その矜持を守りぬけ マスター名:雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●後方支援も激戦です
「……地区にナイトメア出現、一般人に被害が出てます」
「すぐに付近の支部からライセンサーの派遣を。警察各署には一般人の避難誘導指示を手配して」
「こちらの地区にもナイトメア出現。アサルトコアの部品製作工場に攻撃を行なっているようです」
「B地区に向かったライセンサーの半数をそちらに回して、足りない戦力は追加戦力の派遣を」

 次々と飛び込んでくるナイトメアの襲撃情報。アイザック・ケインはそれらの全てに目を通し、把握した上で、どこにどれだけ戦力を投入するか、そのギリギリのラインを見極めていた。
 今この地区にいるライセンサーの数は限られている。他の地区でもそれは同様で、余剰戦力など、どこにもない。今いる人員だけでどうにかするしかないのだ。

 指示を出し終えて、ふぅ……とため息をこぼして珈琲を一口。わずかな休息は、疲れた脳に良い刺激を与えてくれる。ナイトメアを撃退し、事後処理が終わった後に飲む酒を楽しみに、もう一仕事……と考えたところでふと気がついた。
 慌てたように今までの敵の出没情報を、地図と照らし合わせて、その青い瞳でじっと睨んだ。

「ココが……次に狙われるところだ」

 そこはアサルトコア用の武器の研究を行っている施設だった。まだその付近にナイトメアの出没情報はない。だが……今回の敵の動きから予測すると、ここに敵が来る可能性は極めて高い。

 その時SALFの本部から連絡が入った。本部のヘッジ博士も今回のナイトメアの狙いは、新システムの開発妨害ではないかと推測したようだ。ライセンサー達に対応を求める通達が行われるという連絡だった。
 アイザックの決断は早かった。すぐにライセンサーを呼び集め、作戦会議を始めた。


●ブリーフィングルームにて
「東京にカプロイア社の下請け企業の研究所がある。アサルトコア関連物を製作しているようだね。今はまだ付近に敵の出没情報はないが、僕の予測が正しければ必ず敵はここに来る」

 アイザックは集まったライセンサー達に東京に出没したナイトメアの映像を見せた。耐久性の高い長距離タイプと、機動性の高い近距離タイプがチームを組んで連携して攻撃する様子が映し出される。

「これは現在東京都内で多く見られる敵だ。研究所にやってくる敵もこのタイプと僕は予測している」

 その後アイザックは付近の地図を見せた。山の近くに存在し、幸い付近に住居は少ない事。その為ほとんどの一般人は避難済みだった。

「しかし……まだ研究所内に、残っている研究員がいる。彼らの避難は間に合わないかもしれない」

 アイザックにしては珍しく、苛立ったように指先で、トントンと机を叩く。

「SALFの今後の戦いを有利に進める兵器開発。それを行う研究員を助ける事は、未来の自分達を助ける事だと思う。だから彼らを守って欲しい」

 アイザックは皆に頭を下げてから、その青い瞳でまっすぐに見て告げた。

「他にも派遣しなければいけない現場が多すぎて、申し訳ないがその研究所に向かえるのは君達だけだ。でも僕は君達ならできると信じている。吉報を待っているよ」


●研究所にて
「博士。SALFから避難指示が出ていますから、早く避難しましょう」
「ダメだ! ここに残っている研究品を無事運び出す時間の余裕がない。これはなんとしても守らなければいけない」

 その時研究所の通信用設備に、SALFのアイザックから通信が入った。画面に映るアイザックの表情は険しい。

「今ライセンサーがそちらに向かっています。すぐに避難してください」
「避難はしない。ライセンサーが来るというなら、ここに残って我々が見張る。部外者に任せて機密事項を見られては困る」
「戦闘が起これば死ぬかもしれないのですよ」
「これは我が社の社運をかけて開発したものだ、命に代えても守らなければならないし、他社に情報が漏れるわけにはいかない」

 いくら説得しても、一歩も引かない博士の頑固さに根負けして、アイザックは頷いた。

「わかりました。しかし戦闘に関してはライセンサーの指示に従ってください。彼らはプロですから」
「わかっている。この開発中の武器を守れるなら、使えるものは、すべて提供する。これがどれだけ未来を救うかわかっているのだろう?」
「貴方の頭脳は、その武器に勝るとも劣らない。貴方が死ねば、開発はさらに遅れる。それを忘れないでください」

 アイザックとの通信を切った後、博士はコンテナに収容される武器を眺め呟いた。

「わかっている。私も死にたいわけではない……。それでも、研究品は、手塩にかけた子供も同然。守り切らなければいけないのだ」

 博士のその声は震えていた。戦闘に巻き込まれる恐怖がないわけではない。それでも研究者としての矜持が上回った。そう、それだけなのだ。


●目的
ナイトメアの撃退
研究所の防衛


●場所
3階建ての研究所。作戦開始は四時ころ。
高さ15m×横幅×300m×正門から裏門までの奥行き100m。
正門側は建物より広い駐車場の敷地があり、裏口側は急斜面の山あり。建物裏口側に開発のための、広い工場設備がある。
近隣住民は避難済みで、この近辺で残っている一般人は研究員のみ。

PC達は研究所に到着したところからスタート。
まだ敵は来ていない為、迎撃準備を整える事は可能。
SALFから支援物資を持ち込む時間がなかったので、研究施設内部の物を借りて使用する事は可能。

・使用可能なもの。
 空のコンテナ10個:高さ3m×奥行き3m×横10m
 4tトラック3台
 荷物運搬用のフォークリフト2台
 装甲板(2回まで攻撃に耐えられる)※板なので自立しない
 ロープや金属ワイヤー
 ビニールシート
 金属バケツ
 小型から大型まで各種照明
 工業用油

(PL情報)
PC到着から1時間で、正門側から敵が来る。


●NPC
アイザック・ケイン
 後方指揮を得意とする、ネメシスフォースのライセンサー。
 今回は現場には来ない。通信で連絡は可能。

研究員×3人
 博士と助手2名。一般人で特殊な能力はない。基本的にはPCの指示には従う。ただし研究内容は機密事項の為、開発中の武器のデータや、武器が格納されているコンテナ内を見る行為は止める。
 物を運ぶなど簡単な手伝いは可能だが、敵の攻撃を食らうと簡単に死にかねないので注意。


●敵情報
マンティス×4
 攻撃方法はそのスピードを生かした突進と、角のように発達した下顎や鋭い鎌のような両腕による近接攻撃である。
・切り裂く
 爪や刃物などを用いて勢いよく攻撃する。
・突撃
 前方3スクエアに存在する対象全てへ攻撃。敵味方識別可。攻撃後、3スクエア前方へ移動する。

レールワーム×2
 遠距離からの攻撃を得意とする。また、分厚いリジェクション・フィールドや装甲を保持しているため、防御力も高い。
・レーザーガン
 遠距離から光線を発射し、攻撃する。発射には1Tのリロードが必要。
・ガード
 自身が攻撃を受ける際に、防御力をあげて守る。


「この世界に来てから初めての仕事、気合いを入れてこなさないとね!」
初めての仕事と言うこともあり気合いも準備も万端。
マンティスの対応をする為にバリケードとして設置されたコンテナの上に陣取りマンティスを迎え撃つ。
主な行動はマンティスをコンテナで作ったバリケードの中に誘い込み足止め、出来れば撃破する事。
もしワームより先にマンティスを撃破で来た場合はワーム班の援護に向かう。
「さーて、それじゃあ張り切って行っちゃうよっ!」
マンティスの誘い込みに成功したら、誘い込まれた戦闘のマンティスに向けてポイントショットを使用、狙うのは的が大きく当てやすい胴体。
攻撃を当てて気をワーム班からこちらに向けるのが目的。
バリケード内から離れようとするマンティスを優先的に攻撃して、この場から逃がさない様にする。
「残念、ここからは逃がさないよ。大人しく私達と遊んでいてねっ!」
ワーム班がこちらに合流した場合は足止め中と同じように胴体へ射撃攻撃を、ワーム班の援護に向かう場合は射程ギリギリからの援護射撃で対応する。

戦闘終了後はけが人の手当てを手伝ったり、バリケードに使った資材等の片づけを行う。
「やっぱり、訓練と実際の戦闘は全然違うなぁ…。…もっと頑張らないと」
そう呟き、もっと自分を磨こうと決意する。
準備時間
研究所の一番高いところ(貯水タンクの上とか)に立ち、全方位を見張り、敵の接近を警戒
接近を発見したら上空に砲撃で全員に連絡、そのまま撃破に向かう
基本的に砲撃しながら接近
その後は分断作戦に合わせる

分断に成功したら武器を高射程のに変え、後衛に切り替えて、レールワーム撃破を先に行う

その後は前衛の体力を見ながら前衛、後衛をスイッチしながらマンティスと対峙

マンティス相手には身体回りをうろちょろと飛び回りながら削りを入れる
目的
被害を最小限に留めること

行動
研究所に到着次第、通信機を用いてアイザックと会話。ナイトメアに対しライセンサーの伏兵は有効であるかどうか質問しましょう。
人と同じ五感ならビニールシートを利用したダミー混じりの潜伏方法。熱源探知があるのなら油を使用して各所炎を。動体感知など偽装できないものの場合は潜伏を諦め、バリケード構築に手を貸しましょう。
潜伏が可能なら、レールワームの武装と予想されるシューティングポイントを照らし合わせ、確率の高い所の近くに潜伏しましょう。
もし潜伏が露見した場合、全速力にてバリケードへ逃げ込みましょう。多数に無勢、立ち向かえば轢き潰されるだけですから。
潜伏が成功したなら、マンティスがバリケードに突入したタイミングでレールワームと交戦開始。フォースアローで攻撃しつつ接近、至近まで近づいたらライトバッシュに切り替え。
レールワーム撃破後はバリケード組と共にマンティスをはさみうちに。突進をくらわないようフォースアローで牽制。
研究所の防衛が最優先だな。
残ってある資材でバリケードを築くとしようかのう。
時間は無いぞ! アイザックと連絡を取って、敵が来る方角と時間を割り出せないか尋ねる。
ポレの嬢ちゃんの案に則り、コンテナの配置を急ごうかのう。
わしの可愛い助手では無いが、博士や助手達にも手を貸してもらおうか。
わしはコンテナ内にワイヤーとロープを張り巡らせておこう。
コンテナ内部の床にオイルを撒いて置けば、運が良いと突っ込んだ敵が転倒してくれるかも知れんしな。

敵が近づいて来たら、わしは準備していたトラックに乗り込む。
上手く行くか分からぬが、マンティスとワームを分断出来るようやってみるか。
失敗したらわしが敵の気を引く。クラクションを鳴らして突っ込めば分断は狙えるかもしれんしな。
戦闘面ではパワークラッシュでマンティスを優先して狙う。
発明品の破壊を優先する場合は、全力移動で前に立とう。
同じ志を持つ者の子となれば、ジジイ無理してでも前に立つぞ!
◆事前準備
事前準備(戦況組み立て・罠設置)のお手伝いは積極的に行います
敵戦力が近付いて来るという逼迫した状況なので迅速に行動します
焦る姿は見せません
所員の方に緊張の面持ちが見られた場合、お茶でも振る舞って緊張を解して頂きます
「緊張した場面でリラックスが出来るのは、人間の優れた能力の一つです。尤も、私はヴァルキュリアですが、その様に伺っております。大丈夫だにゃん、ですよ。いえ、このような場面で行う事ではありませんでしたね。申し訳ありません」
お茶とお茶請けを預け「これでのんびりお話でもしていて下さいませ、ご主人様」とリラックスを促しておきます
一般人の方のパニックは、時に野犬よりも危険です
◆戦闘行動
戦闘ではゼルクナイトとしてインパクトアタックでのマンティス撃破を担います
敵に攻撃力がありそうなので、セイントとしてヒールでの回復行動も織り交ぜながら
負傷の度合いが大きい仲間には、自身の戦況離脱を試みて回復を行います
マンティス・レールワーム共に残った敵は速やかに討滅に掛かります
●心情
「どうして研究者のひとはにげないのかなあ。ふしぎ。」

●目的  敵の全撃破と研究所の防衛。ただしPCは、研究者の命を最優先しようとする。

●バリケードを用いた罠の設計
 コンテナを箱型に配置。□のコンテナは少し横にずらし、入り口を作る。

(研究所側)
 ■
■ ■
 □
(敵正面側)

 それぞれの辺は、2つのコンテナの横を隣接させて並べ、奥行きを広くして足場を作る(奥行き3m×2個=6m)。

●PC行動
 事前準備では、他PCの指示に従って楽しそうに手伝いをする。好奇心旺盛で、研究データなどあれば覗こうとしてしまう。研究者たちが避難する前に、携帯品のチョコレートバーをあげる。
「おなかいっぱいになったら、元気でるよ(にへら)」
 準備終了後、コンテナ上でビニールシートをかぶり、待機。
 戦闘では、マンティスが標的。バリケード内に誘致された敵を、コンテナの上から知覚攻撃で足止め。レールワーム撃破までの時間稼ぎを主目的とする。足場破壊を警戒し、離れて攻撃する。その他、前衛のフォローをする。
 また、回復役として、できるだけ味方の動向・状態に気を払い、「ヒール」を行使する。遠方の味方について、体力が半分以下になるなど危険な状態にあれば「全力移動」を駆使し、ヒール射程圏内に移動する。
「お手あて、まかせて!」
 戦闘終了後には、無邪気にハイタッチを求める。
◇事前のお手伝い(決戦場の作成)
手作業は得意なので細かい作業を中心に
重い荷物は手を貸して、速やかに終わるように立ち回ります

所員に声を掛けて安心させながら落ち着いて準備
準備が済んだら所員を安全な場所へ移動して貰っておきます

◇コンテナ上で潜伏
シート・遮蔽物を使用して自身のシルエットを隠します
マンティスとワームの間に連携があるかどうかを射程に捉える前に確認
・マンティスが斥候としての行動を執るか
・ワームがそれを受けての動きを見せるか
明確に判らずとも、その片鱗が見えたら、連携を分断するように射撃で引き離します

レールワームがレーザーを放つ前の準備動作が無いか見極め。
その動作に合わせ、射撃を阻止する形で攻撃出来たらと思います
レーザーの発射に合わせた攻撃が出来たら、自爆も誘えるのではと…

マンティスが接近してきた場合はグラップラーとして排撃
レールワームに注力する為、戦闘可能な前衛への引き渡しと自身の態勢の立て直しは速やかに

距離を開けた視認で、戦況も常に確認
逃亡・自爆・特殊な行動など、戦況の雰囲気が変わる事が起きたら、咄嗟に声を掛けて仲間に注意を促します

戦闘が終わったら、所員にその事を伝えに行きます
気を揉ませては可哀想なので…

自分が人間と掛け離れた姿である事を自覚してはいますが、こなすべき任がある時には気にしません
同じ人間だと思っています
襲撃に備え、協力して正門側にバリケードを作成する。
装甲版の在庫を確認し、研究所入り口に固定可能か試す。だめでもレーザーガン対策で立てかけておく。
研究員にはフォークリフトでのコンテナ運搬を依頼する。
バリケード作成のときに、バリケードの奥に約50cmの抜け道ができるよう調整する。裏口からの襲撃に備え、外から裏口を塞ぐようトラックが横付け可能ならば塞ぐ。
研究員には研究所内から裏口の監視を依頼する。異常があれば電話して正門側へ避難すること、可能な限り廃材や装甲版などで裏口を内側から塞ぐよう研究員に依頼する。

正門側バリケード前で、膝をついて狙撃する体制をとる。
役割は囮のため、敵を見つけ次第スナイパーライフルで狙撃。バリケードへ誘い込むためにとにかく目立つように撃ちつづける。
マンティスの移動速度を見て、逃げられるぎりぎりまで近づいてきたらバリケードへ走り、奥の狭い抜け道へ向かう。
抜け道にマンティスが進入可能であれば撃破を優先し、狭い通路の入り口を守る
「その骨格なら、この道には入れないし…入れても、直線なら外さない!」

●準備万端
「どうして研究者のひとはにげないのかなあ。ふしぎ」
 ポレ(la2419)がこてりと首を傾げると、白衣を纏う大黒 善治(la0839)が、にししと笑った。
「わからぬか。じゃが、わしは博士と気が合いそうだのう!」
 発明品を我が子と思う気持ちはよくわかる。すぐにアイザックへ連絡した。
「敵が来る方角と時間を割り出せないかのう」
「そちらへ向かう敵を発見した。進軍速度から1時間程で着くだろう」
 情報を確認しアイザックは、敵位置データを送った。
 チャーチワーデンを咥えたアナスタシア・A・アダマス(la0577)は眠たげな趣でアイザックに問いかける。
「アイザック。このナイトメアに伏兵は有効かしら? 五感があるか知りたいわ」
 アイザックは眉根を寄せて深く考え込む。
「個体差が激しいから、五感についてはわからないが……今回の敵は知性が低い傾向がある。僕の推測だが、恐らく伏兵は有効だろう」
 その答えに満足げに頷き、アナスタシアは煙を吐き出した。
 ミラ・R・Ev=ベルシュタイン(la0041)は研究所の屋上に立ち、武器を背負い、仁王立ちで周囲を見下ろした。
「……私が……見張り…守る……うん」
 自分に命令するかの様に淡々と、その半目から感情は推測できない。
 外部装甲を装着したヒルト ニーヴェル(la2617)はバリケードの制作を開始。
「正門側から敵が来るなら駐車場側にバリケードを作り、研究員の方は裏側に避難ですね」
 ヘッドギアをつけた頭で小さく頷いた。研究員に頼みコンテナを積み上げバリケードを作る。
「装甲版はまだ在庫があったよ。入り口に固定するんだよね」
 黒髪を括った小鴉 凛(la0014)は、ワイヤーでしっかり装甲版を固定し、その仕上がりに満足げに頷いた。
「この世界に来てから初めての仕事、気合いを入れてこなさないとね!」
 気持ちは初任務への気合い十分。
「ビニールシートでおもてなしでしょうか」
 グレタ・アンドロミカ(la0867)が、まるでテーブルセッティングの様な丁寧さで、コンテナにシートをかけていく。
「コンテナ内にロープを張り、油を撒きました。獲物を仕留める準備は万端ですね」
 キリン(la2513)は狩人の目で念入りに罠のチェック。

「ここはなにを、作ってるのかな?」
 ポレが興味津々で研究データを覗きこみ、博士が慌てて飛んできた。
「ダメだ! 勝手に見ないでくれと言っただろう」
「どうして?」
「これは命がけで作った研究品だ。部外者に見せられん」
 ポレにはよくわからなかったが、博士の情熱に思わず感心した。
「すごい!」
 ポレはぐっと小さく握りこぶしを作る。
「お疲れ様です。お茶をどうぞ」
 博士の緊張を解きほぐそうと、グレタは優雅に紅茶を差し出す。
「緊張した場面でリラックスが出来るのは、人間の優れた能力の一つです。私はヴァルキュリアですが、その様に伺っております。大丈夫だにゃん、ですよ」
 無表情のグレダのにゃんという言葉に、博士はあっけに取られ素直に紅茶を受け取った。
「これを飲んでのんびりお話でもしていて下さいませ、ご主人様」
 グレダはテキパキ動き、くつろげるよう椅子まで用意。
「あ……ポレのおかしあげる。おなかいっぱいになったら、元気でるよ」
 ポレがにへらと笑うと、博士は素直に紅茶とチョコレートバーを口にした。
「ポレもいっしょに、たべる」
 ポレが博士と並んでお茶をする、微笑ましいやりとりを見守り、グレタは優雅に一礼して去る。
「一般人の方のパニックは、時に野犬よりも危険です」
 グレタの毒舌を耳にした者はいない。

●乱戦
 ミラの耳がピクリと動く。半眼で遠くを見つめる先に、研究所に近づく敵がいた。
「……来た……」
 ポツリと呟き銃口を上に向ける。パンっと弾ける音が静寂に響く。戦いの火蓋が切って落とされる合図だ。
 キリンは獲物を狙う狩人の如く、高所から敵を観察した。次々と研究所へ迫るマンティス。その後方にレールワームがいた。
「ワームとマンティスの間に距離があります。これなら分断も可能です」
 キリンの助言を受け、ヒルトはマンティスへ、派手にスナイパーライフルの弾を打ち込む。
 不意を突かれ、マンティスは首をヒルトへ向けた。マンティスの突進で、吹き飛ばされたヒルトは、バリケード内に引き込む様に撤退。
 マンティスが猛烈な勢いで距離を縮め、鎌を振り下ろす。ヒルトが作り出す想像力の障壁――イマジナリーシールドが強靭な鎌を防いだ。
「こっちだよ」
 ポレがコンテナの上から飛び降り、ピンクに輝くハートの光に包まれた杖を叩き込み一撃離脱。マンティスを蹴りつけ飛び跳ね、コンテナの上に逃げた。
「ばいばーい!」
 敵を翻弄する様な動きのポレ。その隙にヒルトは抜け道内へと逃げ切った。
「その骨格なら、この道には入れないし…入れても、直線なら外さない!」
 ヒルトは狭い隙間からマンティスを待ち構えた。
「おまえ達は袋の鼠だ!」
 パァンと派手にクラクションが鳴る。善治がトラックでコンテナに突っ込み退路を塞ぐ。マンティスはバリケード内に押し込まれた。
 咄嗟に外へ逃走を試みたマンティスの胴体に、凛のポイントショットが直撃。
「残念、ここからは逃がさないよ。大人しく私達と遊んでいてねっ!」
 善治もトラックから飛び降り戦闘開始。敵の一体に直剣を突き刺しマンティスを抉る。
 怒り狂ったマンティスは突撃。善治が体をひねり直撃を免れ、勢いのままコンテナに突っ込んだマンティスは、ロープに引っかかり、油に滑らせ転倒。その隙に善治は距離をとる。
「大黒さん!」
 凛が射撃した敵と、転倒から復帰した敵が善治に迫る。善治は二体を巻き込みパワークラッシュを放った。凛の追撃がマンティスを貫き、最初の一体が倒れた。
 その頃グレタは、近接で一体のマンティスを相手取っていた。
「御奉仕を開始させて頂きます」
 敵を目の前に焦るそぶりも見せず、羽の様に軽々と大剣を振るい、インパクトアタックで叩き斬る。
「ポレもいっしょに、かまきりさんを退治する!」
 ポレが軽々と飛び跳ね、体重を乗せて上から杖で殴る。
「邪魔者は速やかにお掃除致します」
 上からのポレの攻撃がマンティスを足止め、グレタが振り下ろした大剣がマンティスを切り裂く。二人の連携で二体目が倒れた。
「どんどん、張り切って行っちゃうよっ!」
 凛は味方に不安を与えぬ様、明るい声をあげ、マンティスの胴体に向けて攻撃を畳み掛けた。凛を厄介な相手と捉えた敵は、コンテナを攻撃し足場を奪おうとする。
「助太刀するぞ」
 善治が軸足に体重をかけて溜めを作り、その勢いのまま飛び込んだ。
 ドスッ。マンティスに剣が突き刺さる。そこに凛のライフルが火を吹いた。ズドン。その一撃が敵の息の根を止めた。これで三体目。
「ありがとう! そうだね。早く敵を仕留めてワーム班に合流しないと」
 凛は破壊が続くバリケードが長くは持たない事に気づいていた。
 ヒルトは追い詰められていた。マンティスは突撃で早々に抜け道をこじ開けた。
 入口の装甲板を盾にしたが壊され、ここで引けば研究所に被害が出る。ヒルトのシールドがガリガリと削られ、ヒールで自己修復を続けても間に合わない。
 その時だった。
「お手伝いさせていただきます。お嬢様」
 ギリギリのラインで、グレタがヒルトの前に踊り込む。ヒルトを守りつつ、ヒールで修復。
「一人で全部を抱え込まず、私を頼ってくださいませ」
 戦場でも一切の動揺を見せない、グレタの頼もしさにヒルトの緊張がほぐれる。
「ありがとうございます。ワタシも一緒に」
 グレタがマンティスの鎌を切り上げ、鮮烈な輝きを放つ刃で振り下ろす。ヒルトのライフルがマンティスの体を穿ち、最後のマンティスが崩れ落ちた。

●猛攻
 マンティスとワームの分断が成功した頃、ワームはバリケードを崩すべく攻撃を開始した。
 そのタイミングを待っていたアナスタシアは、潜伏からの不意打でフォースアローを叩き込み、一気にワームへと接近する。
「我が名は……ミラ・ラージュ・エボルトゥベルシュタイン。……この世界で、生きる者。……貴様に宣戦布告する者だ」
 ミラもまたワームへと距離を縮める。頬を少し引き上げ、見下ろす様に淡々とマシンガンで砲撃を繰り返し、弾幕でワームを足止め。
 キリンもロングボウで援護射撃をしつつ、二体のワームの動きをじっくり観察する。
 するとワームがレーザーを放つ前、準備動作の癖がある事を発見した。自爆狙いでレーザーの発射に合わせポイントショット。
 だがタイミングを合わせ、動く的に正確に当てる事は困難を極める。照準がずれ、レーダーの軌道をわずかに反らすだけだった。
 三人の猛攻を受けても、耐久力に優れたワームはすぐに落ちない。三人で二体のワームを相手にするのは、手数が足りない。フリーのワームは、三人に目もくれずバリケードを攻撃する。
「そちらの敵は二人に任せて、私はもう一体に向かうわ」
「一人では危険です。私も援護を……」
 キリンの言葉にアナスタシアは首を振る。
「ここは私に任せて。ノブレス・オブリージュの言葉に従い、我が責務を全うする」
 戦力不足の穴を自分が埋めるしかない。アナスタシアは最も危険な立ち位置に、誇りを持って挑む事を覚悟した。無傷のワームへと駆ける。
 アナスタシアの覚悟を見たキリンは、マンティス班の戦況を確認し応援を要請した。
「こちらの損害は厳しいです。援護をお願いします」
 ミラは無言でワームの攻撃を躱しつつ、弾丸をワームに叩き込む。普段より一層感情が薄まり、殺戮兵器として淡々と動く体。
 攻撃を躱しきれず、ミラのシールドは削られる。キリンの一撃がワームに直撃。その隙にミラが体勢を整えた。そこでミラは思いだした。大切な人に教わった事を。
「……自分を……見失うな……か」
 キリンの援護攻撃を受け、慎重に距離を取りマシンガンでワームの装甲を削る。
 ワームの傷が重くなった頃、ミラは武器を魔道書に持ち替え、一気に距離を詰める。ミラの左頬にコブラの刺青が現れた。
「……これで……終わり」
 魔道書から放たれた、フォースアローの強烈な光が、ワームの息の根を止めた。
 一方アナスタシアは一人ワームと対峙した。ワームの砲撃とマンティスとの攻防で、バリケードの損傷は深刻だ。今レーザーガンがバリケードに直撃したら、奥の研究所も破壊される。
 ワームの注意を引くため、懐に飛び込み、獅子王を振るってライトバッシュを叩き込む。少しづつワームを削るが、まだ足りない。
 一対一でワームの反撃を一身に受け、アナスタシアのシールドは底を尽く。
 崩壊しかけたバリケードに向かい、ワームが突き進む。その行く手をアナスタシアが立ちはだかる。
「ここで引いたら……私は自分を赦せないの。だから行かせないわ」
 ワームの進行を妨害したアナスタシアは吹き飛ばされ、完全にシールドは消失。身体中から血を流し倒れた。
 ワームがリロードし、レーザーガンを、研究所に放ったその時、キリンの要請を受け、マンティス班が間に合った。
「同じ志を持つ者の子となれば、ジジイも無理してでも前に立つぞ!」
 善治は地面を蹴って勢いよく飛び出し、研究所を守るため大きく腕を広げる。
「博士の子はわしが護る。たかが機械や武器と言われても、わしからすると一つの命と変わらぬ」
 強烈なレーザーが直撃。善治はシールドを展開し受け止めるが、ジリジリと押されていく。両足で踏ん張って、なんとか耐えたがシールドが消失。レーザーが善治の身を焼き、膝をつく。
「二人を助けなきゃ! 皆手伝って」
 凛がワームへポイントショットを放ち、ワームの注意を引きつけ、その隙にポレが駆けつけ、アナスタシアと善治、二人を守るように立つ。
 ポレは駆けつけたミラに、ヒールをかける。
「お手あて、まかせて!」
 ワームの至近距離から、ミラはフォースアローを繰り出し、ポレも輝く杖で一撃叩き込む。
 凛のポイントショットが、弱ったワームの身を削った。
「狩人は最後まで気を抜きません」
 キリンの弓から放たれたポイントショットが、敵を貫きとどめとなった。ワームはその身を塵に変え、敵は全滅した。

●戦果
「怪我の手当てはお願いね! 私は片付けやっちゃうから」
「……手伝う……」
 凛がテキパキ率先して片付けを行い、ミラもそれを手伝う。
「怪我は治りませんが、応急手当を致します」
 グレタは戦闘の疲れも見せずに、冷静にアナスタシアと善治の手当をした。
 凛は片付けながら反省会をする。研究員達も発明品も守り切った。でも、もっと上手くやってたら、二人は怪我しなかっただろう。
「やっぱり、訓練と実際の戦闘は全然違うなぁ。もっと頑張らないと」
「あら、私は貴方の援護射撃のおかげで助かったわよ」
 アナスタシアは傷の残る体で微笑み言葉を返す。それを聞き凛はホッとしつつ、もっと自分を磨こうと決意した。
 キリンは戦闘が終わり心を緩ませた。所員はもっと緊張していただろう。早く安心させてあげたいと、優しい気遣いが溢れてくる。
「戦闘はもう終わりました。もう大丈夫ですよ」
 自分の姿が人間とかけ離れている事に遠慮して、所員にそっと声をかけた。すると二人が歓声をあげた。
「ありがとう! 凄い音がして生きた心地がしなかったんだ」
 キリンの姿を見て安堵し、所員は笑顔を浮かべた。
「もうだいじょうぶだって、よかったね。いえーい♪」
 いつの間にかやって来たポレが、所員とハイタッチ。続けて無邪気な笑顔でキリンにも手を出す。
「キリンも、いえーい♪ だよ!」
 自分の姿に全く物怖じしないポレに、キリンも釣られて頬を緩ませ、そっと手を合わせた。
「まったく、命が一番大事って言うでしょうに。あなたたちは馬鹿な大人です」
 愛らしい外見のヒルトに叱られて、博士は大きく肩を落とす。
「すまなかった……迷惑をかけて」
 深く反省する姿に、ヒルトは慌てて言葉を付け足した。
「でも、本気で子供を守ろうとする馬鹿は嫌いじゃないですよ。特に、あなたたちみたいな大馬鹿さんは」
 ヒルトの隣にやってきた善治は、カラカラと明るく笑う。
「博士よ、その頭脳を誇ってくれい。大天才であるわしに出来なかった事だ」
 善治の怪我だらけの姿を見て、博士は深く頭を下げた。
「守ってくれて本当にありがとう。君達の役にたつ研究にしてみせる」
 皆で守った矜持が、いつか未来を助ける武器となる。

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