そこに帰結するわけ マスター名:秋月雅哉

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
救出
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●乾いた憎悪
 倒さなければならなかった。私が倒さなければならなかった。家族を屠ったあの化け物を、私こそが倒さなければならなかった。
 そんなことを家族は望まないよ。SALFに任せて貴方自身の未来を生きることこそ供養だよ。そんなきれいごとに納得できるなら、とっくにそうしていた。
 家族を失ったとき私の心は死んだのだ。ここにあるのは乾いた憎悪の、ヒトの形をした化け物だ。
 私は化け物を殺せる化け物になって今後を生きていきたい。そう思ったのに。
 あぁ、悔しい、悔しい、悔しい。私は所詮は一般人だ。敵わないことなど分かっていた。それでも一矢くらい報いたかった。傷一つ付けられない。私を助けようとした人が怪我をする。
 ナイトメア。悪夢の名を持つ化け物は、私に再び残酷な牙をむいた。
 成人男性より一回りほど縦に大きく、横の太さは不釣り合いなほど細く、人間であれば手足が異様に長いナイトメアがあざ笑うように枯れ木のような手を伸ばす。生き物としてあり得ない、毒々しい紫とオレンジのマーブル模様は生理的嫌悪を呼び起こす。
 そんなナイトメアをかばうように立つもう一体のナイトメアは人型というより岩の山に近い。不規則にでこぼこしていて、短い手足は太く一撃で何人もの人を吹き飛ばしたし、吹き飛ばされた人はビルへめり込んでいた。腕力特化のナイトメアなのだろう。
 二体。たったの二体。この世界にはまだまだナイトメアがいるのに。私の敵は、私と同じ辛さを味わった人の敵は、はいて捨てるほどいるのに。目の前の二体にすら雪辱を果たせないのがたまらなく悔しい。情けない。悲しみなのか怒りなのかそれとも別の何かなのかわからない、熱い涙がにじむ。
 あぁ、私はどうして。どうしてこんなに無力なんだろう。
 こんなところで終わるなんて、そんな終わり方が私には似合いなのだろうか。
 あぁ、できるならこいつらのいない世界を。二度と誰も悲しまない世界を。どうか、誰か。……助けて。私じゃなく、世界を。どうか。

●未来を取り戻す
「緊急伝達、緊急伝達。市街地にナイトメアが出現しました。至急討伐に向かってください」
 管制室にオペレーターの鋭い声が響き渡る。被害状況を確認する上司に通報を受けたオペレーターはすぐに応じた。
「かつてナイトメアに家族を殺戮された少女がナイトメアにあらがおうと応戦、それを救助しようとした一般人が何名か被害を受けています。場所は旧市街地。あまり人通りはありませんが老朽化した建物が多く、倒壊すれば交通などに支障が出ます」
「一般人の救助と人払いは別動隊を動かす、手の空いているライセンサーは討伐に向かう準備を。戦力は?」
「二体のナイトメアの出現が確認されています。攻撃阻害系の能力に特化した支援タイプが一体、鈍重ですが一撃一撃が重く防御力に優れた前線タイプが一体です」
 連携を取られると長期戦になりかねない組み合わせだな、と上司は眉間にしわを寄せた。
「少女の確保は別動隊にさせておこう。ただ、ナイトメアとの戦いがどういったものになるのかはその目で確認させる。そのうえで少女に戦わない道を選ぶように戦闘が終わったら説得を頼みたい。戦っていないものが説得するより骨身に染みるだろう」
 すべてを諦めた少女の未来と、ナイトメアに蹂躙される他の人たちの未来を守り抜く戦いの火蓋はもうじき切って落とされようとしていた。


●成功条件
ナイトメア二体の撃破および少女の説得(少女を含む一般人は別動隊が救助しますので戦闘とその後の説得に専念してください)

●失敗条件
ナイトメア討伐の失敗(少女の説得に失敗した場合今後も少女はナイトメアに立ち向かおうとするでしょう)

●ナイトメア詳細
・妨害タイプのナイトメア
後衛。
耐久面が優れていないかわりに妨害工作を得意とします。
全体的な能力の低下(移動妨害。攻撃低下、防御低下、命中低下、回避低下、行動妨害)の使用が中心。
移動速度が速く普通に対面しようとするとうまく攻撃タイプのナイトメアを攻撃の射線上に障害物として置いてしまいます。
成人男性より一回りほど大きいです。触手のように手を伸ばすことでバッドステータスを植え付けたり、体を伸縮させて進路を阻むなどの妨害工作を得意とします。

・攻撃タイプのナイトメア
耐久性、攻撃力に優れた前線タイプのナイトメアです。移動速度はあまり早くないので攻撃を当てるのは難しくありませんがとにかく頑丈。
妨害タイプのナイトメアの前に立ちふさがるように位置どりますが連携が取れているかは不明。
冷静に立ち向かえばヒットアンドウェイで攻撃を避けることもできるでしょう。
岩山のようにでこぼこした体表。
申し訳程度についた手足は短い代わりに凶悪なほど太く、攻撃が当たると吹き飛ばされたり建物にめり込んだり。
単眼の視界に入ったものを近い順番から腕で薙ぎ払う、近くに敵がいなければ移動して射程に入れようとするという行動をとります。

・少女
ナイトメアに家族を奪われた過去のある少女。現在はただナイトメアに一矢報いるために生きています。
今回の完全成功には彼女の説得も含まれます。

・戦闘場所
老朽化した建物の多い旧市街地。建物の倒壊により道路がふさがれると近隣住民の生活に支障が出ます。
近くに自然を生かした公園や植物園があり、住居地というよりすこし辺鄙な、地元の人たちの憩いの場所として利用されている場所です。


【心情】
怨恨の連鎖は続くからね、この戦いの明確な終わりは相手を滅ぼすか滅ぼされるか。その連鎖に捕らわれている彼女は自らの立ち位置を見失ってるんだろうね。
ボクにはクライドという相方をこの世界に来て手にいれた事で救われた、彼女にもそんなきっかけがあれば。
【目的】
第一目標はナイトメアの殲滅、そして女の子の説得。

【準備】
攻撃タイプをグール・シック、ルールー、アシュレイ・L・ベイリー、クライド ヒンメルで強襲するよ。

【行動】
戦闘ではナイトメアの攻撃タイプを積極的に狙っていく。スキルの全力移動を駆使し、攻撃タイプへ急接近。この時可能なら妨害タイプの射線に入らない用に攻撃タイプを壁にして戦う。相手の隙や警戒が逸れたらフォースアローを使う。
体力がやばくなったら一度下がって後衛と合流。
戦闘終了後は周囲を警戒、女の子の説得を見守るよ。
もし声をかけるタイミングがあるなら一言くらいかけてみようかな。

この任務が終わったら皆を食事に誘ってみる。
慰労の意味と今後の皆の活躍に期待を込めてね。
そしてミックスドリンクバーゲームでコーヒー×オレンジジュースの最強コンボを見せちゃう。
・行動
ナイトメアの撃破

基本的に刀による近接が主軸
抜刀一閃からの初撃から抜き身での交戦を展開
ライトバッシュやヒールは適宜状況に応じて行使

仲間との連携は状況下で必要に応じて
単に戦闘を効率良くこなす為の手段であり、過度に重用や重視はせず

尚、攻撃型と対峙するか妨害型と対峙するかは状況推移による
仲間の対応に合わせて、穴を埋めるべく・心情
彼女としてはナイトメアは討つべき敵の一点に尽きる
何かの情動を抱く訳でもなく、ただそれだけの手合いなのである

そして、少女に対しても何等感慨を抱いていない
成すと定めたなら突き進むのみ。そこに如何程の余地をも挟もうものかと、彼女の意志は揺らがない
少女の情動を理解した所で、紡げる言葉は一つである

――望むのなら、好きにすれば良い

彼女自身、一矢報いられないからと在り方を、その意志を折れるほど器用な性格ではなく

望むのなら好きにすれば良い
例えそれで目的を果たせずとも、例えそれを無駄死にや犬死にと評されたとしても、そんな評を下す者など無視すれば良い
貫く事には、確かな意義と価値がある
元より自身の行動に意味を持たせるのは他者ではなく己なのだから

そう、例え彼女が戦う力を持ち得なかったとしても
諦めを知らない彼女は、ただ己が道を信じて貫き進むのみなのである

…強いて言うなら
諦めない事と捨て鉢になる事は同じではない、とだけ
復讐ですか…。どういう形であれ、それを糧に今まで生きてきたのでしょうね。
そんな子に掛けられる言葉は多くないでしょうが、せめて自分を傷付けない生き方を示してあげられればと。

○戦闘
戦闘型の相手を担当。
引き付ける者の後ろに立ち、戦場の観察。
アシュレイさんと分担し、前衛の生命力が減って来たらヒール。
妨害型へ攻撃が届きそうならそちらに銃撃。
回復を使い切り、前衛のダメージが蓄積してきたら私とアシュレイさんが前に出て全後衛の交代。時間を稼ぎます。

○会話
会話はスキルを使用。しゃがんで目線を合わせて話します。

まずは今の状況に目を向けて見てください。
あなたは何も出来ず、逆にあなたを助けようとした方を傷付けてしまった。…そうですね?
仇の為。それ自体は立派な想いだと私は思います。
ですが、人にはできる事とそうでない事があります。私だってそうです。
本当はこの手でナイトメアを引き裂いてやりたい。私の力では叶いませんがね。
だからこの想いは前に立ち戦う方々に託し、補助に徹することが私の戦いです。

あなたの戦いも、こんな無謀な事をすることではない。
あなたの抱える無念、どうか私達に託しては頂けませんか?
約束します。私達が必ずこの世に蔓延るナイトメアを根絶やしにすると。

あなたは化け物でも修羅でもありません。
怪我をした人を思いやれるならそれは人間です。優しい女の子ですよ。
・戦闘・
妨害夢魔への打撃を与えることを重視する
攻撃夢魔から離れつつ、妨害夢魔を射程に納めて左右に散開、十字砲火を心掛けて位置取りを
学習能力をはかりつつ戦闘、初手はポイントショットスナイパーライフル
その後はリロード通常射撃を行い様子見。
リロード完了を見て身を隠すような様子なら、攻撃夢魔の視線がこちらに来ていないなら攻撃夢魔を攻撃しつつ
ハンドガン射程まで接近し、スナイパーライフルリロードと見せかけて妨害夢魔をハンドガンで攻撃
妨害夢魔の妨害が、攻撃夢魔の攻撃圏内の味方にかかるなら、攻撃夢魔を攻撃し、妨害を試みる

・説得・
『私は所詮は一般人だ。敵わないことなど分かっていた』のに『それでも一矢くらい報い』ることを目的にしていることを指摘、
安全に、姑息に、卑怯に立ち回った者としての言葉を語る。
「復讐は自己満足ですからねぇ?殺したいなら、殺されてはだめなのですよぉ?」
『こいつらのいない世界を』望むのなら、卑怯であろうと、自らがなるべく傷つかず、相手を殺せる手を打ち続ければいい
恨み続ける事に疲れたから、恨みを晴らしたことにして、殺されて続けられないことを正当化したいのだ、と。
「一度ゆっくりとごはんでも食べて考えてみるといいのです」一度ゆっくり休むことを勧め、
「自分で刃物持ちだすより、私みたいなやる気の薄い人のお尻でも叩いたほうが効率的だと思いますけどねぇ?」と笑う
【心情】
「かわいそうに……復讐とは辛く哀しいものだ。」
「主よ、迷える少女に救いを。そして……悪魔どもには、天の裁きを。」
【目的】
人々を苦しめる悪魔(ナイトメア)への制裁と、少女への精神的な救済
【準備】
予め公園へ向かっておく。子供などがいればすぐさま避難を呼びかけ、無人状態を確認した上で臨戦体制にて物陰で待機。
【戦闘】
主として妨害型をマーク。公園に敵が現れ次第、物陰からの先手を狙う。
敵とは射程圏内ぎりぎりの距離を保ちつつ、フォースアローを使用しながら、知覚攻撃での討伐を目指す。
仲間が危険になれば、ヒールを使用し回復に回る。
【説得】
強く復讐を誓うならばこそ、無謀な行いをしてはいけないと説く。
「嬢ちゃんが自ら傷つこうとすれば、神の御許にいる親御さんたちが悲しむぜ。」
「技術者でも医者でもいい。嬢ちゃんには嬢ちゃんの戦い方があるはずだ。それを見つけなさい。神様がきっと導いてくださる。」
【心情・目的】
「敵は確実に殺す。それが【俺達】に期待された役割なんだろう?」
「……人の生き方にとやかく言うつもりはねーが、言ったほうが良いなら、言うさ」
【準備】
周辺の地形など確認、公園方面に移動可能なルートを複数用意
【行動】
誘導を援護しつつ、妨害型を狙う味方と共に公園方面に移動、展開。
誘導後は距離を保った上で妨害型に銃器で攻撃開始
戦闘中、遮蔽物は活用するが敵味方の位置関係をよく確認、
常に十字砲火の火線が敷けるよう注意し、射線確保の移動・攻撃を優先。
妨害型の早急な撃破の為スキル「ポイントショット」も積極的に使用。
攻撃中も目標の動作をよく観察し、何か特殊な動きを示した場合即座に味方へ警告。
妨害型撃破後は目標を攻撃型に移行、よく連携し集中攻撃
【説得】
「……他の連中にも散々言われただろーがな、銃も撃てないなら引っ込んでろよ」
「それでも戦いてぇなら……そうだな、銃弾の代わりに俺達を使え」
「勉強してお偉いさんになるなり、働いて金を稼いで依頼主になるなり――俺達を銃や剣、道具のように扱って敵を殺せよ」
「お前はまだ、自分で戦い方を選べるんだろ?その方が得意そうだ」
【心情】
「聞く限り、オレの探し物の情報は期待できない、か……。」
「まあいい、先は長いんだ……集中しよう。」
【目的】
まずは襲撃への対応だ、急行して敵を叩く。
その後、保護された少女がいつか変わっていけるよう話をしないと、か。
【準備】
事前に周辺の地形を確認し、頭に入れておこう。
主に広く通りやすい道と、それを加味した目的地までの最短ルートと到達時間を主軸に見ておく。
情報は他のメンツにも共有して、連携の精度向上に出来る限り役立てたい。
【行動】
戦闘では攻撃型の担当だ、接敵直後には過度な接近を行わず、公園方向の比較的開けた位置へ誘導するよう動く。
攻撃型の正面を射程ギリギリから煽るように動き、味方と協力して敵を引っ張っていく。?
誘導が完了したら、つかず離れずを維持しつつ反撃を試みよう。
また、スキルの範囲に味方が居ない時は装備をザンクツィオンハンマーに切り替えてからパワークラッシュを使用し、出来る限りの痛手を与るため攻めていく。
危険になったらすぐに後退し、味方の援護に回ろう。
「ヤなツラしてやがる……夢に出そうだ。」
【説得】
少女へは……戦闘時に感じたオレ自身の恐怖心を伝えて、こんな怖いことを自分からしに行くものじゃない、と引き留めよう。
伝わってくれるといいんだが。
オレはまず、妨害タイプのナイトメアの早期撃破を狙おうかね。せっかくの勝負をチマチマ邪魔されちゃかなわねぇんでな。
<全力移動>で攻撃タイプをかわして、コソコソ隠れてやがる妨害タイプに一気に接近するぜ。

オレの武器は自慢の拳だ(アイテム的には<ビーストレガースSP>)、ジィさんに鍛えられた技を食らわせてやるから、たっぷりと味わいな。どっちかっつうと一発一発の火力よりも、数を当てて着実に削っていくスタイルだ。
技の重さが増す<ライトバッシュ>のスキルは使用回数もそこそこあるみてぇだし、積極的に使っていきてぇな。イメージ的には深く構えて、思いっきり拳を振り抜く感じだな。
敵からの攻撃へは受けるより回避中心だ。拳法家の足さばきって奴を見せてやらぁ。

妨害タイプを撃破した後、攻撃タイプがまだ残ってやがったら、攻撃タイプを相手にしてる班と合流して手伝うとするか。

●護る理由、戦う理由
 ナイトメアに家族を奪われ、ナイトメアを殺しつくそうと化け物を目指す少女のもとに再び現れた悪夢は少女や一般人を傷つけ、それを受けて八人のライセンサーと救助活動に専念する別動隊が派遣された。
 ライセンサーたちはまず建物に被害が出ないように公園にナイトメア二体を誘導するために動いていた。
 成人男性より一回りほど縦に大きく、横幅は不釣り合いなほど細く、異様なほど手足が長く毒々しい色をしたナイトメアをかばうように巌のように頑丈なナイトメアがライセンサーの誘導に釣られて公園に姿を現す。
「聞く限りオレの探し物の情報は期待できない、か。まぁいい、先は長いんだ……集中しよう」
 グール・シック(la1212)は攻撃タイプのナイトメアをルール(la0595)、アシュレイ・L・ベイリー(la0591)、クライド ヒンメル(la0749)と協力して迎え撃つことになっている。
 残りの四人は攻撃タイプのナイトメアの後ろに陣取り妨害工作を行ってくる方のナイトメアの担当だ。
「せっかくの勝負をチマチマ邪魔されちゃかなわねぇんでな」
 リュー ジウファ(la2644)が妨害タイプに比較してスピードの遅い攻撃タイプのナイトメアの短い腕をすり抜けて深く構え、思い切り拳を振りぬいて妨害タイプのナイトメアに開幕の挨拶となる一撃を見舞おうとするが、移動能力にたけたナイトメアは着実に削っていくリューの一撃を食らいながらも完全な被弾は避け、攻撃を受けるのはお前の役目だというように攻撃タイプのナイトメアを壁にしようとする。
 リク・ヴィルタネン(la0306)はそんな闘争に似た動きに合わせギリギリまで射線を絞って妨害型ナイトメアに銃火器で攻撃を開始。
 逃げ回りながら妨害に出ようとするナイトメアをギルバート・フリッヂ(la0190)と高橋 銀狐(la0448)も仲間と力を合わせて妨害能力を発揮させないように抑えつつ隙あらば撃破に回ろうとする。
 ルール―は攻撃タイプのナイトメアへ急接近、妨害タイプの攻撃の射線に入らないように、敵が敵を盾にするのを逆手にとって攻撃タイプを壁にすると攻撃を仕掛けた。
 頑丈さが取り柄だが回避能力や俊敏性に欠ける攻撃タイプのナイトメアは、妨害タイプのナイトメアと違ってクリーンヒットに近い受け方をするが、耐久力に欠ける妨害タイプのナイトメアよりはるかに頑丈な体躯と様子から察するにまだまだ健在のようだ。
 お返しといわんばかりにおまけのようについた腕を振りかざし、鈍重なかわりに重い一撃を自分の周りに散開するライセンサーに対して振りかざす。
「く、あぁ、……攻撃型の名前は、伊達じゃないなぁ」
 シールドの防御能力があるためまだまだ戦えるが腕の直撃を食らった腹部に鈍い痛みを感じて顔をしかめるルールー。保護者として一緒に暮らすクライドが痛みを和らげることはできないが今の状態よりダメージが深くならないよう、強打されて弱まった彼女のシールドを修復する。
「ありがと、クライド! よし、もう一回!」
「突貫するんじゃないですよ、ルールー。連携をしっかりとって」
「わかってる!」
 一撃一撃が重い攻撃タイプのナイトメアや素早さを生かして攻撃力自体は高くないが、確実に一発一発を決めながら妨害してくる敵に前衛はじわじわとシールドで緩和しきれないダメージを蓄積する。
 それををクライドとアシュレイが声を掛け合いながらシールドが大破しないように回復に努める。
 ギルバードはそんな二人を補佐するように回復を飛ばしながらフォースアローで物陰から妨害型ナイトメアに攻撃と一人二役をこなしていた。
「敵は確実に殺す。それが【俺達】に期待された役割なんだろう?」
 遮蔽物を利用しながら敵味方の位置をよく確認、とくに撃破目標である妨害タイプの移動傾向をそれまでの動き方を参考に絞り、今いる場所ではなく移動する可能性が一番高いとはじき出した場所に向けて陸が発砲する。
 グールはそんな風に追い詰められる妨害タイプが隠れ蓑にしようとする攻撃タイプに向けて、できる限りの痛手を与えるために装備を切り替えて重い一撃を放つ。
「ヤなツラしてやがる……夢にでそうだ」
 この二体に立ち向かい、夢破れそうになっている心に傷を負った少女の悪夢を終わらせられるのは自分たちだけだ。
 そんな思いが八人のライセンサーには多少の差はあれこの戦場に赴くきっかけになっているのだろう。
「お前の動き、大体わかってきたぜ!」
 リューは拳法家の足さばきで妨害タイプとスピード対スピードの攻防の応酬をみせながら、徐々に向こうのスピードと攻撃を受けたときの次の動きを学び始め、俊敏性に負けずに着実に体力を削っていくことに成功し始める。
 攻撃型のナイトメアは一撃一撃が重いこともあり、回復の能力を使い切ったアシュレイとクライドがグールとルールーと前衛後衛を入れ替えて体勢を整える。
 アシュレイが抜刀一閃、初撃を居合に似た攻撃から流れるように抜身の刃物による近接戦へと持ち込む中、クライドも連携は必要に応じてのみ、というタイプのアシュレイに自身が合わせる形で攻撃タイプのナイトメアの撃破を目指す。
 屈強さを誇る攻撃タイプのナイトメアだったが動きが鈍重なことと、攻撃パターンが単調なことから徐々にライセンサー側に戦局は有利な方向へと傾いていく。
 攻撃をかわすライセンサーに対してその膂力を思う存分振るうことができず、大ぶりな一撃によって隙が生まれたナイトメア。
 そんな悪夢の名を冠する災厄にライセンサーたちが丈夫さに音を上げずに確実に一撃一撃を加えていったのだ。
 巌のような体が少しずつ削れていき、もともと精彩に欠ける移動速度がさらに鈍ってライセンサー側の攻撃の命中率は上がっていく。
 妨害タイプのナイトメアもそんな頼りなくなり始めた壁の役割を果たす仲間をうまく利用できず、二体は時間経過とともに徐々に連携のもろさを露呈させ始めた。
 ルールーとグールは後衛に下がってからも攻撃の射程に入った敵への攻撃と仲間への援護を怠らず、やがて攻撃タイプのナイトメアは地響きのような音をたてながら体を瓦解させ、完全に沈黙した。
「さぁさぁ、隠れ蓑にしていたお仲間さんはもういませんよぉ? どう戦うのでしょうねぇ? 見ものでございます」
 銀狐が人を食ったような口調で薄く笑いながら、今まではかった学習能力と習性をもとにライフルでの一撃を残る一体のナイトメアへとお見舞いする。
「悪魔どもには、天の裁きを」
 そして迷える少女に救いを。主に願いながらギルバードが物陰から銀狐の攻撃を逃れようとするナイトメアへ追撃を仕掛ける。
 そこからさらに逃げようとするナイトメアをリクのポイントショットが追いかけ、逃げ道をふさぐように立ちはだかっていたグールの拳の連打によって妨害型のナイトメアは溶解するように崩れ落ちてこちらも討伐は終了したのだった。

●いつかくる旅立ちの日
 保護された少女はそんなライセンサーとナイトメアの戦いを安全が確保されながらも近い場所で一部始終を目の当たりにして言葉もない。
 クライドは静かにそんな少女に近寄って、しゃがんで目線を合わせる。
「まずは今の状況に目を向けてみてください。あなたは何もできず、逆にあなたを助けようとした方を傷つけてしまった。……そうですね?」
 少女が唇をかみしめる。痛みをこらえるように、泣くのをこらえるように肩が震える。けれど涙は流さなかった。それは逃げだというように。化け物にはふさわしくないというように。自分の軽挙妄動で人を危険に陥れておきながら泣くのは卑怯だと、自分を責めるように。
「仇のため。それ自体は立派な想いだと私は思います。ですが、人にはできることとそうでないことがあります。ナイトメアと戦っている私だってそうです」
 本当はこの手でナイトメアを引き裂いてやりたい。私の力ではかないませんがね。
 そんな静かで、けれど激しい言葉に少女は目を見張った。
「だからこの想いは前に立ち戦う方々に託し、補助に徹する。それが私にできる戦いです。あなたの戦いも、こんな無謀をすることではない。貴女の抱える無念、どうか私たちに託していただけませんか? 約束します。私たちが必ず、この世に蔓延るナイトメアを根絶やしにすると」
 少女が唇をわななかせた。それでも自分は戦いたかったのだと。貴方たちが痛い思いをするのが悔しく、悲しいのだとその瞳が語っていた。
「あなたは化け物でも修羅でもありません。怪我をした人を思いやれるならそれは人間です。優しい女の子ですよ」
 うつむき何も答えない少女に次に語り掛けたのは銀狐。
「復讐は自己満足ですからねぇ? 殺したいなら、殺されてはだめなのですよぉ?」
 ナイトメアのいない世界を望むなら、卑怯であろうと、自分が傷つかず相手を殺せる手を打ち続け、恨み続けることに疲れたら、恨みを晴らしたことにして。
「一度ゆっくりと御飯でも食べて考えてみるといいのです。自分で刃物持ちだすより、私みたいなやる気の薄い人のお尻でもたたいた方が効率的だと思いますけどねぇ?」
 そういって薄く笑う銀狐の言葉に、じゃあ打ち上げに行こうよ、と提案したのはルールーだ。
「慰労の意味と今後のみんなの活躍に期待を込めて、あとこの女の子が道を探せるようにアドバイスをするには食事の席の方がゆっくりできると思うんだ。ミックスドリンクバーゲームで最強コンボを見せちゃう!」
 ちなみにその内訳はコーヒーとオレンジジュース。比率はルールーのみが知る最強コンボ、らしい。
「私は戦うことをやめろとは言わないよ。でも、ナイトメアと戦う方法って直接やる合うことだけじゃないと思うなぁ。何が自分にできるかもう一度考えてみて? そしたら君の中に降り注いでる雨が止むかもしれないよ?」
 そして雨が止んだ後は願わくば虹が出る景色を、とルールーは言葉にしなかったが望む。縁があって救った命だから。
「かわいそうに……復讐とはつらく悲しいものだ。でもな、嬢ちゃんが自ら戦って傷ついたりしたら神の身元にいる親御さんたちが悲しむぜ。技術者でも医者でもいい。悪夢の脅威と戦う道はほかにもある。嬢ちゃんには嬢ちゃんの戦い方があるはずだ。それを見つけなさい。神様がきっと導いてくださる」
 普段はくわえ煙草で気だるげな様子を見せる新婦のギルバードだが、その生業上悩める少女に導きを与えることも、ナイトメアと戦うのと同じくらい重要な使命だと感じているようだった。
「……他の連中にもさんざん言われてるけどな、銃も撃てないなら引っ込んでろよ。それでも戦いてぇなら……そうだな、銃弾の代わりに俺たちを使え。そっちの奴が言ってただろ、やる気のないやつのケツをたたく側に回れ。勉強してお偉いさんになるなり、働いて金を稼いで依頼主になるなり――医者になるなり技術者になるなり。お前はまだ、自分で戦い方を選べるんだろ? そっちのほうが向いてそうだ」
 戦う方法が選べるなら得意な戦い方を選んで戦えばいい。そんな不器用な気遣いにグールが言葉を重ねる。
「オレは戦う力を持ってるから、探し物があるからライセンサーとして戦ってるけどさ。戦闘時は、正直怖いよ。こんな怖いこと自分からしにいくものじゃない。今、多分復讐心と怒りで視野が狭くなってる。だけどそのまま進んだらきっと後悔するし、すげぇ怖い思いをすると思う。だから一回立ち止まった方がいいと思う」
 伝わるだろうか、と不安に思いながらグールは自分が感じた恐怖を隠さなかった。そう、戦いは怖いものだ。命のやり取りなのだからそれは当たり前だ。
「オレもジィさん……拾ってくれたお師匠さんを殺されたから、アンタの気持ちはイテェほどわかるぜ。実際、オレはこうしてナイトメアと戦ってる」
 そんな自分が言えることではないかもしれないが、とリューはまっすぐに少女を見据える。
「ジィさんはオレを生かすために死んだんだ。だから、オレはこの命を無駄に捨てるつもりなんかサラサラねぇ。そのへん、履き違えちゃいけねぇぞ……生きろ!」
 最後に残ったアシュレイは刀を収めた後仲間たちと少女の様子を静かに眺めていた。特に少女に対して強い感慨があるわけではなく、成すと定めたなら何を言われようが自身はその道を貫くだろうからかけるべき言葉は一つだけ。
「――望むなら、好きにすればいい。選ぶのはお前だ。人の言葉で道を変え、それを人の責任にするのは卑怯だ。だから」
 自分の好きにしろ、ともう一度告げる。少女の意思を折れるほど器用な性格ではなく、それを雄弁に語る性格でもなかったので。
 自分の行動に意味を持たせられるのは他者ではなく己なのだから。不器用な激励は、けれど確かに少女に届いた。
「もう、打ち上げに行こうって言ってるのに! でもまぁ、これでお説教は終了だよね? さ、いこういこう。クライドー、ボク焼肉がいいな!」
「私のおごりですか……あまり手持ちはないのですが。まぁいいでしょう」
 そしてライセンサーと食事を共にした少女は、立ち止まっていた過去からようやく未来へと歩き出すのだろう。
 その行く末は、まだ誰も知らないけれど。化け物になる道でないことは確かだ。

成功度
成功

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

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