プールの子供達を救え! マスター名:久遠由純

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
救出
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

●夏といえばプール
 暑い夏。

 その日も都内のT公園プールにはたくさんの小、中学生の子供が訪れていた。
 住民なら子供にも優しい料金設定で利用できるので、暑さも手伝って連日大盛況。
 屋外プールは二つあり、一つは丸みを帯びたLのような形で、一番長い所で100mある。もう一つは幼児とか深い所がまだダメな子供用の、直径30メートル程の円形で浅いプールだ。
 プールサイドも広めに取られており、屋根付きのテーブルセットが両サイドに五つずつ置いてある。が、そこで休んでいる人は付き添いで来た大人達だけだ。
 子供達は皆プールに入って水の冷たさにわーきゃーとはしゃいでいるのだった。

 そんな楽しいひと時は、ナイトメアの出現であっさり壊されてしまう。

 大きいプールの向こう、プールサイドを囲むフェンスを、何かがよじ登ってくる。
 最初に気づいたのは監視員の青年だった。
「なんだあれ。部外者が勝手に――って」
 そこで青年は言葉を呑む。
 ネコ科であることは分かるが、猫なのか虎なのかそれ以外の動物も混じっているのか、とにかく獰猛そうな顔の動物が何匹もいる。
 そいつらがフェンスを乗り越えようとしているのは明らかだ。
 よく見るとその動物たちの尻尾には、ドリアンのようなでっかいトゲがたくさん付いていた。
 そんな動物、見たことも聞いたこともない。

ということは。

「ナイトメアだ!! 皆さん、早くプールから出てください! 全員避難して!!」
 監視員はメガホンで叫んだ。

●残された子供達
 プールはあっという間にパニックに陥った。
 人間に存在を知られた猫虎ナイトメアは最早隠密に行動することを止め、荒々しく次々とプールサイドに降り立ち、逃げる人を襲う。
 その爪は一瞬にして伸び、少女の腕を引いた女性の背中を貫いた。
「キャアアア、ママ! ママぁ!!」
「もうダメだ、こっちへ来るんだ!!」
 さっきナイトメアを発見した青年監視員が、恐慌をきたす子供の手を強引につかんで走り、更衣室のある建物に押し込む。
 もう一人先輩の監視員がいるが、彼も幼児を抱きかかえ逃げていた。その近くには犠牲になった子供が倒れており、プールサイドを赤く染めている。
 尻尾を振り回し、背後から飛びかかって噛み付き、猫虎のナイトメアは何人もの子供達をその毒牙にかけていた。
 青年は唇を噛んだ。
 ナイトメアにやられた人を放っておくのはもちろん本意ではない。だけどライセンサーではない自分達には立ち向かう術がないのだ。

 二人の監視員は利用者を建物内に避難誘導するという役割を果たすだけで精一杯だった。

「これ以上は無理だ! 俺達も避難しよう!」
 先輩監視員が青年を促すが、
「でも、まだプールに何人か残っているんですよ!」
 そうなのだ。
 大きいプールには、逃げ遅れた子供が十人程取り残されていた。
 彼らはプール中央に寄りかたまっている。ナイトメアからなるべく距離を取りたいという心理の表れだろう。
 ナイトメア達も逃げてしまった人間を追うより目の前に見えている子供達に狙いを定めたようで、プールを取り囲んでいた。これではもう逃げられない。
 その割に、どの個体も水に飛び込もうとはしていなかった。水際のギリギリを行ったり来たりして、子供達に唸って牙を剥いたりしているだけだ。
 もしかしたら水が苦手なのかもしれない。
「分かってる! でももうあのプールはナイトメアに囲まれちまってる! 近づけないだろ!? だからライセンサーを呼ぶんだ!!」
「わ、分かりました……!!」
 これ以上自分達にはどうしようもないのだ、と心に言い聞かせて、青年監視員は自分も建物内に入った。

 という訳で、SALFに通報が入ったのだった。
 青年は『このナイトメアは水が苦手かも』という自分の考えも、ちゃんと伝えるのを忘れなかった。


 プール中央では、十人の子供達が怯えた目でナイトメアを見ながら水に浸かっていた。
 真夏だというのに、妙な震えが止まらない。
 さっきまではあんなに楽しかったのに、どうしてこんな目に遭わなければいけないのか。
 ナイトメアの親玉だったら『食料となるお前達がそこにいるからだ』とでも答えるのかもしれないが、今この場所にその問いに答えられる者は誰もいない。
 十人の中には泣いている子もいる。その子を慰める余裕は、他の子にもなかった。
 泣いていなくとも泣き出したい気持ちに変わりはなく、皆これからどうなってしまうのか、最悪のことが容易に想像される。プールサイドのあちこちに、倒れて動かない人の姿が見えているのだ。
「怖いよぉ、あたしたち食べられちゃうのかな?」
「ライセンサー、助けに来てくれるよな?」
「ここ深くて、立ってられないよ」
 子供達の恐怖と疲労は急上昇していた――。


※8体のナイトメアの討伐、プールに取り残された子供達の救出

〈ナイトメア×8体 攻撃型 危険度3 知能は低め〉
・猫のような虎のような姿。体長170cmくらい。尻尾にトゲトゲがいっぱい付いています。
・戦闘能力
 通常の近接攻撃(飛びついて引っ掻く、噛み付く等)の他、
 尻尾トゲ飛ばし:尻尾に付いた無数の刺を自分の周囲に飛ばします。範囲(3)。
 爪伸ばし:爪を長く伸ばして攻撃します。射程2。
・現在はプールを取り囲み子供達が弱るのを待っています。
・水が苦手なようで、自らプールに入ろうとはしません。※苦手というだけでダメージを受けるわけではありません。
・敵や獲物が水場におり中々そこから出てこない場合、水場に入って行くこともあります。
・水中では、生命力以外の全ステータスが半分になります。

〈プール〉
・丸みを帯びたL字形をしています。長い方は100m、短い方は40m、幅30mです。
 深さは中央に向かってゆるやかに深くなっており、中央部分は2mの深さになっています。
・プールサイドはプール全体を取り囲んでおり、車三台分ほどの横幅があります。

〈子供達 10人〉
・子供達はちょうどL字の縦横の交わる部分に全員集まっています。
・全員小学4年生~6年生の男女。
・男子7人女子3人。全員が友達同士や知り合いという訳ではない。


※プールに残された子供達以外の一般人の避難は完了しています。


目的:逃げ遅れた子供達を救出、安全な場所へ避難させる

行動:
【確】班
仲間が子供達の救出にあたっている間、プールサイドで待機
水の中から上がる手助けをしながら護衛
子供達が全員プールから出たら、救出にあたっていた仲間と共に、手を繋いで一団にした子供達を
囲うような配置で守りながら、他の仲間が確保してくれている脱出経路に急ぎ移動
自身は殿を引き受ける
怯える子供達を励まし、勇気付けながら誘導
「君達はとても勇気ある子らだ。此処までよく頑張ったな。さあ、あともう少しだぞ!
前を向き、走れ。恐ろしい悪夢は、我々がきっと消し去ってみせよう!」

ナイトメアが此方に接近してきたら、子供達に近づけさせないよう交戦し足止め
猫じゃらしのように武器をちらつかせて、敵の注意を惹き付けてみたり
「もふもふは大変好ましいものだが…ナイトメアでは守備範囲外、というやつだな(ふ」
敵の遠距離・範囲攻撃をまともに食らわぬように間合いを図り、ヒットアンドアウェイで攻撃
近接交戦時にトゲ攻撃を食らいそうになったら、敢えて敵の真下に潜り込んで直撃を避ける
敵から距離を取られれば、ハンドガンに持ち替えて威嚇射撃

子供達が完全に避難したのを確認したら、殲滅班とも合流し、ナイトメアの討伐に専念
確実に仕留められるよう、仲間と連携して攻撃
囲まれて範囲攻撃の集中砲火を浴びないよう、位置取りには注意
子供達が無傷で避難

◆子供達の所へ
上の服を脱ぎビートバン複数抱えプールへ飛び込む
ビートバンに捕まらせ子供達の体力消耗を防ぎたい
「もう大丈夫だ、必ず無事に避難させるのでな。
「彼女ら(メンバ―さん達)は強い、この御曹司優が保証する、だから案ずるな(ドヤ顔
女性メンバ―がすごいと聞かせ安心させる事を第一に
(パニック避けたい→日頃の煩さ押さえ気を遣うぞ!

>子供達を確認
・体力が残っているか
・知人同士がいるか
・怪我がないか

知人同士は固まらせ避難時は互いに協力させる
体力消耗・怪我した子は優が抱え運ぶ
移動は有栖に怪我をさせぬ様俺は敵側に位置取る!男なのでな!
敵の範囲攻撃が飛んできても【確/殲】が防いでくれると信じてる

プール際ではプール側から子供達が上る手伝いを!
落ち着きを取り戻した子はプールを上がった際小さい子の手を引く手伝い頼む
全員が上がった時点で俺も上がり動けぬ子を抱え共に建物内まで避難

>建物内避難完了
怪我した子居れば青年に手当て依頼
「俺達はナイトメアを倒さねばならん…終わるまでここを出てはいかんぞ
先端恐怖症ゆえ尖った物を向けられると怖いが…回避狙う
止めは女性メンバーが…と信じ、その為なら囮でも構わん!
自身怪我したら手当て願う「…すまん
女性メンバー怪我時心配「だ、大丈夫か…(オロオロ
●心情
「大丈夫、絶対に子どもたちを助け出してみせるわ」

●目的
第一に子供達の救出
完了後ナイトメア討伐

●行動
【誘】担当
最速で子供たちの所へ
先ずは簡単に声掛けをして、足の届く場所へ(もしくは足の付かない子が数人なら自分達が抱え)
安心させるのを優先に優しく笑顔で自己紹介をしてから絶対に助ける事を伝え落ち着いてもらう
名前を聞けるなら聞いて、1人1人名前で呼び掛け
必要なら撫でたり背中をぽんぽんとしたりハグしたり
「わたくし達が絶対にあなた達を助けます。そのためには皆の協力も必要だから、一緒に頑張りましょうね」

落ち着いて移動できるようになったら【確】が確保してくれたルートへ子供達を誘導し避難開始
年上と年下でペアを作ってもらい縦5列で移動(一番前と後ろの列に【誘】が対角で付き誘導するような感じ)
深い部分があれば子供達が移動できる深さの所へ、低身長の子供一人くらいなら抱えて
子供達に流れ弾が来るようであれば庇う
安心させるように常に声をかけ誘導
「良い感じです」「大丈夫ですよ」「あともう少し頑張りましょう」等

迅速に誘導し避難が完了後は急いで【殲】へ合流
武器射程ギリギリで交戦
味方が狙った敵を狙う

誘導時の武器はシールド
誘導が終わりナイトメアと交戦時はミネルヴァ使用

味方や自分の生命力半減でヒールを使用
「ん~…血の匂い~…♪中々酷い状況ですねぇ」

【方針】
チーム内で役割分担を行い
ウチは【殲滅組】として、敵の撃破を優先して動きますぅ

【行動】
プールサイドで転ばないように注意しなきゃですねぇ

他の【殲】の人とは別のルートで、
お子さんの方に意識が向かないように、堂々と敵さんに向かっていきますぅ
ただ、敵さんが多いので囲まれたりしないような立ち回りを意識しつつ、
近くに円形のプールがあるみたいなので、可能ならばそこまで追い込むように動きましょお

あとはまぁ、敵さんの遠距離攻撃に備えて、自分の後ろに味方やお子さんが来ないような立ち位置を意識しておきますぅ

【戦闘】
【救出組】の人達が合流するまでは、回避や防御等で敵を引き付ける事に優先しますよぉ
4体…引き付けられればいいんですけどねぇ
距離は詰めすぎず、離れすぎずで。

片足を水に浸けて、水をかけてひるませる等、状況を利用した立ち回りで、敵を引き付け続けますぅ。

「救出お疲れさまでしたァ。…さてさて、やっと好きにできますねぇ」
【救出組】合流後は、好き勝手暴れちゃいますぅ♪
引き続き、囲まれない様な立ち回りを意識しつつ、わざと隙を見せて攻撃を誘い込み、必要に応じてスキルも使用します。

味方が狙われてる時は、敵さんが攻撃を始めた隙をつく等で攻撃。
後衛の攻撃の邪魔にならないようにも、注意をしておきますぅ
基本方針
【殲】の援護射撃。
ナイトメアの殲滅かつ、円型プールへの追い込み。
その一方で、【確】のルートの把握、援護。

位置
開けた場所。
【殲】と【確】を視野に入れれる位置

優先度
ナイトメアの危機が及ぶ方を優先。
〇タグ内容
【殲】敵を円形プールへ誘導、殲滅。
【誘】子供をプールから【確】班へ連れていく。
【確】避難ルートを確保、誘導、援護。

〇心情
「頑張って助けますよ~」?

〇目的
【確】として、子供を出口まで連れていくことを第一に参加。?

〇準備
事前にタグに沿った班分け、内容を確認。?
水鉄砲を持ち込み、水を入れてから作戦に臨む。

〇行動
子供救助前は、プールサイドで、【誘】の援護。
近づく敵に水鉄砲で攻撃し、離れるようなら、継続。
ダメなら武器切替し射撃攻撃。
【誘】と子供に敵が近づかないように警戒。
「あっちいけ~」

子供がプールサイドに来たら、【確】班として行動。
武器を持ち、言葉がけを欠かさずに子供を出口まで誘導。
消耗の激しい子には、特に気を配り、支えるなどの手助けをする。
「大丈夫ですよ~」
「もう少しです~」

子供の安全を確認したら、プールへ戻り、【滅】班の援護。
プールサイドで、ポイントショットを駆使し射撃攻撃。
負傷者には、ヒール。
周辺警戒を怠らず、敵の位置を報告。
「○時方向、敵影です~」

戦闘終了後には、参加者と子ども無事を確認。
大好物の枝豆をおすそ分けする。
【殲滅班】
子供たちに近いナイトメアから優先的に白兵攻撃で仕留めていきます。
スキルは惜しまずに使用
他のキャラが行おうとしているプールに追い込む行動はしない。
敵から子供たちへの射線を塞ぐように立ち回る
【目標】
子供の救出を最優先、後にナイトメアの殲滅。

【行動】
ナイトメアの対象は殲滅担当の組に任せ避難ルート確保の組として救出優先で行動する。
自分は子供達の避難が円滑に進めれる様にプールの出口付近を陣取り付近のナイトメアのみを撃退、深追は厳禁。
プール内を移動し避難して来る子供を出迎えられる状況を整え維持、避難誘導班と連携してスムーズに避難できる様心がける。
子供の避難が終わり次第、ナイトメアの殲滅に移る。
子供に危険が迫ってる時などはスキル「全力移動」などを出し惜しみせず使い、子供の元へ駆けつける。

●子供達を救え
 痛く感じられる程の強い日差しの中、ライセンサー達は通報のあったプールのT公園へと急いでいた。
 鮮やかで夏らしい青空のまさにプール日和。なのにナイトメアに襲われてしまった子供達はどんなにか恐ろしい思いをしていることだろう。
 早く助けてやらなければ。

「プールはこっちか」
 プール施設の入口に到着するなり、御曹司 優(la0060)が建物の位置関係を見ながら走る。
 放浪者ではあるが御曹司はすっかりこの世界に馴染んでいるようで、背が高く金髪でお金持ちオーラが漂いまくりで黙っていればイケメンなのに、というのが彼の特徴(?)だ。
 更衣室のある建物が分かると御曹司は
「ちょっと待っててくれ」
 と中に入って行った。
 数分後出て来た御曹司の両手に、ビート板が5、6枚抱えられている。中にいたスタッフに借りたらしい。
「さあ行こう!」
 更衣室からプールへと続くこの道が、子供達を避難させるルートになる。
「大丈夫、絶対に子供達を助け出してみせるわ」
 自分を勇気づけるように、有栖 愛真(la0152)がつぶやいた。
 ピンクブラウンのふんわりした髪の毛のように有栖自身ふわふわしたイメージに見られがちだが、困っている人がいるなら助けたいと思う芯の強さを持っている。
 数段の階段を昇ると、そこは大きなプールのプールサイドだった。
 丸っこいL字型プール、その中央に身を寄せ合っている子供達が確認できた。そしてその周りを、8体のナイトメアが包囲している。
「ん~……血の匂い~……♪中々酷い状況ですねぇ」
 終月 咲(la0199)の視線がナイトメアにやられ倒れている人々に注がれた。
 頭に付いている黒い狐耳が終月が放浪者であることを示しており、元の世界でも彼女はこういった景色を見慣れていた。
 皆が入って行くと、猫のような虎のようなナイトメアが一斉に彼らの方を向く。

「来るぞ!」
 御曹司の声とほぼ同時に、一体の猫虎がこちらに飛び掛って来る!
「あっちいけ~」
 緑色の長い髪をサイドアップにした伊豆浦翠(la2524)が持参したペットボトルの水をナイトメアにぶちまけた。本当は水鉄砲が良かったのだが、手に入らなかったのだ。
 その行動は相手の不意を突いたようで、水を嫌うナイトメアを怯ませる。
 その隙に後ろにいたSala(la0720)がすかさずスナイパーライフルZW-1SPを構え、ポイントショットをお見舞いした。
 弾丸は猫虎の脳天を撃ち抜き、まずは一体を仕留める。
「ふう。こっちでの戦闘って緊張するわね」
 銀髪に赤いメッシュが映えるSalaは、以前とは少し戦いに対する気持ちが変化していた。
 放浪者のSalaは異世界にいた時も戦いに身を置いており、それは今も変わらない。でも、前は戦いの先に何もなかった。
 今は。
 戦いの他にも『素敵な事』がたくさんある。それをもっと知るために、Salaはこの世界を蹂躙しようとしている敵を倒すのだ。
 一体が倒れたのをきっかけに、他のナイトメアもライセンサーに対し威嚇の声を上げ始めた。その低く轟く声に、子供達は恐怖に耳を塞ぎ怯える。
「やだあ!」
「怖いよぉ!」
「ええぇん、お母さぁん!」
「まずいな」
 御曹司の表情にわずかながら焦りが滲む。
 子供達が恐怖のあまりパニックになれば、救出がスムーズに行かなくなる。それだけは避けたい。
 子供達を落ち着かせるため、V・V・V(la0555)が民衆を導く英雄のように声を張り上げた。
「怯えるな! 恐ろしい悪夢は、我々がきっと消し去ってみせよう! もう少しの辛抱だ!」
 見た目は可愛らしい少女のヴァルキュリアだが、その言葉遣いは外見とは裏腹に王侯貴族のようだった。
 V・V・Vの堂々たる宣言は説得力があったようで、子供達は怖いのを我慢して声を上げなくなった。必要以上に騒がずおとなしく助けが来るのを待っている。

「さあさあ、始めましょう。プールサイドでは転ばないように注意しなきゃですねぇ」
 終月が円形プールの方へと走る。
 走りざま、プールの水を蹴ってナイトメアに引っ掛け挑発した。その挑発につられた一体が終月に接近、爪を振り下ろす。
「あらあら、短気なんですねぇ」
 そう来るだろうことは当然予想済み。ひょいっと半身でかわす終月は、なるべく多くのナイトメアを引きつけようと挑発や回避を駆使して立ち回る。
「そっちじゃないわ」
 Salaも終月とは対面の方向から牽制射撃をして、猫虎達を円型プール方面へ追い込もうとした。が、さすがに全部とはいかず、子供達から遠い四匹を誘導するのが精一杯だった。
 その四匹はじわじわと円型プール方面へと移動して行く。
「いいぞ、もう少しだ!」
 御曹司がやきもきしながら見守る中、
「将来性が楽しみな子らをナイトメアに傷つけさせたりはしません! 特に可愛い子!」
 と若干のフェチ臭を漂わせたセリフを叫んだのはマイリア・オルター(la0611)。
 子供達に一番近い所にいるナイトメアに叫びながら、渾身のライトバッシュを放った。
 悪魔チックな角や翼、尻尾からマイリアが放浪者であることは一目瞭然。
 そんなマイリアは、元の世界でも子供が好きだった。当然こちらの世界でも子供好き♪故に子供を害する輩を排除することにこれっぽっちの躊躇いもない。
 スタークレイモアの一撃はナイトメアの胴体を大きく切り裂き、猫虎は動かなくなった。
「今なら」
 敵の包囲が崩れ子供達の近くにナイトメアがいなくなったのを見計らい、有栖と既に上着を脱いでスタンバっていた御曹司がプールに飛び込んだ。
「助けて!」
「この子沈みそう!」
 必死の子供達の所に泳ぎ着くと、御曹司は持っていたビート板に背の低い子を優先に掴まらせた。おかげで沈みそうだった子もかなり安心できたようだ。
「皆怪我はないか? よし、あっちプールサイドまで泳げるか? 無理そうなら俺達が手を貸すからな。知り合いや友達がいるならお互い助け合うんだ」
 御曹司はいつものウザい感じを抑えて、キビキビと子供達の様子を聞いて指示を出す。
「わたくしは有栖といいます。心配はいりません、あなたお名前は?」
 有栖は微笑んで泣きっぱなしの女の子をハグし、背中を優しくぽんぽんと叩いている。
 養護教諭をしているためか、そういう対処はお手の物だ。
「わたくし達が絶対にあなた達を助けます。そのためには皆の協力が必要だから、一緒に頑張りましょうね」
 健気にうなずく女の子を抱いたまま、有栖は近くの者同士でペアを作らせた。そして御曹司が先頭、有栖が一番後ろに付き列になってプールサイドへと移動を始める。

「皆いい感じです。あと少しですよ」
「慌ててはいかんぞ。大丈夫だ、必ず全員無事に避難させるのでな」
 有栖と御曹司が皆を励ましながら進み、あと数メートルで上がれるという所で、避難ルートを警戒していた愛宕(la0017)が警告を発した。
「敵だ! 御曹司君、待って!」
 小柄な少女の愛宕は放浪者だが、見た目はこちらの人間と変わらない。
「ストップだ!」
 御曹司が右手を横に突き出し、皆に止まるよう合図する。
 終月達が引きつけきれなかったナイトメアが二体、両側から接近中なのが見えた。
 もう少し確実に敵を引き付けるなり減らすなどしてから救助を開始した方が、救助中に戦闘するというリスクを減らせたかもしれない。
 ともかく今は子供達を傷つけさせずに、敵を排除しなければ。
 キャーッと子供達の悲鳴が上がった。
「案ずるな、彼女らは強い! この御曹司優が保証する!」
 御曹司がとびきりのドヤ顔で子供達に訴える。子供達はやけに自信満々なその保証をぽかんとした表情で見つめ返すのだった。
 愛宕を狙い猫虎の爪が伸びる。
「おっとぉ!」
 愛宕は素早く身を翻し、所々に青い毛束が混じる黒髪をほんの数本切られただけで回避。
「それ以上近づかせませんよ~」
 伊豆浦がスナイパーライフルZW-1SPを構えポイントショットを発動させる。その手に赤い紋章が浮かび上がった。
 放浪者の伊豆浦は元の異世界でネットアイドルだったらしいが、およそアイドルに似つかわしくない武器の引き金を引き、弾はナイトメアの体の真ん中に命中した。
 どさりとプールサイドに崩れ落ちるナイトメア。
「もう一体来るよ!」
 愛宕の言う通り、反対方向からもう一体ナイトメアが近づいている。しかし、そいつは愛宕達から十数メートル程離れた所で急停止すると、尻尾を振ってトゲトゲを周囲に飛ばしてきた!
「危ない!」
「伏せてください!」
 御曹司と有栖が子供達を庇うように立つ。幸い刺はギリギリ届かず、水面に落ちた。
 刺はV・V・Vの方にも飛んで来て、こちらは確実に射程圏内だ。
「我を舐めてもらっては困るな」
 身を低くし刺を掻い潜り、V・V・Vはナイトメアの懐に入り込む。小太刀『五月雨』を突き出し陽動、猫虎を自分に釘付けにした。
 ナイトメアがV・V・Vの攻撃に気を取られているうちに、愛宕が背後に接近、旋空連牙を繰り出した。
「悪いことをする子はお仕置きだよ!」
 ビーストレガースSPを着けた二連続の蹴りが敵の背中に決まる。だがまだナイトメアは倒れない。
「後は任せるがいい」
 V・V・Vが小太刀を大きく振りかぶり、ライトバッシュを放った。
 ナイトメアは腹を切り裂かれ絶命。
「もふもふは大変好ましいものだが……ナイトメアでは守備範囲外、というやつだな」
 ふ、とV・V・Vは皮肉っぽく笑った。

「もう敵はいません~、皆早く上がってください~」
 伊豆浦がプール内の子供達に手を差し伸べる。
「よし、皆上がるんだ」
 御曹司と有栖も手伝って子供達全員をプールサイドに上がらせた。
「はぐれないように隣の人と手を繋いでくださいね」
 有栖は先程と同じように子供らにペアを組ませ、消耗の激しい子は御曹司が抱き抱えて、今度は建物へと避難だ。
 愛宕達の先導に従いながら、子供達は更衣室のある建物へと小走りで急ぐ。
 彼らはまだ内心怯えていたが、再びV・V・Vが力強く言った。
「君達はとても勇気ある子らだ。ここまでよく頑張ったな。さあ、あともう少しだぞ! 前を向き、走れ」
 すぐ傍で聞いていた男の子はその言葉に元気づけられたのか、
「ありがとう、お姉さん」
 と笑みを向けるのだった。
 それからは何事もなく、子供達は無事建物に避難していた監視員達に預けられた。

●残敵殲滅
「あっ」
 終月の体がよろける。
 うっかりつまづいてしまった……というのは演技で。
 もちろんナイトメアを油断させるためだ。
 ニヤリと笑っているかのように牙を剥き出した猫虎が、よろけた終月に襲いかかってくる。
「ふふふ、ウチはそんなに甘くないんですよぉ」
 待ってましたとばかりに、終月は獅子王SPを思い切り振り抜いた。パワークラッシュだ。
 それは一撃でナイトメアを倒してしまう程、強力だった。

 終月達はナイトメア共を完全に円型プールへと誘い込むことは出来ず、結果円型プールとL字型プールの中間辺りで戦っていたのだが、救助を終えた御曹司達がやって来るのが見えた。
「救出お疲れ様でしたァ。……さてさて、やっと好きにできますねぇ……っても、もうそんなに敵さん残ってませんけどねぇ」
 終月が言い終わるのと同時に、伊豆浦の声が響く。
「十時方向、敵です~!」
 愛宕が反応した。
「これはどうかなっ!?」
 利用者の持ち込んだ物らしきペットボトルの水を拾った愛宕は、中身を辺り一面に撒き散らす。
 顔をしかめ水を嫌がるナイトメアの足元に、ハンドガンに持ち替えたV・V・Vが更に牽制射撃をした。
 するとナイトメアは足をもつれさせ体勢を崩す。
 有栖がすかさずミネルヴァP8000を撃った。
 ナイトメアの体中に穴を開け、仕留めることに成功。
「ふう、倒せて良かったです」

「皆っ、大丈夫か!? 怪我はしてないか!?」
 と御曹司はなぜか女性達の間をちょろちょろしており、結果それが囮のようになっていた。
「優さん、6時方向気をつけてです~!」
 という伊豆浦の声も虚しく、猫虎の尻尾刺飛ばし攻撃が御曹司を捉えた。
「うわ、先の尖った刺っ」
 実は御曹司は先端恐怖症なのだ。こんな尖った物がいくつも飛んでくる状況はかなりヤバイ。
 回避をしようと試みるが、思わず目をつぶってしまい上手く避けることができなかった。
「くっ!」
 イマジナリーシールドのおかげで、頬を少し切られる程度の怪我をしただけで済んだ。
 にも関わらず、御曹司の気持ち的には大怪我をしたような感覚なのだった。
 伊豆浦がポイントショットを使い、ナイトメアを確実に撃ち抜き倒す。
「優さん、大丈夫ですか~?」
「これくらい全然平気だぞ! はっはっは!」
 御曹司はしゃんと背筋を伸ばして笑う。
 この程度で、しかも女性達の前で『先端怖い、もうだめだ~』なんて言ったらカッコ悪すぎるだろ。

 最後の一匹にマイリアが斬りかかって行く。
「人間がどれだけ尊いか分かってんのかナイトメアー! 私は全力で保護するぞーっ!」
 当然そんな言い分など分かるはずもない猫虎はひらりとジャンプしてマイリアの剣を避ける。
「こいつ生意気ーっ!」
「こちらの殲滅もさっさと終わらせましょう」
 続けてSalaが銃撃する。ナイトメアの耳をかすったものの、フェンスを足場に利用したジャンプでかわされてしまった。
「おや、そんな知恵も少しはあるんですねぇ。でも……」
 終月が薄く緋色に輝く剣に力を溜めるイメージをする。
 ナイトメアが爪伸ばし攻撃の構えを見せた。
 殺意丸出しのナイトメアに楽しげな笑みを浮かべる終月。
「これでおしまい、ですよぉ」
 終月のパワークラッシュの方が早く、一気に放たれた力はナイトメアの胴体を切り離さんばかりの勢いで直撃したのだった。

●依頼完了
 取り敢えず有栖は御曹司のシールドをヒールで補修した。
「子供達を無事に救助できて良かったですね」
「うむ! キミ達も無事で良かったぞ!」

「咲、楽しめた?」
 ちらりと遠慮がちに終月を見やったSalaが、尋ねる。
「ええ、まあそれなりにですねぇ。Salaは?」
「うん、まあ。おんなじ、かな」
 二人共、何となく相手の出方をうかがうような受け答え。
 どことなくぎこちない空気が、二人の間に流れた。
 終月とSalaに何があったのか、他の仲間達には知る由もない。

 V・V・Vは、プール全体を見渡した。犠牲になった人々はまだ倒れたままだ。
 本当の悲しみはこれから、彼らの身内や近しい人達を襲うだろう。
 犠牲になった人、その身内の人、それら全ての人達のために、V・V・Vは黙祷を捧げる。
「……必ず、ナイトメアに怯えぬ世界を作ると誓おう。悲しき魂が安らかな眠りにつくことを……祈る」

 その誓いを果たすために、これからもライセンサー達は戦うのだ――。

成功度
成功

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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