し、こう説明する。
「我々の味覚についてだが、個体差がある。だがいずれも趣味の範囲内だ。我に関しては成分分析に近い。例えば、グルタミン酸が多いとか、糖度が高いとか、そういったファクターから『人間ならば美味しいと判断するのだろうな』という予想をする程度だ」
 そういう理由からか、ニュートラリダは料理に全く関心を示していない。テルミナス、クラインも一瞥すらしない。「お前達で消費していいぞ」とオリジナルはあごで示した。
「ナイトメアの食文化はどうなっているの?」
 皆の疑問を椛が代弁する。
「精神捕食。それ以外は生きる為の糧にならぬ。一方で、先程のように精神以外のものを摂取することもできるが、全く意味のない遊びだ。塵を食むようなもの」
「それにしても他生命体依存の進化じゃ、いつか行きづまると思うのよね。その時、何を食べる? 自分達で食べあうのかしら?」
「この宇宙と世界の広さを知らんようだな。それは天地が崩れ落ちやしまいかと怯えるも同義。……ついでにお前達も気になっているだろうから、我々の『餓死』についても言及しておこう」
 ニュートラリダは薄笑みの表情を崩さぬまま、説明を始めた。

 そもそも、だ。そもそも、人間とは前提が概念レベルで異なるのだよ。
 人間の餓死とは「何も食べない・エネルギー補給をしないこと」だな?
 我々にとっては、「精神捕食=進化に必要な本能」「エネルギー補給=肉体の維持」、である。
 我々は肉体維持のエネルギー補給を高い効率で行える。お前達でたとえるならば、呼吸だけでエネルギーを作れるようなものだ。具体的にどうやってと言われても、説明する為の概念を現す言葉がこの世界にはないのでどうにも表現できぬ。諦めよ。
 そういうわけで、我々には事実上『餓死』というものはないと考えよ。

 ――そう言って、ニュートラリダはテーブル上に置かれたイラストを一瞥する。幾人かのライセンサーが用意したものだが、彼女は全く関心を示さなかった。ニュートラリダにとっては、「紙の上に塗料がある」程度にしか感じていないのだろう。そしてオリジナルがそうである以上、個体差はあれどナイトメアは基本的に芸術関連への関心が薄いのだろうと予想がつく。テルミナスもクラインも同様だった。
「では」
 ハシモフはあらかじめライセンサー達から集めた質問のリストに隻眼を落とした。話の流れに乗るように、ナイトメアの文化関連を中心に質問していく。

「ナイトメアの日常とは? 侵略時以外の行動について」
「特に何もしていない。エルゴマンサー以上であれば、捕食で得た知的生命体の真似事をすることもあるだろうが――所詮は『真似事』。人間の様に何かを思いついたり実行したりできないから、我々は我々だけでは進化できず、ゆえに進化の為に精神捕食を行うのだ」

「睡眠はするのか? 夢は見るのか?」
「個体差による。そもそも『睡眠』は地球の生物固有の状態変化なのでな。睡眠と言う概念が存在しない世界もあると理解せよ。
 一方で休息はありうる。エンピレオは自己改造と巨大化の果てにエネルギー効率が悪すぎる個体となったのでよく休眠をしていた。バルペオルなどは睡眠の真似事として意識のシャットダウンをよく行っていたな。ちなみに我は眠ることはない」

「名前が出たので――エヌイーやバルペオルのような、人類の進化を促そうとしてくる個体はどういうことだ?」
「個体差による考えの違いだろう。エンピレオは『より良いものを捕食したら効率的なのでは』と考えていたようだ。お前達にも健康食があるだろう? バルペオルは――あの子はただの破滅願望だな。殺してくれる相手を探していたのだろう」

「お前達の世界はどういった風景なのだ? 建造物などはあるのか?」
「インソムニアを参照せよ」

「お前達の歴史は?」
「永すぎる。そしてあまりにも多岐だ。ザルバ派閥、ディード派閥と派閥ごとに歴史の施行があるのでな。その上、まだ知能が低かった頃のことなど覚えてもいない。
 同時に――我々は『振り返らない』。進化の最先端こそ価値がある。お前達のように過去を記録する・振り返るという行為は、我にとっては概念レベルで分からない文化的ミームだ」
「つまり説明不可能、と」
「そういうことだ」

「ナイトメアとはそもそもなんだ?」
「そういう種族だとしか言えぬ。お前達とて、『人間とはそもそもなんだ?』と言われても同じ答えを返すだろう?」
「ナイトメアという種族の目的、目指す到達点は?」
「進化だ」
「その理由は?」
「本能。ナイトメアという生物として当たり前のオーダーだ」

「お前達の同族意識について語って欲しい」
「我々は――そうだな。お前達の概念に適した説明をするならば『群体』だろうか。種の本能というハイブマインドで繋がっている」
「その割には派閥が分かれ意見が対立しているが?」
「人間でいう、『エゴ』『イド』『スーパーエゴ』のようなものだ。一つの脳味噌内でも感情の対立が起きるのだろう? そして脳とは細胞の群体。そういうことだ」

「ナイトメアは自らをどう認識している? 知的生命体なのか、野生生物なのか」
「お前達は『当てはめたがり』だな。我々は存在しているから『在る』。それ以上も以下もない」

「放浪者との違いについては理解しているのか? 差異があるのはなぜ?」
「種の違いでは?」

「なぜ地球に侵略をしてきた?」
「手を伸ばした先の、数多の世界の内のひとつよ」
「地球での最終目標は?」
「知的生命体の捕食による『答え』への到達」
「答え?」
「進化の果てについての、『詩的(お前達好みの)』表現だ」
「ペギーは『この地は放浪者を引き寄せる』と言っていたが?」
「オリジナル・インソムニアの影響だろうな。かのインソムニアの『ホーム』から戦力を引き寄せる力が強すぎて、他の次元等にも影響を与えているのだろう」
「世界を渡る技術について知りたいのだが」
「地球言語で表現するに適切な単語や言語が存在しないので――ああ、不可能だな」

 他には、とニュートラリダの端末は無機質的な眼差しを向ける。
 ならばとハシモフは資料をめくった。オリジナル・ナイトメアに関するライセンサー達の質問を読み上げる。

「そも、オリジナル・ナイトメアとは何だ?」
「ナイトメアの祖の意見を引き継ぐ存在の称号。同時に『自身を進化させどこかの答えに至る』という命題について、各派閥のアプローチ結果をまとめ、進化への道筋を示す者。地球的表現にたとえると、研究室の室長だろうか」
「お前とは別にナイトメアの祖がいると? いわゆる真祖やリーダーというか」
「もういない。我々は最先端こそに価値を見出す。ゆえに古くなったオリジナルにも代替わりが発生するのでな。脱皮のようなものだ」

「オリジナルの生態は? IMDは扱えるのか?」
「オリジナルだからとIMDは扱えぬ。我々は、派閥からの報告を受け、指示や許可をするだけだ。それ以外の時間は、それぞれの派閥の行動を観察したり、真の答えに関する果てのない議論だな。
 ……我々オリジナルは皆、自らこそがナイトメアの中で最も『答え』に近いと自認している。だがそれを証明できず、証明要素は派閥からの報告待ち、といった状況だな」

「オリジナルの不完全な複製が、通常のナイトメアなのか?」
「否。あの子らは複製などではない。『オリジナル』は原本という意味ではなく、創始者という意味合いであると心得よ。
 先の比喩でたとえるなら……『皆で色んなプロセスを試して進化しよう』というプロジェクト研究室の室長ゆえ、指揮系統的には通常ナイトメアよりも上位ではある」

「なぜお前達の種族名は『ナイトメア』なのか? 誰がどのような由来で決めたのか?」
「まず、ナイトメアという言語は地球言語に合わせた場合の発音だ。ゆえにたまたまだな。……真実の種族名は……まあ我らの永い過去の中で誰ぞが決めたこともあるだろうが、今は失われている。ゆえに好きに呼ぶがよい」

 他には、ニュートラリダは一同を見渡す。
「では次の質問。月魅森 恋雫(la0029)率いる小隊からの問いだ」
 そう言って、小隊『或る無人島の施設~【祈祷室】~』からの質問をハシモフは読み上げる。

「この件がザルバをはじめ反対派に知られた場合、どうなると予想している?」
「ザルバ様はオリジナルの命令に従うでしょう」
 答えたのはクラインだった。ニュートラリダが「あの子は真面目でいい子だからな」と付け加える。そのままクラインは言葉を続けた。
「フォン・ヘスはザルバ様の命令に従うでしょう。しかし彼は人類を過小評価していたがゆえ、個人的に気に食わないことをしたと判断した私を糾弾するでしょう。
 その他のエルゴマンサーは……個体差はあるでしょうが、基本的にザルバ様に従うでしょう。とはいえフォン・ヘス派は彼に従うでしょうが」
「なるほど。あくまでもお前達が我々に味方をする・敵対しないのであれば、反対派の妨害に晒された際は、SALFは支援することが可能である。利点として頭に入れておいて欲しい」
「了解。それで」
「次は人類を存続させる価値を理解してもらう為の説明だ。
 ――IMD、アサルトコア、こういったお前達にない技術を人類は提供することができる。今はナイトメアに扱えずとも、将来的には可能になるかもしれん。場合によってはナイトメア側との共同開発も有効ではないか?
 同様に――これは『祈祷室』以外のライセンサーからも多くの意見が来ているが、精神捕食をIMDでまかなうことができるようになるのではないか?」
 するとクラインは、淡々と説明を始めた。

 ――『クライン』という肉体が持つ知識として、『私』はIMDが何たるかを把握しています。
 その上で、『クラインを捕食した私』は、IMDをナイトメアが扱うことはできない、と結論付けています。
 捕食によって得られる精神性とは、想像力ではありません。
 捕食を行った時点で対象の想像力は丸ごと損なわれている為、IMDで増幅しようにも0は0。そう考えてください。
 同様に、IMDを精神捕食の代価にすることもまた不可能でしょう。
 よって我々ナイトメアは、人類のIMDに関する知識・技術に全く価値を見出せません。

「以上。他にはどのような問いがありますか」
「……人類でいう核兵器のような、『抹殺用の大型兵器』などの有無は?」
「あります。南アフリカインソムニア『完全焦土』で休眠中の、ゴグマというエルゴマンサーがそれに当たります。彼はザルバ様の命令のみを聞く存在なので、我々からの説得などは不可能です」
「どうすればその兵器の使用を回避できる?」
「ザルバ様を本気にさせないことかと。逆に、ゴグマを起こした時点でザルバ様は本気であなた達を殲滅する心算でしょう」

 以上で小隊『或る無人島の施設~【祈祷室】~』からの質問は区切りである。
 ハシモフは話題の流れで、ザルバに関するライセンサー達の質問を読み上げた。

「では件のザルバについて。奴の判断基準は何に基づく?」
「ザルバ様は極めて根源に忠実です。あの方の行動理念は全て、ナイトメアという種の『進化せよ』という本能のオーダーです」
「感情的? 合理的?」
「合理的かつ命令絶対遵守。オリジナルが『やれ』と命じれば自壊も厭わないでしょう」
「説得はできるタイプか?」
「上のオーダーに従うので事実上説得は不可能。上を説得すれば考えを変えるでしょうが」

 一度質疑応答は途切れる。クラインは相変わらず、不動にして静寂の様である。
 ジュリア・ガッティ(la0883)は青い瞳をクラインへと向けた。
「降伏は論外だけど、戦いをどう終わらせるかの道筋は探れないかしら。……『撤退』はあなたの本意なの?」
「ナイトメア側として、これ以上エルゴマンサーが減るのは困ります。ゆえに撤退は本意というよりも『やむなし』といったところです」
 では、とジュリアは他のライセンサーの意見もまとめて問いかける。
「撤退をするとして、インベーダーみたいな派閥が反発するんじゃないの?」
「既にフォン・ヘスのような反対派がいます。ですからこのような事態になっているのです」
「中立派はいるのかしら。彼らを撤退派に説得することはできるの?」
「中立にも各々それぞれの理由があるのでしょう。何とも言えません」
「もし人類抹殺派と戦闘になる場合、人類と共闘する意思はある? それとも、争いを避けられる目算が何かあるの?」
「共闘に関しては、今のところその意思はありません。ただ、インベーダーの時と同様、身にかかる火の粉は払いますが。……非介入ができるかどうかは状況によりますが、ザルバ様が冷静に判断できる状況なら難しいでしょうね」
「そう……じゃあ仮にこの世界からナイトメアを撤退させるなら何が必要かしら。何が障害か、とも言いましょうか。たとえばオリジナル・インソムニアを攻略できたら、貴方達にこの世界を諦めさせることはできるの?」
「オリジナル・インソムニアが攻略されると『ホーム』から戦力を送り込む手段が事実上失われます。そうなると撤退せざるを得ないでしょう」

 一方――テルミナスへは更級 翼(la0667)が、強い敵意の眼差しを向けていた。刃を向けたい気持ちは抑え、言葉を紡ぐ。
「久しぶりだな、テルミナス。大きな痛手を避けたいので人類に降伏勧告だと? 随分と甘く見られたものだ。それはお前の真意か? お前自身の意見を僕は知りたい」
「……私の考えは、ナイトメアが希求する『答え』に繋がるものだと判断しています。人類は根絶するには惜しい種族。誰もが私のように『ナイトメアと人との調和』を実現できれば、ナイトメアも人類もより高次元に上れることでしょう」
 それは神を信じる信徒のような物言いだった。彼女の中の揺るぎない絶対結論なのだろう。なればこそ翼は鼻白む。
「撤退の為に人類の降伏が必要なのか。そうまでして『高次元』を気取りたいのか」
「何事にも区切りは必要かと。恭順すれば、万が一にも再侵攻はされないのですよ?」
「恭順だと――」
 ナイトメアに奪われ続けた翼にとって、それは最大の侮辱に他ならない。ナイトメアに屈服することは、翼が失った全てのものをこれ以上なく冒涜するに等しい。大切だった人達の笑顔を鮮明に思い出せるからこそ。
 ――そして、『そう』思っているのは翼だけではない。ナイトメアに奪われ殺され壊されて、消えない傷を負った者らは数多いる。ゆえに翼の怒りは正当だ。人として当たり前なのだ。奪われた者全ての怒りの代弁だった。
 いっそうの殺気を放つ翼であるが――それをさりげなく手で制したのはネムリアス=レスティングス(la1966)だった。
「折角の良い機会だし……俺ともおしゃべりしてくれよ、テルミナス」
 話を受け継ぐように、ネムリアスはテルミナスへ言う。人間の形をした悪夢の、真の意味では感情のない眼差しが向けられた。
「覚えてるか? ナイトメアになっても、どうやって人の意識を保っているんだって前に質問したよな。その答えを聴きたい」
 あの時はクラインに止められたが、と静かに待機しているエルゴマンサーを一瞥する。
「とはいえ、そんな方法なんて分からないんだろ? 知れば人類が降伏しにくくなるしな」
「いいえ」
「……『いいえ』?」
「人の意識を保っているのではなく、『人間として生きていたテルミナス』の人格を限りなく忠実に再現しているのです。……とはいえ、その限りなく本物に近い再現を、本人と呼べるかどうかは哲学的な問題になるでしょうが」
「さながらスワンプマンだな」
 そう呟き、ネムリアスは他のライセンサーから集められた質問をついでに投げかける。
「じゃあ、ナイトメアになってから変わったことは何だ?」
「……いろいろなことが変わりすぎて。『全てが変わった』としか言いようがありません」
 しかしその『変生』は素晴らしいものだと、テルミナスは聖歌でも謡うような口ぶりで続ける。
「今一度、人類の皆様に勧告します。――どうか降伏を。『泥沼の戦乱』と『安寧の恭順』、素晴らしいのは後者であることは明白でしょう?」
「――否」
 凛然と、粛然と、声が響く。
 テルミナスが見やる先に――シオン・エルロード(la1531)がいた。彼が指を鳴らして指示すれば、小隊『エルロード』の面々が、ニュートラリダ、クライン、テルミナスに資料を手渡す。
「矛を収めるに相応の戦果がいるはずだ。沈黙させるに十分な材料を教えてくれ」
 資料に記されていたのは、大規模作戦における人類とナイトメアのありとあらゆる統計データ。そして人類が近年取り戻した領土の状況を記したデータだった。
「既に多くのインソムニアが陥落し。数多のエルゴマンサーを打ち倒し。人類の対ナイトメア戦線は劣勢からは脱却したことがそのデータから分かるだろう。未だ我らが劣勢ならば、なるほど降伏は魅力的なカードだったろうが――今は違う。違うのだよ」
 ゆえに妥当なるは降伏ではなく停戦に向けての交渉だ。シオンは毅然とそう告げる。
「停戦に向けて何が必要か。過激派の撃退、停戦への内部工作であると我々は考える。……我々は未来を見据えているのだよ。同じ目線に立ってもらわねば、そも対談など成り立たん」
 シオンのその言葉に――ニュートラリダはかすかに含み笑った。
「理想論だ。ゆえに難しい」
 直後である。

 ――ドン、とテーブルを拳で叩く音。


銀龍
「どこまで愚弄するつもり」
 銀龍(la4012)は握りしめた拳を怒りに震わせながら、ナイトメア共を睨め付けた。
「あなた達のやっている事は迷惑なのよ。とっとと帰んなさい。……あなた達は一体なんなの? 突然やってきて、勝手に奪って、この世界をめちゃくちゃにして、今は撤退か抹殺かで意見が割れている? 果ては降伏しろ?」
 ふざけるな――銀龍は柳眉をつり上げる。
「そっちが去らないなら、私達は徹底的に抗ってやる」
 銀龍をはじめ、徹底抗戦を心に抱く者は多い。
 一方で……シリウス・スターゲイザー(la2780)はニュートラリダへ静かに問いかける。
「君達は殺さなければ糧を得られないのか? 趣向として殺すのか? どちらだ?」
「糧を得る過程でどうしても殺めてしまう、が一番正しいかな」
「……極論、殺さずに今と同等の進化エネルギーを得られるなら、君達は我々と共存する気はあるのか? 私は死にたくはないからね。そういう道があるのなら全力で模索するさ。駄目なら抵抗するだけだよ」
 シリウスと同じ疑問を抱く者は多かった。

 ――ナイトメアは、精神捕食をやめられないのか。何か代用はできないのか。

「精神捕食をやめた時点でナイトメアとしての目的が喪失されるゆえ、『やめる』という概念がそもそもあり得ないのだよ。
 その上で別のもので代用できないかどうか。結論、あれば提示しているさ。そしてお前達の中には『精神を提供してやってもいい』と考えている者も少なからずいるだろうが――」
 ニュートラリダは自らへ友好的な眼差しを向けている者らをひとりひとり見渡し、言葉を続けた。
「――我らの糧になっても良いという者らを、果たしてナイトメアに憎悪を覚える人間の派閥が許すかな? 『レヴェル』『裏切り者』などと駆逐されてしまうのではないか? 人類に降伏を促すクラインを、フォン・ヘスが赦さぬように」
 ニュートラリダは目を細める。クラインは無言のままで肯定を示していた。沈黙の後、「今ここに至っての共存は困難でしょう」と付け加える。もし共存に至れるとしても、ナイトメア憎しの人類の扱いについては、人類がどうにかしろとでも考えているのだろう。

 ――オリジナルはまるでこの状況を楽しんでいるかのよう。人間達の『想い』が描く七色を味わうかのよう。

 ニュートラリダの様子にハシモフは不快気に鼻を鳴らしつつ――気の進まない質問をなげかける。ライセンサーから集められた問いの内の一つだった。
「お前達ナイトメアは、どのような感覚で我々を食らうのか。罪悪感などはあるのか?」
「罪悪感? なぜ罪を感じる必要があるのかそもそも理解できぬ」
 少女の姿をしたそれは、指先でジンジャーマンクッキーを一枚摘まんだ。
「これを」
 ぷらんと掲げ、
「こうすることと」
 口に放り、人間のように噛み、砕き、飲みこむ真似をして、
「――全く同じだ」
 まるで事務的に、平然と。

 ……シン、と会場が一瞬、静まり返る。

「ン? いや、チョット待ってもらえます?」
 イリヤ・R・ルネフ(la0162)が挙手をして、不思議そうに瞬きを一つした。
「人間を捕食するコトは家畜を食らうようなモノだ、と。それはナイトメア共通認識?」
「そうだな、基本的にはそうであろう」
「……なのに『抹殺』を企てている派閥があるんですよね? ソレって、いわゆる地球人で言うトコロの、牛や豚を絶滅させようとしているのと同じってワケで――大分ヒステリックじゃない?」
「ほう?」
「自分から喧嘩売って、チョット痛い目を見たぐらいでムキになるの、どーなんです……? 絶滅戦争は、エルロードさんトコが資料付きで説明して下さいましたが、ナイトメア陣営も被害甚大はまぬがれ得ない。そこまでする価値あります?」
 イリヤの疑問に、桐生 柊也(la0503)がニュートラリダへ言葉を重ねる。
「立て続けですが僕も質問、いいですか? 単純な疑問なんですけど――」
「申してみよ」
「イリヤさんも言う通り、人類を滅ぼすっていうのは捕食も諦めるってことになりますよね? それってナイトメア側には何の得になるんでしょうか。地球には異世界間を渡る技術がないんだから、これ以上僕らを相手にしたくないのなら、戦わずに撤退すればいいだけ――それが被害も出ないし合理的な手段だと思えるのだけれども」
 でも『違う』。柊也は釈然としない理由を言葉に変えて、問いかける。
「……何か、強くなりすぎた存在に怯える訳があるの?」
「――、」
 答えたのはクラインだった。
「怯える――ですか。確かに私は、あなた達に脅威を感じている部分があります。フォン・ヘスに関しては『食糧』が叛逆しようとする『驕り』へ怒りがほとんどのようですが。ザルバ様は……どうでしょうか。あの方はとても読み取りづらいので。尤もフォン・ヘスに異論を唱えない辺り、むべなることでしょう」
 クラインは静かに言い終える。その上で……と、ニュートラリダが続けた。
「確かに……お前達の言葉を聴いて、我も抹殺はいささか過激な手段であるなあと認識した。――このような状態、我々にとって前例がないのだよ。ゆえに我々は危機感というものとは無縁だった。だから……そうだな、」

 誇れ。お前達は三千世界において初めて、我々を震撼せしめた種族である。

「『恐いから殺したい』。ははあ、至極シンプルなアンサーですネ」
 であるならば非効率な抹殺を唱える理由も分かるというもの。イリヤは肩を竦め、柊也は複雑そうな顔をした。『恐いから殺したい』のであれば、なるほど絶対服従以外に争いを回避する手段はないだろう。そして、人類は決して服従などしない。
 ニュートラリダはナイトメアという種族を群体的と表現した。仲間意識というものが希薄な彼らは、人間抹殺の為の戦争で発生する犠牲を『犠牲』とは思わないのだろう。
「もしも人類抹殺が決定したとして。お前達ナイトメアに従うレヴェルも皆殺しにするのか?」
 ハシモフはライセンサーからの疑問をなげかける。「そうなります」とクラインは平然と答え――傍らで、テルミナスは少し眉根を寄せるような表情を見せた。『人類救済政府』の名はダテではないということだろう。歪んではいるが。
「さて」
 クラインは言葉を続ける。
「停戦に向けては、『過激派の撃退』『停戦への内部工作』とあなた達は言いましたね。つまりはフォン・ヘスを抹殺さえすれば、丸く収まるのではないか、と。その上でもう一度、ニュートラリダ様の『理想論ゆえ難しい』との御言葉を引用します。
 確かにフォン・ヘスを孤立させる形で挑めば、あなた達にも勝ち目はあるでしょう。しかし、彼は無知な獣ではありません。フォン・ヘスに賛同する個体も少なくはありません。ゆえに、そのような理想的なシチュエーションにすることはほぼ不可能です」

 ――他に聴きたいことはあるか?

 ニュートラリダは人間を見渡す。そうすれば、幼馴染の制止を振り切るように――「はい」とアリア・クロフォード(la3269)が挙手をする。
「もし、もしもの話。もしあなた達が撤退するとして、それで……その後はどうするの?」
 それはアリアだけではない、幾人かが危惧している事態。

「この世界から逃げたら、次は別の世界を食べに行くの?」

 きゅっと拳を握り込みながらの少女の問いに。
 悪夢は簡潔に、こう言った。「そうだ」と。
「……だったら、ナイトメアはここで私達が倒すよ。私は我儘だから守りたいんだ、全部。この世界の大切な仲間も、元の世界の家族も、別の世界の誰かも」
 真っ直ぐだった。そして、同じ想いを胸に抱く者は独りではなく。
「……、」
 クラインはかすかに目を細めた。光を直視するかのように。あるいはそれを疎むかのようにも見えた。
「降伏はしない、ただし我々の撤退も許さない、と」
 目を伏せ、開く。感情のない目で、クラインはこう告げた。

「であれば……我々はもう、どちらかが滅ぶまで戦う他に、道はないようですね」

 それは真っ暗でがらんどうで、断頭台の刃のような冷たさのある言葉だった。
 ――と、その時である。
「お茶会はこれまでだな」
 ニュートラリダがおもむろに立ち上がる。
「フォン・ヘスがこちらの動向を探り始めている。勘のいい子だ。ザルバも何か準備をしているようだぞ。というわけで我々はバレる前に撤収するかの。人間、興味深いひとときだった。こうも退屈が紛れたのはいつ以来か」
 言いながら、それはひょいとクラインとテルミナスの手を掴んだ。
「ではな。がんばって滅びないようにしてくれ」
 これまで表情がほぼ動いていなかった彼女は、一瞬だけあまりに無邪気な笑みを浮かべて。
 ナイトメア達は――幻のように掻き消えた。同時にウィーンに徘徊していた下位ナイトメアらも『消失』したと、警備部隊からの連絡が届く。

 かくして異様な会合は唐突に幕を下ろす。
 これは終焉の始まりか、それとも。




 2028年から2030年にかけての、 ナイトメアによるアフリカ侵攻。
 その戦いにおいて、特に南アフリカは『焦土』と化した。とてもとても大きな火焔が、全てを蹂躙したのだという。
 ――かくして、焼き払われた南アフリカの地はどうなったか。
 今、そこにはインソムニアが君臨している。未だに壮絶な高温に包まれ、大地が燃え、焼け果て、あらゆる生き物の侵入を阻む死地となっている。

 その魔境の名は――『完全焦土』。


<シモン・ルードル>
「南アフリカを蹂躙した巨大な火焔こそが、かの地に君臨しているエルゴマンサー『ゴグマ』ではないかと推測されている」
 レオポルト社『騎士団』団長、シモン・ルードルは、SALF宛の映像資料の中でそう言った。かの組織はかねてより、完全焦土の監視や流れ出たナイトメアの対応等を行っていたのである。
「ゴグマの立場および性質は『侵略兵器』と思われる。人間の支配や精神搾取を目的とした他のインソムニア――例えばニジェールインソムニア『フォガラ』や南陽インソムニア『酒池肉林』――と違って、完全焦土にはインソムニアとして最低限の機能しか備わっていない。インソムニアというよりは、ほとんどゴグマの根城と形容した方がいい」

 そう、『超攻撃的』なのだ。2028年から始まった侵略が一段落した後、ゴグマは休眠に入ったと思われる。破滅的な攻撃性を持つ代わりにエネルギー消耗も激しい個体と予想される。
 そんな攻撃性固体が再び目覚めればどうなるか? ――奪還が叶ったばかりのアフリカに、もう一つの焦土が生まれる危険性がある。

「激しい灼熱に包まれた完全焦土は、並大抵の適合者でもシールドがあっという間に燃え尽きてしまう。だが……ライセンサーが熟練した今ならば、そこに立ち入ることができるだろう。
 ……口惜しいことではあるが、我々騎士団のみでは戦力不足だ。そこでSALFに協力を仰ぎたい。まずは完全焦土の調査、ゴグマの情報収集。アフリカ完全奪還の為にも、我々騎士団は諸君への協力を惜しまないつもりだ」
 そう言って、シモンはカメラの向こうの君達に、騎士団を代表して一礼を捧げた。




ザルバ

<ゴグマ>
『起きろ、ゴグマ』

 完全焦土深奥、燃え滾る溶岩の中、眠り続ける怪物は声を聴いた。強いて人間の概念で説明するならば、それはテレパシーの類であった。
 かくして『ゴグマ』は緩やかに意識を覚醒される。
『ザルバ? どうした』
『起きろ。私のところへ来い』
『戦うのか?』
『お前にできることはそれ以外にあるまい』
『そうだよ。そして君は戦いが一番苦手だ。すごいよねぇ、僕らの中で一番弱い君が司令官なんて……僕が寝てる間、ディードにいぢめられなかった?』
『ディードは死んだ。それを殺した存在との戦いが控えている』
『ああ……そうなんだ』
『コアはそちらで捕食して力を補うといい。もともとお前の再起動用のモノだ』
『わかった。まだちょっと眠たいけどがんばるよ』
 ゴグマは身を起こした。ナイトメア種の中では規格外めいた巨体は、それだけでまるで火山噴火のように周囲を赤々と染め上げる。
『道中になんか居たらどうしたらいい?』
『好きにしろ。ただ道草を食いすぎるなよ』
『了解』
 そう答えた怪物は、移動用にその身を『人間』と類似した形態へと擬態させる。確かニンゲンってこんなんだっけ、と地球上で見た兵士のうろ覚えの再現だった。
 そして彼方の空を見やって――怪物は火焔を纏い、飛び上がる。

『了』
(執筆:ガンマ
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)

過去のストーリー


 アフリカではインソムニアが破壊され、中国ではこれから決戦を迎えようかという頃。
 ザルバ、フォン・ヘス、そしてクラインの三人は、オリジナル・インソムニアを離れ、とある場所を訪れていた。

 ナイトメアの本拠――”ホーム”。

「…………」
 三人ともに、表情は険しい。
 その中でも強いて言えば一番平時に近い精神状態なのはクラインだ。とはいえ、彼女も冷静なのかというとそうでもない。
 これから自分たちはどうすべきなのだろうか。
 ここに来るに至った経緯を思い出し、彼女は思考に耽り始めた。


 インベーダーとの戦闘は、結果的にナイトメアの人類への見方が大きく変わることになった。
 要塞での戦闘においてディードと激突する役回りはライセンサーに任せたものの、ザルバもフォン・ヘスも、彼らが独力でディードを倒すなどとは思ってもみなかったからである。傷をつける、疲れさせることくらいはできるだろうから、そこを突けばいい、くらいに考えていた。二人よりはライセンサーの力を評価しているクラインさえも、実際にこうなってみると驚きが大きい。

クライン
 人類を『脅威』とする認識が三人の中で一致したあとで起こったのは、議論である。

「奴等は抹殺すべきだ」
 真っ先に結論を主張したのはフォン・ヘスだった。
「『食糧』に過ぎない、いずれは熟したところを我々に捕食されるだけだった役目を大きく逸脱している。これ以上のさばらせておくわけにはいかない」
「……いえ、撤退すべきでしょう」
 対し、クラインは撤退を説く。
「インソムニアをいくつか壊されたと言っても、我々が居る限り戦力『だけ』で見ればまだナイトメアが優勢でしょう。ただ、彼らはそういった状況をここ暫くの間で何度も覆してきた。今の状態で潰そうと動いたところで、今度は根元……つまりザルバ様のところから足元を掬われる可能性もあります。そしてその可能性は、恐らくどんなに対策をしても決してゼロにはできません」
 念を押すように主張するクラインを、フォン・ヘスは軽蔑するような目で見た。
「怖気づいたか、クライン」
「状況から客観的に判断をしているだけです」
 クラインも負けじと静かに睨み返したところで、
「……お前たちの意見は分かった」
 それまで黙っていたザルバが口を開いた。
「クラインの言うことも一理ある。『今のまま』で人類を潰しにかかるのは危険だろう」
「では」
 クラインは少し胸を撫で下ろしかけたけれども、ザルバの言葉はそれだけでは終わらなかった。
「だが、人類をこれ以上つけ上がらせるのは納得がいかない、というフォン・ヘスの言う理由もまたナイトメアとしては当たり前のものだ」
「……つまり?」
「……一度”ホーム”へ向かう。今回はお前たちも同行しろ。抹殺か、撤退か。その判断も『オリジナル』とともに決定し、もし抹殺であれば時期尚早だがホームから援軍を呼ぶ手筈も整えよう」


 『オリジナル』――オリジナル・ナイトメア。
 その名の通り、ナイトメアがナイトメアとしてのアイデンティティを確立した時に存在した個体である。その数は一ではない、ということしかクラインは知らない。彼らは常に”ホーム”に居るけれども配下のナイトメアの前に姿を表すかどうかとなると非常に気まぐれで、ザルバでさえも恐らく全員のことは把握していないという。
 彼らの意見を仰ぎ、人類に対しどういうアクションを取るか決定するとは言うものの、正直自分にとっては分が悪い賭けであるという認識がクラインにはあった。
 ここで軽々しく撤退を進言してくる精神性なら、ナイトメアは今ここに至るまでの発展を遂げていないはずだからだ。
 
 ”ホーム”は重力などといった概念は曖昧だ。歩を進める床はしっかりとしている一方、壁のない周囲は岩石の残骸を始めとし、未だに成分も不明である物体が浮き上がったり沈んだりを繰り返している。その中で、三人が進む道だけは座標が固定されているかのように定まっていた。
 道の先は行き止まりだったけれども、三人が立ち止まるとともにその眼前にいくつもの光が生じ――やがてそれは、それぞれ『ナニカ』の形を象った。


 一方、SALF本部。
 長官の執務室の一つ下のフロアにある会議室で、一つの議決が執り行われた。
「では次の作戦目標を、オリジナル・インソムニアの破壊とすることを決定事項とする」
 この会議の議長でもあるエディウス・ベルナーは、そう告げると目を伏せた。

 まだインソムニアは残っているものの、既に二年前の半分以下の数にもなった。
 ここのところはメガコーポ各社の尽力や放浪者の協力のお陰で新たな戦力となるアサルトコアの開発も進み、何より、おそらくは単体ではザルバ、少なくともフォン・ヘスやクラインに匹敵するであろうディードをライセンサーの力だけで倒したことは、SALFにとって大きな確信となった。
 オリジナル・インソムニアを、攻略できる。
 無論、簡単な話ではない。ディードを倒したということを、ザルバやフォン・ヘスも重くは見るはずだ。そうなると警戒度も、こちらが攻略の糸口を探る難易度もきっと上がる。
 けれども……タイミング的には、今なのだ。立て続けにインソムニア攻略を仕掛けることが出来ているこの状況から時間が経てば経つほど、ナイトメア的には態勢を整えやすくなってしまうだろう。そうなると、今仕掛けるよりも更に攻略が難しくなる可能性も高い。
 だからSALFは早急に判断をする必要があったし、その認識は誰もが一致していたからこその議決の早さだった。

 作戦目標が決定し、具体的にどのように仕掛けていくか――という議論が始まった直後、会議室の隅に直立していた秘書がエディウスのところへと歩み寄ってきて囁いた。
「長官、お話が」
「至急でなければならない話か?」
「かもしれません。少なくとも、今までに例のない事態です」
 緊張感を孕んだ秘書の言葉を受け、エディウスは眉間に皺を寄せて続きを促す。
「……話してみろ」
「また放浪者の少女が一人、転移してきたらしいのですが……彼女を追ってか、ナイトメアもついてきているようなのです」
「なぜその少女を放浪者と判断した?」
 放浪者かナイトメアかは、転移した直後では判断が出来ない。いくつかのステップを踏んで初めて放浪者と確定するのだけれども、ナイトメアもいる、という状況で少女を放浪者とするのは少しばかり無理があるのではないか。
 そう考えての質問に、秘書もまた険しい表情で答えた。
「どうやら、気を失っているようなのです。もしかしたら追われていたところまとめて転移したのかも知れません」



(執筆:津山佑弥
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)


 『オリジナル・ナイトメア』ニュートラリダの地球への襲来。
 いや、本人からすればもう少し穏やかな『訪問』という形であるらしいけれども、何にせよSALFにとっては驚愕を禁じえない報せだった。

「一枚岩ではないのはインベーダーがいたから分かってはいたが……」
「まさかナイトメアにも『親』が居て、その親の中でも考えが割れてるってのは驚きもんだな」
 上がってきた一連の報告を受け、エディウス・ベルナーとシヴァレース・ヘッジは口々に漏らす。
「でももっとびっくりなのは、クラインだけが撤退を進言したらしいってことじゃないですか」
 そう言うのはリシナ・斉藤である。
「それだ。ザルバやフォン・ヘスの今の考えもまだはっきりとはわからんが、今になってそんなことを言い出してるのもナイトメア的にどうなんだ?」
「日和った、とか思われるんじゃないでしょうか……」
「だが、件のニュートラリダはその考えに興味を持って地球にやってきたという」
 エディウスは悩ましさが全面に出た面持ちで腕組みをする。

リシナ・斉藤

<ニュートラリダ>
「……『ナイトメアとは何なのか、次にこの星で何をしようとしているのか』か……戦闘でなく対話で聞けるというなら、乗らざるを得ない。場を至急手配しよう」

「それはよかった。ライセンサーもだが、お前もなかなか話が分かるようだ」

「!?」
 思わぬ反応に、その場に居た全員が声のした方向――扉の方を振り向くと。
 鮮やかにグラデーションのかかった紫の髪の少女が、余裕の笑みでそこに立っていた。
 言うまでもないことだけれども、長官室はSALF本部内でもトップレベルのセキュリティである。ヘッジや助手であるリシナ、ごく一部の職員、それからメガコーポの社長あたりは生体認証で通過できるけれど、逆に言えばそれ以外は色々な確認が必要だし、無断侵入であろうものならそれはもう物凄い警報が鳴る。以前にベースを襲撃された時には切っていたけれども、それは意図的な話だ。
 ところが、目の前の少女はそんなものまるでなかったかのように颯爽と現れた。そもそもベースに入ったという報告すらなかったというのに。
 ついでにいえば、この場に居てEXISを自分で操れるのは、元々ライセンサーだったリシナ一人である。
「…………!」
「そう構えるでない。敵対するつもりはない、と報告でも聴いているであろう?」
 緊張する面々に対し、少女――ニュートラリダは、からからと笑った。
「ただ直接確認しに来ただけだ。ライセンサーの組織のトップが、一体どういう判断をするかを、な。ここにクラインたちを呼び寄せるつもりもない」
 それにしても……。
 距離やセキュリティをなかったことにするオリジナル・ナイトメアの能力の高さには、背筋が凍ったエディウスたちであった。

 流石に対話の席を準備する段取りを聞かれたくはないので、一旦ニュートラリダには退室……というか本部ではないところへ移動してもらった。
 とはいえ、クラインたちに内密に連絡を取るにあたっては彼女の協力は必要不可欠らしく、結局色々と決まった後、再び彼女を呼ぶことになったのだけれども。


 ところで、SALFよりももっと愕然とした者たちがいた。
 ニュートラリダが言う『自分が地球に来たことを知っているナイトメア』である、クラインとテルミナスである。

「まさかこんなことになるとは思いませんでした」
 移動しながら、テルミナスはクラインに問いかけた。
「クライン様の考えは、ザルバ様やフォン・ヘス様だけでなく、『オリジナル』の方々にもあまり理解は得られなかった、と仰ってましたよね?」
 困惑しているのはこっちも同じだ、という心情を表情に浮かべながらクラインは肯く。
「それには間違いありません。……ニュートラリダ様は確かにあの時、明確な答えを出してはいませんでしたが」

 ”ホーム”に向かい、人類を、地球をどうするかを巡ってオリジナル・ナイトメアの判断を仰いだ。
 結果はおおよそ予想通り、である。捕食対象を前に……いや、既に捕食ではなく抹殺すべき対象となっていたけれども、兎も角撤退は許されない。そんな雰囲気が、オリジナル・ナイトメアの間からも漂っていた。
 あくまで地球の扱いに関する最終的な決定権はザルバにある為、その場で結論は出なかったけれど、クラインにとっては望むものではない方向になるに違いない……と思った矢先に届いたのが、秘密裏に行われたニュートラリダからの連絡だった。
 『地球の人類、特にライセンサーに接触する。その結果次第ではお前たちの言い分を汲んで、ライセンサーと激突する以外の道を作る機会を作ってやろう』
 ……という内容の片道通信が届いたのは、クラインたちが地球に戻った後、ニュートラリダがナイトメアを伴って地球に降り立つ直前だった。ちなみにこの後、ニュートラリダは本人曰く事故で一時的に気を失うのだけれども、それはクラインの知るところではない。
 連絡を受けたクラインは、ひとまず速やかにテルミナスへこのことを伝えた。第二の通信が届いたのは、その少し後。
 『機会は作ってやったぞ。我も居てやるが、最終的にどうするかはお前たち次第だ』
 そう短いメッセージの後、とある場所に来るようにと伝えられた。どうやら対話の為にSALFから指定された場所であるらしい。
 SALFは幹部の他にライセンサーも交渉に参加する為、数の意味での公平を期すならナイトメアを連れてきても構わない。ただし、ライセンサーがEXISを装備することも含めそれはあくまで『保険』であり、前提としてお互いに一切の戦闘行為を禁止する。それが、交渉にあたってのSALF側から出された条件だった。
 ナイトメアの中でも特にライセンサーに脅威を感じているクラインにとっても、人類を次なる高みにもっていきたいと考えているテルミナスにとっても、断る理由はない。特に返答を返す手段もないため、指定された場所へとそのまま向かうことにした。
 もちろん、ザルバやフォン・ヘスには伝えていない。少しアフリカの様子を見てくる、と偽の連絡をしている。
 ニュートラリダの通信は、クラインにだけ送ってきたということに意味があるのだ。そう思ったから。


「とはいえ、いきなり長官を出すわけにもいかねえんだよな」
 対話――或いは交渉の席が決定し、ニュートラリダを経由してクラインたちにも連絡がいった少し後の、長官室。
 ソファーに座って足を投げ出し、天井を見上げながら面倒そうに言うのはヘッジである。ちなみに今はニュートラリダも、リシナも居ない。前者は物見遊山をしにさっさと対話の会場に向かったし、後者は少し仕事してくると言って席を外している。
「クラインはどう思ってるかわからんが、テルミナスからは相当に敵対視されてるはずだ」
 ヘッジの指摘に、エディウスも「だろうな」と返すしかない。
 思えば昨秋のウィーン支部、そしてグロリアスベースを巡る一連の襲撃の中で、テルミナスは明確にエディウスを処分する宣言を行った。しかもその襲撃はライセンサーの機転もあってエディウスに危険が及ぶこともなく終わったのだから、彼女の中にわだかまっている部分はあるはずだ。
 いくら戦闘を禁止したとはいえ、エディウス本人をその場に出したとしたら何が起こるか分かったものではない。遡れば、かつてのノルウェー外交官『ザルバ』も、交渉の場に出向いた結果捕食されたのだ。
 なので、代役を立てる必要があった。本部に居て相応の発言力を持っている代表格はヘッジだけれども、彼もまた研究者としてSALFになくてはならない存在だ。直接のヘイトを買っていないとはいえ、簡単に矢面には出せない。
 どうしたもんか。一瞬場の空気が重くなりかけたところで、エディウスの端末に通信が入っていることを示すアラームが鳴った。
 送信源は――SALF北方部隊長ハシモフ・ロンヌス。

『博士の助手から、ナイトメアとの交渉の場に行ける人が欲しい、と連絡があった』
 モニター越しに二人の顔を見るなり、ハシモフはそう口を開いた。
「あいつ、『仕事』ってこのことか」
『ちょうど俺の管轄は手が空いたところだったしな。長官が出るのがマズい、となれば出番が回ってくるだろう』
 助手――リシナのやることに舌を巻いたヘッジに対し、ハシモフは当然と言わんばかりに肯いた。
 クラインやテルミナスとは、直接遭遇したことは(少なくともテルミナスとは)ないはずだ。けれども、ロシアや中国のインソムニアの破壊作戦を率いた人間となれば、エディウス程ではないにしてもクラインたちの相手として交渉のテーブルに立つ資格は十分にあると考えられるだろう。
『で、俺はライセンサーを連れて交渉に行ってくれ、としか聴いてないんだが。具体的にどこに行けばいい?』
「ウィーンだ」
 これにはエディウスが答える。
『ウィーン……? ああ、話にしか聴いていないが、確か人類救済政府の幹部を勾留しているんだったな』
「そうだ。ウィーン内の具体的な位置を知らない以上、それもテルミナスの攻撃を抑える抑止力になるはずだ。カルディエ・アーレンスは適合者ですらないから、何か起こったらそれこそテルミナスにとっても『一大事』になりかねん」
『人質のようなものか』
 ハシモフの身も蓋もない表現に、エディウスは少しだけ苦い顔をした。
「実際、手を出されたらたまったものではない戦力だ。そう言われても仕方ないところではある……」
『まぁ、とりあえず任せておけ。現場のライセンサーと直接話す機会は長官より多かったし、意見の取りまとめやら共有やらは何とかなるだろう』
「……すまない。頼んだ」
 エディウスの言葉に軽く礼を返し、ハシモフは通信を切った。

(執筆:津山佑弥
(文責:WTRPG・OMC運営チーム)
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