新宿野戦病院 マスター名:雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

●とあるオペレーターの戦い
 夏の日差しに、煌めく新緑が美しい、新宿御苑。普段なら親子連れや、年配客がのんびりと散歩をする、穏やかな場所が、今は喧騒に包まれていた。
 広い芝生の広場に仮設テントが並び、人々がその下で休んでいる。

「重症者から順に私が治療するわ。軽症者、中傷者とトリアージタグで分けて」

 緒音はルージュを引いた唇から、次々と指示を飛ばす。
 緒音遥は普段はSALFのオペレーターとして勤務している。だが東京への大規模なナイトメアの攻勢により、多くの一般人に負傷者がでた。
 その為セイントのライセンサーでもあり、医師免許もある緒音は、オペレーターの仕事は人に任せて、ここ新宿御苑に仮設された野戦病院で、必死の治療活動を行っていた。
 都内の病院は既にどこもいっぱいで、受け入れきれない。
 新宿という都内屈指のターミナル駅近くに、広大な土地がある新宿御苑は、都心近辺の負傷者を集めて治療するのにうってつけだったから、ここに野戦病院を仮設で作ったのだ。

「この暑さよ。熱中症に気をつけて、水分補給と日陰で休息ね。大丈夫。オネーサンに任せれば、大丈夫よ」

 緒音は長身でスレンダーなモデル系美人。タイトスカートから伸びるすらりとした美脚が眩しい。
 そんな美人がウィンク混じりの気楽さで、明るく負傷者に笑顔を向ける。
 その堂々とした頼もしさに、不安に駆られる人々が安堵し始めた、その時だった。緒音のインカムに通信が入ってくる。

「はい。緒音です。え? ナイトメアが4体こちらに向かってる? ここの安全確保の為に、防衛線を築いたはずじゃ……はぁ? オペレーターの伝達ミスで防衛線に穴? 何やっとんじゃボケ! 現場のライセンサーが必死に戦ってるのに、後方勤務がぬるい仕事すんじゃねーよ。現場を舐めんなよ!」

 女性とは思えない、低音で怒鳴りつける緒音の姿に、人々の視線が一気に突き刺さる。
 慌てて緒音は、おほほ……と誤摩化す様に笑った。緒音は実は男ではないか……という疑惑がSALF内にあるらしい。

「救援のライセンサーがここに到着予定なのね。わかったわ。そのライセンサーと協力して、ここの被害は食い止めるから、そっちは今度こそきっちり防衛線維持しなさいね」

 半分脅しのように釘を刺した所で、緒音はライセンサーがやってきた事に気が付いた。

「待ってたわ。ヒーローさん達。数分後には敵が到着予定だから、しっかり待ち構える態勢を整えましょう」

 通信から一人のライセンサーが、敵の足止めをして、時間稼ぎをしているらしい。その僅かな時間を使って、素早く打ち合わせを始めた。
 緒音は公園内の地図を見せる。

「この公園で一番広い広場がここね。半分は仮設テントがあるし、負傷者は逃げられないから気をつけて」

 公園の敷地はかなり広いが、開けた場所は限られている。
 野戦病院のある広場から、少し離れた所に、小さいが芝生の広場がある。川のように長い池もあり、その水深は浅い。
 他は希少な植物や、美しく整えられた庭園が多く、戦闘には不向きだと緒音は話す。

「この公園は市民の憩いの場でもあるから、樹木へのダメージはできるだけ抑えたいの。もちろん人命には変えられない非常事態よ。でもこの戦いが終わった後、この公園でまた笑顔に散歩できる平和も、ともに守りたいの」

 できるだけ木々へのダメージを最小限に戦って欲しい。それが緒音の願いだった。


●名もなきライセンサーの戦い
 ソレは奇妙な生物だった。体は大人の人間のようだが、頭は狼で、蛇のような尻尾が生えていた。
 ガルルゥゥと口で吠えながら、大きな牙でライセンサーに噛みつき、尻尾を鞭のように振り回して、近づくライセンサーを吹き飛ばしていた。
 ライセンサーは必死に食い下がったが、一対一でもかなり厳しい。それなのにさらに1匹近づくのが見えた。

「もうこれ以上足止めは無理か。新宿御苑に向かったライセンサーに任せるしかないな」

 なんとか逃げる隙を伺うものの、敵が食らいついて逃げる時を稼げない。
 ライセンサーが焦れて焦ったその時だった。
 ドーン。遠くで何かが爆発する音がした。
 その瞬間敵は耳をピクリと震わせて、一瞬動きを止めた。その隙にライセンサーは敵を距離を取り、傷だらけの体を引きずって撤退した。

 ビルの合間に隠れて安全を確保してから、最後に声を振り絞って、新宿御苑にいる緒音へ通信を行う。

「すまない。新宿御苑方面に敵が3……いや4体向かった。全て同一個体……音に大きな反応をしていた。もしかして聴覚が鋭いタイプかもしれない」

 ライセンサーは自分の交戦経験を語った。少しでも戦闘が有利になるように、情報は大切だから。


●とある英雄達の戦い
 緒音は通信で聞いた情報を全て、新宿御苑に集まったライセンサー達に話した。

「敵はもうすぐココにくるわ。一般人達を守るためにも、敵を引きつける工夫を考えないとダメね」

 チラリと緒音が仮設テントの方を見る。せっかく安全な場所に逃げてきたのに、敵がまた来ると知って、人々が不安そうな顔をしていた。

「戦闘に関して全て任せたわ。私は私の戦いをするから」

 そう言ってから、緒音は自分も準備をする。一般人を集めて固め、万が一襲われても、守れるように。
 秋には見事に赤く染まる紅葉も、今はまだ夏。美しい新緑だ。

「この緑の新宿御苑が、血塗られた赤に染まらないように……ヒーロー達に託しましょう。彼らに任せれば大丈夫」

 不安な表情の負傷者達に、緒音は明るい笑顔を見せた。例え内心がどれだけ焦っていたとしても、もはや信じるしか道はない。
 野獣らは新宿御苑へと足を踏み入れ、植物を踏み潰し、木に爪痕を刻み、一歩一歩進んでいた。
 敵が間近に迫っても、休んでる暇はない。緒音の野戦病院での治療活動は続く。


●目的
 ナイトメアの殲滅。
 一般人の安全確保。


●状況
時間帯は昼過ぎ。天気は晴天。
緒音から説明を受け、戦闘体制を整えた所から開始。
敵は既に公園内に入り込み、何もしない場合、野戦病院へと向かう。


●場所
新宿御苑内で交戦に適した場所は三ヶ所。

・大広場
 公園内最大の芝生。開けた場所で十分なスペースがある。ただし一部の区画に一般人の野戦病院があり、敵の食い止めに失敗すると一般人に被害がでる恐れがある。

・小広場
 公園内の小さなの芝生の広場。大広場に比べスペースが限られ、敵味方合わせ4人が限界。それ以上になると、周囲の木々にダメージが出る。

・池
 新宿御苑内部で細く、かなり長く続く池。幅は狭く、水深は深いところで、ふくらはぎが浸かる程度。池の中で戦う限り木々にダメージはない。細長く続くため、上手く位置取れば、人数制限なし。池の中はぬかるんでいるため、足場が悪く戦いづらい。


●NPC
緒音遥(おね・はるか)
 アラサーのSALFのオペレーター。見た目はスレンダーなセクシー美人。姉御肌で面倒見が良いらしい。
 セイントのライセンサーでもあり、医師免許もある。一般人の治療と保護で手一杯で、戦闘に参加はできない。

●敵情報
野獣×4
 成人男性のような体格に、頭は狼、蛇のような尻尾がある。動きは人間に近く、二足歩行で走る。攻撃方法は主に鋭い爪や牙による近接攻撃。
 より近く、多く生物の気配を感じると、引かれる習性あり。

・噛みつき
 鋭い牙で勢いよく攻撃する。

・尻尾ビンタ
 敵後方射程2の範囲で振り回し、命中すると1スクエアノックバックされる。


作戦は釣り出しの人たちがナイトメアをひきつけて池に誘い込み、待ち伏せしてるメンバーで一気に殲滅する感じかな
俺は待ち伏せ班として行動。
最悪も想定して他のメンバーとはちょっと離れ、小広場に敵が流れた場合はそちらの抑えに動く
敵が池にはまったら、他のメンバーとは突っ込む角度に変化をつけて強襲し、敵の意識を分散させる
初撃は移動攻撃を使い突撃の勢い使って攻撃する
「予定通りに進んだな・・・んじゃ、一狩りいきますか」
武器は基本獅子王のみで対応
まずは敵の動きを鈍らせるために片足にダメージを与える
その際も狙いは膝などの関節部を狙う
動きが鈍ったら積極的に攻勢に出る
爪によるひっかきは刃をねかせて滑らしいなすようにして防ぎ、噛みつきに来たら姿勢を落とし下から顎をかちあげるように殴る
最後はパワークラッシュを使った斬撃で敵の首を切り飛ばす
「ま・・通常の戦闘はこっちでもなんとかなりそうだな」
≪手伝≫≪菓子≫

●心情
初めてのお仕事がんばるよっ
野戦病院には手出しさせないんだから!

●行動
・釣り出し
釣り出し担当
大きな音を立てて敵を釣り出し、池の中に引き込む
武器で盾を叩き、大声を上げ、スマホで大音量の音楽を流しっぱなしにする
釣り出しが完了したら、音出しを止める
敵が誘導から逸れそうなときは、射撃で牽制して阻止する
池に着いたら、一気に対岸まで渡る
その前に追いつかれそうなら、池の中で戦闘開始
射撃しながら対岸まで後退する

「そっちはダメだよ。こっちこっち」

・戦闘
回復の仕事を最優先する
そのため、最後まで戦場に立ち続けることを意識して立ち回る
ヒールを使うターンは、盾に持ち替えて回復量を増やす
生命力半減が目安

後衛で射撃を行う
敵が戦場からの離脱を目論んだら、下半身狙いの射撃で妨害
足場の悪さに追加して、さらに機動力を奪う
対岸に向かってくるなら、インパクトアタックで足を打ち据えて池に押し返す
それ以外の場面では、前衛を援護する
連続攻撃や波状攻撃で命中率を高め合い、機先を制する射撃で敵の命中率を低下させる

「今治すから、がんばって。ヒール!」

・戦闘後
遥の指示に従って、野戦病院の手伝いをする
また、お菓子を配る
味の良し悪しが分からないので、とにかく色んな種類のお菓子を沢山用意する

「遥ちゃん、手伝えることある?何でもやっちゃうよー」
【心情】
<やらせる訳には行かない…たとえ軍人時代の醜い自分を晒しても>

【目的】
敵を釣り出して待ち伏せ地点に誘導する為、体を張る。
絶対に野戦病院に敵を近付けない事を最優先目標とする。

【準備】
作戦内容に沿って、敵正面に先行。
その為にも公園内の地理と大まかな地形を把握しておく。

【行動】
釣り出し班で、常に敵の正面に位置取るわ。
最初に、見えた瞬間に(流れ弾に注意して)銃で一撃、そのまま盾に持ち替えてダッシュ、着かず離れずの距離で誘引する。
この時、敵が離れないように、数ターンに一度ぐらいは盾で攻撃を受ける。

タグ≪手伝≫:戦闘終了後には<物資の搬送など、野戦病院の手伝い>を行う。
研究が行き詰ってたから気晴らしに参加
しかし予想以上に緊迫した状況に苦虫を噛み潰したような気分

手早く状況を把握し行動
池にナイトメアを釣り出し、囲んで排除する方針
できるなら携帯・通信機を釣り担当と繋ぎっぱなしで状況把握

釣り出しは他3名に任せ
私は池の大広場側の岸辺で、他4名と共に待機
待機中は茂みや椅子など障害物を利用しパッと見で見えないように配慮だ

戦闘音や釣りだす音でタイミング計り
池にナイトメアが侵入し、釣り担当が適度に離れた瞬間を狙おう

大きな声で周囲にも攻撃を促しつつ
私もフォースアローで先頭に位置するナイトメアを攻撃
声かけの際は誰を狙うかを明確に伝え同一目標を集中砲火
「今だ!先頭、一体。撃てっ!」

攻撃後は岸辺から前衛の近接戦闘を援護
横合いから攻撃する敵を牽制したり、足元が危なげな前衛のフォローをしたり
視野を広く保ち、足元を磐石に
横をすり抜け突破しようとする敵は優先して牽制

大広場に被害が出たら査定に響きそうじゃないか
報酬が減るのは困る

ピンポイントな攻撃はフォースアロー
「無垢なる理力の矢よ、穿て!」

牽制や妨害にはミネルヴァで弾丸ばら撒き
「銃はあんまり趣味じゃないんだがな」
【心情】
守る事が私の願いであり、存在理由
どうぞ安心してお任せください

【目的】
野戦病院にいる皆様が安心して治療を受けられるよう、微力ながらお手伝いをさせて頂きます
ここにある命の輝きを損なわない事、それが私にとって何よりの報酬です

【準備】
敵の到着まで時間もありませんし、今は迅速に配置につくのが肝要ですね
釣り出しの任、確かに承りました

【行動】
皆本さん、坂本さんと共に北西部へ先行して、主戦場に選んだ池へと敵の誘導を行います
オートマチックBD4SPに持ち替え
射程内に敵を捉えたら射撃を仕掛けて注意を引き、距離を保ったまま池方面へと後退
敵の注意が他へ逸れないよう、射撃攻撃は出来るだけ途切れさせないよう心掛けます
いざという時は、自分を的にすることも辞しません
肉薄された場合は獅子王SPへと持ち替え
敵攻撃に対しては回避対応で、池への誘導を優先します

無事に池に到着し、待ち伏せている仲間の攻撃射程にまで誘い出せたら
攻撃の邪魔にならないよう、身をひるがえして距離をとります
スタークレイモアSPに持ち替えて、敵を包囲するよう意識して位置取り
『ライトバッシュ』を惜しみなく使って一気に攻勢に出ます

誘導・戦闘中を問わず、生命半減を目安に『ヒール』の癒しを
守るための戦いとは言え、仲間が傷付き倒れる様も見たくはないのです
◆事前心情
野戦病院で苦しンでるヤツに向かってくってなァ敵としちゃ当然ッてヤツだな
不遜な敵が義の志士に斃されるってのもまた、物語としちゃ当然ってヤツだがよ
主人公を張るにゃァ役者不足だろうが、雅楽甚玖郎の初太刀、篤と味わわせてやろうじゃねェか

◆戦闘心情
あいや暫く、つっても意味が分からねェか
狼のツラたァ悪役顔も極まれりッてヤツだな
似たような獣のツラの知り合いがいるンだが、悪趣味な尾はつけちゃいねェな
どの道、似たツラならチカラ篭めて殴り易い
気に喰わねェって点じゃァ、一緒なもンだからよ
その鼻面を圧し折ってやる

◆得物
獅子王SP/基本の得物
長弓「飛鳥翔」/敵が戦線を離脱しようとした場合に背後から射って狙う
ラウンドシールド/万が一、動きを止める必要性が出た時に、鉄下駄で蹴って音を出す

◆役目
池で待ち伏せ、戦闘役

◆戦闘行動
仲間が敵を池まで釣り出した後、本格戦闘を行って敵を撃破する役目だ
パワークラッシュで畳み掛け、短期決戦
討伐後に敵が残っている場合、標的を変えて戦闘を継続する
仲間の危機は優先的に援護する
義理人情とは程遠いツラしてるが、中身は別ってヤツでな。よく言うだろう?

◆補足
戦闘状況の行動で仲間と矛盾が生じた場合は、仲間の行動に息を合わせる
戦闘状況下で野戦病院へ向かおうとする敵は全力移動で追い、仕留める
手が離せない場合は仲間に大声で伝える
初期位置は待ち伏せチームの後方支援
常に周囲を警戒し、防衛線を抜けて野戦病院に向かう敵が居ないか見張る
戦闘開始では知覚攻撃スキルと銃を使用し池に嵌まった敵を狙い攻撃
主に狙うのはダメージが重い敵、数を早々に減らすことで数敵優位を作り出す事を目的とする
知覚攻撃スキルは最後の一発が敵が池を突破した時の為に取っておく
敵が突破した際は、即座に全力移動スキルで敵の前に回り込み最後の壁として立ち向かう
その際は、残ってるスキルも使い、本で白兵攻撃も行う総力戦で対応
戦闘後:救急セットで仲間の治療を施し、その後は野戦病院の治療の手伝いを行う
「行くか…弱き者は救わねばならぬ」

〇目標
被害を出さずに敵を殲滅〇行動
最前線で剣を持ち戦う。
また、可能な限り敵を引き付け、後方に逃がさないように気を付ける。
「我々はこちらに居るのだぞ、どちらへ行くと言うのだ」

〇工夫
敵が大きい音に反応する旨を聞いているため、敵が突破しようとした場合拳銃の射撃で攻撃と同時に音を出し、引き付けるように動く。
「この音には我も始め驚いたものだ」

〇戦闘
戦闘では基本剣を使用。
ただ、敵を引き付ける時には拳銃、噛みつきを受けそうになった場合にはレガースで蹴りを入れて阻止する。
「良い顎ではないか」「だが、噛まれては困るな」

尻尾での攻撃が厄介であるため、切断出来そうな場合は切断を試みる。
また、2体以上と同時に戦うことのないように気を付ける。

●支度
「アリーも初めてのお仕事がんばるよっ。野戦病院には手出しさせないんだから!」
 大人びた容姿とは裏腹に、無垢で無邪気な坂本・アレクサンドラ(la0063)。
 楚々とした風情の汀=グレンヴィル(la1044)は緒音に丁寧にお辞儀した。
「野戦病院にいる皆様が安心して治療を受けられるよう、微力ながらお手伝いをさせて頂きます」
「頼もしいわね。安心して治療に専念できるわ」
「緒音さん。戦闘が終わったら、病院のお手伝いに行くわ縲怐v
 皆本 節奈(la0202)はほわほわとした笑顔で、場を和ませる。いつもは優しい寮母さんだが、秘めた想いを抱えていた。
(やらせる訳には行かない。たとえ軍人時代の醜い自分を晒しても)
 節奈のその決意に気づくものはいない。

「僕が最後の壁となって立ち向かいます。野戦病院に敵を近づけさせません」
 黒井 星斗(la0952)は真面目な優等生。眼鏡の奥の瞳がキリリと光る。
 初任務への強い意気込みを語る者がいれば、その一方でそうでない者もいる。
「研究が行き詰ってたから気晴らしに参加のつもりだったんだがな」
 予想以上に緊迫した状況に苦虫を噛み潰したような気分の、ラウラ=ヘラヴィーサ(la0597)。専門は頭脳労働。あまり大きく動き回りたくないが、そうも言っていられない。
「二班に分かれるなら、互いに連絡を取り合えるようにしておいた方が良さそうだな」
 ラウラは釣り出し班と連絡先の交換をし、節奈は地図を確認。園内の地理を把握した。

 陸道 空(la0077)は初めての戦いを前に一抹の不安を抱えていた。元の世界では敵を狩る戦いばかりだった自分に、何かを守る戦いができるだろうか?
「ま……俺にできることなんて限られてんだ。だったらできる範囲で殺るだけさ」
 金属の身体を持つ人間。雅楽 甚玖郎(la1809)は、野戦病院を遠くから眺める。
「野戦病院に向かってくってなァ敵としちゃ当然ッてヤツだな」
 そう呟いてから、敵が来る方角に目を向け豪快に笑う。
「しかし不遜な敵が義の志士に斃されるってのもまた、当然ってヤツだがよ」
 威風堂々としたシルヴィア=ケニッヒヴァルダウ(la0068)の紅瞳は鋭く、金髪をなびかせ歩き出す。
「行くか……弱き者は救わねばならぬ」

●誘引
 熱気溢れる木漏れ日の下、スマホから勇猛果敢な戦歌が大音量で鳴り響く。
「迅速に配置につくのが肝要ですね」
「がんばるぞー」
 節奈が前、汀とアリーが後ろで敵が来るのを待ち構える。アリーは銃で盾を叩き、音を立ててアピール。
 ざくり、落ち葉が踏み荒らされる音。陽動に釣られた野獣達が現れたのだ。
 節奈は即座にマシンガンを一発叩き込む。次々と轟く銃声。ここに戦いの火蓋は切って落とされた。

 銃弾の嵐を食らった獣が呻き、獲物へ襲いかかる。節奈は盾に持ち替え、汀もオートマチックで反撃。攻撃を躱しつつ後退。二人を援護する様に、アリーも銀髪を靡かせ、オートマチックの引き金を引いた。
 四匹の野獣達は獰猛に吠え、鋭い牙で喰らい付く。
 ガキン。盾が鈍い音を鳴らす。重い一撃を受け止めきれず、節奈の障壁――イマジナリーシールドを削っていく。
「今治すから、がんばって!」
 アリーのヒールが節奈の障壁を修復した。
 節奈だけに負担をかけられないと、汀も獅子王に持ち替え前に出る。敵へ切先を突きつけ、引きながら切る。攻撃は半身を引いて躱した。
「釣り出しの任、おまかせいただいたのですから、その期待に応えなければいけません」
 刃で一閃し後方へ飛び退り、一撃離脱。汀は巧みに敵をひきつける。

 節奈は事前に把握した地形を思い浮かべ、木々に被害を出さぬ様、池へと誘導する。だが野獣の一匹がそれを無視して別方向へ歩き始めた。
「コッチだよ犬ッコロ! ライセンサーとは戦えないのかい?」
 節奈は叫びと共に盾で殴り、自身へと注意を引き寄せる。体を張って戦う姿から、絶対に野戦病院に敵を近付けさせないという気迫が溢れた。
「そっちはダメだよ。こっちこっち」
 野獣の意識が逸れれば、アリーは声を張り上げ、弾丸を撒き散らす。節奈と汀の負傷が増えれば、盾に持ち替えヒールで障壁を修復。献身的に二人を支えた。
 野獣に攻撃し、食らいついてきたら後退。ジリジリと、しかし着実に四匹の獣は池へと引き摺り込まれていた。

●池の中の戦い
 光が降り注ぐ池の周囲を、木々が生い茂る。ラウラは東側の茂みに隠れ、煙草を咥え、スマホで釣り出し班の様子を確認していた。
「そろそろ獣のお出ましだ」
 ラウラの後方で星斗は冷静に池全体を見渡す。
 背後には負傷した多数の一般人達がいる。ここで戦いを終わらせられれば、怖い思いをさせずにすむ。もし敵が突破して病院に向かうなら、この身を賭してでも抑え切る、そういう決意を持って。
 池の北側に隠れた雅楽は獅子王を振り上げ、歌舞伎の如く見栄を切る。
「主人公を張るにゃァ役者不足だろうが、雅楽甚玖郎の初太刀、篤と味わわせてやろうじゃねェか」
「貴公が待ち望んでいた戦であるな。我も楽しみだ」
 シルヴィアは冷静な表情だが、その尾は戦に高揚しピンと伸びた。
 空は敵が小広場方向に流れる事を警戒し、池の南側に隠れる。
 北、南、東に分かれ、五人が万全の体制を整えた。そこへ節奈達と追う野獣が、池に飛び込んできた。

「今よ! 一斉攻撃!」
 節奈の号令に、真っ先に動いた空は池へと飛び出す。
「予定通りに進んだな……んじゃ、一狩りいきますか」
 すれ違い様に敵の足へ獅子王で一撃を放ち、その勢いのまま駆け抜けた。野獣はその攻撃をギリギリ躱したが、沼のぬかるみで踏鞴を踏む。
 シルヴィアはクレイモアを、天から地へと振り下ろし叩き斬る。
「あいや暫く、つっても意味が分からねェか」
 雅楽は刀を抜き放ち、スパッと野獣を袈裟斬りに。その血が池へとこぼれ落ちる。
 残り一体に、星斗は銃を撃ち込み、動きを押しとどめた。
 皆の攻撃の隙にアリーは池を横切り東の対岸へ駆ける。
 節奈は池の西側に位置取って盾を構え、汀は身を翻し距離をとり、節奈の後ろに回った。
 南に空、北に雅楽、東にシルヴィアが布陣。野獣は池の中で包囲された。

 空と野獣が池の南側で、激しい攻撃の応酬を繰り返す。
 野獣の膝を狙い刀で一閃。だが動く敵の関節狙いは困難で、太ももを切り裂くに留まる。野獣が牙をむくと、姿勢を落とし刀で受け止めた。
 敵が腕を振りあげ鋭い爪で押しつぶそうとしたら、刀で滑らす様にいなし、反動でがら空きの胴を刃で切り裂く。
「生きてるって感じがするな」
 戦の高揚で空の瞳が生き生きと輝いた。

 シルヴィアの背後に野戦病院がある。敵を逃がすわけには行かない。銃に持ち替え引き金を引く。派手な音を立てると野獣が反応した。
「この音には我も始め驚いたものだ」
 野獣が喰らいてきたので、蹴りを入れて阻止しようと試みる。だが足場が悪い場所では悪手。
 攻撃は阻止したが、片足を振り上げた事でバランスを崩し転倒。そこへ雅楽が割って入る。
「シルヴィア。酒酌み交わした縁。助太刀するぜ」
 野獣の胴に横薙ぎに一閃、自身に注意をひきつける。そこへ北側からもう一体が回り込み、尻尾を叩きつけた。
 ブウン! 強烈な尻尾の一撃が雅楽に直撃した。
「雅楽!」
 雅楽は吹き飛ばされつつも、両足を踏ん張って転倒を回避。尾を睨みつけた。
「似たような獣のツラの知り合いがいるンだが、俺をぶっ叩く悪趣味な尾はつけちゃいねェな」
 シルヴィアが転倒、雅楽が吹き飛ばされ、敵の前が空いたその時だった。

 適度に味方が離れる隙を狙っていたラウラは、素早く魔道書を開く。
「今だ! 先頭、一体。撃てっ!」
 狙うべき敵を手で指し示しつつ、魔道書からフォースアローを解き放つ。
 ズドンと、野獣に命中しその肩を抉った。
 さらに号令に合わせ、星斗も魔道書をぱらりと捲る。放たれた光の矢が敵の腹に突き刺さる。
「大丈夫、落ち着いていきましょう」
 冷静にチームを支える星斗の言葉に、アリーも小さく頷き、銃弾をばらまく。
 三人の連続攻撃に、野獣は体中から血を垂れ流し、息絶えた。
 ――残り三体。

 節奈は重心を低くとり、沼から野獣が抜け出さぬ様、盾で押さえつける。
 汀はその横からクレイモアでライトバッシュを放ち、一息に振り抜く。腕を切り裂かれ、怒った敵が汀へ襲いかかると、節奈が割り込み抑え込む。
 節奈のシールドが削られる度に、汀はヒールで修復した。
「守るための戦い。仲間が傷付き倒れる様も見たくはないのです」
 二人の連携で一体を引きつけ、じわじわと敵を削っていった。

 一方、池の東側では立ち上がったシルヴィアが、戦場をしっかりと見据える。
「これ以上遅れは取らぬ」
 野蛮なる獣に転ばされた事に腹も立つ。だが龍の如き気高さを持つシルヴィアは至極冷静だ。
 己の身より大きな剣を軽々と操り、敵を打ち据え、一歩も引かない。
 雅楽はパワークラッシュで、一気に敵に止めを刺すつもりでいたが諦めた。狭い池の中で、敵味方が入り乱れている。ここで使えば、味方を巻き込むのは必定。
「シルヴィア。そいつァは任せた」
 雅楽はしっかり踏ん張りながら、鉄下駄で盾を蹴り上げた。
 ガキン! 良い音が響いて、一瞬三体の野獣の動きが止まった。

 視野を広く保ち戦場を分析していたラウラは、その隙を見逃さない。
 白衣をはためかせ、手を振り上げる。指に挟んだ煙草の蛍光が、魔法陣を刻む様に瞬いた。
「無垢なる理力の矢よ、穿て!」
 紫煙と共に吐き出したフォースアローが、野獣に降り注ぐ。
 星斗も冷静に状況を分析していた。
 シルヴィアはまだシールドに余裕がある。空の相手取る敵はアリーの協力であと一歩。一番厳しいのは節奈だ。釣り出し中にシールドを削られ、汀の回復で何とか踏みとどまっているが、長くは持たない。
「数的優位なのは間違いありませんが、負傷の大きい敵を狙い、着実に数を減らしましょう」
 節奈と戦う敵の背に、星斗が放つ光の矢が深く突き刺さった。
 汀はその隙に前に飛び出して、大剣を振りあげる。
「守る事が私の願いであり、存在理由です」
 大剣に想いと体重を乗せ、一気にライトバッシュで叩き斬る。肩を打ち砕かれ、血反吐を吐いて、野獣が沈んだ。
 ――これで、残り二体。

 空は野獣と一対一の戦いを楽しんでいた。野獣が腕を振るえば、一歩引いて躱し、足への攻撃を繰り返す。
 空へ攻撃を当てさせない為に、アリーは牽制射撃で援護した。じわじわと削られ敵の動きが鈍る。
 アリーの銃撃に不快げに野獣が首を振ると、その隙をついて、空は体勢を低くし溜めを作った。
「そろそろ……終わりだぜ!」
 体をバネの様に伸ばして勢いをつけ、一気に野獣の顎を刀でかちあげ、殴り切る。
 ごりっ。骨が軋む音がして、野獣の顎が打ち砕かれる。首から血を吹き出し倒れた。
 ――後、一体!!

 仲間の死の気配を感じ、野獣は逃げ出そうと池の中を走り出す。だがシルヴィアがそれを許さない。
「どこへ行くと言うのだ。逃がしはしないぞ」
 池での追走劇は、派手に水しぶきを作り出す。
 雅楽が敵の前に回り込み、その行く手に立ちはだかった。
 野獣は逃げられず、苦し紛れにシルヴィアを尻尾で打ち据えた。吹き飛ばされシールドが削られたが、それでも引かない。
 シルヴィアは片足にしっかり重心を置き構える。
「狼よ。我の力を受けてみよ!」
 敵の懐に飛び込む様に一気に突撃。大剣が胴体を貫いた。力を失い、野獣の体が、がくりと崩れ落ちる。
 最後の野獣が息絶えて、勝負の幕が下りた。

●夕暮れの幕
 戦闘が終わる頃には日が傾き、空はオレンジ色に染まりつつあった。
 アリーは空の削られたシールドをヒールで修復する。空は人好きのする笑顔を浮かべた。
「ありがとな。助かった」
「どういたしまして」
 ニコッと笑顔を返すエリーの横で、空は実戦の手応えを噛み締めた。反省点もあるが、一対一で殺り合った感触は悪くない。
「良い腕試しになったかな」

 ラウラは戦いが終わってホッと一息、ゆっくりと煙草を味わった。やる気はなかったが、報酬が減るのは困る。
「被害が出たら査定に響きそう……と思ったが案外上手くいったな」
 これでまた研究に戻れる。大きく背伸びをした。
 雅楽とシルヴィアは互いに健闘を称え合う。
「体を動かしたら肉が食べたくなった。とはいえ、ここで狩りはできそうもないな」
「仕事が終わった祝い酒。肉と一緒に一杯やりに行こうぜ」
 いつもの場所に戻れば、きっと良い酒も肉もある。そう言い合いながら二人は歩き出した。

 星斗は野戦病院の穏やかな光景に満足げに頷く。万が一に備え身を呈して守るつもりだったが、杞憂に終わった。
「緒音さん。僕にも治療の手伝いをさせてください」
「あら。戦って疲れたでしょう。休んでもいいのよ」
「いえ。傷付いている人を助ける方が、僕の気も安らぎます」
 緒音は星斗の好意に笑顔で礼を言い、治療道具を手渡した。アリーがやってきてぴょこんと跳ねる。
「遥ちゃん、手伝えることある? 何でもやっちゃうよー」
「坂本さんもありがとう。熱中症対策にペットボトルを配ってくれる?」
「はーい。お菓子と一緒に配るー」
 アリーの手には様々な菓子がどっさりある。
「もしよろしければ、私も手伝っていいでしょうか?」
 汀が控えめに手伝いを申し出る。戦闘中は動揺を見せないよう、気を張っていたが、ホッと気が緩むと落ち着かない。
 アリーはニコッと笑って、汀の手を引いて歩き出した。
 飲み物やお菓子を配ると、人々の顔に笑顔が浮かぶ。その姿に二人は自然と笑みが溢れた。
「命の輝きを損なわない事、それが私にとって何よりの報酬です」

 緒音が終わらない治療活動に疲れてきた頃、後ろから節奈が肩を叩いた。
「緒音さん、お疲れ様縲怐@はい、これどうぞ」
 ポンと差し出したのはチョコレート。
「疲れた時は甘いもの。地獄のように熱い珈琲があれば、もっとよかったわぁ♪」
「地獄? 日差しは熱いし、疲れるし、地獄ね。でも差し入れのおかげで、もう一頑張りできそう。ありがとう」
 束の間のスイーツタイムの後、緒音は節奈と共に治療活動を再開した。

 こうしてライセンサー達の活躍で、公園も野戦病院も守られた。
 病院の負傷者達も、適切な対応のおかげで、無事日常に戻れそうだ。
 紅葉の季節には、この公園で笑顔の華が咲き乱れる事だろう。

成功度
成功

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重体者一覧

重体者はいませんでした。

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