町工場のひしめく一画で マスター名:ゆきんこ

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
救出/防衛/危険
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

 建物の崩れる衝撃音と人々の悲鳴に巡回中のパトカーを降りる。
 道幅の狭い角を曲がり、逃げる人々の合間を縫い進んだ先に現れたソレは3体のナイトメアだ。
 沢山の黒い棘に覆われた球体のソレは浮遊しながら棘を飛ばし、棘を伸ばし街を破壊する。
 身の毛のよだつ薄気味悪い姿に、恐怖で背筋が凍るがそうも言っていられない。
 こんな小さな町工場のひしめく一画にナイトメアがなんの用だと思うが、得体の知れないモンスターの事は分からなくて当然だ。
 次から次へと工場も住居も関係無く建物は壊されていく。
 そこは、その場所は人が生活をする場なんだと、怒りが込み上げる。
 焼ける建物の前で呆然と佇む人、崩れた建物の前で誰かの名前を叫ぶ人、棘に捕われる人、男も女も関係無い。
 老人であろうと、子供であっても餌食となってしまえば先はないのだ。
 自分は警察官だと、気持ちを鼓舞するように拳を強く握り締めた。
 今しなくてはいけないことは、避難誘導だと、声を張り上げる。
 車が通ることの難しいこの狭い道路が恨めしい。
 もう少しでも広ければ逃げやすいのにと、思ってもどうしようもない。
 人々を守らなくてはとナイトメアを睨み付けるもその禍々しさに身が竦む。
 己の無力さに打ちひしがれ、目の前の惨事に飲み込まれていく。

 ナイトメアの攻撃にのたうち回る人がいる。
 瓦礫に潰され動けない人がいる。
 親とはぐれ泣く子がいる。

 目の前で起こっている事はなんだと、力が削がれる。
 共に駆けつけたはずの仲間はナイトメアに臆して我先にと逃げだし、既に居なかった。
 SALFへの通報はとうに済んでいる。
 ライセンサーが来るまでに人々の避難を終わらせたい。
 出来るのか? たった一人でなにが出来るのだろうかと迷いが生じる。

 ――殉職――

 浮かんだ不吉な漢字をかき消すように深く息を吐いた。


●目標
ナイトメアの殲滅。


●登場
ナイトメア 小型(S) 成態
・沢山の黒い棘に覆われた球体
・棘を伸ばし刺す
・棘を周囲に飛ばし広範囲への攻撃
・通報された情報ではナイトメアの数は3体。錯綜している状況下なのでそれ以上の可能性あります。


・警察官
SALF通報後、避難誘導を続ける警察官。
協力を得られれば後方での避難効率が向上する。


●場所
軽自動車がやっと通れるかというくらい細い道のうねる小さな町工場が集まる一画。
工場兼住居といった建物が多い住宅地。


道が細くて戦い難い…相手の射線には注意して対応しなくてはいけませんね…まぁ…本より回避は不得手ですので…地形を上手く使って凌ぐか…真っ向から防ぐより他ありませんね…
一先ずメンバーの内では…私は現場に着き次第避難誘導に回ります
通常デュエルナイトソードSPを装備しながら…警察官の方と協力しつつ…避難誘導を手伝います
避難の方向などは…警察官の方の指示に従いましょう…この辺りは…本職の方の経験と知恵を…お借りしたい所です…
また…メンバーの内…野月様(la0096)と森之松様(la1629)がフィールドの中で…高い場所に陣取っていただきますので…要救助者やナイトメアを発見した場合…スマートフォンで…確認を取りたいと思います…もし民間人がナイトメアに襲われそうで距離が遠い時は、盾を装備し全力移動スキルで間に割って入り護ります。可能で必要があれば盾を構えたまま…全力移動の勢いそのままに体当たりをし…ナイトメアの攻撃から民間人を引き離します。
もし要救助者が動けない場合…護りつつ他メンバーに応援要請…安全が確保され次第反撃に転じます。
ナイトメアは…3体とは思わずに行きます…兎に角避難が完了しつつ…その上でフィールドの安全が確保出来るまでは油断できません
他メンバーで回復が必要な方が射程内にいる場合には…プリンセスロッドSPに持ち替えヒールを使います…自身が必要な場合も然り…ですね…■キャラクター描写
喋り方は常に丁寧語で、相手が老若男女問わず変わらず
大まかな口調はプレイング内での表現になります
参加メンバーの中でも一際小さいので避難するのに「子どもが戦っているのに…」というような感じで避難に躊躇された場合強い口調で避難を指示することになるでしょう(実のところ身体が小さい事は結構気にしている)
「先には通しません、この守り容易く抜けるとは思わないでくださいね?」
よーしがんばるぞー!
って、おまわりさん大丈夫?
ここは僕たちに任せて!こう見えてライセンサーなんだから!
えっと、僕もみんなを逃がすの手伝うから、おまわりさんも手伝って!
僕はこんなだから、おまわりさんが言ってくれたほうが回りの人も、聞いてくれると思うんだ。

救出優先で立ち回り。
逃げ遅れてる人たち、とくに女子供の人たちを優先に守る。球体は空を飛ぶので、逃げる人たちから見えない方向を特に注意して警戒。

いざというときは肉壁も辞さないが、基本的に迎撃できるときは迎撃

ほかの人が対応できそうだったらその人に伝える。

自分が頑張ってる姿を見せれば、おまわりさんも頑張ってくれると思うので頑張る!
目的:ナイトメアの殲滅

心情:ったく…ヒーローなんて柄じゃねぇってのによ
まぁ、やれるだけやってみるしかねぇか…!

連絡:他ライセンサーとはスマートフォン等で連絡

行動:避難誘導に向かった連中が一般人を避難させてる間、ナイトメアの迎撃をやるぜ
一般人に被害が行かねぇよう引きつけられりゃ良いんだが。情報通りナイトメアが三体だけとも限らねぇ以上、速い内に倒せんのがベストだろ

とりあえず、現場に着いたらナイトメアの位置を把握。音なり一般人の逃げてくる方向なり辿れば何とか分かんだろ
難しいなら、高所に移動する桔梗と森之松に何か見えねぇか聞いてみるか
散らばってんなら他のライセンサーと分かれて対応しねぇとな

ナイトメアと遭遇したら『獅子王SP』で戦う
『ビーストレガースSP』が届くまで近付けるなら、持ち替えて『旋空連牙』を狙ってみっか

戦闘中に別の場所でナイトメアが見つかったら、『全力移動』でそっちに急行する
「これは……急ぐ必要があるか。間に合えばいいが」

ナイトメアに接敵する事を優先。警察官に会う事があれば避難誘導をお願いする。
逃げ遅れがいれば避難を促す。動けない人は隠れる場所があればいいのだが。
避難している人でごった返して、道を進む事が困難な場合は壁や屋根を伝っていく。

接敵後は敵の数、一般人の有無、周囲の地形など周囲の状況を確認。
移動攻撃で拳銃を使いこちらの存在を察知させ敵の狙いをこちらにそらす。
周囲に人がいる場合は人から離れる方角に誘き寄せる。
可能であればスナイパーの射線に入れさせることが出来ればなお良し。
ある程度、避難が完了するまでは防戦で時間を稼ぎ、避難後に攻勢に打って出る。

ナイトメアと接近戦を行う際は斬撃と打撃のどちらの効きがいいか確認し効果的な方で攻める。
また棘の出す間隔や長さ、射程などを確認し攻撃のタイミングを徐々に掴んでいくように。
一体複数の場合は無理せず防戦または後退。一般人が後ろにいるなら何とか踏ん張る。
基本的には数的優位の状況での戦闘を想定、各個撃破し確実に仕留めていく。
建物倒壊の恐れのある場所での棘飛ばしはなるべく撃たせない。流れ弾で被害が出る恐れがある為。

ダメージを負った場合はヒールで回復。
自身の回復を主に、味方のシールドの損耗が激しい場合はそちらを優先。
森之松さんと一緒に「全力移動」で高所に上り、メイン武装で各個狙撃「ポイントショット」を使用し、ナイトメアを牽制かつ迎撃します。ナイトメアが刺を伸ばして攻撃、もしくは住民を狙うようでしたら、サブ装備の「ミネルヴァP8000」2丁に切り替え、弾幕を形成し、応戦します。銃弾をメインで戦うため住民に当たらぬように注意します。その後状況によっては狙撃銃からサブ武装のマシンガンに切り替え、援護が必要なところに再度「全力移動」でそちらに向かいます。スマホを所持していきます
「俺は日向・進夢。よろしくな!」
まだライセンサーになったばかりだ。
実戦も今回がはじめて。
「俺に出来るのか?」
武器を持つ手に力がはいる。
そもそもなんで自分なんだろう?
もっと相応しい奴なんていくらでも居るはずだ。
これらは、これがはじめてではなく何度となく思った言葉。
頭で何度もリフレインする自問自答。

でも、今は考えてる場合じゃない。

襲われている人がいる。
助けを求めてる人がいる。
それをなんとかしたいと思った。
「理由なんか、それだけで十分だ!」
目の前にいる判りやすい脅威に対して突撃をかける。
まだ、誰も相手がいない敵。
それをフリーにせず抑える事が自分の役目。
避難誘導してる仲間に報いるためにも自分は自分の役目を全うする。
「お前の相手は、この俺だ!」
『移動攻撃』で走って近づきながらその勢いで攻撃。
接近状態にしたなら『パワークラッシュ』
他を襲うな、俺だけを見ろとばかりに声を上げつつ力のかぎり攻撃する。
仲間がいるなら声を掛け合い連携、邪魔にならないように立ち位置を変えるようにしたり、逃げ道を塞ぐように攻撃を放ったりと必死に考えて行動を仕掛けよう。

まだ俺にどれだけできるか判らないけれど、届いた悲鳴を消せる様にはなりたいぜ。

アドリブ絡みは歓迎です。
【心情】
いつでもどこでもお呼びとあれば、いえ、呼ばれなくても即参上、といきたいのですが
なかなかそうはいきませんね
現場に冷静に動いてくれる方がいて、良かったです。
私達が来たからにはもう安心です。
もう少しだけ、皆さんの安全のため、ご協力ください。

【目的】
みんなの無事を確保して、ナイトメアを撃退する。

【準備】
SALFメンバー同士での連絡、通信状況の確認。
特に上から狙う方に、道が広くて敵のいない避難経路の確認をお願い。

【行動】
一般人の避難誘導に動く。
一番前に行く味方から少しはなれて、避難経路の目印になるようにする。
「こちらが安全です、こちらに向かって避難してください」
近くに敵いたら攻撃、敵の目を自分に向ける。

人の流れに余裕ができて前に出られるようになったら応戦しながら逃げ遅れた人を探す。
要救助者がいなければ積極的に戦闘。
「伊達に修行を積んでいません」
攻撃時はスキルをガンガン使用。

今回は警察の方がいて助かりました。
SALFだけで世界を守ることはできませんから。

無事に戻れたらかりんとうまんじゅうとほうじ茶で打ち上げします。

アドリブ、交流歓迎。
【心情】
「やってくれたなナイトメア共っ!許せんっ!」

【目的】
依頼を解決する為、避難誘導が終るまで敵の牽制を目的として参加する。
PC自身は敵のヘイトを取る事を目的に参加している。

【準備】
作戦があれば事前に打ち合わせ、それに協力で応える。

【行動】
作戦開始後、野月さん一緒に「全力移動」で高所に上り、各個狙撃「ポイントショット」を使用し、ナイトメアを牽制かつ迎撃。
市民をナイトメアが狙うようなら野月さんと敵の注意を引きつけ距離を取りつつ応戦。 棘を伸ばし刺す攻撃の際に地面に刺さった所を狙い重心が傾き倒れる・またはよろけさせて味方の援護をする。

「ゲームオーバーだ、弩畜生共」
戦闘終了後には散って逝った人達へ黙祷する。

 逃げ惑う人々の姿に集まったライセンサー達は天を仰ぐ。ただでさえ狭い道だというのにナイトメアのせいで壊れた建物が避難の邪魔をしている。
「俺は日向・進夢。よろしくな!」
「よろしくお願いします」
「よーしがんばるぞー! って、おまわりさん大丈夫?」
「通報者の心配ばかりしてられないだろう?」
「ナイトメアの数は、1,2……後は建物の向こうか」
「スマホでのグループ通話は大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません」
「それではお粗末ながら作戦会議といこうか」
 それぞれの動きを確認した8人は目の前の脅威を取り除く、その為に各々散っていく。言葉を交わす暇があるなら戦うだけだ。

 野月 桔梗(la0096)と森之松(la1629)のスナイパー組が左右に展開する姿を横目に、目の前にいるナイトメアに向かって日向 進夢(la0125)は突撃するが、上手くいかない。初めての実戦に力が入りすぎたのだろうか、そもそもなんで自分なんだろう? もっと相応しい奴なんていくらでも居るはずだ。これらは、これがはじめてではなく何度となく思った。頭で何度もリフレインする自問自答に答えは出ない。
「俺に出来るのか?」
 武器を持つ手に力がはいる。
「アレに進夢が向かったし、俺はあっちだな」
 目視で確認したナイトメアの場所は大体は把握したが、情報通り3体だけとも限らない以上早い内に倒さなくてはと、狭い道を必至に逃げてくる人々の方向へ真っ直ぐ向かう。
「ったく…ヒーローなんて柄じゃねぇってのによ」
 風上 仁(la0977)は伸びてくる棘から必至に逃げる人を守るように前に飛び出し、斬付けた手応えに構えを正した。

「さあ、こっち! こっちだよ」
 凜(la0526)の元気な声にどこに逃げればいいのか戸惑う人々が振り向く。彼の明るい顔に恐怖と絶望で彩られていた顔に安堵が広がる。

 狙撃には見晴らしのいい所と野月は建物の上を目指す。森之松とポイントを置く場所は決めていない。決めなくとも戦いの基本に沿えばいいだけと体が動く。

 避難にごった返す状況にヴィルヘルミナ ディートリヒ(la0610)は壁を屋根を伝い見晴しのいい場所へ立つ。
「これは……急ぐ必要があるか。間に合えばいいが」
 避難誘導でも戦うにもまずは状況の確認だ。
「スナイパー組はあっちとこっちだな。倒壊しそうな建物は……」
 周囲を見渡し彼女は小太刀をハンドガンに持替えた。

「野月さん森之松さん、道が広くて敵のいない避難経路ってありますか?」
 天険 珠魚(la0477)の問いに野月は周囲を見渡す。
「悪いが、ここから広い道は見えない」
「ワシからも見えないな」
 二人の答えに頭の髪だか羽根だかが、がっかりしたように下がりすぐに持ち直したように上がる。
「み、皆様此方へお逃げ下さい。私達ライセンサーが来たからには大丈夫、です……」
 甲斐 雪姫(la0285)は裏返った声に恥ずかしがりながらも懸命に声を出す。
「……子供?」
「お嬢ちゃんが戦っているのに逃げるなんて……」
 小さな彼女の姿に逃げる事を躊躇う男達に甲斐は口調を強める。
「お逃げ下さい! 貴方達を守るのが私の仕事です」
 彼女剣幕に男達は慌てて走る。彼らを見送り、自身の小さな体つきに子供に見られたと溜息を溢す。落ち込んではいられないと苦手な大声を張る。

 高所でEXISを構える森之松は先程までの老いた姿と変わり、若々しい。白い髪は黒く、スーツの上からでも分かるほど筋肉は隆起していた。
「さて、本気だしていこうか!」
 覗いたスコープからはナイトメアが日向の攻撃を躱していた。狙いを定め引き金を引けば思い通りに敵にぶつかる。
 狙撃が命中したナイトメアは棘を伸ばし逃げる人を狙う。ヴィルヘルミナはこちらの存在を察知させようと走りながらハンドガンを放つ。目論見通り敵の狙いは彼女に向かった。棘が引っ込み、彼女に向かって進む。
 追随するように日向もチャージングランスを貫通させる。致命傷とならなかったことに戦いの難しさを感じた。
 痛み怒りに任せるように放たれる棘に甲斐は塀を足場に屋根で、巨大さを誇る壁状のジャイアントシールドを傘のように人々の上に広げる。
「先には通しません、この守り容易く抜けるとは思わないでくださいね?」
 狭い道幅を被うように展開する盾に棘は弾かれ、彼女の活躍に子供がと戸惑っていた人々は頼もしいと彼女を見上げる。
 転んだ子供を助け起し、凜は笑顔を向ける。建物の影になるここは見通しが悪く、警戒を怠らる訳にはいかない。自分達の他に避難誘導をしている人はいないかと平行して周囲に気を向ける。
「こちらが安全です、こちらに向かって避難してください」
 仲間から距離を置き、目印となるよう天険は声を張る。
「少しでも逃げやすそうな道があったら教えてください。あと、なにかあったら私もすぐ応援に行きますから」
 簡単な言葉で返す仲間に頼もしさを感じ、少しでも目立つように飛び跳ねる。

 襲われ逃げる人々を視界の端に置き野月は構えていたクーパーT220をミネルヴァP8000に切り替え、フルオートでナイトメアに向ける。
「甘いわね」
 棘を弾き確実に当てる。この位出来て当たり前とクールな表情を崩さず、こぼれ弾が人に向かわないように注意は怠らない。

「あ、ありがとう……」
 目付きの悪い風上に臆しながらも礼をいう親子に、こそばゆさを感じながらそれとは逆の態度になる。
「邪魔くせぇ、さっさと逃げろ! 死にてぇのか!?」
 乱暴な言葉使いに泣き出す子供にどうしたものかと内心慌てるも、目の前の脅威を先に片付けなくてはと斬り掛かる。が、逆にその棘を受けてしまう。泣く子供の前で醜態は晒せないと顔を上げる。
「大丈夫か? 無理はするなよ!」
 風上が棘に貫かれた様子に森之松は独りごちる。無駄な血を流してなるものか、即時処分してやるぞ弩畜生共と、仲間の危機にスコープ越しに見開いた目でナイトメアに狙いを定める。狙ったポイントを的確に撃ち抜くその腕は目を見張った。
「1つ!」
 スマホの通話越しに聞こえた数に心強くも、負けていられないと皆、心新たにする。
 目の前でナイトメアを狙撃された様子に風上は膝をついる場合ではないと、首にかけているチェーンに通した指輪を握りる。
「…チッ。やるしかねぇんだろ。やってやるっつの…!」
 恐怖に顔を歪めては格好がつかないと立ち上がった。

 中々倒れないナイトメアに野月は表情を崩さない。彼女の攻撃は確実に敵の力を削いでいた。確実に一個ずつ撃破していく為に彼女の射撃は止まらない。

「あ! おまわりさん、無事だったんだね」
 凛はずっと気になっていた警察官の姿を、見つけ嬉しそうに声をかける。ライセンサーの凜に、埃にまみれた警察官の恐怖に張り詰めていた顔が和らいだ。
「僕もみんなを逃がすの手伝うから、おまわりさんも手伝って!」
 引き続き避難誘導を頼むと、見るからに顔が青ざめる。協力を拒まれるかと凜は顔を曇らせた。警察官は大きく深呼吸し居住まいを正すかのように敬礼を向ける。
「勿論です!」
 快諾する彼は震えていた。誰だってナイトメアは怖い。だからこそ、避難誘導の手を借り早くナイトメアを倒したいのだ。
「僕はこんなだから、おまわりさんが言ってくれたほうが回りの人も、聞いてくれると思うんだ」
 少しでも大きく見せようと背伸びする凜に警察官は微笑ましく思う。
「大丈夫です。本官の仕事は人を町を守る事ですから。皆さんの活躍期待しております」
 凜の不安を払拭するように彼は声を張り上げ、避難先へ誘導していく。

「まだ、油断は出来ません。皆様、心落ち着けてお逃げ下さい」
 頭上にいた甲斐が着物の袖をはためかせ地上へ降り立つ。彼女の指示に従う限り、守ってもらえると幾分恐怖が和らいでいく。
 飛ばされた棘の被害を甲斐が押えたといっても全てを防げた訳ではない。まだ避難の完了していない人々、建物の崩れる様子に日向は己の弱さを実感する。
「他を襲うな、俺だけを見ろ!」
 声を上げ力のかぎり突き出す。側にいたヴィルヘルミナはその攻撃に巻き込まれまいと彼から距離を取る。再び棘を飛ばされれば建物倒壊の危険が出てくると、相手の怯んだ隙に追撃する。
 天険は視界の端で蠢くナイトメアに矢をつがえるように手を上げる。なにもない場所に光が集まり矢を形成していく姿は幻想的だ。これがイマジナリードライブなのかと逃げることも忘れて魅入ってしまう。放たれたそれは真っ直ぐ敵に向かい、ナイトメアに隠れていた日向とヴィルヘルミナの姿を露わにした。
「お? 2つ!」
 狙いを定めていたナイトメアが倒され、スコープから目を離す。若い者には負けんと腰をさすり森之松は次の獲物を探す。
 ヴィルヘルミナは日向と互いに言葉を交わすことなくアイコンタクトだけで次の行動へ移る。森之松が撃退数を数えていため、なんとなく把握しているが、それでも状況の把握は大事だと先程とは違う見晴しのいい場所へ向かう。
 日向も助けを求める人がいる現状に走る。彼に助けを求め縋る人には逃げる先を指さす。杖を付く老人を見つけた日向は背を差し出した。
「爺ちゃん乗りな。ここは危ない」
 彼の戦いを目にしていた老人は恐縮し、遠慮する。
「助けが必要な人がいれば、それを助ける為に力を尽くす。人として当たり前の事じゃないか」
 彼の優しい言葉に老人は体を預けた。

 3体のナイトメアと交戦、残り1体だ。凜は警察官から聞いた通りに進み建物の影に隠れていたナイトメアを発見する。
「4体目だ!」
 見つけたとほぼ同時に放たれる棘を避ける余裕はなく、見開いた目をギュッと瞑る。彼を守るように機関銃が炸裂するが全ての棘を弾くことはなく凜に降り注ぐ。
 4体目のナイトメアが放つ棘に森之松は機関銃で弾幕を張るが、全てを防ぐことは出来なかった。受けた棘に悔しさを滲ませ森之松は凜の無事を確認する。
「凜、大丈夫か? 無理はするなよ!」
「森之松さんだったんだ。ありがとう!」
 元気な声を聞きながら次の狙撃に備え、凜は油断していたと反省しつつ4体目のナイトメア発見の報を伝える。
「やっぱり、3体以上いましたか……」
 混乱していた人の流れが落ち着き、天険はナイトメア退治に向かおうしていたところ、聞こえた凜の報告の4体目に向かって走り出す。羽ばたくような動きを見せる髪に空でも飛びそうだと逃げる人々は彼女を見送った。

「お兄ちゃん、大丈夫?」
 ナイトメアから攻撃を受けた風上を心配する子供に舌打ちで返してしまう。彼の態度の悪さに泣いていた子供は、逃げるように促す母の手を解き、風上に輝く瞳を向けていた。自分に向けられるには眩しすぎると子供から目を逸らし、その頭を乱暴に撫で、途絶えることのない銃撃音に向かって全力を傾ける。

「ここは……もう大丈夫でしょうか」
 避難の指示に逆らうことなく進む人々を横目に甲斐は場所を変える。未だに銃撃音の止まない辺りが気になるのだ。4体目も気になるが、向こうから銃撃音はずっと聞こえていた。人手が必要ならばまずは其方だろうと、避難の指示は忘れず銃撃音に向かって進む。

 幾ら撃っても倒れる様子を見せず、逃げる人々に棘を伸ばすナイトメアに、フルオート射撃は飽きたとばかりに狙撃銃で弾丸を撃ち込む。
「悪いけど、こっちの相手をしてもらうわよ。」
 野月は止めにならなかったと眉を寄せ、次の狙撃の準備に入った。

「爺ちゃん、ここまで来れば大丈夫だから行くよ」
 老人からのお礼を待つ事なく日向は4体目を目掛けて走り出す。
 逃げる人を避けるようにヴィルヘルミナは塀の上を走る。大分人の数が少なくなった事に心が軽くなる。ナイトメアの犠牲が出ることは勿論、戦闘の被害は胸糞が悪い。瓦礫の側で座り込む男に避難を呼びかける。彼は手を振るだけで顔も上げない。
「動けないのか? せめてあの角まで……」
 疲れ切った顔で首を横に振る男の脇に肩を入れる。
「!? なにをするんだ?」
「あの角はナイトメアからの死角になるはずだ。そこまで肩を貸してやる」
 男は小さな声で礼を言い、彼女の肩を借りた。

 銃撃をものともせずナイトメアは棘を伸ばしていた。風上はあの眩しい瞳に応えようと気合いを入れるが、ナイトメアと対峙する恐怖は拭えない。逃げてしまえば楽になれるだろうかと過ぎる思いに蓋をするように斬り払う。確かな手応えに油断しては拙いと、脇を締める。
 続けとばかりに甲斐が切り結び、倒れないナイトメアに忌々しく思う。大人しい彼女から想像も付かないその太刀筋に見ていた人は驚かされた。
 次こそは確実に打ち込むと狙いを定める野月の狙撃は見事だった。始終冷静だった彼女でも緊張していたのだろう。緊張を解くように長く細い息を吐く。

 漆黒の柄を握り締め、凜は塀を足場に袈裟懸けに切り込む。僅かばかりでも入った刃は薄く緋色に輝く。一撃必殺にならなかったことは正直悔しい。掠めただけで終わらせるものかとナイトメアを睨み付ける。
 腰の痛みは気のせいだと森之松はスコープから目を離さない。
「やってくれたなナイトメア共っ! 許せんっ!」
 意気込みを込めた一発はナイトメアを削ぐだけだった。
「あれを倒して、皆さんかりんとうまんじゅうとほうじ茶で打ち上げをしましょう」
 飛鳥翔にいつ持替えたのか天険はナイトメアがよく見える場所に陣取り、自身よりも長い弓を力一杯に引く。独特なしなり方にどうなるのかと心配をはね除け、矢は鳥が飛翔するように鋭い音を立てナイトメアを射貫いた。
「ゲームオーバーだ、弩畜生共」
 と、森之松の声が戦闘の終了を教えた。

 車がやっと通れるくらい狭い道で、避難も終了していない中ナイトメアを倒すこの人達は凄い。混乱した状況説明での通報で申し訳なく、一介の警察官になにが出来るのかと悩んでいた自分が恥ずかしい。それでも、もうナイトメアに遭遇することだけは嫌だとハッキリ思う。周囲に見逃したナイトメアが居ないか探索を終えた皆さんが集まる。一仕事を終えたと和やかな雰囲気に、今までナイトメアと戦っていたなんて嘘のようだ。
「皆さん! ありがとうございました」
 自分に倣うように避難した人々も各々にお礼を口にした。

成功度
成功

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

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