対価 マスター名:十三番

形態
ショート
難易度
難しい
ジャンル
救出/防衛/危険
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●郊外/町工場敷地内
 じりじり、という音が聞こえてきそうな日差しが絶えず肌を焦がしに来ていた。額の汗を拭う腕で狭くなった視界の中で、自宅と併設されたタイプの、どこかチープさを漂わせる町工場が陽炎の中に揺れている。或いは木陰どころか、そよ風の恩恵さえも受けることができずにコンクリートの上を行くあなたの意識が揺れていただけかもしれない。しかし弱音を言ってばかりもいられない。
 屋根まで続く、建物とほぼ同じ幅のシャッターは動かすことができなかった。ノックをするが反応がない。やむなく傍ら、ところどころ塗装の剥れたドアに向かう。
 静かに開け、隙間から中の様子を確かめる。かなりの広さだ。機械や棚は壁際に集中していて、中央は悠々とバレーボールでもできそうなほど開けている。高い天井には照明が点っていた。頬を撫でる冷風は、突き当りの壁際に立ち尽くす年老いた冷房が必死に吐き出しているものだろう。
 意を決したあなたに続き、仲間が工場の中へ踏み込む。向かう先は決まりきっていて、全員が彼と『それ』へ俄かに歩み寄り、一定の距離を置いて動きを止めた。軽々に近寄ってはならない、と、胸のざわつきが痒いほど騒ぎ立てていた。
 頭頂部が禿げ返った中年の男性が冷房の傍らで未だ作業を続けている。年季の入った作業着はあちこちに汚れが染み込んでいて、要所に汗が滲み出ていた。一瞬だけこちらを向いたその顔も、まるで滝を潜ってきたかのようにぐっしょりと濡れていた。男性には名前があったが、ここではより簡潔に伝える為に呼称並びに表記を『主任』で統一する。
 主任はあなたが見たこともない巨大な機械を操作していた。何をするためのものなのか、中で何が起こっているのか、そもそも中があるのかさえ、見当がつかない。しかし主任はオーケストラを率いる指揮者のように両腕と片足を動かし、画面――らしきもの――に表示される文字――のような何か――を必死に見つめている。
「SALFの方かな?」
 そうだ、とあなたが答える。主任の口から笑みに似た呟きが零れた。間に合わなかったか。
「済まない、もう少しで出力が終わるんだ。あとちょっとだけ待っていてくれ」
 それはできないと、あなたの仲間が食い気味に答える。
 一刻の猶予も残されていなかった。数十分前より、この一帯に大量のナイトメアが発生、侵入している。殆どの住民は避難を済ませ、多くのナイトメアはライセンサーの尽力で無力化していた。が、ライセンサーを振り切ったナイトメアもいれば、命を落としてしまった住民も少なからずいた。しかしあなたたちは最前線ではなく、遥か離れたこの町中の工場にいる。
 何故か。

 ――主任並びに彼が抽出したデータを無事に回収すること

 それこそが、あなたたちがSALFから請け負った任務だったからである。

●町工場/主任の動向と行動原理
「もう少しと言ったらもう少しなんだ」
 主任は仲間の説得に応じなかった。
 蔓延りそうになった静寂を咳で払い、あなたが前に出る。SALFからはデータの詳細はおろか、主任の専攻にさえも言及がなかった。恐らく主任も答えないだろう。そして今それは重要なことではないし、そんなことよりも遥かに重要な問題があった。
 あなたが問う。あとどのくらいかかりそうですか。
「5分とかからないよ。本当にあと少しなんだ」
 他の従業員や、ご家族の方は。
「もう避難させたよ。明日も仕事だぞ、と言ったら文句を言われた」
 無理に笑い、主任は振り返らず続ける。
「妙な奴だと思うだろう。しかしそれはSALFさんもそうだ。この僕の実験を買ってくれるなんて」
 ちなみに、どんなものですか?
「例え僕が殺されることになっても絶対に教えることはできない」
 操作を代わります。
「まともに電源を落とせるようになるまで数時間かかるよ」
 主任が背筋を伸ばす。声は掠れていた。
「やらせてくれ。頼む。
 既にSALFさんからは代金をいただいている。対応してもらえる病院も手配していただけた。そのおかげで妻は手術を受けることができて、一命を取り止めることができたんだ。
 ここでこの仕事を投げ出したら、僕は一生妻に顔向けできない。
 だから、頼む。約束を守らせてくれ」
 しかし。
 喉まででかかった言葉を、狂暴極まりないノックが腰の裏まで押し返した。

●町工場/会敵
 びくともしなかったシャッターは、ナイフを突き立てられた布のように破れていた。そこを押し広げるようにして巨体が侵入してきて、続いて小柄なのがふたつ、落ち着きなくゆらゆらと揺れながら踏み入ってきた。誰かが外で待機しているべきであった等反省点は多々あろうが、後悔は得てして先に立たない。さておき、あなたたちにとって幸運であったのは、何れも交戦記録のある個体に酷似しており、事前に情報を知識として処理できていたことである。
 順に確認していく。
 巨躯の個体はとにかく異形であった。上背は3メートルほど、全身が銀色で、カマキリのそれに似た腹部と3対6本の脚に、病的なほど膨らんだ筋骨隆々の男性の上体が据え付けられており、しかし頭部に該当する部分がない。両腕で長い柄を持っており、先端には円錐状の棘がいくつも生えた鉄球が刺さっている。
 傍ら、紫色の個体も変わった形をしていた。パーツが省略された軽トラックのような姿をしており、タイヤの代わりにそれぞれの場所から逆関節の脚が伸びている。ナンバープレートがあって然るべき位置には、子供の頭部がすっぽり収まりそうな砲身が生えていた。
 緑色の個体は人の形……というよりは、マネキンの姿に酷似している。上背は2メートルほど。長い四肢は細く、一見頼りなさそうに見えるが、『この個体が最も好戦的である』ということを知っているあなたの目には、標的を見定めた鞭のように映ったに違いない。
 背中に干からびた失笑が当たる。
「あんなに格好をつけたのに、お恥ずかしい、震えが止まらないよ」
 あとどのくらいかかりますか?
「90秒。処理が終われば『パーツ』を外して持ち運べる。手間はかからない。
 それと、従業員が裏口を出たところに車を用意してくれている、はずだ」
 口を出た『わかりました』は、枯葉を煎じたような味がした。本当なら、いますぐ主任を抱えて工場を飛び出し、車に乗り込み、この場を離れるべきである。しかし主任の説得を成し遂げられなかった今、力ずくでの行動は無益な抵抗を生み、最悪の事態を迎える恐れを孕んでいた。
 得物と決意を取り出し、あなたと仲間が構える。
 ナイトメアは次々と呼応、呼応、呼応。
 銀色が猛るように長物を掲げ、
 紫色がその場に踏ん張り、
 緑色が排他的なステップを踏んだ。
 沈黙、
 硬直、
 どちらも刹那。

「あと、80秒」

 主任の言葉を合図としたように、彼を除く全員が一斉に動き出した。


※位置関係は全て北を上としたものです

●目標
主任並びにパーツを回収しての撤退
・どちらも回収できなかった場合失敗以下の判定とする
・気絶者の人数で成功度が減少する
・工場並びに備品への被害、敵の撃破状況は成功度に影響しない

●環境
日中。晴天。町工場内。
幅8sq(スクエア)×奥行10sqの町工場。天井までは5メートルとする。
参加者は中央付近が初期位置。
主任と機械は北端中央。主任は8ターン経過するまで移動しようとしない。
ナイトメア3体は南端中央に並んでいる。左から砲台型、虫人型、人形型。
北側の壁の右端に裏口があり、参加者と主任は問題なく通行できる。
壁際には機械類などが並んでいるが、遮蔽物としての効果は一律ないものとして扱う。

●ナイトメア
>>虫人型
物理攻撃↑↑、生命↑、回避↓
銀色の異形の個体。近くの相手から手当り次第に殴りかかるパワータイプ。
・ふりおろす:射程2、範囲(1)の物理攻撃
・ふりまわす:自身の正面3×3への物理攻撃+命中時にノックバック(2)
>>砲台型
知覚攻撃↑、命中↑、移動↓、物理防御↓
紫色の四つ脚の個体。主任と機械を狙い続ける。
・レーザー:射程8の知覚攻撃。原則貫通しない
>>人形型
命中↑↑、回避↑↑、移動↑
緑色をした四肢の細い個体。3体の中では最も好戦的であり、能力も高い。
売られた喧嘩をよく買う。また、主任と機械を絶対に狙わない。
・乱打:攻撃を2回行う。物理判定
・奔放:パッシブスキル。回避に成功した場合、そのターンの行動回数が1増加する(上限なし)

●ギミック
>>主任
9ターン目にパーツを回収し、自主的に裏口から工場を脱出、車に乗り込む。
まだ周囲には別のナイトメアが存在している可能性がある為、単独での脱出は非推奨。
>>機械
パーツが取り外される前に攻撃を受けると故障し、パーツが回収できなくなる。
>>車
全員が乗り込んで出発すると必ずナイトメアを振り切ることができるすごいトラック。


「承りました
御仁がそう仰るのならば
80秒、稼いでみせます

■最優先
主任・パーツの安全


主任の作業完了まで時間稼ぎ
その間敵の機動力を削ぐこと、可能なれば討伐
作業完了次第、全力移動で即時撤退

虫人型対応、基本小太刀
どのナイトメアも、そうですが。出来得る限り主任側とは距離を取りたく
ノックバック時の方向含め、裏口から離れるよう誘導を
此方の目的は時間稼ぎゆえ態々彼方の攻撃を受けてやる義理はなく
回避に専念するとして…一点狙いで六つ脚を、其々落としていきましょう
六つ脚となれば大分安定感がある筈ですゆえ、そのバランスを崩そうかと

しかし銀色とは果たして質は何なのでしょう
一度斬りつけてみれば判りましょうか

出来得る限り他を対応されている方々へ向かわぬようするつもりですが、攻撃範囲内など有事の際は警告させて頂きたく
何方かが沈んだ場合は方向転換危惧し此方へ引き付け。逆もまた然り
撤退時は裏口を開け、殿の方が出やすいようにしておきましょう
轟音と気配に気づいて振り返った先にいたのはあたし自身が生まれ対峙すべき存在
その事に未だ何の感情も分からないままあたしは言葉を紡ぐ
「戦闘段階
目標捕捉
排除開始なn」
口調補足:語尾に【のですorなのです】を途中でアルファベットのみで〆

準備
ポケットの中でペンライトのスイッチを入れておく

作戦:
虫人型
砲台型
人形型の順に狙う

第1目的は9ターン敵を食い止める事
ナイトメア1匹につき誰か1人が行く手を阻む手筈
ヒースさんの合図で全力移動使用し車に乗り撤退

戦法:
常に下記の位置どりで作戦通り敵を狙い撃つ
武器射程内
虫人型の4マス以遠

敵の射線や視覚を外せる場所などを常に探り
威力高い主装備を多用

ポイントショットは1回残して開幕から使用
奇をてらいペンライトで敵の目を一瞬でも
眩ませられればいいけど不発に終わるかも
有効と分かれば相手の視覚器官に投げつける事も考慮する

注意点
虫人型
最悪あたし自身もサブ武器2持って立ちはだかる

砲撃型
一番に無力化しなければならない相手
足を狙い可能ならその後光を撃つ砲身を狙う
最悪懐に滑り込み真下からポイントショットで狙う手も考える

作戦終了後
皆もあたしも大きな被害を予測
応急手当しつつこの作戦に飛び込んだ
不用心な自分を戒める事にする
戦闘
主任直掩・砲台型対応
盾役として腰を据え、射線妨害で主任と機械への攻撃阻止
虫人・人形釣り出し組を避け、ライフルで砲台型と撃ち合い
脚部を攻撃、撤退時を見越し命中・移動の低下狙う
またレーザー照射妨害の為、砲身内の狙撃を試みる
撃破に拘らず、行動妨害とタゲ取りに集中

リロード時は盾に持ち替え、防御しつつ行う
敵火力次第では射撃より盾防御メインに
残生命10点程度でヒール使用

撤収時は前衛・殿組の後退支援の為、援護射撃
虫人・人形ら相手にサブMGで弾幕形成、一瞬注意奪い隙作る
殿(ヒース君)には特に落ちないようヒール飛ばす
最後に全力移動を使用して乗車
「てめえの相手は俺だ。俺を見ろ!」
人形型に喧嘩を売って、こちらにターゲットを向けさせる。
最初の三回の攻撃は全てビーストレガースによるパワークラッシュを使用。残り1回は最後まで取っておく。
パワークラッシュを使用した足払いで相手の足を集中的に狙い、相手の機動力を殺ごうとする。
足払いで相手が転んだら、モーリーに声を掛け、一緒に攻撃する。
「モーリー、チャンスだ!一気に仕掛けるぞ!」
3回使ったらビーストレガースで通常の攻撃で足を狙い、1ターン毎に裏口の方に下がりながら戦闘を行う。味方の邪魔になる場合は止まって戦う。
相手の攻撃に対しては常に回避を選択。体力が危なくなったらモーリーにヒールを頼み、絶対に気絶しないように努める。
「モーリー、回復を頼むぜ!」

「頃合か、殿は俺が務める!全員裏口へ走れ!」
撤退する時は、殿を務める。残った敵の注意を引き、スタークレイモアに持ち替えて最後のパワークラッシュを放つ。
誘導する時に敵が全員パワークラッシュの射程に入るようにする。
「食らいやがれええええええ!」
この1撃でどうやっても倒せなさそうな場合は、葵に裏口を指で示し、撤退を促す。
「葵、行け!」
葵(もしくは最後の仲間)が撤退したら攻撃せずに自分も撤退する。

敵が全滅した時の台詞
「これが俺達ライセンサーの力だ!」
■心情
つまり主任さんの作業が終わって脱出するまでの時間稼ぎをすればいいんだよね?
オッケー!
任せておいてよ!

■目的
主任さんとデータ出力中の機械に敵を接近させない

■準備
とっくに覚悟は完了してるよ!

■行動
それぞれナイトメアの足止め
ボクは人形型を担当

「ボクのSALF初任務!絶対に成功させてみせるよ!ノコノコ族の誇りにかけて!」
初手、人形型に向かって移動

武器の間合いに入ったら攻撃

●戦闘
プリンセスロッドによる物理攻撃が基本
敵の攻撃は両腕で急所を守りつつガード

ヒースクリフさんと連携
彼が人形型を攻撃し、人形型の狙いが彼に向いたトコロを狙って攻撃する
スキル【インパクトアタック】使用「ノコノコ☆ダイナミック☆アターック!」
脚部を優先して機動力を削ぐ
ただし狙いづらい場合は当てやすい部位(胴体)を狙う。奔放対策

ヒースクリフさんの挙動、目をみながらスキル使用の起こりがみえたらちょっと下がる(できれば範囲外に。無理でもガード固める)
※1回目は無理でも2回目からはなんとか……
※我慢できそうならスキルを喰らいつつ自分も敵に攻撃するぐらいの気迫

生命半分以下時の味方にスキル【ヒール】使用

主任さんが脱出したら自分も裏口へダッシュ
殿のヒースクリフさんに【ヒール】しつつ

工場から脱出して車に乗り込む
「主任さんもナイスガッツ!奥さんに胸はれるね!」
「データさえあれば、なんとかなるという事でしょうね(手袋きゅっ」

●目標:救出
虫人型をメインに対応
思いつきで言葉が理解出来ているかはともかく人形型には去り際声を掛ける
「そうそう、本当は彼ら(人形型以外のナイトメア)はワタクシ達ではなくアナタと戦いたいそうです。アナタはとてもお強いですので」
「力、能力…一体どなたが優れているのでしょうねぇ」

最初は距離を開けつつ只管回避を試みる
3Tほど経過後行動
ふりおろす:回避後、獲物から腕から乗りそこで回避行動
ふりまわす:回避後、足下へ滑り込み脚を狙う
回避成功する度に背面等、攻撃や腕が届かない範囲を確認して攻撃

・主任の行動、状態を逐一確認(可能な限り視界の端に入れておく)
・気絶した仲間がいれば、率先して敵から離れ回収に向かう
さてさてさーて。初仕事やっちゅーにまた最初っからクライマックスて感じやなぁ
まぁしゃーない、主任はんもプロ、俺も一応プロ
主任はんの仕事が終わるまで、俺もきっちり守ってみせよやないか
…でもまぁ、なるべくちょっぱやで終わってな?うん

んで敵さんもまた気ぃ悪いんが揃ってるけど
とりま一番危なそなんはあの砲台やな
主任はんとパーツを撃たれたら危ういし、早めに潰したいとこや
イリヤはん、響はんと一緒に砲台型を対応さして貰うな

俺は遠距離攻撃役として、敵さんとちょい距離置いての立ち回り
移動一回で主任はんの側まで戻れる程度の位置取りで、主任はんやパーツが狙われた時に射線の妨害が間に合うんがええ感じやけど、まぁ臨機応変に
特に移動の要の足回りを潰してくよぉに狙ってこか
響はんが砲台型を抑えてくれはるそやからその隙に
イリヤはんとも出来れば狙い合わせて一本ずつ足を削れれば
足を削って動きが止まったら、砲台の方を潰してきたい
攻撃の主はフォースアロー、アローが切れたらオートマで射撃戦

撤収の時は主任はんの護衛をしながら
殿してくれはるヒースクリフはんの援護も
ささっと逃げたいし、全力移動もつこて一気に出口まで行けるとえんやけど
ヒースクリフはんが最後に一撃押し込むそやさけ、それで倒せれば上々
倒せんかったらライフルで援護射撃して撤退の隙作れるよぉに
負傷が嵩んで危ない時はヒールで回復するな
【心情】
「プロの意地を見せられたら、同じプロとして応えない訳にはいかないだろ」? はぁと溜息一つ

【目的】
主任の護衛、パーツを回収して撤退する

【行動】
戦闘では砲台型を担当
まず、射線を防ぐように接敵
テンプルムシ-ルドを構え、主任と機械への攻撃をいつでも防御できるように注意しておく
自分の行動順は砲台型よりも遅くなるように調整
砲台型をガンガン殴りながらも周囲の状況は確認
危なそうな味方にはスキル「ヒール」を使用
その際も、イリヤ・R・ルネフ(la0162)が自分の代わりに砲台型の攻撃を防げるかは確認
油断大敵
砲台型の一撃で全てが終わる
人形型、虫人型からの攻撃は回避に専念
回収までに砲台型を倒せたら他班の援護を行う
工場に消火器があるなら、それで目くらましするだけでも効果的と思う
9ターン目にはスキル「全力移動」を使用し、速やかに撤収
その際も主任は一人にさせず、一緒に行動
可能ならビニールテープ等で主任の身体にパーツを巻き付けておく
「ちょっと失礼するよ。逃げる際中に落としたら、最悪だからね」

●対虫人型-1
 銀色の敵意に意識を向けていると、佐間史 舞千(la0750)は一度目蓋を降ろし、口は導かれるようにその言葉を紡ぎ始めた。
「戦闘段階。
 目標捕捉。
 排除開始なn」
 再び開かれた目蓋の奥、黒目がちだった瞳には、力強い赤い灯が宿っていた。
 舞千より数歩前に出ていたIsaac(la0011)が背後の様子に目を細める。見えていたのは舞千に起こった変化に加え、主任がひとつ大きな息をつく様子。
「データさえあれば、なんとかなるという事でしょうね」
 隣に音もなくマクガフィン(la0428)が並んだ。失礼、とIsaacは笑みを強める。
「暫くお任せしてもよろしいでしょうか」
「承りました」
 言葉以上の反応を見せず、マクガフィンは進む。手には仄かな蒼が揺れる小太刀。
 そのどちらともへ、棘の付いた鉄塊が振り下ろされた。大気が震える音、爆発に似た一帯の床がひしゃげる音、ぱらぱらと弾ける破片の悲鳴。そして何より、遠く離れていた舞千の身さえ揺るがすほどの衝撃が辺りに走る。
 マクガフィンはその全てを往なしていた。空を行く鳥の影のような挙動でナイトメアの懐に侵入し、銀色の胴体目掛けて得物を振り抜く。さく、と確かな手応えがあった。質感は意外が当然か、『肉』。後方から飛来した、舞千が放った弾丸もそれを裏付ける。直撃音は、厚く柔いものを穿つときのものだった。
 再び振り下ろされた鉄塊を紙一重で躱し、此度は腕を目掛けて刃を振るった。通りが悪いわけではなかったが、胴も腕も、目に見える痛手を与えるのは骨であるように思えた。ならば、と視線をナイトメアの後方に伸ばす。
 その直後。
 三度振り被られる鉄塊に備え、重心を傾けるマクガフィン。しかしその視界の中で虫人型は更に身をよじるような挙動を見せ、そのまま足元を薙ぎ払った。柔らかいものが強打される音を残し、町工場に不釣り合いな藤色が工具の並んだ壁に叩き付けられた。
 リロードを終えた舞千が狙いを定め、トリガーを引く。力が込められた銃弾は巨躯の肩に直撃、銀色の胴体を大きく揺らした。目と思われる器官は見当たらなかったが、こちらに意識を向けてきたのは間違いないようだ。
 大袈裟に手を打ち鳴らしたIsaacが前に出る。二歩、三歩と距離を詰めると、銀色が六脚を踏みかえ、正面を向けてきた。
「サルゥスシス、暴れん坊さん。次はワタクシがお相手いたします」
 両脚のレガースから深い黒が全身を駆け上り、Isaacの全身を包んでいく。
 虫人型の意識が完全にそちらへ向いた、その直後、
「……57秒」
 口の中で呟き、マクガフィンはやはり音もなく、夏の蒸れた影の中に潜り込んでいく。


●対砲台型-1
「初仕事やっちゅーに、また最初からクライマックスて感じやなぁ」
「難儀なお願いをして済まなかったね」
 背中を向け合って苦笑いを重ねる主任と皐月 葵(la2380)。やれやれ、と肩を竦めたイリヤ・R・ルネフ(la0162)の嘆息がそこに乗る。
「危機管理の甘さは指摘させてもらうよ、同業者としてネ。大事なデータが本体メモリ上にしかないなんて」
「これでも、できることはやったんだけれどね」
「それと――」
 イリヤが構えた壁に似た盾に紫色の光が激突した。軽自動車が突撃してきたかのような音と衝撃に、イリヤは工場の奥へ押し遣られる。しかしそれも束の間、葵が手を貸そうとする前に静止を成した。耐えられないものでもない。
「――……命より大事な研究データ、分からなくはないケド。それでうっかり死んだら、それが一番ご家族を悲しませるんじゃないカナ。生きてりゃ何とかなるよ――案外ね」
「耳が痛いよ。肝に銘じよう」
「さてさてさーて、俺らもプロらしゅうお仕事せんとな!」
 葵が手にした書物を広げた。腕を振り抜くと、書物に集った力が矢を模して勢いよく放たれた。矢は仄かな弧を描いて直進、砲台型ナイトメアの左前脚に命中する。
 がく、と沈んだ砲台型目掛けて柳生 響(la0630)が跳躍、手にした杖で思い切り殴りかかる。直撃するも、ナイトメアの挙動が一瞬たりとも淀まなかったことに響は眉を寄せる。後方からイリヤの弾丸が、葵の矢が飛来し、前脚が半壊しても尚、砲身は真っすぐ主任に狙いを定めていた。
 だから正面に立ちはだかるしかなかった。
 プレッシャーに身を焼かれる。自分がミスをすれば全てが無駄になってしまう。損な役回りを引き受けてしまったと後悔も募る。それでも先の仲間の言葉が聞こえたから、めげずに前を向けた。
「ボクだってプロだ。意地ってものを見せてやる……。
 さあ来い、撃ってみろ! ただの一発だって通さないから!!」
 深穴の奥に蓄積した光が放たれる。腰を落とした響が、極めて至近でその一撃を防ぎ切った。


●対人形型-1
 誇りあるノコノコ族の戦士であるモーリー(la0149)は、その意気込みと裏腹に、両手で得物を握りしめたまま動けずにいた。
「こ……んのぉっ!!」
 ヒースクリフ(la0234)が渾身の力で放った回し蹴りを、しかしナイトメアは舞踊に似た挙動で躱した。元々厄介な身体能力を持つ相手であったが、機動力を削ぐことに重きを置いたあまり、狙いを絞り過ぎ、結果として回避を容易にしてしまっていたかもしれない。
 ナイトメアの、お返しと言わんばかりの二連蹴りが右肩、そして顔面に叩き込まれる。
 衝撃に顔を歪めながらも身を屈めて堪えるヒースクリフ。
 そこへ更に、低く跳んできたナイトメアの前蹴りが炸裂した。
 靴底を高速で擦り減らしながら、なんとかヒースクリフは顔を上げる。
「っ……回復を、頼む!」
「う、うん!」
 モーリーが掲げた杖の先から光が走った。光はヒースクリフを包み込み、失われたシールドの凡そを補填する。これが、今モーリーができる精いっぱいであった。
「うぅ~……っ!」
「この野郎が……調子に乗ってんじゃねぇッ!!」
 執念で更に鋭さを増した足刀が、遂に人形型の左太腿を捉えた。緑一色の体がぐらりとよろめく。
「ナイス! よーし、ボクも――」
「ッ、待て!!」
 ゴムのように跳ね返った人形型がヒースクリフを急襲した。その初撃こそ仰け反って躱すことができたものの、続く両の拳打は胴体へ直撃を許してしまう。
 後退するヒースクリフ。その背をモーリーが支え、癒す。
「だ、大丈夫!?」
「ああ、なんとかな……っ」
 概ね上手く運んでいた。こちらに注視させ、他の仲間から距離を離しつつ、裏口へ向かいやすい位置を確保できている。だから問題は、残された数十秒を、未だ意気軒高なあの個体相手に耐えられるかどうかだけだった。


●対砲台型-2
 2射目を防ぎ切った響の口から苦悶の声が漏れた。とにかく威力が大きく、シールドの消耗が激しい。
 肩越しに顧みる。イリヤが視線で頷いてきた。リロードは既に終えており、問題なく防御に集中できる状態だった。頼ることにする。射線を譲り、響は己のシールドを補填した。
 放たれた紫色の光にイリヤが盾から激突する。衝撃も消耗もそれなりだったが、盾を下げ、まるで散歩の途中に木陰を訪れたときのように、ひとつ息をついた。
「さて、続けようか」
「そやね。あと一息や!」
 葵が掲げた魔導書から放たれた光が砲台型の前面に、正面から、吸い込まれるように激突した。
 確約されていた展開であった。既にこの時、イリヤと葵の攻撃を左右の脚に受け、砲台型はただでさえ少ない機動力を大幅に削ぎ落されていたのである。
 葵の一撃で大きく抉れた前面にイリヤの射撃が命中した。仰け反るような動きを見せる砲台型。それでも尚狙い澄ます砲身は健気でさえある。
 万全の態勢で立ちはだかる響の姿は無慈悲ですらあった。響は2度の経験を活かし、呼吸を読み、姿勢を整え、見事に対応する。
「気ぃ悪いなりやったさかい、ムキになってもうて堪忍な。
 ほな――さいなら!!」
 上空から、流星のように、光の矢が砲台型の頭部に突き刺さった。耳をつんざくような音に圧されるようにして、ナイトメアが四肢を投げて潰れる。それでも持ち上げた唯一の得物、その砲口にイリヤが放った弾丸が飛び込んだ。
「これで――」
「――終わりだよ!」
 割けた砲身をあてもなく振り回すナイトメア。その脳天に響が杖を振り下ろした。砲台型は一度だけびくん、とその身を跳ねさせると、砲身から粘ついた粘液を漏らし始め、そのまま動かなくなった。


●対虫人型-2
 舞千が覗くスコープの中で、銀色の周囲を仲間が舞っていた。
 振り下ろされた鉄塊をIsaacが半身で躱し、そのまま跳ねて柄を蹴り腕を昇っていく。頂上に至ると敢えて笑みを強めて見せてからオーバーな挙動で肩を思い切り蹴り飛ばした。
 巨躯がそちらへ向き、下半身がこちらにスライドしてきた。その腹部を淡い藤色が飛び越えてくる。身を捻りながら宙で繰り出された斬り上げが3本並ぶ脚、その中央の一本を跳ね上げさせた。
 こうなればもう、ただの的である。狙い澄ました舞千の一射で、銀色の脚がひとつ、バン、と物騒な音を残して宙に舞った。
(「重畳かと」)
(「なるほど。そういう方針ですか」)
(「次弾装填なのd」)
 目配せさえもなく、3名は狙いを定め、徹底した。
 正面に回ったIsaacがおちょくるように体を揺らし、攻撃を誘発する。箒掃除のような挙動のそれを掻い潜り、広い股下へ杭のような蹴り上げを見舞う。この衝撃に紛れてマクガフィンが残っている脚に斬撃を叩き込む。ハンドサインはほんの一瞬。次はこちらを。了解なn。装填完了。
 蹴撃で揺らされ、斬撃で刻まれ、射撃で穿たれる。被弾することなく、着々と攻め続ける様は、正しく翻弄と言えた。
 そして遂に3本目の脚が飛ぶ。それは右側を支える最後の一本でもあった。銀色のナイトメアが、がくん、と傾き、倒れ、もがく。
 鼻を鳴らしたIsaacが腕から踏み切り、納刀したマクガフィン、銃を肩に担いだ舞千の間に立つ。
「ウァレ、慌てん坊さん」
 投げるように手を振る。それを合図として、3名は一斉に踵を返した。


●対人形型-2
 ナイトメアから距離を保ち続け後衛に徹してきたモーリーが、その瞬間鋭い眩暈に襲われ、頭を押さえて数歩よろめいた。傷ついた仲間を癒す為に備えていたIMDが、遂に尽きたのである。
「っ……ごめん!」
「……おうっ!」
 それほど人形型の攻撃は熾烈であった。動きに慣れてきたヒースクリフの攻撃も、ようやく狙い通り脚部に命中するようになりつつある。しかしそれでも躱されるときは躱されてしまうし、繰り出されるカウンターは、直撃を許してしまえばモーリーのフォローが必須という規模であった。
(「どうする……?」)
 剃刀のような蹴りを軸をずらすことで躱す。考える時間が必要だったので遮二無二胴を蹴り飛ばした。
(「どうする!?」)
 答えがでないまま、緑色の肢体が持ち上がる。
 打開策が浮かばないまま、ナイトメアが床を蹴り跳び上がった。
 表情を強張らせ、腰を落とすヒースクリフの視界に――小柄な影が飛び込んできた。
「させないよ!!」
 盾を背負った響が強引に割り込んだ。人形型は響と弾き合うようにして宙に放り出される形となる。この特大の隙に、杖を担いだ(自称)超絶美少女がブレザーを翻しながら満を持して飛び掛かった。
「ノコノコ☆ダイナミック☆アターック!」
 比較的広い胴を狙った、力強くもシャープな一撃がナイトメアに炸裂した。墜落、という様相で床に激突、跳ねるナイトメア。更にその胸元を、後方から飛来した銃弾が強く叩いた。
「任せたで、かましたってや!!」
 応える前にヒースクリフは走り出していた。漏れる声は言葉としての形を成さない。それは唯々、決意と意気であった。
 足の裏が痺れるほど踏み込む。
 受け身を取った人形型が立ち上がる
 より
 早く、
 ヒースクリフの渾身の回し蹴りが、人形型の胴を中央から、横一文字に裂いた。
 ふたつに別れたナイトメアはそれぞれが床と壁に激突、暫くびくびくと痙攣して、やがてどちらも動かなくなった。
 緊張の緩和と、疲労から、その場に座り込みそうになる。しかし当然、そうはいかない。まだ仕事は残っており、既に仲間は動き始めていた。



「主任さん!」
「すまない、今終わったよ」
「ナイスガッツ! これで奥さんに胸はれるね!」
「今日は走りっぱなしだなあ、もう!」
 無事パーツを回収した主任を両サイドから庇うようにしてモーリーと響が裏口から表に出る。続いてIsaacが脱出し、マクガフィンがドアを開けた状態で固定、離脱する。
 銃を扱う3名は、唯一残った標的に銃口を向けながら撤退していた。即ち、左の3脚と右腕でぎこちないながらも猛追してくる銀色の巨体からである。
「あれはあれで危険なのd」
「欲張り過ぎないようにネ」
 それぞれ1射を胴体に叩き込み、舞千とイリヤが工場を後にする。残ったのは葵、そして殿を務めるヒースクリフ。
「葵、行け!」
「あんま粘ったらあかんて!」
 工場に半身だけ残し、トリガーを引く葵。
 胸板に弾丸を受けながらも覆い被さろうとしてくる虫人型。
 その間に立つヒースクリフが、今、ナイトメアが叩き付けてきた腕と交錯するように、両刃の大剣を振り抜いた。
「食らいやがれええええええ!!!」
 本日一番の轟音が辺りを揺らす。
 トラックの荷台から身を乗り出した舞千が見たのは、ごろごろと裏口から放り出されたヒースクリフと葵、そして内側から特大の『張り手』を受けて変形する工場の壁であった。
「ハイハイ、もう出ますよ。ワタクシ非力ですので、こちらでご容赦を」
 息を切らせるヒースクリフをIsaacが蹴り上げるようにして荷台に乗せる。葵にはマクガフィンが付き添い、モーリーに引っ張り上げられる形で乗車を果たした。
「どなたか、治療できます?」
「僕がやるよ」
 奮闘の代償として息を切らせるヒースクリフと、そこへ手を翳してIMDを分け与えるイリヤ。この作戦の過酷さを雄弁に語る現状を眺め、舞千は、不用意にこの作戦に飛び込んだ自分を強く戒めるのだった。
 一方、助手席に乗り込んだ響は、主任から手渡されたパーツを眺めていた。ハンドルを握る主任が朗らかな笑みを向けてくる。
「本当にありがとう。ひとりのプロとして、君たちと共にあれたことを誇りに思うよ」
「それは何よりだよ。ところでひとつ提案なんだけど」
「何だい?」
「明日は休みにしないかい?」
「駄目だね。片付けをして、すぐに次の仕事に取り掛からないと」
「ひとりのプロとして尊敬するよ……」
 サイドミラーの中、流れる景色に吸い込まれていく工場を見送ってから、響は窓ガラスに頭を預け、大きなため息をついた。

<了>

成功度
大成功

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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