クラッシュ・クライシス マスター名:シチミ大使

形態
ショート
難易度
易しい
ジャンル
救出/防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
09/06 24:00
完成予定
09/26 24:00

 ――それが訪れたのはあまりにも唐突。人々には熟考も、ましてや対処の心構えをするほどの猶予もなかった。
 紫色の稲光を漂わせながら、三体のナイトメアがまさしく悪夢の所業の如く、街頭スクリーンを蹂躙し、生活の拠点を破砕する。
 逃げ惑う人々、その中には幼い子供も混じっており、悲鳴と絶望の連鎖が彼らへと襲いかかった。
 街中を恐怖に陥らせるその威容。足をもつれさせ、転倒する大人たち、劈く悲鳴、無意味に空回るばかりの抵抗――。
 阿鼻叫喚の地獄絵図を、ナイトメアが歩み進む。その歩みは、澱みなく、破壊と混沌のみを目指す闇よりの使者。
 赤く、煮え滾ったような装甲を持つナイトメアがそれぞれ、その剛腕で手近な人間を引っ掴み、裂けた口腔部へと放り込む。
 人界を喰らい、混沌のるつぼへと落とし込むその姿。咆哮がオーロラビジョンを破砕し、ガラスがコンクリートへと雨のように降り注いだ。
 吠え立てるナイトメアが向かう先は、人口密集地。悪夢の体現者は、更なる暗黒へと人々を叩き落とすために、今、噴煙を棚引かせて歩み出した。

『緊急指令! 各ライセンサーへと伝達!』
 ブリーフィングルームへと集ったライセンサーたちは、映し出された異形に絶句する。
「依頼です。街のど真ん中にナイトメアが三体、出現しました。これら三体はそれぞれ、人口密集地への強烈な打撃――つまり大量殺戮を目的としていると考えられます。皆様におかれましてはこれを阻止、及びナイトメアの駆逐を行ってください。ナイトメアの危険度そのものはそれほど高くありません。ですが、市民に被害が出ればそれまでです。これを」
 カメラが切り替わり、ナイトメアの目指す高層ビルが視界に入る。
「この倒壊を防がなければ我々にとって確実に大きな打撃となるでしょう。何としても食い止めなければなりません。また、人命救助は最優先に。……皆さま、ご武運を」


高層ビル倒壊の阻止、及びナイトメアの駆逐。
成功条件:ナイトメア殲滅。
失敗条件:ビル三つ以上の倒壊、及び高層ビル防衛失敗。避難誘導後の十名以上の人的被害。


登場するエネミー
●怪獣型ナイトメア(危険度2)×3
 項垂れた形のナイトメア。裂けた口と牙が特徴的。六メートルクラス。
 常に口腔部より棚引かせている呼気は、その内側で燻ぶる排熱のためである。
 鋭利な爪と、噛みつき攻撃がメイン。
○習性
 目が退化しており、熱源で相手を探る。人口密集地を狙うのは高熱源を感知しているからであり、別の熱源を進行方向でナイトメアに探知させることによって針路を変えることは可能。
○弱点
 不安定なナイトメアであり、排熱器官が未熟なため一時的な高熱による攻撃、及び熱源集中している胸元に位置する心臓部位が弱点である。排熱が間に合わなくなると、動きが止まるという欠陥を持ち、その際、広範囲に熱波による薙ぎ払い攻撃が実行される場合があるので留意されたし。

○高層ビル防衛、人的被害の想定
 特別な誘導を行わない場合、ナイトメアは20ターンで高層ビルへと到達する。
 ナイトメア強襲で街は混乱の中にある。まずは避難誘導を優先されたし。
 ナイトメアの市民への攻撃開始には5ターン目で入るため、迅速な避難が求められる。


【心境】
一度はあきらめた私の夢・・・長き時を倉庫で過ごしてきたが、ようやく役に立てる時が来た。
その喜びを胸に第一歩を踏み出す。

【行動】
私はナイトメアの引き付け班として行動し、ナイトメアの誘導・足止めを行う
ナイトメアがばらばらの位置にいた場合は一箇所に集めるべく行動する。
また、ヴァルキュリアであるため、人間よりも熱量が高いと見積もり、私に標的が向くか試す。
標的となったならば、高層ビルに接近されないよう、ナイトメアと離れすぎないよう注意しつつ、仲間の指定した場所に誘導する。
また、銃器による熱で気を引くことを忘れないようにする。
標的がならなかった場合は、銃火器の発砲による熱やコンビニ等で買ったもの(傘にライターで火をつける等)で松明のような物を作り、誘導・足止めを行う。
仲間との連絡は、携帯電話で行う。

【戦闘】
上記のように、標的となった場合は射程距離に注意しつつ離れて攻撃・誘導を行う。
その際は、防衛目的を背にしないように心掛ける。
また、集中的に攻撃を受けるようであれば、盾に持ち替えて攻撃・防御を行う。
本格的な攻撃は、避難誘導班と合流の後行う。
敵の配置を確認した上で、一般人の避難完了までは避難誘導を最優先。
SALF側でルートや場所の指定があるならそちらへ。
無いなら、熱源の隠蔽のため遮蔽を取りながら敵と逆方向へ誘導。

誘導がほぼ終わった段階で迎撃に向かう。
移動中は前線と連絡取り合って敵の位置を確認。

「狙い撃つ!…って距離でもないわよねぇ…」
遊撃的に立ち回り、可能な限り複数の敵を射程に収められるよう移動しながら攻撃。
万が一接近されるようなら小太刀に持ち替えて攻撃をいなしつつ距離をとる。
引き離せないなら遮蔽取りつつ動き回り、味方前衛が来るまで引っ掻き回す。

動きや状態による前兆が情報としてあるなら、射撃の合間に徹底的に観察。
「多分そろそろ来るわ。それぞれタイミング測って!」
「こいつで自爆してくれりゃ御の字ね」
熱波の兆候(動きを止める)等が見られたら、即座に攻撃部位を切り替え、心臓を狙う。
熱波はコンクリの壁などで遮蔽取って回避。■キャラクター描写
ほぼ常に咥えタバコ。
火がついてるかどうかはその時々で変化(避難誘導中などはついてません)。

※アドリブ、台詞改変歓迎
怪獣型引付けは高柳・ガル・平城山の3名に任せ、敵に近い市民から避難誘導を行い、守りつつ区域離脱を支援。仲間と通信で連携。
傷病等で動けない者がいる場合、市民の手も借り抱え運ぶが必要ならエレーナ達に通信で救援を請う。
仲間が危険なら手空きの仲間に引き継ぎを頼み援護へ。避難活動が一段落後、高層ビルが無事であれば消耗しているメンバーに合流参戦。でなければ避難活動に専念。
参戦時、敵が一箇所に固まっていれば注意喚起後パワークラッシュ。
熱波の兆候あれば、心臓部へ集中攻撃。攻撃がし辛ければFD5A使用。
〇目的
・ナイトメアを市民と高層ビルから引き離すことに専念する。
・市民の避難完了後、ナイトメア殲滅を行う。
〇準備
・各ライセンサーとの連絡には携帯等を使用する。
・熱源に反応する習性を利用し、松明(傘に雑誌やタオル等の可燃物を括り付け、油、酒、スプレーをかけて燃やす)を作成しそれを用いてナイトメアを誘導する。
・ヘリオスブレスレットも熱源として利用できれば装備。
・高層ビルより反対方向にナイトメアの誘導場所(なるべく広い場所)を設定。その場所に可燃物や松明を積み上げて誘導と敵をその場に止める為の一助とする。(消火用の水も用意)
・トラップとして穴を掘る事も考えるが、状況的に好ましくない場合は行わない。
〇行動
・自身を囮役としてナイトメアを誘導することに専念。他ライセンサーと協力し1人1体担当を基本とする。他ライセンサーと合流するまでは回避、防御に専念。
・市民を発見した場合、避難誘導担当のライセンサーに保護を依頼。ナイトメアを市民から引き離す。
・戦闘ではライトバッシュを駆使し、最初に脚部を狙う。ナイトメアの体制を崩して心臓部を狙いやすくする。
・薙ぎ払い攻撃の発動兆候があれば即回避できるようにナイトメアの動きに注意する。
・戦闘終了後は松明を消火。今回の戦闘データのレポート提出の為に記録を付ける。
◆心情
「ぜってー皆を助けてやる…!怪獣の好きになんかさせねえ!
目の当たりにする荒廃した街を見て絶望こそするが、必ず依頼を成功させると改めて気を引き締める

◆準備
携帯電話で各ライセンサーの連絡先を交換・登録
周辺の情報が載った地図
本部や街に指定された避難所や戦闘区域を地図に書き加えて各ライセンサー分コピーした紙を配る

◆行動
敵が向かっている高層ビルを除き街中を<全力移動>を駆使しつつ回り大声で市民を探す
「ライセンサーが来たからにはもう安心だぜ!
発見したらまずは気持ちを落ち着かせてあげ地図を見せつつ避難所・戦闘区域と、仲間との情報交換で得た怪獣に出会わない道を教え移動させ、その市民が移動途中で他の人に会ったら声をかけて一緒に移動する『皆で声をかけて力を合わせる』ように指示

「エレーナ!大変だ!
骨折や心肺停止などで自力で動けない人は携帯電話でエレーナに連絡して、自分でも出来る応急処置を教えてもらい行う
それでも動けない場合は他の市民に協力を得てエレーナが待つ避難所に一緒に移動してもらう

大体の避難勧告・救助が済んだら仲間に連絡して合流
仲間が敵心臓部位を攻撃したら同部位を<移動攻撃>で突貫攻撃
対抗は回避優先
支部より「索敵」に使用できるアイテムが借りれるのであれば借ります。(ルールにあるが確認できる限りアイテムが売っていない)

【避難完了まで】
他のライセンサーがナイトメアの誘導をしてもらえるので、一般人の誘導を手伝います。
索敵物品が借りれている場合、「索敵」を行い要救助者を探し誘導を行っていきます。
基本的にはラウンドシールドを装備し、一般人に攻撃がとんできそうなら庇います。
怪我をして歩けない人などがいれば医療で治療し、救出していきます。
暗い場所ではペンライトを使用していく。
行動中は通信機を通じて順次状況を他のライセンサーにも伝達していきます。
救護の方法がわからない通信がきたら状況を聞き可能であれば方法を伝達します。
医療がないと難しい救護者がいればその場所にいるライセンサーと交代してできるだけはやく駆けつけます
【避難完了後】
ナイトメアの位置が十分に避難所から離れている場合、戦闘班を加勢に行きます。
戦闘参加後はプリンセスロッドにもちかえて、ヒールをメインに。
回復する人がいないやヒールの使用回数をなくなったあとはミネルヴァP8000に持ち替えて攻撃に加勢します。
ミネルヴァP8000で攻撃する際にはできるだけ足元を狙い、動きを制限できるようにします。
スマホのアプリで熱感知が使えるのであれば熱源が集中している位置を他のライセンサーに伝えます。
敵の足止めと撃破
及び高層・周辺ビルへの電力遮断の呼びかけ行う
「どこぞの映画の風景だな」

最初は一番手薄か対応者が居ない敵の対応を行う
他の敵が倒されるまで適度に攻撃しつつ防御・回避重視で足止め
「さて、と、しばらく付き合ってもらうぞ?」

自身が対応する敵の対応人数が3人を超えたら倒しにかかる
撃破時点で他の敵が残っていればそちらにも急行し倒す
「反撃、開始だな」

敵の挙動をよく観察し
向いていない方向への精度高い攻撃と破壊される物を見て
視覚以外で感知している事と
対象が熱であろうと推測
また高層ビルへ向かっている原因がビルの熱と予測し
本部へ連絡し電力会社か高層ビル・進路上一帯のビル管理会社へ要請し
一時的に電力を遮断してもらう案を提案
「こいつら、目で見えない位置まで把握しているのか」
「視覚でなければ…熱、か」
「こいつ等は熱源に反応しているふしがある、一帯の電力を遮断できないか電力会社か周辺企業へかけあってみてくれないか?」

戦闘では噛み付きや爪による引き裂きを特に警戒
序盤は敵の周りを銃で少し離れて攻撃しつつ
敵が攻撃を仕掛けてくるか背中を見せた時に回避し剣で攻撃
基本後の先をとる形で動く
「動いた後というのは満足に避けられまい?」

倒しにかかる時は他者の攻撃する位置に合わせ同位置を攻撃
ライトバッシュも使用し全力で討伐
「そろそろ本気だ、遠慮せず喰らえ」
プレイングが提出されていません。

 駆け抜ける弾道寺 タキ(la0723)はその視野に怪獣型ナイトメアを入れていた。
 崩落の始まった街頭には、破壊の爪痕が色濃い。
「デカブツだよな、連中。でもよ、ぜってー、被害なんて出させねぇ!」
 誓った信念を握り締めたその時、逃げ遅れた一家が怪獣型に見下ろされていた。口腔部から棚引く硝煙、怯んだ様子の一家は足が竦んだのか、全く動ける様子ではなかった。
「……やべぇ。逃げろ!」
 大地を蹴り、一家へと手を伸ばす。しかし、それが不幸に転じてか、怪獣型が反応し、腕を振るい上げた。
「させねぇ! ぜってーに、させねぇ! オレが守る!」
 たとえこの身を危険に晒してでも。タキがその意志を胸に怪獣型へと突撃しようとする。それでも――届かない。攻撃は実行されるかに思われた。
「――よくぞ、言ってくれました。少年」
 怪獣型の爪による一閃を弾き、受け止めたのはガルディアン(la0947)である。その頭部形状を指して、子供が声にしていた。
「ロボット……」
「ヴァルキュリアですが、まぁいいでしょう。私は、人を守るべくして造られた存在。ようやく全うの機会が与えられる。この身に……」
 ガルディアンが銃器を手に怪獣型の気を削ぐ。熱源に反応する相手から家族への狙いが逸れたのを感じて、タキが目配せする。
「ガルディアン。オレはこの家族を誘導する。……任せられるか?」
「可笑しな事を言いますね。ここで立ち向かわなければ、ライセンサーの名が廃ると言うもの。それに、私は引き付け役としては、これ以上ない正答のはず」
 銃撃が怪獣型の足を止める。
 その心意気にタキは鼻の下を擦った。
「言うじゃん。みんな! オレがぜってー守るから! 安心してくれよな! オレたちが来たからには、もう安心だぜ!」
「お兄ちゃんは……?」
 その問いかけにタキは笑顔で応じる。
「SALFの――ライセンサーだ!」

『こちらに逃げ遅れの家族を発見! ティアナ! 敵の配置を前線に通達してくれ!』
「了解。……ちょっと分散気味ね。狙い撃つ、って距離でもないし」
 咥えタバコをくいっと上向きにさせてへの字口を作ったのはティアナ・L・ベイリー(la0015)である。スナイパーライフルのスコープより覗いた敵の動きは、思ったより緩慢ではあったが、その思惑――街頭への強襲と破壊は実行されつつある。
「マスクベルセルクさんと、エレーナさんはそのまま避難誘導に専念。負傷者を優先的にね。タキ君は家族を無事に逃がすこと。高柳さん、聞こえますか?」
『ああ。通信は良好だ』
「敵のうち一体が前線部隊の網にかかりそうです。そちらで足止めお願いします。平城山さん、そっちにも一体、行っています。いけそうですか?」
『戦闘配置、完了。どれだけでも』
「よし。……っと、平城山さん、横合いから、奇襲が――!」
『問題ありません。このまま、駆逐に入ります』
 落ち着き払った声音にティアナは乾いた笑みを浮かべる。
「はは、さすが。さて、と。あたしはこの好位置から避難完了まで敵の配置を伝令しますが、全員、質問は?」
 心得た返答が通信網に返ってくる中、ティアナは狙撃銃で敵を狙い澄ます。射程外でありながら、その瞳には闘志が窺えた。
「……守り抜くって、決めたんだもの。あたしたちの覚悟、嘗めないでよね」

「攻撃開始。敵性対象を粉砕します」
 平城山 沙貴(la0700)が剣を翳し、敵の攻撃をまず受ける。一発、二発、と打撃を刀身で流した彼女は、ふっと息をついた。
「……この程度ですか?」
 それがナイトメアにどのように聞こえたのか、その実は分からない。だが、内側から燻る熱を発生させたナイトメアが全力攻撃を見舞うのに躊躇はなかった。
 放出された熱で周囲に粉塵が舞い上がる。宙に浮いた瓦礫が熱で黒く染め上がった。
 ナイトメアが沙貴のいた空間へと爪を払う。しかし、その時には、既に沙貴はその場にいない。
「……目が退化しているんでしたね。だから、咄嗟の攻撃も見えない」
 その声の方向は中空からであった。浮かんだ瓦礫を足場に、沙貴は怪獣型の頭部へと一撃を浴びせる。
 呼気一閃で敵の首筋を狩るつもりであったが、僅かに浅い。身体を震わせた相手が再びの熱攻撃に入ろうとするのを、手にしたビニール傘で制する。
 一閃が入った切れ込みへと傘を差し込んだ。途端に傘が膨大な熱量に発火し、怪獣型の首より松明が燃え盛る。
 怪獣型は混乱のるつぼだろう。自らの首筋に別の熱源があるのだ。
「しばらくはそうやってもらいますよ。こっちも避難誘導の時間稼ぎがあるので」
 沙貴は冷静かつ端的に、通信機に声を吹き込む。
「ナイトメア一体はこの場所に縫い止めました。誘導班、直ちに避難を」

「怪我を……している、のね。いま、手当て、する……」
 エレーナ フェドロワ(la1815)は運ばれてくる要救助者へと声を搾っていた。
 治療に専念するも、治療の列はなかなか休まることがない。これではジリ貧か、と感じたところで声が響き渡った。
「俺はSALFのマスクベルセルクだ! 要救助者の避難誘導を行っている! こちら治療班! 市民の八割は避難とその怪我の解析に回せるが、やはり心は休まらんな……。敵がまだ健在となると」
 マスクベルセルク(la0979)の声に通信先のティアナが声にする。
『敵は絞ってくれています。平城山さんが一匹を足止め、ガルディアンさんがもう一匹、最後の一匹を今、高柳さんが戦闘に入りました』
 彼は拳を握り、悪態をつく。
「できることならすぐにでも合流したいが、今の俺たちには一つでも多くの命を生かすことが先決だ。エレーナさん!」
 仮面の男のその声にエレーナはびくつく。
「……はい」
「すまないが、俺は治療行為に関してはてんで、でな。負担を強いるが、よろしく頼む」
 エレーナはその言葉にぎゅっと拳を握り締めた。
「……はい。エレーナはやれるだけ……、がんばります」
「その意気だ! みんな! 早く避難を! なに、安心してくれ! 俺たちはSALFだ!」
 その時、タキがビルを蹴って救助列へと入る。
「エレーナ! 大変だ! 俺が担当した家族なんだが、軽いパニック状態にある。打撲もしているらしい。できるだけ、治療を急いでくれ」
 タキは市民へと向き直り、声を張り上げる。
「みんな! ライセンサーが来たからには、もう安心だぜ! ぜってーに、敵の好きにはさせねえ! みんな、守り抜いてやる!」
 その声に勇気付けられたのか、それともここに三人の戦士が集まったことへの安堵か、市民から僅かに恐れが凪いだ。
 エレーナの通信域にティアナの声が入り混じる。
『高柳さん! 熱攻撃が!』

「ああ、ちょっとまずかったか」
 対峙する高柳京四郎(la0389)はナイトメアを眼前に置いても、その戦闘姿勢にいささかの躊躇もない。
 銃撃で敵の頭部を叩くと、相手は顎を突き出して噛み付き攻撃を見舞おうとする。それをステップで回避し、横っ面へと弾丸を撃ち込んだ。
「しかし、単調な攻撃だな。だがまぁ、こいつを止めなければ作戦に支障が出る」
 京四郎はすぐ傍まで迫った高層ビルを仰ぎ見る。一番手薄かつ、一番の重要拠点に近い敵。駆逐せねばならない、という意思と共に彼はフッと笑みを浮かべていた。
「どこぞの映画の風景だな。敵怪獣相手にガンマン、か。だが、しばらくは付き合ってもらうぞ。俺も、それなりに諦めが悪いのでな」
 ナイトメアが爪を振るい上げる。その一撃を回避し様に首根っこに銃弾を浴びせた。しかし、効果的ではない。
「心臓部、か」
 赤く明滅する敵の胸元を注視し、京四郎は熱を帯びた敵の打ち下ろした爪を蹴ってかわす。
「一撃の重さはそれなり、か。だが動きは大雑把、……ということは、目で見ているのではないのだと、推測される。そして、さっきからずっと、どうして攻撃の後に、高層ビルを仰ぐ?」
 解せないな、と京四郎は観察し、そして高層ビルの発しているであろう、いくつかの要素をピックアップする。
「電気、光、……熱。ティアナさん。電力会社に掛け合って、高層ビル以外の、ここいら一帯の電気を遮断して欲しい。試してみたいことがある」
『いいですけれど……、何か見えました?』
「ああ。こいつの反応は恐らく……」
 直後、周囲から電力が消えたのか、怪獣型は困惑したように首を巡らせ、やがて高層ビルのみを注視した。
「……やはり、電気、いいや熱源か。それしか見えていないんだ。だから、こうして電力を絞ってやれば、真っ暗闇の中で唯一見えるのは、高層ビルと俺だけ。そして高熱源に引きつけられると言うのならば、今こいつの見ているのは……」
 一気に距離を詰め怪獣型の心臓部へと銃口を突きつける。
 相手は放心したように高層ビルを仰いでいた。
「俺も見えない、か。光に充てられて、その命を散らせ」
 ゼロ距離の銃撃が心臓部を貫き、怪獣型が断末魔を上げる。何発か撃った後、相手が爪を振るい上げた。それを京四郎は避けようともしない。
 とどめの銃弾が背筋まで突き抜け、怪獣型はかっ血し、その場に突っ伏した。
 後頭部へと狙いをつけ、ダメ押しの一撃を撃ち込んでから、京四郎は声にする。
「一体目を撃破。これより、他の担当班へと合流する。苦戦しているのは?」
『待ってください……。ガルディアンさんが、ナイトメアに押されています』
「……持ち堪えてくれよ」

 爪の振るい落としで粉塵が舞う。すかさず放たれた熱攻撃がガルディアンの高精度の視野を阻害していた。
「……こいつ暴れ回って……。厄介な」
 肉迫した相手が噛み砕こうと熱波を発生させる。ならば、至近距離の覚悟で、と前に出ようとしたガルディアンは不意に割って入った影にその進行を阻害された形となった。
「……やってみなきゃ分からねぇ、って言うには言うけれど、こいつは分かり切っているな」
「明日真さん……」
「……ジロジロ見んなよ。それどころじゃねぇだろ。――来るぞ」
 ナイトメアの爪の薙ぎ払いを、明日真 凪(la0596)が拳で軌道をずらした。その隙をガルディアンは逃さない。
 すぐさま至近距離に入っての銃撃。そう決断しかけたのを、直上からの噛み砕き攻撃が邪魔しようとする。
「噛み合わせの悪そうな歯茎してんな。砕けちまえよ」
 すくい上げるような凪のアッパーが怪獣型の顎を蹴散らした。表皮が砕け、肉が裂ける。
「そこだ!」
 明滅する赤い心臓部。ガルディアンはその部位へと正確無比な銃撃を浴びせた。
 怪獣型が熱と共に血を吐き出し、静かに息絶える。
「明日真さん、援護を感謝します」
「言うなって。合流、急ぐぞ」
「……はい!」

「さて、どうしますか」
 何発かの熱攻撃を瓦礫の壁で回避した沙貴は静かな心持ちで剣を握っていた。
 敵はやはり熱に反応する。先の一撃で首筋から燃え盛っていた松明が今、消えようとしていた。
「このままでは狙われるのは必定。そろそろ決めにかかりましょうか」
 壁から身体を出したその時、怪獣型が激しく吼え立てる。その咆哮に入り混じった熱が、沙貴の足並みを僅かに遅れさせた。爪を軋らせ、敵が迫る。
 ――その頭部へと、一発の銃弾が吸い込まれるように命中した。
「平城山さん! すいません、電気会社との伝手に手間取ってこちらへの連絡が遅れました」
 ティアナが狙撃銃を手に声にする。
 よろめいた怪獣型へと仮面姿のマスクベルセルクが背後より奇襲をかける。翼の意匠を施された槍が松明の刺さっていた箇所へと突き破った。
「俺はSALFのマスクベルセルク! 平城山さん、もう大丈夫だ! 避難誘導は完了した!」
「……ってわけで、オレも助太刀するぜ!」
 砲弾のような勢いと加速度を伴わせてタキが怪獣型へとランスによる必殺の一撃を浴びせかけた。
 舞い上がった表皮と血潮に、間断のない銃撃網が突き刺さる。
「無事か? 平城山さん、こいつは高熱源を優先する。銃弾の嵐で視線を逸らすぞ! その隙に心臓部へと!」
 京四郎の銃撃の熱で敵がよろめく。沙貴は剣を握り締め、心臓部を睨んだ。狙うべき標的を見据えたその瞳に迷いはない。地を蹴り駆け抜ける暴風のような一閃。
 その切っ先は寸分のずれもなく、怪獣型の心臓を射抜いていた。
 引き抜き、身を翻す。
 最後の足掻きか、敵は爪を振るい上げた。
 その腕へと凪が拳を見舞う。
「女を後ろっから叩くってのは、フェアじゃねぇな」
 怪獣型はそのまま仰け反り、やがて沈黙した。
「情況終了!」
 ティアナの声に全員が安堵する。差し迫った悪夢はここに終焉した。

「目立った傷は、……ある程度、対処しました。大きい怪我をしている人は……、いません」
「よかったです。それならレポート内容も大幅に変えなくっていいですし」
 エレーナの報告に沙貴は戦闘データのレポートを纏めていた。
「ともあれ、よかったよな! みんな助かったんだからよ!」
「ああ! 俺たちの努力の賜物、って奴だ!」
 タキとマスクベルセルクがお互いに笑い合う。
 ライセンサーたちは、ひとまずの戦いが終幕したことを全員の胸に刻んでいた。
 だが終わりではない。これは長い戦いの序章ですらないことを、彼らは無意識に理解していた。

成功度
大成功

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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