空から来るモノ マスター名:島津祥光

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

●襲来


「くそ、またナイトメアか」 

 東京に無数のナイトメアの襲来を示すアラーム音が、ひっきりなしに鳴り響く。 
 東京への大攻勢が開始されてよりずっとこの状況。

「今度は何処から──空からか」
「レーダーに出せるか」
「やってみます。こ、これは」

 管制官が表示した画面を見て、室内の誰もが凍り付く。

「データ照合。クロウタイプのナイトメアが接近中。数はおよそ100。それらがおよそ20ずつの郡れで来ます」
「100だと? それで迎撃は間に合いそうか?」
「東京各所でのナイトメア迎撃の為、今すぐに全ての迎撃は厳しいです」
「大至急、手の空いているライセンサーに連絡しろ。まずは第一波を防がねばならん」
「了解しました」
「平行して第二波以降の為のライセンサー達も集めろ。緊急だと伝えて何としてもかき集めるんだ」
「了解」



 続々と届くナイトメア襲撃に、管制室のみならず、ライセンサー達もまた混乱の渦中にあった。

 そして嘲笑うかのように一本の通信が入る。いや、割り込んだと言うべきだろう。声の主は遊戯にでも興じるかのような調子で話を切り出す。

 ──やぁ、SALFの皆々様。私はマウストラップ。エルゴマンサーの一人だ。
 今回の攻撃にあたり、陽動を仰せつかった、言うなれば下っ端さ。
 今、そちらの対空監視網に映っているカラス共は私の送った尖兵。急がないと続々と襲いかかる事だろう。
 まぁ、私としては烏共がどうなろうとも気にはしない。やることは一応やった訳だしね。では健闘を祈るよ。せいぜい楽しませてくれヒューマン達。

 それから数分後。迫るクロウタイプの迎撃を受け持つライセンサー達に、女性オペレーターからの通信が入る。

 ──まず初めに。今回の皆さんの任務はあくまでも敵集団の第一波の撃退です。総数100の相手とまともにやり合っていては今後の作戦行動にも支障をきたしかねません。迫ってくるのはクロウタイプ。カラスの形をしたナイトメアで、データベースによれば個々の強さは1ですが、群れの場合、危険度は2に上がります。
 クロウタイプの群れには必ず司令塔の役目を持つリーダーが帯同しており、それさえ撃破出来れば、あとは文字通り烏合の衆に過ぎません。現在の状況は良くありません。ですが皆さんなら必ず成功出来るはずです。任務終了をお待ちしております。

 オペレーターの通信が途切れるのと同時に、ライセンサー達は地上へと出た。 空へ視線を向ければ、こちらへと迫る黒い影。その中で目を引く一羽の赤い個体。

「ケシャアアアアア」

 およそカラスらしからぬリーダータイプの鳴き声で、黒い群れが動き出す。敵との対決は間近に迫っていた。


● 目的 先発して迫るナイトメアの第一波の撃波。第一波の撃破に成功すれば第二波以降には増援のライセンサー達が間に合うので問題ない。なお、敵は真横に並んで迫るので、リーダータイプを倒す際に、前後の守りなどを崩すなど考える必要はなし。


● 敵ナイトメア カラスに擬態したナイトメアでクロウタイプと呼称される。数は20羽。  攻撃手段は上空からのくちばしによるついばみ。常に飛び回っている為、比較的回避能力は高い。


● リーダー 司令塔役の個体であり、特徴として、一つの獲物を群れで執拗に攻撃する。
 撃破すると、群れは途端に混乱状態に。攻撃及び回避行動を取らなくなる事が判明している。
 見分け方は頭部が赤く染まっている事。他のクロウよりも敏捷性が高い。攻撃手段はついばみ以外に口から消化液を放つ。
 戦闘処理上、5羽で一つの敵として扱い、リーダーは4羽の通常タイプとリーダーの混合とする。


● 状況 迫る敵の総数は100羽。第一波の迎撃に手間取ると後続が来襲する。出来るだけ早急に先発部隊を撃破しなければならない。  なお、場所は東京都心から離れた郊外。既に民間人は退避を完了しており、ライセンサーが全力を出しても人的被害は出ない。


カラスを模す、か
さて、態々地球の生物に擬態する理由が気になるところだが
──まあ、良い
降りかかる火の粉は払うまでだ
些か物足りなくはあるが、慣らしにはなる

>行動
わかり易く統率個体が在る
ならばそれを狙うまでだ
とはいえ……フォースアロー、だったか
放てる矢の数は5つ。無駄打ちは出来んな

集団として他の仲間と固まって行動
率先して狙われぬよう後衛・側面(可能であれば視界の利く右側)に位置取り、敵全体の動きを観察
癖や特徴的な事前動作などが無いかを探る

最初は目立たないよう防御と観察に集中
味方より行動を遅らせ、味方の牽制により統率個体に隙が出来たら盾を生命の書SPに持ち替えてフォースアローを撃ち込む
他、観察により攻撃する直前・直後に隙が見いだせればそこも狙う

「───穿て」

統率個体に隙がない場合は盾を持ち、己の居る側面から己か後衛が狙われた時のみ防御
統率個体以外は極力無視するが、味方被害が大きくなりそうな場合はフォースアローで露払いをする
 「まったく、敵が多くて鬱陶しいですね。さっさと片づけてしまいましょう。」

【目的】
・依頼を解決するため、敵ナイトメア第一波の全滅を目標とし、まずリーダーの撃破を狙う。
・PC自身は早く仕事を終わらせ、帰宅しだらだらしたいと思っている。

【準備】
・作戦があれば事前に打ち合わせ、それに逸脱しないよう行動する。

【行動】
・戦闘では、敵に攻撃することを重視する。また、混戦でもリーダーの位置を把握できるよう常に声を掛け合う。
・攻撃の際には、リーダーにはミネルヴァP8000、フォースアローを使用し遠距離攻撃を行う。リーダーに攻撃が当たりづらいようならミネルヴァP8000を使い敵の回避を牽制し、味方の攻撃を支援する。
・敵に接近・攻撃された際にはデュエルナイトソードSPで反撃する。
・敵から集中攻撃を受けた場合には攻撃より回避を優先し、攻撃は接近してきた敵への反撃にとどめる。

・敵に攻撃を回避されないよう、動きをよく見て戦う。
 「早く倒れてほしいんですが…!」
・戦闘終了後には可能であれば敵の第二波の状況を確認し、オペレーター等と情報共有を図る。その後速やかに帰宅準備をする。
基本的にジュリア殿に付き行動
事前に距離3ほど離れたところに、持ってきた純金のフィッシャー像を置いておく。
敵が4以上離れた場所にいる場合はクーパーでリーダー以外を狙撃しつつ牽制。
3以上の場合は弓で牽制。
一匹でも2以内に入った場合は刀に持ち替えジュリア殿護衛として動き、攻撃させないように迎撃に努める。最悪の場合は盾を出して身を挺して庇い、ダメージを受けたらヒールで回復する。
■目的
ナイトメア第一波の撃波さ。

■行動
引き付け役は他にいるし、ボクは牽制しつつリーダー討伐を視野に入れて行動しよう。
リーダーが引き付け役を狙っているようならリーダーを、他の人を狙っているようなら取り巻きを狙い、着実に数を減らしていこう。
「鷹撃ちならぬ烏撃ち……案山子みたいに啄まれないよう気を付けよっか」

初撃は『A&H FD5A』による【ポイントショット】を使い、通常攻撃へ移行する。
弾切れになれば『リボルバーA2』と『オートマチックBD4SP』を交互に使用し、引き付け役へ攻撃が向いているようならリーダーを【フォースアロー】で狙うのも良いだろう。
引き付け役の体力が危うくなりそうだったら『ペンライト』でこちらに攻撃を向かせるのも考えておこう。痛いのは御免だけど、そうも言ってられないだろうしね。
「ガンマン相手に近付くのは……軽率だよ」
何せ的は大きい方が当て易いんだからね。
「これが退魔巫女改めライセンサーとしての初陣ってわけね。やってやろうじゃない」
■行動:基本的には雑魚をいなしつつ、リーダー格の赤頭に対する牽制。雑魚相手にはガードで守りを固めながら降りてくるのを待ち、ついばみを仕掛けてきたらカウンターで拳を頭にぶち込む。間に合わなければガードして、もたもたしているようなら手を伸ばして掴み、そのまま地面に叩きつけて踏み潰し、蹴り飛ばす。攻撃に隙が見えれば【フォースアロー】をリーダーに向けて放つ。が、これはあくまで牽制。わざと直ぐ側の当たらない空間に向けて放ち、リーダーが逃げる方向を制限させて味方が狙撃するポイントを絞るのが目的。リーダーに関しては牽制以外はほぼ味方に任せ、ついばみで離脱にもたついている程度の隙があれば移動攻撃で横合いから思い切り殴りつける。

「これが卜部流退魔術とライセンサースキルを組み合わせた全く新しい格闘術よ!」
【行動】
全体方針として、敵リーダーの個体を優先して狙う。
自身は敵リーダーをスナイパーライフルの射程6に捕えたら、
『ポイントショット』で狙撃を試みる。
リロードの時間を省くため、次ターンからはサブ武器に変更、
オートマチックでの射撃(射程4)か、生命の書を使っての
『フォースアロー』(射程5)で敵リーダーを攻撃する。

敵リーダーを撃破したら、残敵の掃討前にライフルのリロード、
いざという時にライフルを撃てる状態にしてから、サブ武器の
オートマチックや『フォースアロー』で残敵を掃討する。

射程がある分、1歩引いた位置からクロウタイプ全体を見て
リーダーの位置を仲間と報告しあう。残敵の掃討は白兵武器で
戦う仲間が群れに囲まれないように背後や死角を援護する。

第一波の撃退に成功したら、スナイパーライフルを装備し直し、
増援のライセンサーと一緒に第二波に備える。
「鳥型、つまり空からの敵でしょ?なら一番得意な敵よ、そういうの。」

●作戦
敵リーダーを最優先で狙いつつ、邪魔な雑魚を倒して数を減らしながら戦う

●戦闘
敵が離れているならサブマシンガンで射撃、弾が切れたらリロードせずに即座にストックされている別のマシンガンに換装し射撃再開
全てのサブマシンガンの弾が尽きたら一つだけリロード
「弾込めてる暇無さそうね、なら強引だけど物量で押すわ。」
敵がついばみをしてきたらカウンターを狙って槍で薙ぎ払う
近接攻撃時、パワークラッシュを発動する
「来たわね、あたしの本来の間合いに……!」
スキル発動攻撃の際、味方を巻き込む恐れがあるので、範囲内に味方がいる場合は使用せずに攻撃

敵リーダー発見時、味方に連絡
その後、リーダーを最優先で攻撃する行動に移行
その際も基本的には射撃攻撃をメインにして攻撃

●連携
遠距離担当の味方を護衛するように立ち回る
該当者が複数いるので、彼らの近くで戦い常に攻撃に割り込める距離を保っておく

味方が敵を引き付けている間、自分は射撃で攻撃するかリロードに時間を割く
・遠距離攻撃担当として作戦に参加

・行動指針
リーダー狙いで遠距離攻撃を行う
敵に接近された場合、距離を取ることを優先
その際移動攻撃の射程内であれば行い、そうでなければ離れることに注力

・行動
前衛が注意を惹いていることを確認した上で、攻撃開始
ナイトメアが不審な動きをした、ないしは
攻撃が命中しそうにない場合味方に指示を仰ぐ。

戦闘開始後は、後衛に位置し
命中を重視しポイントショットで攻撃、
ポイントショット使用不可の場合、
白兵武器に持ち替え、攻撃を行う。
また、赤い頭部のクロウタイプが白兵武器の射程に入った場合も
白兵武器に持ち替えて、攻撃する。
リーダー撃破後は味方が狙っている対象を攻撃する。

ナイトメア撃破後は、合流するライセンサーに事後処理を任せる。
倒した痕跡等は後々のために回収しようとする。

なお、撃破前後にかかわらず、味方から指揮ないし指示があった場合、
自身の方針を放棄して従うように行動する。




 耳をつんざくような警戒を促すアラーム音に辟易した表情でクレア・ウェン(la0111)は呟く。
「烏型、つまり空からの敵でしょ? なら一番得意な敵よ、そういうの」
 手に握った得物のチャージングランスSPを一振り、空を睨んで息を吐く。
「あたしは、対空部隊の団長なんだからね」

 Ashen Rowan(la0255)は思索に耽る。
「ナイトメアはカラスを模す、か。何故わざわざ地球の生物に擬態する必要があるのか、大いに気にはなるが……」
 ナイトメアは地球外の存在。人類よりも強力であれば、なぜ擬態するのか、と。
「まぁ、良い。降りかかる火の粉は払うまでだ」

 天河 篤典(la1775)は億劫そうに愚痴る。
「まったく、敵が多くて鬱陶しいですね。さっさと片付けてしまいましょうか」
 ブリーティングの段階で既に面倒な事態なのは重々承知していたが、間もなく戦闘開始という段に及び、その重みをひしひしと感じていた。
「まぁ、やるからにはきっちり仕事はしないとね」

 兎月姫 咲矢(la0197)は緊張から、身をぶるりと震わせた。
「大丈夫、問題ない」
 そんな彼女に、五月闇カンナ(la0900)は励ましの言葉をかけた。
「咲矢なら大丈夫だよ、ボクだっている。問題ないさ」
 銀色の髪に赤い目に口元を覆うマスクという出で立ち。放浪者らしく何処か浮き世離れした雰囲気を漂わせる。
「相手は数を頼りに来るだけだから。バンバン撃ち抜いてみせるよ」
 クルクルと愛用のリボルバーを回す彼女はガンマン。咲矢にしてみれば彼女は心底カッコ良く見えた。
「うん、一緒に頑張ろうね」
 完全に不安が消えた訳ではない。だが、目の前の戦いに際しての覚悟は定まった。

「落ち着け。落ち着け私」
 パチンと顔を手で叩き、卜部 未莉亞(la2657)は実戦に際して、気合いを入れていた。
 彼女もまた異世界からの放浪者。戦いの経験こそ相当に積み重ねているのだが、やはり戦いの前は緊張するものだ。そんな自分に喝を入れるべく、言い放った。
「これが退魔巫女改め、ライセンサーとしての初陣ってわけね。やってやろうじゃない」

「もうすぐ敵が来るわね」
「さようですのう。ジュリア殿」
 気を引き締めた言葉を発したのは、ジュリア・ガッティ(la0883)。まるで茶飲み話でも興じるかのような返事を返すのは、呉軍需工廠ト型試作機 利根(la0027)。
 隣のヴァルキュリアへ呆れ気味に、ジュリアは指摘した。
「緊張感に欠ける声ね」
「吾輩は至って真剣そのもの。今回の任務の重要性は重々承知しておるつもりです」
「それにしても、……それは何?」
 ジュリアの視界に入るのは、利根の傍らに置いている木箱。武器の類なら直接装備すればいいのだが。
 問いかけに対して利根はにんまりと意味ありげな返事を返す。
「さて、ちょっとした戯れ、といったところじゃろうか。はて──む?」

 そこまでだった。
 警告音は一層大きく鳴り響き、敵の群れを知らせた。

 クレアが声を張ると、前に一歩進み出る。
「来たわね、皆行くわよ」

 対して卜部は切り返すように一言。
「切り込み役は任せて」

 Ashenは隻眼で敵を一瞥。
「慣らしの相手には充分といった所か」

 天河は周囲に確認する。
「打ち合わせ通りに行きますよ」

 ジュリアは愛銃のスコープ越しに敵を視認。その中の一羽、一際目立つ赤い頭を見やる。
「あれが群れのリーダーね、……狙い撃つわ、援護をお願い!」

 利根は、苦笑した。
「全く鴉風情がガーガーうるさいことじゃな。鳴くなら夕刻に時報代わりに鳴いて欲しいものじゃ」

 五月闇はホルスターに銃を収めると、傍らの相手に向けて言葉をかけた。
「鷹撃ちならぬ烏撃ち、……案山子みたいに啄まれないように気を付けよっか、咲矢」
 兎月姫は迫る敵に息を呑むも、同年代の少女の言葉を受け、一呼吸。
「うん、そうだね。頑張ろう」

 空から来るモノとの対決が始まろうとしていた。





「ケシャアアア」
 赤い頭のカラスの一声で群れは一矢乱れず行軍。
 空に浮かんだ黒い塊は上空から地面へと近付き、ライセンサー達へと迫る。

「まずは様子見といこう」
 Ashen Rowanは、敵の動きを観察すべくその場に待機。

「俺は予定通り動きますんで」
 天河は敵の様子を窺いつつ前に。追随するのは五月闇。
「ボクも出るよ」
 五月闇へ心配そうに兎月姫が一言。
「気を付けて」
 自分には役目がある。だからその場で待機し、手元のロングボウへ視線を落とす。

「やってやろうじゃない」
 ぱん、と拳を鳴らして卜部が飛び出す。迷いのない動きはこれまでの経験か、或いは生来の気質からか。

「じゃ、こっちも動くわ」
「承った。吾輩は仕掛けをせねばなりませぬ故」
 ジュリアは他のメンバーとは異なり、一歩後ろへ。
 利根は傍らに置かれていた木箱を手にするや否や、豪快に前へ投げた。
「────まだじゃ」
 利根の目は冷静にナイトメアとの距離を推し量る。
 仕掛けは所定の位置にある。モノは試し、ではあるが、ナイトメアがわざわざ擬態した生物の性質をも引き継ぐのであれば──試す価値はある。
 そして、時は来た。
「兎月姫殿、今じゃ射抜け」
「──はい、っ」
 利根の声に呼応し、兎月姫がロングボウから矢を放つ。まだナイトメアには届かない、射程外からの一矢の狙う先は──地面に転がるあの木箱。放たれた矢はその上部を射抜き、それを契機に箱全体が壊れて中身を露見させる。

「────ギィ、ギギ?」
 赤い頭をしたナイトメアは最初、敵が意味のない行動に出たと判断した。
 明らかに自分達を狙っていないその一矢が射抜いたのは箱であり、自分達には何の害もない。
 このまま一気に下へと降下して、一人ずつ殺す。それが自分達を送り出したあの方からの命令。
「キィ、ィイイイ」
 狙うべき獲物を見定め、手下達に命令を下そうとしたその時だった。
 突然、眩い輝きが視界に飛び込む。
「──ギギ」
 輝きを発したのは、地面にある金色の像。
 何故そんなモノがあるのか、どうして今、ここに?
 他の個体よりも知性の発達したリーダーなら本来、そう考えが行き当たっただろう。
 像が最初からその場にあれば警戒し、そう疑念を抱いた事だろう。
 だが、それが突然出たのであれば話は別。
 知性は植え付けられた本能の前に押し潰され、誰も彼もがその輝きに注意を引かれる。ライセンサー達を眼前にして、群れは輝く像へと殺到。リーダーとその取り巻きもまた降下しようと、無防備に身をさらす。

「──口火を切らせてもらうわ」
 最初の一撃はジュリアの狙撃。スナイパーライフルZW-1SPを用いた一撃はポイントショットにより、正確に目標へと向かっていく。

「ギギィ、ッッ」
 リーダーが気付いた時には遅かった。ジュリアの放った一撃は、自身を守る取り巻きのクロウを一羽撃ち抜く。一瞬、リーダーの思考が狙撃に集中。他の群れの動きが鈍る。

「奴らの指揮系統はリーダーに一存する。それを狂わさば、群れは烏合の衆と化する。どうやら情報は正しかった、という事か」
 Ashenは一歩下がって淡々と目の前の状況を俯瞰。

「始めようぜっっ」
 天河は更に前へと飛び込み、クロウの群れに肉迫。ミネルヴァP8000で眼前の敵を攻撃。無数の弾丸をクロウへとばらまき、瞬く間に3羽を打ち倒す。
「ボクも続かなきゃ、ね」
 天河に次ぐのは五月闇。天河が銃撃したクロウのグループ5羽の残党へ、腰のホルスターから抜き放ったA&H FD5Aで攻撃。西部劇のガンマンも脱帽する早業、ポイントショットを用いた銃撃で2羽の心臓を貫く。

「みんなやるわね。対空部隊団長としちゃ負けられないわ」
 クレアは敢えてその場にて待機。膝立ちの姿勢でミネルヴァP8000を構えると、銃撃をかける。狙うのは天河と五月闇とは別のグループ。5羽中2羽を撃ち落とす。残った3羽がそこから逃げ出そうと試みるも。そうはさせじと卜部が追撃。
「ハ、アアッ」
 装備したビーストレガースSPによる、走り込みからの左右の浴びせ蹴りで2羽が真っ二つ。まさしく獣の爪か牙の如き猛威を振るい、そのまま着地して残った敵へ。
「カ、アアアアッッ」
「逃がさないっつうの!」
 1羽残されたクロウが逃げようとするのを手で掴んで阻止。そのまま勢い良く地面へと叩き付けると、踏み潰す。

「上々上々。さて、兎月姫殿。吾輩達の手番じゃのう」
「は、はい」
 利根は盾を用意して一歩前に。兎月姫はロングボウでリーダーへと矢を放つ。ジュリアの狙撃により生じた混戦の中、隙間を縫うような狙撃は彼女の腕前が尋常ではない証左。

「ギ、ギイッ」
 だがリーダーはその矢を回避し、考える。自分達が最優先で狙うべき獲物を。周囲で銃を撃っている二人か? 否。では獣の如く暴れる女か? 否。今し方矢を放った娘か? 否。では誰を狙うべきか。

「ケシャアアアアア」
 リーダーの咆哮により、クロウのグループが動き出す。リーダーと取り巻きも同時に動く。彼らは一目散にジュリアへと迫る。

「やはりそう来るか」
「ジュリアさん。気を付けてください」
 利根と兎月姫がクロウのグループの前に立ちふさがる。当たるを幸いとばかりにクロウ達はそれぞれの獲物へ、くちばしで攻撃をしかける。

 利根は盾を全面に押し出して対処。兎月姫は前後左右に動いて回避を試みるも、5羽全ての攻撃は躱せない。腕や足のシールドが削られていく。
 そしてリーダーは、二人の妨害をすり抜けて攻撃。一旦空中で動きを止めたかと思えば、ぐるりと首を360度回転させて、口から紫色の霧状の消化液を吹きかけた。

「──駄目ね」
 ジュリアは回避を断念、シールドを頼みに防御に。
 同時に消化液は周囲の利根と兎月姫にも降りかかる。それぞれに別のクロウの攻撃に対応していた両者に回避など不可。ジュウウウ、と嫌な音がシールドを侵食していく。

「事ここに至っては仕方なしだ」
 Ashenが生命の書SPを手に取り、フォースアローを放つ。リーダーをガードするように飛ぶ取り巻き1羽が側面からの攻撃に全身を貫かれ、落ちる。

 併せてジュリアも動く。
「やられっぱなしは嫌いなの」
 後ろへ転がって間合いを外しつつ、ZW-1SPで攻撃。リーダーの周囲に展開するクロウ1羽を貫く。残されたリーダーに五月闇が銃口を向けた。同時に兎月姫もロングボウで反撃。
「甘く見ないで」
「は、っっ」
 リボルバーの弾丸と空気を切り裂く一矢。だがリーダーはそれらを回避。グギャギャ、という鳴き声には余裕すら感じられた。
「流石にやる」
「早い」

 一方、兎月姫の前にいたクロウ達には卜部が飛びかかる。
「いくわよッッ」
 回し蹴り一閃。横一線並んでいたクロウ達を切り裂く。
「うっわ。蹴り一発とか」
「まぐれだっての」
「ですよね」
 天河は横の光景に苦笑しつつ、利根が妨害したクロウ達へとミネルヴァの引き金を引く。背後からの猛撃の前に、クロウ達は為す術なく蜂の巣と化す。

「やれやれ、無事ですかなジュリア殿」
「ええ、助かるわ」
 利根はジュリアへと近付くと、ヒールを使用。損耗したシールドの修復をする。

「────」
 そんな仲間を尻目にクレアは前へ。その場で身構える。

「ク、ギイイイイ」
 リーダーは不利を察知。逃亡を図るも、それを見逃すライセンサー達ではない。

「穿て」
「諦めろっつうの!」
 Ashenと卜部がフォースアローを放つ。
「大人しく倒れろ」
 天河はミネルヴァで弾丸をばらまく。
「これなら、どう」
 兎月姫もまた矢を撃つ。
 恐るべきは、それら全てを回避してみせるリーダー。いや、違う。

「──今」
「ガンマンの前で不用意だよ」
 ジュリアの狙い澄ました狙撃に、五月闇はオートマチックBD4SPでの銃撃。
 さっきまでの銃撃は云わば陽動。敵への命中ではなく、逃げ場を塞ぐ為の布石。
 ジュリアと五月闇の銃撃はそれぞれ狙い違わず、左右の羽を撃ち抜く。

「ケシャアアアアア」
 その叫びは果たしてどういった意図からか。リーダーはなおも逃げおおせようと穴の開いた羽を羽ばたかせる。

「粘りよるが、詰みじゃ」
 兎月姫のシールドを修復しながら、利根が笑う。

「来たわね、あたしの本来の間合いに──」
 そこにいたのは銃を投げ捨て、チャージングランスSPを構えたクレアの姿。気合い充分、作戦通り今なら誰への気遣いもなく全力の一撃=パワークラッシュを放てる。一方、敵にリーダーも目の前の敵を殺すべく襲いかかる。
「はぁああああああ」
「ギシャアアアア」
 両者は交錯。決着は一瞬。
 片や苦し紛れの攻撃。片や狙い澄ました必殺の一撃。勝者は一目瞭然だった。
 全てを薙ぐような一撃の前に、赤い頭のナイトメアは為す術なく両断。羽をまき散らして地面へ落ちた。
「ハァ、ハ──」
 得物を地面に突き刺し、クレアが勝ち鬨の声を上げる。
「あたし達の勝利よ」





 クレアはジュリアに問いかける。
「第二波も程なく来るわ、あたしはここに残って援護に回るけどジュリアは?」
「そうね。私も残るわ。利根はどう?」
「吾輩は一度退くつもりじゃ。兎月姫殿に天河殿はどうか?」
「俺は一旦休憩。本当は帰りたいけど」
「ええと、私も少し休ませてください。カンナちゃんは?」

 兎月姫は、そこでふと五月闇の手が小さく震えていたのを見た。自分だけじゃない、彼女もまた怖かったのだと理解する。

「え、ああ。ボクは平気──」
「──こほん。ううん、駄目だよ。少し休もう」
「あー、つっかれた。私は少し眠たいわ。カンナもそうでしょ?」
「え、あ、……うん」
「よし、じゃあ。咲矢ちゃんも一緒に行こうか」
 卜部の言葉に押し切られる格好で兎月姫と五月闇は一緒に戻っていく。

 Ashenは愛用の紙巻き煙草を口にくわえる。
「ふむ、気に食わん部分も多かったが、有用だな」
 魔術師を名乗る男は自身の力の認識を深めるべく、場に残る。

 戦いは終わらない。長い一日はまだ続く。





 遥か上空、あるインソムニア。
「ハ、ヒャハハハ。あの程度じゃ通用しないか。これは愉しい」
 マウストラップにとってこれは遊戯。次はどんな遊戯を仕掛けようか思いを馳せ、嗤う。
「またね、ヒューマン達」

成功度
成功

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

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