山車は音もなく街を練り歩く マスター名:茶務夏

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
奪還
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

●奪われた部品と、異形の戦車
「こんな時にナイトメアのお出ましかよ」
 東京は下町の町工場で、職人たちが不安に顔を見合わせた。
「やっと完成して後は納品するだけだってのによお……」
 一同は、ここ最近心血を注ぎ続けてきた部品に視線を集める。
 とあるメガコーポの依頼によって下請け製作した、ある部品の試作品だ。手渡された設計図をただ再現したのではうまくいかない部分などは何度となくフィードバックさせ、独自の工夫も凝らした、今のところ全世界を探してもこの町工場でしか作り上げられない品である。
 すでに軽トラの荷台並みに大きな台車に乗せて固定し、メガコーポからの迎えを待って搬出するばかりであったのに。
「まあ落ち着け」
 工場長が全員を宥める。
「ライセンサーが部品の護衛に来てくれるそうだ。彼らが来てくれたら俺らもすぐに避難――」
 その時、外につながる工場のシャッターが吹き飛んだ。
 現れたのは、人間よりも一回り大きいサソリとタコがそれぞれ数体。タコは器用にも四本の腕で二組の弓矢を構えている。
 ライセンサーでもない一般人が敵う相手ではない。一同はせめて殺されないことを願いつつ、壁際にはりつくことしかできなかった。
 幸い、ナイトメアは人間には関心がなかったようで、部品を固定した台車へと一目散に向かっていく。
 サソリが台車をずりずりと押していく。そしてシャッターの向こうに待機していたものに近づいていった。
 それは、バッファローに戦車が癒合したような、異様な存在だった。前足は戦車の上に載っているが、後ろ足の辺りは完全に機械車両と一体化している。異世界のどこかにはそんな生き物がいるのか、それとも別々の世界で捕食したバッファローと戦車がナイトメアの中で奇怪な融合を遂げたのか。
 タコが戦車に近づいていくと、その車体から鎖を引きずり出す。そして慣れた手つきで台車へと縛りつけ、野牛戦車と台車を接続した。
 そのまま三種の異形は去っていった。奇異な山車にも見紛う一行だが、あいにくにぎやかな祭囃子とも楽しげな歓声とも縁のない、静々とした不気味な行進だった。



その、ほんの少し後。
「あちゃあ、間に合いませんでしたか」
一人だけ他のライセンサーより一足早く工場に着いた三十代の男性が、頭を掻いた。

●魔群の帰還を阻めるか
「まだ部品は奪い返せる目がある。大通りまでの近道になる裏路地を走りながら、説明させてもらうぜ」
 少し遅れて町工場へ到着した君たちに、三十代の男が言った。
 彼の名は福間。誠実な仕事ぶりで信頼の厚いライセンサーだ。
「敵は八体。台車に乗った部品を引っぱっているのは、キャタピラ装着バッファロー型だな。……口から出まかせ言ってるわけじゃないぞ。ほんとにそういうナイトメアがいるんだよ。俺が戦ったことのある個体より、だいぶ足は遅い気がするが」
 言いながら、君たちの携帯端末へ映像を送ってくる。確かにそうとしか呼びようのない存在が、戦場を猛スピードで駆け回り、口から炎の塊を吐いていた。
「周囲に展開しているのは、巨大サソリ型が三体に、巨大タコ型が四体。サソリは尻尾の針を飛ばして仲間を回復し、タコは弓矢を一度に二本射てくる。……ほんとだからな? 俺はこいつらとも交戦経験あるんだし」
 再び別の映像で証拠を見せられた。
「奪い返さなければならない部品は、台車に固定されている。台車は鎖でバッファロー型につながっている。その鎖は、バッファロー型のキャタピラからタコ型によって引き出されたものらしい。切れないことはなかろうが、本体同様頑丈かもしれないな。本体を倒すよりは楽だろうけれど」
 話すうちに、遠目に異形の山車が見えてきた。そして北側からは激しい戦闘音も聞こえてくる。
「あいつらの現在地から百五十メートル、この広い道路を北上すると、大きな交差点にナイトメアが寄り集まっていて、ライセンサーと派手にドンパチしている。で、なんで集まってるかと言えば、この近隣から盗んできた部品の頑丈なタイプについて、そこで解体作業をやってるからなんだな。そこに放り込まれたら、俺らが護衛を頼まれた部品もたちまちスクラップになるだろう」
 逆に言えば、そこに放り込まれない限りは守れるということだ。解体現場のナイトメアどもはその場での作業と戦闘に手一杯で、わざわざ出迎えに来てやるほど優しくも暇でもないらしい。
「単純に考えれば、鎖を切って、台車を誰かが引っぱって、南へ戻ればおしまいだ。可能であれば殲滅こそが望ましいが、そこまで俺らに要求されてはいないとも言える。ただ……」
 なぜか福間はそこで言葉を切る。そして不審を覚えた君たちに言った。
「あの三種のナイトメアは、食えばわりとうまい。そして、ナイトメア専門のグルメが俺の知人にいて、この三種の肉を持って行けば、けっこうな値段で買い取ってくれる」
 新たな情報が、君たちに投げ込まれた。


●目標
 部品の奪還(奪った台車を引いたPCが南へ全力移動すれば達成とする。生き残ったナイトメアがすべて撤退した場合にも達成)、可能ならナイトメアの殲滅も。

●状況
 晴れて暑い、昼下がりの南北にのびた広い道路。一般人は避難していて一人もいない。

●敵勢力
キャタピラ装着バッファロー型×1
 移動力4(PL情報:本当は8だが、進軍速度に合わせている。サソリ型とタコ型が全滅すると、8で移動開始)。生命力と防御力はかなり高め。回避力低め。3×3の炎弾(射程3、識別可能)を進行方向へ吐いて(自分より北側にいる敵を)攻撃。知能は低め。危険度4。

巨大サソリ型×3
 移動力4。バッファロー型が倒される・またはバッファロー型と台車の鎖が切れると、台車を代わりに押す(移動力は2となる)。生命力と防御力は高め。回避力低め。鋏で攻撃(射程1)。尻尾の針を飛ばして、味方のダメージを回復させる(射程4)。知能はそれなり。危険度3。

巨大タコ型×4
 移動力4。バッファロー型と台車をつなぐ鎖が切れると、そのターンは隣接して修理に取り掛かる(一体が一ターン費やして修理完了)。バッファロー型とサソリ型が全滅すると撤退(PL情報)。生命力と防御力はやや高め。回避力は普通。弓矢で二回攻撃してくる(射程5)。知能はそれなり。危険度3。

●味方NPC
福間
 中堅ライセンサー。スナイパー/グラップラー。移動力4。射程6。グルメな知人がいて、ナイトメアを食材として買い取らせることができる。PCの指示に従う。

略図
12345
□タ□タ□A
サ×バ×サB
□タ車タ□C
□□サ□□D
 バッファローはひたすら北へ直進。前にPCなどが立ちはだかっても轢いていく(轢く場合、移動力は1マスで2消費。轢かれたままバッファローが行動終了すると、轢かれているPCはバッファローが動くまで移動不可)。行動順は、バッファロー→タコ→サソリ。
 車が戦闘開始時より30マス以上北に到着すると、失敗。
 PCと福間の初期配置は、×以外は自由(略図外でもOK)。
 鎖はPCか福間が合計9回攻撃すれば切れる(PL情報)。


【心情】
「随分と愉快なナイトメア御一行だネ、まるで百鬼夜行みたいだヨ。
パレードの行進として見たら2流以下かナ……まぁ、楽しめたらいいんだけどネ。」(楽し気な表情で)
【目的】
主にB5,D3のサソリ撃破
【行動】
・戦闘時
開始の合図と共に道路脇から奇襲のように飛び出し、B5から東に4マス北に1マスの位置に移動
ミネルヴァP8000をB5のサソリ型に射撃
「game start! ってネ♪」
メイン武器はリロードせず、撃ちきったらサブ武器のスナイパーライフルと持ち替える
サブのP8000も撃ちきった場合スナイパーライフルに持ち替えて攻撃を続行
B5のサソリ撃破後はD3のサソリを優先的に攻撃して退路の確保を
誰かが台車を奪還した瞬間にバッファロー型殲滅へと移行
全力移動を使用して体をよじ登り、背にまたがる。
武器をサブのP8000に持ち替え、頭に向けてポイントショットをゼロ距離で撃ちこみ続ける
「さぁ、ロデオタイムと洒落込もうじゃないかイ!」

・食材について
食べることを優先、余った分は売却
「……ナイトメアって美味しいのかナ?」
味の感想は素直に言う。
戦闘開始直後、朝霧さんに合わせ敵の進行方向の地面を抉って隙を作る。
その後C列のタコ2匹にちょっかいをかけるように攻撃して、弓矢で狙われる囮になる。
旋空連牙を味方の攻撃に合わせラッシュをかけ、確実に倒していく。
早めに弓矢破壊。
タコ型が片付いたら蠍を狙う。
針の部分は回復に使われると厄介なので、早めに部位の破壊をするため優先的に狙う。
鎖切断の人手が足りなければ適宜手伝う。
バッファロー型の敵に攻撃があまり効いていないようであれば、
キャタピラ側面からの攻撃を試みる(機械部分に負荷をかけ、壊せないかどうか)
敵全殲滅を狙うため、台車を奪った後は、ある程度南に(依頼が完了しない程度に)持っていったら敵殲滅を優先する。
戦闘終了後敵を調理して味見する流れになったら参加する。
味見して残った分の敵の肉は買い取ってもらう。
アレンジ大歓迎。女性は名前呼び捨て、男性は名前君付け。
福間さん。年上だし、中堅ってことは稼ぎも十分ね!ふふふ、ここは女の魅力でおとさなきゃ!
「初めてだから怖いの…、何かあったら守ってくれますか?」上目遣いで…決まった!

「今晩はパーティよー!」
先陣切って[パワークラッシュ]で敵の進行方向の地面を抉って隙を作る!戦闘開始の合図よ!
回復を防ぐ為にB列蠍の尻尾攻撃よ!尻尾の次は鋏狙い!
蠍の後は鎖破壊![旋空連牙]で金属疲労的なのを狙うわ。攻撃は最大の防御!怪我したら治してもらおっと。

「逃すかっっ!私の焼肉!」
[パワークラッシュ]で、バッファローの足めがけて攻撃。
「あはははっ、切れちゃったー。これで動けないわね?」
にっこり笑ってトドメを刺すわ。最後に見る顔は、笑顔の方が良いものね。白のブラウスが敵で汚れちゃった、洗濯で落ちるかしら…はーあ。

「ん~美味しい!やっぱり新鮮だから最高ね!」料理を堪能。しっかり福間さんの隣キープよ!
「あの、福間さん。今日はありがとうございました。良かったらこれからも色々教えてくださいませんか?」連絡先を受け取る受け取らないは任せます。以下反応
>NG
「なんっで私を振るの?信じられない!」福間さんから離れたところでお酒飲んで管を巻く
>OK
「ふふ、嬉しいー。早く福間さんの横に並べるようになりたいなっ」胸を当てるように腕も組んじゃったりして!
「初任務から早速、面白くなって来たじゃないか」

主目的の部品の奪還は当然こなすにしても、食べる気満々。
もう敵ではなく獲物としてしか見ていない。

初期位置はB1から3マス左(西)
並走しながらB1サソリ→鎖→バッファロー(→タコ)の順に攻撃
位置が離れているので、個々でなく全体の様子を観察
何かに気付いても出来るだけ注意喚起に留めて自分は元の動きを維持

最初はエネルギーガンでB1のサソリを攻撃
撃破でき次第、A&H FD5Aに持ち替えて鎖を狙う
「こちらも片付いた!次に移る!」
鎖が切れたら魔導書に持ち替えてフォースアローでバッファローを削っていく
「いつ映像通りの速度で走り出すかもわからん、早めに落とすぞ!」
バッファローが倒れてなお残っている敵がいるなら可能な限り追撃、フォースアローを惜しまない

射程内の味方の生命が低下(既にその味方を狙っている敵の攻撃が全て命中したら倒れるくらいを目安に)したら
プリンセスロッドに持ち替えてヒール
「気を抜くなよ!向こうもこちらを食せるんだからな!」

終わったら食べる。
「流石に焼いた方が良いと思うが」
「野性味というやつだろうか。多少癖はあるが、いけるな」
「しかし、よくタッパなんて持っていたな」
【目的】
部品の奪還、ナイトメアの殲滅

【行動】
近接武器にて4列側から台車の鎖を攻撃
鎖が切れてバッファロー型の行動が止まればC4のタコ型を攻撃し鎖の修理を妨害兼討伐
その後バッファロー型に攻撃
バッファロー型討伐後はタコ型→サソリ型の順に討伐を狙う

鎖を切った後タコ型の討伐が間に合わずバッファロー型の行動が再開した際は鎖を攻撃するところからやり直し
バッファロー型が20マス以上進んだ場合全力移動でバッファロー型の前に出て盾に持ち替え自身を障害物として移動を妨害する

他のメンバーで体力半分以下になりそうな人がいたらバッファロー型の行動を警戒しつつ回復するまで守りに行く

任務達成後は討伐出来た各種ナイトメアを料理し皆で軽く食べ、残りを福間に任せて売却
【心情】「…初陣…だけど…慣らすのには…丁度いい…かな。」

【目標】
・台車の奪取
・敵の殲滅
・可能なら食料+売り物として確保

【作戦の流れ】
両側面からサソリを攻撃し撃破→鎖破壊→各自打ち合わせ通りに分かれて各敵に対応。

【行動】
・基本的に作戦の流れに沿って行動する。
・個人の動きとしてはサソリ側面攻撃による撃破→鎖破壊→バッファロー撃破→タコ撃破(鎖破壊後、バッファロー組の人数や戦況が十分だと思ったらタコ組の援護に回る)

・気を付けるべき点としてはバッファローの正面に絶対立たないことと、予想外の方向からの攻撃に注意、警戒する。

【戦闘】
・サソリ戦
仲間と合わせて最初に尻尾へフォースアローを使用。
以降は生命の書で仲間への攻撃を阻止する形で攻撃する。
2体目のサソリへ攻撃する時も尻尾へフォースアローを使用。
尻尾がない場合は胴体部を狙う。
※サソリ戦ではフォースアローの使用は2回に抑える。

【鎖破壊】
・生命の書で攻撃。

【バッファローorタコ戦】
・バッファロー相手に人数や状況を見て確実に倒せると判断したらタコへ向かう。
バッファローと戦う場合、機動力を落とす為に足を優先的に攻撃。
隙ができたらフォースアローを使用。
機動力が落ちたら胴体を攻撃。

味方の誰かが攻撃を受けて重症であれば攻撃の合間にヒールで回復する。
「…無理…しないように…・ね。」
隊員と一緒に初陣を飾れるのは幸先が良い
『美味しい』仕事だ。ふふっ、楽しみだな
【目的】
台車を確実に奪取
二重の意味でナイトメア達を美味しく頂くこと

【役割】
台車の確保

【同行参加】
エドウィナ(la0837)

【行動】
臨時収入や美味しい思いを出来ると聞いて颯爽と参戦
偶然一緒になった、己の傭兵団所属のエディの肩を抱きながら豪快に笑う

「エディ。今日のノルマはこれを満杯にすることだ」(にやり)

仲間達の行動に合わせて、最初は目立たぬように立ち回り
此処ぞという好機が訪れたところで、一気に台車を確保
そのまま南側、離脱ライン手前まで台車を引いて駆け抜ける
「悪いがこれは貴様らには不要だ」
「エディ! 後は任せる。なるべく綺麗に仕留めるんだぞ」(無茶振り)

完全殲滅狙いなので、直ぐに離脱はせずにギリギリで様子見
が、もしも台車が危険、または依頼失敗に繋がるような状況なら離脱
こうした状況判断を、じっと見定めて行動する
「バッファローはステーキだな。蠍は揚げて、蛸は茹でるか」
「夢とは覚めるものだ。虚無へと堕ちろ、悪夢共」

無事依頼達成、及び殲滅完了ならば
リュックの中にお土産を詰め込んだ後は、ボーナス確保と味を楽しみに
「囲った責任を果たすのが、私の役目だからな」
「だが、これはこれだ。エディ、一足早く楽しむぞ♪」

※アドリブ歓迎
【※仮プレ】極端に全体方針と矛盾する場合、全体方針を優先。

【目的】
肉が美味と聞いて参上

【準備】
戦闘前、福間にOPで語った情報以外に何か無いか
以前に気が付いた事が無いか、以前と明らかに違う所は無いか念の為に尋ねる
情報を引き出せたら味方に教え情報共有

【NPC指示】
あるなら「足止め」スキルを適宜、バッファローに打ち込み移動阻害して欲しいと頼む

【行動】
・初期配置は「B5サ」の真横「B6」。

・近接攻撃&「ライトバッシュ」で当てる事を優先してサソリに攻撃
撃破後、鎖に向かい近接攻撃で破壊を狙うが、タコの攻撃が厳しい場合は「盾」に持ち替え防御を行いつつ盾で攻撃を続ける。

・鎖破壊後「大剣」に持ち替え、バッファロー型を狙う。
何となく、鎖を破壊しても我関せずで、ひたすら北に向かいそうな予感がするので
常に側面or背後からキャタピラ部分に狙いを付け、移動力を削ぐ事を優先。
敵の正面や進行方向には絶対に入らないようにする、もし入った場合は射線上から退避する事を最優先
最悪、転がってでも退避。

・「ヒ-ル」による回復は基本的に生命力が半分になった位を目安に回復。
集中的に攻撃を受けていたり、囮になり敵の攻撃を集める等の大きな損傷が見込まれる場合はソチラを優先回復。

【退治後】
・可能なら三種の肉を食べてみたい。

●戦場へ向かいながら
 ナイトメアがうまいと聞き、何人かは色めき立った。
「戦場かと思いきや、ここはお肉食べ放題の会場でしたか」
 古角 みちる(la0719)が真っ先に食いついた。燃費が悪く四六時中何か食べている上に、味覚の幅が広いから、そもそも食えれば何でも歓迎な少女である。
「エディ。今日のノルマはこれを満杯にすることだ」
 エリステリア・ヴァステル(la0032)は、己の傭兵団所属のエドウィナ(la0837)の肩を抱いて、持ち込んでいた大きめのタッパーをちらりと見せると、豪快に笑った。後頭部で束ねた赤い髪がにぎやかに跳ねる。
「初任務から面白くなって来たじゃないか。……しかし、よくタッパーなんて持っていたな」
 エドウィナは呆れとも感心ともつかない口調で言う。本来ならただの護衛で終わるかもしれなかった任務に、なぜ。
「あー、水差すようで悪いが、食えないとか毒持ちのナイトメアも珍しくないからな? 今回はいいが、食えるとはっきりしない時はくれぐれも食べないように」
 福間が新人たちに釘を刺す。

 そんな彼に、朝霧 穂花(la0528)がにじり寄る。
(年上だし、中堅ってことは稼ぎも十分ね! ふふふ、ここは女の魅力でおとさなきゃ!)
 黙って突っ立っていれば清楚と言われる顔立ちだが、素の言動がアレ過ぎる。本人もそこは自覚していて、狙えそうな相手を見つけるとぶりっ子モードになるのが常だ。
「初めてだから怖いの……、何かあったら守ってくれますか?」
 上目遣いで放つ台詞に内心(決まった!)と手応えあり。
「ああ、できる限りはがんばるさ」
 福間の返事も悪くはない。

 みちるは福間になお情報を求めるが、町工場での目撃情報も含め、この走りながらの打ち合わせで材料にしたことばかり。まあしかたない。
「あなたはスナイパーですよね、なら――」
 一つ提案をした。

「バッファローにタコにサソリに……ってなんでこうも共通点ないのかしら。キャタピラついてたり、タコが弓矢使うとかツッコミ所多すぎるし! 僕の初仕事、波乱に満ちてるなぁー」
「随分と愉快なナイトメア御一行だネ、まるで百鬼夜行みたいだヨ」
 見えてきた敵のシュールな取り合わせに指摘が追いつかないカトリン・ゾルゲ(la0153)に、多々良 裕貴(la0283)が楽し気に応じる。
「でもパレードの行進として見たら二流以下かナ……まぁ、楽しめたらいいんだけどネ」
 シルクハットの奥の瞳は、冷たくナイトメアを見据えていた。

●部品破壊まで150メートル
 猛牛の戦車とそれが牽く台車を中心に、ナイトメアは静々と進む。都心の路上に展開する悪い夢のような光景。
 だがそれは、並走しながら戦うライセンサーの登場によって、騒がしいドラマに変じた。

「さぁ、目的完遂のために行くとするかね」
 高園寺 神楽(la0715)は悠然と戦場に踏み入った。初めての依頼となるが特に緊張などもない。
 台車右横、タコの脇をすり抜けると、剣を振りかぶり戦車と台車をつなぐ鎖に斬りつけた。すぐには破壊できないが、不可能というほどではなさそうだ。

「今晩はパーティよー!」
 攻撃の先陣を切ったのは穂花。肩に担いだ大剣を振り回すパワークラッシュで猛牛戦車の進行方向の地面を抉る! アスファルトをめくり上げた一撃は戦車前方左のタコも巻き込んだ。
「合わせるわよ! 僕の可愛さを込めた拳で地にめり込むがいいわ!」
 待機していたカトリンが続く。零距離用の装備である爪を駆使し、路面の状態をさらに悪くする。戦車の進行を遅らせる狙いだ。

「……初陣、だけど……慣らすのには、ちょうどいい……かな」
 叶瀬 紫苑(la0778)は淡々と狙いを定め、猛牛右のサソリをフォースアローで撃つ。回復能力を有するという尻尾を破壊したいが、無理に狙って外しては元も子もない。

 福間は狙撃銃を構えると、戦車のキャタピラを狙った。撃ち込まれた銃弾は機構を損傷させ、その進行を遅らせたように見える。みちるに指示を受けて放った、スナイパーのスキル・足止めだ。

 猛牛右のサソリを、みちるの大剣によるライトバッシュと裕貴のサブマシンガンによる射撃が襲う。連続の攻撃にサソリは瀕死だ。
「目立たぬ方針とはちとずれるが、ここで狙わない方が不自然だな」
 様子を見ていたエリステリアは、ピストルで弱ったサソリを落とした。
「まずは一体。私も担当の任務をこなさねばな」
 他のメンバーとは反対側、戦車左から追うエドウィナはエネルギーガンで左側のサソリを撃つ。
 そして、戦況全体の観察も忘れない。猛牛がなぜ遅いかは、どうも気になる。

 攻防の中も進んでいた猛牛は、一度周囲をぐるりと見渡すと、足止めの効果も意に介さないように、それまで通りの速度で北へ直進し始めた。
 穂花らによって破壊された地点へ到達。しかし無限軌道は悪路にも強い。速度は多少落としたものの、進む上で問題ない。
 そして
「え」
 路面を破壊した直後のカトリンを轢いた。
「あがががががが!!」
「だ、大丈夫?!」
 穂花が声を掛けるが、彼女自身も進軍してくるタコとサソリに次から次へと狙われ傷を負う。
 殿軍のサソリが、左のサソリに回復針を撃ち込み、ほぼ回復させた。

●部品破壊まで140メートル
 キュラキュラキュラ……
 地にめり込み戦車の下敷きになって無事な姿などカトリンは想像したこともない。しかし今、まだ潰されていないということは、想像力のシールドが自分をどうにか守ってくれているのだろう。
 だが限界は近い。と言うか、もう一撃何か食らったら、それがラクダの背を折る最後の一藁になると、本能で理解できる。
「し、死んでたまるか!」
 全身全霊の旋空連牙を真上に放つ。一発、二発。ほんのわずかながら車体が揺らぎ傾いて、そこからカトリンは必死に這い出た。
「新人初の殉職かと諦めていたが、よく生きていたな」
 エリステリアが賛嘆の念を込めて言う。
「無事では……ないね。俺がカバーするよ」
 神楽が鎖を斬りつつもカトリンを庇う。
「……無理、しないように……、ね」
 紫苑がヒールを用い、みちるも続く。
「ぼぼぼ僕も、む、む、無茶するつもりはなななかったのよ、ね」
 精神的にはまだともかく、シールド的には全快した。

 戦車を挟んで反対側では、手負いの穂花が敵に包囲されていた。
「ああもう! ふざけんな!」
 追い込まれて装う余裕もない。強引にパワークラッシュを放ち、タコどもとサソリと、我関せずと進んでいる猛牛、ついでに鎖にまで一撃入れる。
「気を抜くなよ! 向こうもこちらを食せるんだからな!」
 エドウィナがヒールしながら穂花へ声を掛ける。支給された可愛い杖を手に説くは弱肉強食の掟。
「そうよね、でも食うのはこっち!」

「足止めが効いてません」
 戦車の速度を見たみちるが福間に言った。障害物を越えた戦車は、動画よりは遅く、しかしこの個体のペースは保ったまま、部品を運び続けている。
「手応えはあったんだが」
「無駄撃ちしても無意味ですし、やめましょう」

 裕貴はしんがりのサソリを、エリステリアは左のサソリを攻めるが、倒すには至らない。サソリ二体は傷の大きな味方を回復させた。

●部品破壊まで100メートル
 全員の攻めが微妙にちぐはぐだった。
 最後尾のサソリこそ倒せたものの、それ以降の狙いが一致しない。タコ四体の連続弓矢攻撃はかわしきるのも難しく、回復に追われるメンバーもいる。
 追う戦いであるのもつらい。移動速度は両軍同じ。位置取りや射程の問題で、狙いたい相手を狙えない事態も発生していた。
 そして騒ぎの中心を、猛牛戦車は悠々と進む。

 それでも、天秤は次第に傾きつつあった。
 タコが一体倒れ、神楽や福間が地道に鎖を攻撃し続ける。
「逃すかっ! 私の焼肉!」
 穂花が眼光をぎらつかせて敵が包囲するエリアに自ら飛び込むと、最後のパワークラッシュ! タコ一体を倒すと同時に、台車を縛る鎖を絶った。
「これで最低限の任務は達成だ!」
 ここまでずっと機を窺っていたエリステリアは、全力移動で台車に飛び乗った。
 まだ猛牛には大した傷を負わせていない。しかし本来の任務はこの部品の奪回。撤退されて殲滅できなくなったら癪だが、追ってくる可能性もある。その時に返り討ちにすればいい。

 と。
 猛牛が、待機するように一旦動きを止める。
 そして死にかけのタコが後退すると戦車から再び鎖を引き出して、手早く台車にくくりつける。
 猛牛はエリステリアが乗った台車を改めて牽き始め、まだ元気なタコと自らを回復したサソリが後に続いた。

「振り出しか」
 誰かの声が弱々しく聞こえた。
(50メートルを切ったら……俺が轢かれて道を塞ごう)
 神楽はひそかに決意する。カトリンよりいくらか頑丈な自分なら、轢かれても死にはすまい。

●部品破壊まで80メートル
「また切ればいいじゃない!」
 カトリンがエリステリアの後を追うように台車に飛び乗った。
「まだ余裕はあるネ。このしょうもないパレードを少しは盛り上げないと、こちらの沽券に関わるヨ」
 裕貴も全力で駆けると跳躍、猛牛の背に軽やかに降り立つ。
「まったくだ」
 エリステリアが台車の上から鎖に斬りつける。右を行く神楽も続き、左の穂花も旋空連牙で打撃を蓄積する。
「みちるは一瞬たりとて殲滅を諦めていませんよ」
「……」
 みちると紫苑の連続攻撃が最後のタコを沈める。
「牛は速度を抑えているから足止めが無意味だった。そして抑えているのは、仲間に合わせているからではないか?」
 エドウィナが、サソリを撃ちながら推測を述べた。
「ほう。ということは、残ったそのサソリが我々の命綱か」
 ただでさえ手を焼いている相手が猛スピードで逃げ始めたら、どうしようもない。

●部品破壊まで60メートル
「さて、ショウタイムの始まりダヨ。本日のメインイベント、ロデオタイムと洒落込もうじゃないかイ!」
 牛の上に立つ裕貴が予備のサブマシンガンを構えると、牛の頭部に向けて乱射を始めた。

「切れた!」
 カトリンの旋空連牙や神楽の攻撃が、再び鎖を切断する。
「後は任せろ! ぬ……」
 エリステリアがその鎖を掴んで逆方向に台車を牽き始めるが、さすがに重い。

「これで気兼ねなく戦えますね……我関せずで北上されたら困りますが」
「その心配はなさそうだ」
 エドウィナがみちるに言う。サソリは台車を追うように南下し始め、猛牛は上半身を激しく揺らしながらも(裕貴はその上で踏ん張っているが、かなり余裕を失っている)、キャタピラを旋回させて南面した。
 そして、後を追って来て密集気味だった、紫苑・神楽・みちるに炎弾を吐く。
「……」
「熱っ!」
「間一髪でした」
 熱波は肌を焼くようだが、直撃は全員回避した。

「どうにかゴールは見えてきたな」
 神楽が猛牛へ斬りつけながら言う。
「……停止……数の減少……」
「足が止まって、数が減れば、僕らの勝てない相手じゃないわ!」
 紫苑とカトリンが追撃する。
「肉肉ぅっ! あ、白のブラウスが返り血で汚れちゃった、洗濯で落ちるかしら」
 穂花が嬉々として剣を振るい、突如としてテンションを落とす。

「エディ! 後は任せる。なるべく綺麗に仕留めるんだぞ」
 サソリへ斬りつけたエリステリアが無茶振りし。
「当然だ。私だって食べてみたい」
 エドウィナが平然とそれに答えてとどめを刺した。

 そしてみちるの大剣が腹に深々と突き刺さり。
「幕を引くヨ」
 裕貴の銃弾がついに頭蓋を吹き飛ばして、猛牛の動きは停止した。

●戦い済んで日は暮れて
 近くのSALF支部へ死体を運び込むと、福間の手配で現れた料理人たちが解体作業を始めた。福間の知人は量を食べないそうで、上等な部位を少量買い取ると、後は戦ったメンバーの自由になる。
「肉屋や料理屋の伝手もあるが、どうする?」
「まずは食べてみるさ。バッファローはステーキだな。サソリは揚げてタコは茹でるか」
 当然のごとくエリステリアが言う。
「……ナイトメアって美味しいのかナ?」
 そんな裕貴の疑問は、料理人たちによって調理されバイキング形式で供された品の数々に吹き飛んだ。

「野性味というやつだろうか。多少癖はあるが、いけるな」
「エドウィナさん、こっちの、このモモ肉すごいわよ」
 普通にロースのステーキを食べていたエドウィナに、カトリンが別のステーキを差し出す。
「これがモモ肉だと……赤身でありながらこれほどに柔らかいとは」
 驚きながらも、思い返せば納得ではある。戦車の上に載って動かない肢。子牛の肉同様、運動を経験しない筋肉なのだ。肉の旨味を存分に味わえる上に、食感も申し分ない。
「おかわり、もらえます?」
 最初の一口は興味ゆえだったカトリンは、笑顔でもう少し要求することにした。

「これがサソリとは思えないネ」
「……」
 裕貴の言葉に紫苑は無言で肯いた。
 唐揚げも普通にうまかったが、茹でたサソリも格別だった。肢の部分はカニの感覚で食べられるし、胴体部分は巨大なエビと言われても信じてしまう。
「殻も充分食べられますね」
 各種料理を皿に山盛りにしておいしそうに食べているみちるだが、サソリの殻にまで手を出していた。エビの殻のように風味があり、しかももっとカリッとしていて食べやすい。

「刺身も天ぷらもいいが、パエリアがまたうまくなるものだな」
 肉ばかりではと気分転換のつもりで皿に取った神楽だが、うれしい誤算だった。さっきまでこちらを殺そうとしていた相手だが、食材としてはいい仕事をしている。
「ん~美味しい! やっぱり新鮮だから最高ね!」
 穂花は料理を堪能しつつも、福間の隣をキープしていた。

「食べ過ぎて動けません、どなたか運んで下さいませんか?」
 三種の肉を満喫し、漫画のごとくお腹を膨らませて横になるみちるが言う。
 その横では、傭兵団の仲間のためにエリステリアとエドウィナが、料理の残りや肉をタッパーにせっせと詰めていた。

 何人かは、飲み会へも赴く。
「福間さん。今日はありがとうございました。良かったら飲み会でも色々教えてくださいませんか?」
 徹底的にアピールして、帰り際には連絡先を渡そうと目論んでいた穂花だが、福間は首を横に振る。
「いや、今日は早めに帰るわ。娘も女房も心配してるだろうし」
 また依頼で一緒になったらよろしくな、そんな挨拶へ、固まった穂花はまったく反応できなかった。

成功度
大成功

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

一覧に戻る
推奨ブラウザ:GoogleChrome最新バージョン