死守せよ、納期! マスター名:STANZA

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
救出/防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

 東京郊外の某所に、機械部品の工場がある。
 住宅地の外れに建つその工場で働く従業員は、殆どがその近くにある住宅地に居を構えていた。
 平均の通勤時間が10分程度という、職住接近のまことに理想的な職場である??残業に次ぐ残業さえなければ。

「あぁ、今日も家に帰れねえ……」
 目の下にクマを作った作業員が、仮眠室からフラフラとよろめき出る。
「嫁と娘が目と鼻の先にいるってのに、もう三日も会ってないってどういうこった……」
 工場のスケジュール管理が悪いのか、無茶を押し付ける取引先が悪いのか。
 その両方だろうと思いつつ、男はショボショボする目を擦った。
 2時間の仮眠で視力が回復するような若さは既にない。
 しかし戻らねばならないのだ、目視で行う製品検査ラインに。

 男に続いて隣の部屋からも疲れ切った作業員が顔を出す。
「あー、寝た気がしねー……」
「だよなー……」
 二人は顔を見合わせ、諦めの溜息をついて、残る気力をかき集めるように工場へ向かって歩き出した。
 この工場も普段はここまでブラックではない。
 だが時折こうして無理を承知で突っ込んで来る取引先がいるのが困りもの。
 かといって断れば即座に首が回らなくなるのが下請けの辛いところだ。
 特に今回は、あのフィッシャー社が自分たちの技術力を見込んで、初めての発注をかけてくれたのだ。
 ここは工場の命運をかけて、納期も含めてきっちり完璧な仕事をして見せるしかない。
 なおフィッシャー社の名誉のために付け加えておくが、今回の状況は相手が無理を言ってきたわけではない。
 ひとえに、工場側のスケジュール管理に問題があったことに起因するものだ。
「余裕ないとこにぶっ込まれてもなぁ」
「そうは言っても断れねーだろ、なんたって天下のメガコーポ様だぜ?」
 受注したというだけで箔が付くし、安定的に仕事を受けられるようになれば業績アップにも直結する。
 どうしても受けたい、このチャンスを棒にふるわけにはいかないと考える上層部の思いは、痛いほどにわかった。
「ま、それも今日で終わりだしな……」
「ああ、もうひと踏ん張り頑張ってくっか……」

 二人が工場の生産ラインに足を踏み入れた、その時。
「……ん?」
 真っ暗な窓の外に、何か動くものが見えた……気がした。
「どうした?」
「いや、今なんかそこに……気のせいか?」
「幽霊でも見たんじゃねーの?」
「だよなー、こんな真夜中にはっきり見えるものったら幽霊くらいしか……って、いるかそんなもん!」

 確かに、それは幽霊ではなかった。
 姿形は限りなく幽霊に近いものだったけれど。

 ガンッ!
 ガンガンッ!!

 外に通じるシャッターが激しく叩かれる。
 この時間そこは完全に閉ざされているし、中に入りたいなら隣接する事務棟から回って来ればいい。
 それにいくら蹴ろうが叩こうが、搬入出の時以外には開かないことくらい、従業員なら知っているはずだ。
 その場にいる全員が不審そうにシャッターを見る。

 その時、非常電話が鳴り響いた。

『こ、こここちら守衛室! し、敷地内に……な、なな、ナイトメアが!!』



 直後、SALF本部。
「緊急出動、東京都内の工場にナイトメア出現!」
 その知らせに、ただでさえ一連の騒動への対応で忙殺されていたSALF職員たちから悲鳴が上がる。
 駆けつけたライセンサーで、室内はあっという間に溢れかえった。
「ナイトメアの外見はゴースト型、ほのかに蛍光色を発し暗闇でもよく見えるそうだ」
 報告を受けた職員が告げる。
「現在、工場内に侵入しようとシャッターに攻撃を加えている。その数およそ20体」
 未だシャッターが破られないところを見ると、それほど強力なタイプではなさそうだ??少なくとも物理的には。
 だがライセンサーの到着までシャッターが持ち堪える保証はない。
「なお工場は未だ稼働中……従業員の避難も行われていない」
 職員は何か寒いギャグでも聞かされたような顔をして、溜息をついた。
「どれだけ説得しても避難には応じなかった。一度ラインを止めると再起動に時間がかかり、納期に間に合わなくなるそうでな……」
 説得に時間をかけるよりも、さっさと乗り込んでナイトメアを片付けた方が早いとの判断が下りたということだ。
「まあ、どう考えても笑うしかない状況なんだが……笑い事ではないのはわかるだろう」
 ライセンサーにとっては簡単な相手でも、一般人にとってはそうはいかない。
 ましてや今回は持ち場を動くことが許されない従業員を??ついでに機械も、守りながらの戦いとなる。
「考えられるケースはふたつ。ひとつはシャッターが破られる前に外で片付けること……だが、これはまず間に合わないだろう」
 いくらナイトメアの物理攻撃が貧弱でも、ごく普通のシャッターがそうそう持ち堪えられるはずもない。
 となると、必然的にもう一つのケースしか選択肢は残されていなかった。

「通常通りに働く従業員を守りつつ設備も傷つけず、間違ってもラインを止めることのないように、ナイトメアを殲滅せよ」

 なお、安全な事務室に引きこもっている工場長は「ライセンサーの皆さんを信じていますから」と、無垢な瞳で語っていたそうだ。


真夜中、とある操業中(残業中)の工場に、ナイトメアが侵入を試みています。
シャッター先輩がライセンサーの到着ギリギリまで持ちこたえてくれますが、その姿を確認するや「後は任せた……」と破られてしまいます。
工場内に入り込んだものや、入ろうとするものを阻止し、残業を続ける従業員と機械を守りつつ、ナイトメアを片付けてください。

敵:
ゴースト型ナイトメア×20ほど
ハロウィンのオバケのような外見で、体長は1mほど。
常に地面から30cm?1m程度の高さにふわふわ浮いているが、それ以上に高くは飛べない。
淡い蛍光色をまとい、暗闇でもよく見える。
ゴースト型だから精神攻撃が得意かと思いきや、実は物理オンリーの脳筋型。
体当たりで攻撃してくるが、当たりはそれほど強くない。
攻撃は何でも効くが、回避は高め。
人を襲ったりライセンサーに反撃するよりも、工場内で何かを探すことを優先しているらしい。
全体の状況を把握しようとするように飛び回った後、空き巣のように手当たり次第に引っ掻き回し始める。
そのため、時間が経つほど従業員や機械にとっての危険度は高くなる。

現場:
学校の体育館程度の広さに、3本の生産ラインがある機械工場。
ラインは出入り口のシャッターから見て縦に3本、川の字に並んでいる。
ライン同士の間隔は5mほど。
左の2本にはモニタを監視する従業員が一人ずつ、右端のラインには製品チェックの従業員が5人。
ここで手を止めると納期に間に合わなくなるので、全員が何事もなかったように作業を続け、持ち場から動くことはない。
出入り口はナイトメアが壊したシャッター部と、事務棟から回って従業員用のドアから入る二ヶ所。
ドアはシャッターとは反対側の右端(製品チェックラインの近く)にある。
ただし回り込むにはそれなりの時間がかかる。

その他:
敵は何かを探しているようですが、その点に関しては追求も解明も必要ありませんので、とにかく退治と保護に専念をお願いします。
なおライセンサーの攻撃が当たれば機械は普通に壊れます。

従業員と機械を守りきれば納期に間に合い、依頼は成功となります。


仲間達の範囲攻撃よりも確実に先に動ける場合のみ、スキル「全力移動」でシャッターから工場内部に突入。
遅くなる場合は仲間達の範囲攻撃が終わってから、スキル「全力移動」でシャッターから工場内部に突入。
仲間達や従業員はモチロン工場の機械も敵に破壊されたり、もしくは自分が破壊したりしないよう細心の注意を払って戦いますね。
というか防衛手段を持たない従業員や機械を守る時には我が身を肉の盾にして守りますよ!!
工場内部では従業員を守るように陣取ったら、ひたすら突き攻撃(突きに特化した武器のみを厳選)のみでゴースト達と戦闘。
頼りになる仲間達を信じてゴースト達をとにかくひたすら突いて突いて突きまくります。
何か持ち出そうとしているゴーストがいたらソイツを優先的に攻撃、持ち出そうとしていたモノが何かしっかり目に焼き付けます。
無事に全てのゴーストを退治出来たら仲間達とはモチロン工場関係者の方々とも親交を温めたいです。
心情:「ついに、この日が来てしまったか…できる限り、ヒーローとして困ってる人を助けなきゃな!」
目的:ナイトメアの撃退&工場の機械と従業員の保護
準備;作戦:味方がシャッターに集まっているナイトメア達に範囲攻撃するのでそれに巻き込まれないように
全力移動で工場内部に突入、裏口を見張れる、生産ラインの斜め右上に陣取る
行動:
1R目味方の範囲攻撃に巻き込まれないよう《全力移動》で破られたシャッターから工場内に突入
シャッター内側の生産ラインの右斜め上に辺りに陣取り、(裏口を見張れる位置)
全力移動時、攻撃可能な敵が居ればメイン武器で攻撃
次のRから最低限の移動でポイントショットを使いながらメイン武器で迎撃。スキル使用は三回まで
狙撃用にスキル使用回数を残し、その後は通常攻撃で攻撃
メイン武器が弾切れしたらサブ武器1に装備変更し迎撃続行
なお、裏口からナイトメアが侵入した場合、サブ武器3に持ち替えて移動が必要なら移動し
ポイントショット使いながら狙撃。裏口からの敵がまだ続く場合、サブ武器4に持ち替えて
再びポイントショットで狙撃。その後、弾数が残ってる武器に持ち替え迎撃。
戦闘中、工場内の機械や、従業員に間違って攻撃を当てないように気をつける。
狙撃時も、従業員の隙間を縫って狙撃(従業員は遮蔽にならないハズ・・?)
攻撃を受けた時は回避しつつ、避けきれないなら義手で防御する描写を
「ハロウィンにはまだ早いと思うのだけれどね・・」
●目的
人命、機械の保護。敵の殲滅。

●戦闘
全力移動で敵の前に回りこむ、あるいは敵集団の中に入りこみ、それからパワークラッシュを使います。その際味方を巻き込まないよう位置取りをします。、他の範囲攻撃を使う人と攻撃範囲がかぶらないように注意します。もし、全力移動を使用しても間に合わず敵集団が内部に侵入した場合は、パワークラッシュを使わずそのまま内部に突入します。場合は、その後、内部に入り込んだ敵を掃討しに行きます、正面シャッターから見て左側のレーンの間に入り込んだ敵を中心に攻撃。攻撃する際に近くに人がいる場合声を出して、注意喚起をします。但し、機械や人に命中してしまうようなら攻撃しません。攻撃の優先順位は人、機械を攻撃しだしたナイトメアを優先します。
文字通り命懸けで仕事に挑む…その誇り高き意志、見事です
はい?ブラック?…何です、それ(キョトン

■行動
全力で工場駆けつけ、敵視認で戦闘態勢
初撃は『パワークラッシュ』
範囲攻撃で敵散開前に削る狙い
行動順先の者が先行内部突入後に発動
味方(特に同様に範囲攻撃するブロッサム)・工場を巻込まぬよう位置取り
シャッター破片が工場内へ飛ばぬよう注意
「わたくしの初戦相手となることを、光栄に思いなさい

以後は槍→レガースに換装し工場内へ
ライン左側2本の作業員が少ない範囲を主担当
マイページTOPの尼僧姿で蹴りを放つ
基本は蹴撃
敵動きに接近間に合わない時のみ拳銃射撃
跳弾危険ゆえ、ラインに向かうor跨ぐ射撃は回避

味方の動向も配慮
声かけ、援護や支援要請
「わたくしに任せなさい!
「其方行きました!頼みます!

(デストロイヤー的に)絶対機械に触れてはならない24時←
敵の動き次第で、最悪モニター監視員をライン機器との間に挟みクッションにしても触れない
無論作業員に支障は出ないよう
「…っとすみません。仕事頑張りなさい(微笑

機器には触れないが、壁利用で三角跳び蹴撃・空中踵落としなど
「沈みなさい
押し出せる敵は外へ
外対応に任せる

「これで終わりです
【心情】
「ブラック反対!!&シャッターパイセンのかたきーー!!」?

【目的】
依頼を解決する為、敵の撃破および施設と従業員の保護を目的として参加する。

【準備】
予想外の事態に備えて、臨機応変に動ける準備をしておく。
作戦があれば事前に打ち合わせ、それに<協力・単独行動など>で応える。

【行動】?
「あはぁ♪ネオンカラーのハロウィン共が一杯だねー♪」
戦闘開始時、味方がシャッター前にいる敵集団に範囲攻撃を行った後、『全力移動』を使って
シャッター前に陣取る。
移動の際、『全力移動』を使わなくてもシャッター前に陣取れる場合は『移動攻撃』で
敵を攻撃しながら移動する。
その後は敵が施設内部に入り込まないよう、施設外部の敵を迎撃して数を減らす。
外の敵を全滅するか、全部の敵が内部に侵入してしまった場合、内部の味方と合流して
敵を殲滅する。?
「キヒッ♪ナカで暴れんなよぉ、壊れちまうじゃねーか。」
戦闘終了後には<周辺警戒>する。
連携重視
先生が破られるを見るや
可能なら先行し手甲装備し全力移動
幽霊足元疎か、下から滑込み
内部に侵入
振り向きざま敵侵入ヶ所からの敵を攻撃し外に押出すよ
桃簾さんの範囲攻撃の餌食に

盾に持替え
外の残党侵入防ぐため防御発動
敵からのダメージが常時6以上なら以降カット使用
侵入した敵は内部のレアスさん達に任せる
外の沙夜さん達と連携し外で倒せるのは外で
敵少数なら槍で殲滅

外対処後、内部敵の殲滅へ

仲間自分の状態でヒール適宜
同職とは距離離し全体カバーできる様に
もしも用に1回分は温存

1人で全部は無理
少数で広範囲をカバー出来る様に
手薄な所、手薄になりそうな所へ
主婦ってそういうの得意なんだよ?

武器は盾か手甲
銃は壁際や上など、機械を巻込まない敵にのみ

優先順位
・人や機械への攻撃を全力移動で割込み盾で防ぐ
・ライン内側で捜索の敵撃破
・上から降りてくる敵
・壁際の敵
絡みアドリブ大歓迎

「戦うのは初めてだけど、精一杯頑張るよ!」
「というか、こんな真夜中まで工場はお仕事なの!?」

◆行動
シャッターの外側から攻撃
グラップラーの範囲スキルに巻き込まれない距離を保ちつつ、フォースアローの射程にいるナイトメアにどんどん攻撃
移動攻撃は、外してしまっても工場の機械に当たらない位置にいる時だけ使用

ナイトメアが工場内に入ってしまったら全力移動でナイトメアの前に出て通せんぼし、魔道書で殴る
「魔道書から魔法が出ないのは何でだろ。ドカーン!と派手に魔法撃ちたいのにー!」
◆戦闘後
あんなドンパチやってるのに作業員が仕事場から動かないのは流石に変だと思い、作業員の皆さんに何故避難しなかったのかを聞く
原因が上層部の無理にスケジュールを組んだせいで、更に工場長だけ安全な場所に引きこもっていたという事を知ると、事務室に乗り込み工場長にお説教
「ナイトメアがいるのにどうしてみんなを避難させないの!お仕事は無くなっても後から来るけど、人の命はもう戻って来ないんだよ!」
範囲攻撃後に行動
初手は工場、シャッター前まで全力移動
全力移動しなくても到達できるなら移動後に銃で攻撃

以降は工場外の敵を攻撃
届くなら槍、至近距離ならレガースで近接攻撃
ライトバッシュを乗せて命中補正をかけつつ攻撃
出来ないのなら銃で攻撃
リロードが必要なターンに、射撃攻撃したい場合は連弩に持ち替えて撃つ

「ハロウィンにはまだ早いと思うのだけれどね……」
 シャッターに群がるゴースト達を遠目に見て、キャプテン・ブロッサム(la2215)はそんな感想を漏らした。
「うわぁバーゲンみたい」
 その同じ光景が、苺谷 雨(la0834)にはワゴンに群がるオバチャン達に見えた様だ。
 あの向こうには、彼らにとって余程お値打ちな何かがあるのだろう。
「でも良かった、まだシャッターは破られてな……」
 間に合った、と言おうとした世良 杏里(la0336)の目の前で、シャッターが断末魔の声を上げた。
「シャッターパイセン!」
 沙夜(la1796)が思わず走りながら手を伸ばすが、その先でシャッターは紙の様に引き裂かれていった。一度破れ目が出来ると、案外脆いらしい。
 しかし、まだ間に合う。


「ああっ、ありがとう、ありがとう、シャッター先輩!!」
 その勇姿を胸に刻み、袋井 雅人(la1089)は全力で飛び出して行った。
 ゴースト達の脇を抜け、雅人は従業員を守る様に立ちはだかる。
「ここは絶対に通しませんよ!」

 続いて白い気分を纏った雨が走り込む。
「ん、いこう」
 ゴーストの下をスライディングで潜り抜けた雨は「従業員さん来たよ! もう大丈夫!」と声をかけると、くるりと向きを変えてゴーストを外に押し返す様に蹴り飛ばした。
「範囲攻撃の餌食になるといいよ!」
 初めて一緒に戦う仲間だが、誰もが同じ思いでここにいる――そう信じて託す。

 続いて走り込んだ桃簾(la0911)が周囲を薙ぎ払う様にランスを一閃、固まっていたゴーストに力を叩き付けた。
「わたくしの初戦相手となることを、光栄に思いなさい」
 そんな時間が残されていれば、だが。

 そのすぐ後に、ブロッサムが桃簾の攻撃で弱ったものを巻き込む様に剣を振るった。
「三匹片付けたよ!」
 巧みに避けたものもいたが、当たりさえすればあと一撃で倒せそうなものが二体。

「そっちは任せて下さい」
 ラルフ(la0044)が慎重に狙いを定め、拳銃の引き金を引いた。
 まず一体、続いてもう一体。ダメージを受けて動きの鈍ったゴーストは、持ち前の回避能力を発揮する事なく動きを止める。

 その間にコートの裾を翻し、ネムリアス=レスティングス(la1966)が工場内に駆け込んで行った。
「確か裏口があるんだったよな」
 そこから入って来る敵もいるかもしれない。
 まずはそこを押さえておこうと、ネムリアスは工場を突っ切って走った。

 しかしまだ、大部分の敵はシャッターの外にいる。
「戦うのは初めてだけど、精一杯頑張るよ! 中に入られる前にどんどん片付けちゃおう!」
 杏里は生命の書を取り出すと、その上に掌を重ねた。
「アタシは普通の魔法使いなんだよ! いでよ、魔法!」
 フォースアローを発動すると、イマジナリードライブの光が矢の様に飛んで行く。
 シャッターの破れ目で押し合いへし合いするゴーストの一体が、パンと弾けた。

 その間にもラルフはゴーストの動きを注意深く観察しつつ、ライトバッシュで命中を上げたランスの一撃を加える。
 シャッター相手に奮闘していた様子を見る限り、ゴーストに物をすり抜ける能力はなさそうだ。しかし姿を消して潜伏する事はどうだろう。
(注意しておかないとな……それにガラスを割られても破片が飛び散って危ないし)
 中を覗く事で何かの情報が盗まれる危険もある――今の所、そこまで頭は回らない様だが。
 そう思いつつ、ラルフは窓に張り付こうとした一体を切り付ける。

 ゴーストを蹴り飛ばした雨は盾で侵入を防ぎつつ、再び外に出て攻撃に加わった。
 敵は自分達の事など眼中にない様子で、反撃もして来ない。
 当分は防御や治療を考える必要もなさそうだ。

「あはぁ♪ ネオンカラーのハロウィン共が一杯だねー♪」
 シャッター前に陣取った沙夜は大太刀を振るい、マシュマロの様なその体を切り裂いていった。
「ブラック反対!! &シャッターパイセンのかたきーー!!」
 敵が固まっている今がチャンスと暴れ回る。
「あっはははは♪ ヤりほーだいじゃーん♪」
 だが無双状態も長くは続かず、一体また一体と工場内へと侵入するものが出始めた。
 それを追い、或いは先回りをして、ライセンサー達は工場内に突入した。

「ついに、この日が来てしまったか……」
 裏口が視野に入る位置に陣取ったネムリアスは、軽く息を整えて拳銃を構えた。
「できる限り、ヒーローとして困ってる人を助けなきゃな!」
 民間人を護るのがヒーローの務め、どんな困難な状況にあろうとそれは絶対不変。
 そう、どう考えても何かがおかしい、こんな時でも。
「というか、こんな真夜中まで工場はお仕事なの!?」
 最後に駆けつけた杏里は、目に飛び込んで来た予想外の光景に暫し思考を停止させる。
 本部で説明は聞いた。聞いたけれど、まさか本当に避難もせずに仕事を続けているとは思わなかったのだ。
「文字通り命懸けで仕事に挑む……その誇り高き意志、見事です」
 桃簾などは、すんなり受け入れている様だが――
「違うよ、これブラックだよ!?」
「はい? ブラック? ……何です、それ」
 目を丸くして首を傾げる桃簾、しかし今は説明している暇はない。
「ふむふむ、大事な品物なんだね?」
 ハイライトの消えた目で作業を続ける従業員達の様子を見て、ブロッサムは何か心に響くものがあった様だ。
「私たちに任せて! 必ず港……じゃなかった! 依頼元に届けられるようしっかり護衛するからね!」
 従業員と機械、そして納期を守りながらの戦い。
 ここからが本番だ。


 ゴースト達は何かを探す様に、ラインの間を飛び回っていた。
「何を探しているんでしょうね?」
 従業員を背に庇いつつ、雅人はその動きを目で追う。
 彼等は作業の様子を眺め、ラインを流れる部品に目を留め、そして隅に積まれたガラクタにも興味を示していた。
「ぐぐっ、なぜだろう……工場の片隅にあるクズ鉄を見ていると物凄く心が痛くなってくる」
 こんな辛い時には、あの写真を思い出してしまう。
 異世界から来た命の恩人で、育ての親でもある、あの人に見せられた――
「ハァハァ、ああっ、クソッ、僕は例え生まれ変わりだったとしても、絶対にラブコメ仮面にはならないっ!!」
 邪念よ、去れ!
 気合を込めて、雅人はランスを前に突き出した。
 勢い余って機械に突き立てないように、しっかりと間合いを測り、行けると思ったら後はひたすら突いて突いて突きまくる。

「一匹一匹はたいしたことがないけど……!」
 あちこちに散らばったゴースト達を追いかけて、ブロッサムは左側のラインに走り込んだ。
「前方よし、左右よし、ファイア!」
 主砲発射、じゃなくてサーベル、でもない、剣を振り下ろす!
 ひらりとかわされても次の一撃で串刺しに。
「避けた後って、ちょっと反応鈍くなるみたい?」

「キヒッ♪ ナカで暴れんなよぉ、壊れちまうじゃねーか」
 沙夜は可愛らしい外見とは裏腹に、心の清らかならざる者が聞いたら何かイケナイ事を想像しそうな台詞を吐きつつ大太刀を振るう。
「ああ? 逃げんなよ……!!」
 片方の眉だけをヒクつかせ、苛立たしげにゴーストを睨み付けたその耳に、ブロッサムの声が届いた。
「あぁ、なるほどねぇ」
 良い事を聞いたと、沙夜はわざと大振りな一撃を見舞う。
 次の一手で、その「想像力」が敵のリジェクション・フィールドを貫いた。
「死ねよ」

「わたくしに任せなさい!」
 ビーストレガースに換装した桃簾は、モニタの監視員のみが作業にあたるラインに踏み込んで行く。
 ラインの間隔を確認すると、尼僧姿の衣の裾を端折って足を振り上げた。
 監視員の目がしっかりとその動きを追っていた気もするが、とりあえずは気にせずに――と、蹴りをかわしたゴーストが桃簾の足元をすり抜け、向こうの通路に逃げようとする。
 そのついでに、足をさらう様に体当たりを食らわせて行った。
「……っ!」
 危うくバランスを崩しかけ、桃簾は機械に手をつきそうになるが。
 ここは絶対機械に触れてはならない24時。桃簾は触れるものみな傷付ける電化製品デストロイヤーだったのだ。
 どん!
 咄嗟に監視員を捕まえ、その体を緩衝材に。
「……っとすみません」
 大丈夫、仕事の邪魔はしていないし怪我もさせていない。
「仕事頑張りなさい」
 微笑の陰に「人の足ばかり見ていないで」という思いを忍ばせて……いた様な、いなかった様な。
 機械の危機は脱したものの、その間にゴーストは隣のラインに移動していた。
「其方行きました! 頼みます!」

「はい!」
 それに応えて、雨がカバーに入る。
 予め手薄になりそうな所を見越して待ち構えていたのだ。
「主婦ってそういうの得意なんだよ?」
 やりくり上手の雨は、ふらふらと漂って来たゴーストを渾身の蹴りでお出迎え。
 帰ったら夫に話して聞かせるのだ。彼の方が上手く出来たかもしれないけれど、でも自分も頑張ったのだと。
 工場の皆にも、同じ様に家族がいるのだろう。
(本当は納期とかいいから家に帰って欲しいけど……)
 家族の為に頑張っているなら、きっとそれも悪い事ではない。
 自分の名前は雨だけど、雨道を守り届ける傘になりたいと、そう思うのだ。

「ダメだよ!」
 杏里はぷうっと頬を膨らませてゴーストを通せんぼ、再び魔法を——
「あれ!?」
 魔法が出ない。
「さっきは出たのに、なんで!? ドカーン! と派手に魔法撃ちたいのにー!」
 もしかして、スキルを使わないと撃てないのか。
 しかしフォースアローは使い切ってしまった。
「ううっ、しょーがない!」
 魔道書は鈍器だと開き直り、思い切り殴りかかる。
 魔法使いとして、このスタイルはどうかと思う。思うけれど、今は他に如何ともし難いのだった。

 ネムリアスの周囲に青い粒子の羽が舞う。
「さって、数撃ちゃ当たるだろ!」
 そうは言いつつもしっかり狙い、万が一外しても機械や従業員に被害が及ばない事を確認して。
 ポイントショットで命中を上げて、射線に入った三体を次々に撃ち落とす。
 裏口の扉の向こうにはまだ何の気配もないが、そこからの侵入に備えて残りのスキルは温存し、後は通常攻撃で。
「最初の一撃は囮にするんだったな」
 ダメモトで引き金を引き、次の一手で確実に撃ち抜く。
 ダメージを受けて浮力を失ったものは、近くにいる仲間達が手早く処理していった。

 やがてゴースト達は、ライセンサーがいる限り自分達の目的を果たす事は出来ないと気が付いた様だ。
 しかし、気付くのが遅すぎた。

「最初から気付いてりゃ、数で圧倒出来たかもしれないけどな!」
 ネムリアスは弾切れを起こした拳銃を放り出し、コートの下からスナイパーライフルを取り出した。
 床に伏せ、狙いを定める。
 スコープに捉えたゴーストの姿が見る間に大きくなる――こちらに攻撃を仕掛けるつもりなのだ。
 しかし。
「甘い……」
 ネムリアスの瞳が青く発光し、青い粒子の羽が弾丸に収束する。
 引き金を引くと同時に、その青が白い体を貫いていった。
「へへ、こんなもんさ?」
 ヒーローはウィンクひとつ、華麗にキメる。
 惜しむらくは、それを見ている者が誰もいなかったという事か。

「沈みなさい」
 桃簾は工場の壁を蹴り、三角跳びの要領で高く舞う。
 そこからの空中踵落としがゴーストの脳天に突き刺さった。
 大丈夫、機械は壊してない――壁には凹んだ跡がくっきりと残っているけれど。
 着地のついでにもう一体をサッカーボールの様に蹴り飛ばす。
 それはゴールならぬシャッターの残骸を通り抜け、外で待ち構えていたラルフの前に落ちた。
「お帰りなさい、そしてさようなら」
 その体に、墓標の様に槍が突き刺さる。
「これで終わりです」
 工場内で桃簾が満足げに頷いた。


「どっかに隠れてる奴とかいねーか?」
 沙夜が機械の隙間や工場の暗がりなど、徹底的にチェックして回る。
 その間にも、従業員達は何事もなかった様に平常運転を続けていた――少なくとも見た目だけは。
「任務完了かな? ではまたのご利用を待ちしてまーす!」
 確認を終えてブロッサムが敬礼をキメても、彼らは動こうとしない。
 機械は稼働を続け、何かの部品が次々とラインを流れて来る。
「何か手伝える事、あるかな?」
 雨が声をかけてみるが、返事をする余裕もなさそうだ。
「んー……じゃあ、終わったら一休み出来る様に、お茶の用意して来るね」
 事務室に行けば何かしらあるだろうと、雨は裏口からそっと出て行った。
「検査は手伝えませんが、掃除や運搬くらいなら……」
 ラルフが工場内を見渡す。
 検査済みの製品はそのまま機械で梱包され、出荷までそのまま工場内に置かれる様だ。
 そこに手伝いの余地はなさそうだが、工場の床にはゴーストの残骸がそのままに放置されていた。
「後で専門の業者が来るでしょうが、とりあえず目立たない場所に片付けておきますか」
 この残業の原因がSALFにあるなら、ささやかな手伝いくらいしないわけにもいかないだろう。
(ブヨブヨしてるから踏んだら滑りそうだし、疲れてる人が怪我したらどうするよ)
 ラルフは手近な一体を掴むと、床を引きずる様にして隅に寄せ始めた。
「私もお手伝いします!」
 雅人が駆け寄り、ついでにゴースト達を調べ始める。
「こっそり何か持ち出そうとしていたかもしれませんからね」
 だが彼らはライセンサーの目を盗んでそんな事が出来るほど、上等な作りにはなっていない様だった。

「終わった? ほんとに?」
 雨の言葉に答える様に、機械は動きを止め、従業員達の顔には僅かながらも生気が戻って来る。
「やった、完成! ばんざーい!」
 そのまま床に座り込んだ彼らに、雨は用意していたお茶とお菓子を配って歩く――もちろん、仲間達にも。
「でも働き過ぎっ! 一休みしたら帰るからね!」
「そもそも、どうして夜中まで働いてたの?」
 杏里の問いに、従業員達は苦笑いを浮かべながら顔を見合わせ――

「工場長の人!!」
 ばぁん!
 数分後、杏里は事務室の扉を勢いよく開け放っていた。
「ナイトメアがいるのにどうしてみんなを避難させないの!」
「いや、それは……」
 口の中で何かモゴモゴと言い訳している工場長、その態度が杏里の怒りに油を注いだ。
 しかも自分だけ安全な場所に引きこもっていたとは何事か。
「お仕事は無くなっても後から来るけど、人の命はもう戻って来ないんだよ!」
「いや、しかしだね……」
 その時、従業員の一人が血相を変えて飛び込んで来る。
「工場長、機械が!」

 うっかり機械に触れた容疑者は、勝手に壊れたのだと主張していた。
「ゆ、ゆっくり休めとの神託に違いないです……!」

 その後、工場はご神託の通りに三日ほど操業停止となったそうな。
 めでたしめでたし……?

成功度
大成功

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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