ナイトメアと暑さの危険 マスター名:久遠由純

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
救出
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●夏の光景
 夏休み真っ盛り。

 夏も真っ盛り。

 大人は連日の暑さにやられがちではあるが、子供はまだまだ元気で夏休みを満喫しようと精一杯。
 だが大人の都合でしょっちゅう涼しい所や海やレジャー施設などに連れて行ってもらえる訳もなく、ほとんどが手近な遊び場に行くしかないのも世の常。
 都内のとある公園は、そういった子供達が遊びに行くにはちょうどいい場所だった。
 周りはフェンスと木に囲まれ、芝生の広場は広々としていて、水道や綺麗な公衆トイレ、ベンチもある。
 普段からこの公園は運動をする人達や犬の散歩、小学生の放課後の遊び場などに利用されていた。

 そして夏休みであっても、ありあまる元気を持て余した近所の子供達でにぎやかだった。
 そんな時、ナイトメアがやって来たのである。


「皆仲良くね! 気分悪くなったらすぐに言うこと!」
「「はーい!」」
 保護者がわりに弟達の面倒を見ろと母親に言われ、中学生の帆奈は弟達を連れこの公園に来た。
 弟の幹弥は小学3年生で、昨日から彼と同年代の従兄弟が二人泊りがけで遊びに来ていることもあり、彼らが朝からなんやかんやとうるさいのでどこかへ連れて行って遊ばせて来い、という訳だった。
 公園に着くと幹弥の学校の友達がいて、どうせなら一緒に遊ぼうぜ、ということになったらしい。
 全部で6人。
 面倒見なければいけない子供が増えたなぁと帆奈は思ったが、皆に声をかけると思いの外素直に返事をされたので、とても姉っぽくなったような感じがして気分が良くなった。

 彼らはさっそく各々バドミントンやボールで遊びだした。
 周りを見ると、他にも子供のグループや親子連れなどがいる。
「あたしの目の届く所にいてね!」
 と言って帆奈は少し離れた所にあるベンチに飲み物やタオルが入っているバッグを置き、座って漫画本を取り出した。
 漫画を読みながら時折弟達の様子を見る。
 皆元気に遊んでいるようだ。

(もう少ししたら休憩させた方がいいかな)
 帆奈がそう思っていると、他の子供グループが何か騒いでいるのが目に入った。
 遊びの最中でのトラブルだろうか。それにしてはおかしいような気がする。
 すると、彼らの前に一匹の見たことのない生き物が飛び出した。カマドウマとハエを足したような、気味の悪い姿をしている。しかも子供よりも大きい。
「わあああ!!」
「ナイトメアだ!!」

●異常事態
 彼らのうちの一人がその足の爪に引き倒され、他の子がわあっとあちこちに散って逃げ出した。
 帆奈の弟達も彼らの異変に気づいていたが、突然の出来事に頭がついていかないのか、ぽかんとした顔でその光景を見ている。
 ナイトメアは倒した少年に覆いかぶさり、奇怪な口を開き少年の胸元に??、
 ハッと我に帰った帆奈は叫んだ。
「皆見ちゃダメ!! こっちへ、早く!!」
「お姉ちゃん!!」
「逃げろ!」
 帆奈は弟達を集めるように手を広げつつ、近くの出入り口へと誘導する。しかし、公園を囲む木の隙間から、ナイトメアがうろついているのが見えた。
「こっちはダメ、ナイトメアがいる!! あっちへ!」
 と違う方向に逃げようとしたが、そっちからは小さな女の子を抱いた母親であろう人??さっきも見かけた親子連れだ??が慌てたように走って来て言った。
「こっちにナイトメアがいるの、出られない!」
「そんな! こっちの出入り口にもいます!」
 帆奈と母親は束の間顔を見合わせる。

 どうしよう。
「お姉ちゃん、公園がナイトメアに囲まれてるみたいだ」
 いつも生意気な口を利く幹弥が、珍しく怯えたような声色でささやいた。
 帆奈が周囲を見ると、本当に何匹もカマドウマ&ハエふうのナイトメアが公園の周りの道を行ったり来たりしているようだ。これではどこから出ても見つかってしまうに違いない。
 ちらりと背後をうかがうと、最初のナイトメアはまだ食事に夢中で、こちらには頓着していない。帆奈はすぐに目を逸らした。早く逃げないと次は自分らの誰かがああなってしまう。
 従兄弟達も幹弥の友達も、皆不安なのか落ち着きがなくなってきた。
「そ、そうだ、とりあえずトイレに隠れよう!」
 帆奈は皆を急かし幹弥と従兄弟の手を引いて、公園の一角にあるトイレに向かった。親子も一緒に付いて来る。
 いつもの習慣からか、咄嗟に弟達6人は男子トイレへ、親子と帆奈は女子トイレへ駆け込んだ。
 どちらも個室は三つ。
 親子が一番奥、帆奈は真ん中の個室に入って身を潜める。
 幹弥達も二人ずつに分かれて個室に入って鍵を閉めた。

 そこで帆奈はライセンサーに助けを求めることにやっと思い至った。
「あ、スマホがない!」
 スマホや飲み物が入ったバッグはベンチに置いたまま逃げてきてしまった。
 街中に何匹もナイトメアが出現したのだからとっくに誰かが通報したとは思うが、自分達がまだここにいることに気づいてもらえるだろうか。
「あの、スマホ持ってますか? 私バッグごと置いてきてしまって。SALFに連絡してもらいたいんですけど」
 帆奈は隣の母親に聞いたが、
「ごめんなさい、私も逃げてくる時落としてしまったみたいなの」
 という応えが返ってきた。
「そ、そうですか……仕方ないですね……」
 どうしよう、見つけてもらえるだろうかなどと考えていると、トイレの外を何かが動いている音がした。
「!!」
 帆奈と親子は声や物音を出さないように息を殺し体を硬直させる。
 ナイトメアが公園内に入ってきたのだ。一匹だけではない。何匹もいる。
 トイレの中にまで入っては来ないようだが、周りをうろついているらしいことは分かる。
 これでは逃げたくてもトイレから出るに出られない。帆奈は汗だくだった。
 トイレ内は狭くて、ただでさえ蒸し暑いのにさらに暑さが増している。複数人でこもっている弟達はなおさらだろう。
 救出が遅れれば遅れるほど、極度の緊張と暑さで体調が悪くなることは必至だ。

(どうか見つかりませんように……!! ライセンサーが早く来てくれますように??!!)
 帆奈は指を組み合わせ、必死に祈った。

●SALF緊急通報
「都内のT公園にナイトメアが出現したとの通報がありました! 少なくとも5体以上目撃されており、一人の子供が犠牲になった模様! 避難状況などは未確認、他敵情報は皆さんの携帯端末に送りましたので確認を! 直ちに出動願います!」
「了解!!」
 公園の近所の人からの通報を受け、ライセンサー達は即座に出動した。


※10体のナイトメアの討伐、トイレ内に隠れている帆奈達の救出

〈ナイトメア×10体 攻撃型 早年 知能は低め〉
・カマドウマとハエをミックスしたような姿。体長は1.6mくらい。後ろ足は背中より50cmほど高く突き出ています。
・羽はありますが飛ぶというより移動やジャンプの補助的な役割しかありません。
・戦闘能力
 移動力と後ろ足の攻撃力が高め。
 後足蹴り:通常より強力な蹴りを放つ。射程3。命中すると3スクエアノックバックさせる。
 爪裂き:高くジャンプし、範囲内にいる敵全てにスピードに乗った一撃を繰り出す。射程5、範囲1。
・現在は公園の周りをうろついている他公園内にも数匹入り込み、獲物がいないか探しています。

〈公園〉
・約60m×60mほどの広さ。周囲は木とフェンスに囲まれています。
・西と東に出入り口があり、ベンチは南北にあります。帆奈達が隠れているトイレは北側です。
・遊具はありません。


※帆奈達がトイレに隠れていることはPL情報です。
 成否「成功」以上を目指すには、どうすれば「要救助者がいる」のを知ることができるか、というのが肝です。OPを読み取り、想像力を働かせることが必要になるでしょう。
※最初に襲われた子供グループのことは、一人の犠牲はそのままですが他の子は辛うじて逃げられたということで、考えなくていいです。
※帆奈達の救出に時間がかかると小さな子から具合が悪くなり、半数以上具合が悪くなると成否に影響します。


始まったか……犠牲者もすでに出てしまっているのが辛いが、
せめてこれ以上は出ないよう急ぐとしよう。

初仕事は緊張するが、仲間がいる。
大丈夫。何とかなる……いや、してみせるさ。

■準備
互いの通信機器を利用して作戦中に仲間同士で連絡が取れるよう設定しておく。
ハンズフリーとかよく分からない所は聞く。

■行動
全力移動で先行し、入口付近に敵がいなければそのままワーズさんと公園へ突入。
公園内で人を襲っている敵がいれば協力して戦い、後から来る仲間の為に露払いといこう。
被害者に息があれば服の切れ端などで応急処置をしつつ、周囲に残された物品と通報時の情報、
唯一立て篭れそうなトイレの存在から要救助者がいる可能性を推理。仲間へ連絡しておく。
仲間と合流したら救出班と防衛・引き付け班に分かれる。俺は防衛班だな。
救出班がトイレを確認している間に公園の外から敵が来ればトイレを守り、
要救助者を救出班が連れて脱出する際はトイレから離れるよう引き付ける。
■戦闘
グランツソードを使用した刺突が主な攻撃だが、
効果が薄そうであれば小太刀やバグナクに替えて斬撃で戦う。
先行時はスピードが大事なのでライトバッシュを使用して早めに片付ける。
防衛や引き付け時には足や羽を狙って救出班の邪魔をさせないようにしておく。
いざとなれば我が身を盾にする事も覚悟の上。絶対行かせないぞ。
・心情
子供一人が犠牲に……。これ以上、悲しい思いをする人を増やしたくはないの。そのために、わたしは全力で戦うわ。それがわたしの、存在意義だから!

・目的
公園内に出現したナイトメアの撃破。また、避難状況の確認と要救助者がいた場合の救出
ティリアはナイトメアの引き付けと撃破を目的とする

・準備
スマートフォンで戦闘中も仲間と連絡が取り合えるよう設定しておく
その他、作戦・共通項に即した行動をとる

・行動
公園内へは全員で突入。その後防衛班の先鋒2人が先行し、公園中央へ。残りの防衛班3人と救助誘導班の3人が続き、救助誘導班が避難状況の確認を。ティリアを含む防衛班はナイトメアを引き付ける
*ただし、救助誘導班からのヘルプがあり、ティリアが動ける場合には、重複が無いよう宣言した上でヘルプに向かう

ティリアは、ナイトメアへの攻撃と味方の回復を担当
戦闘ではスタークレイモアSPをメイン武器にパワークラッシュを使用。ただし、味方が武器の射程内に入ってしまう場合はスキルは使用せず、通常攻撃を行う
ナイトメアを効率よく倒すため、残り生命の少ない個体を集中して狙うようにする
また、自身や味方の生命が半分以下になった際にはヒールで優先的に回復する

「戦いって、命を削るのって、どうしてこんなにわくわくするのかしら?」

戦闘終了後には公園内の修繕や、救出者がいた場合には彼らへのフォローを
【準備】互いのスマホや携帯を利用して作戦中でも味方と手放しで通話できるように設定する。
【行動】先鋒として全力移動で劉 黒晶さんと共に公園に入り被害に遭った子を襲っているナイトメアに攻撃、その後被害に遭った子の安否を確認し、周囲を見回してナイトメアがどんな位置にいるかをざっと判断する。
もし被害に遭った子が生きているならまだ生きていることと、怪我の大まかな状況を説明する。
敵が公園の全体に散らばっているなら防衛班の突入を促して公園の中心に集めるように指示、
敵が中心に大半が集まっているなら救出班の突入を促して要救出者の捜索を指示する。
その後は救助班や要救助者が安全に避難できるようにナイトメアを引き付けつつ戦闘力を削ぐ為に後ろ脚を中心に攻撃していく。
もし囮担当が足らない、或いは怪我が深く囮を続けるのが困難だと判断したらラウンドシールドに持ち替え囮を代わる旨を伝え囮になる。
救助班が救助に時間が掛かっている、周囲のナイトメアが多く救助・避難が困難であると判断した場合は救助班の援護に向かう旨を伝え、全力移動で援護に向かう。
【心情】
「兄ちゃんの分も僕が戦う‥‥僕は柚子丸、月光のヒーロー・オツキミの弟だ!」

【目的】
トイレ内の要救助者の確保
被害者が生存して場合の救助
その為に敵を殲滅

【準備】
夏場の依頼なので冷えた経口補水液を2本持参
予備のさらしと救急治療セットも持参
必要な者が居たら渡す
携帯はハンズフリーにして仲間と通話状態に

【行動】
初期は装備4
東口から全員一緒に侵入
周囲を警戒し敵や被害者の位置等を確認

フリーの敵は攻撃しない
防衛班が接敵中の相手に羽根狙いでポイントショット
極力敵に接触しないよう移動

先行した仲間の指示を受けトイレに向かう
被害者が生きていた場合はAIに任せるが回収しなかった場合は自分が背負う
道中敵が向って来ても防衛班に任せる
居ない場合はアレイシアに任せる
2匹目は自分で止める
その場合は敵の殲滅と要救助者の退路確保を優先

トイレに辿り着けたら要救助者を探し保護
救助の手が必要なら救援を求める
敵を近づけないよう注意しつつ東口を目指す
誘導時に帆奈が荷物を取りに行きそうだったら止める

逃がしたら味方が交戦中の敵の羽根や後ろ足を狙って射撃
前衛が足りないようだったら装備4で前に出る
【心情】
(世界が違っても後手に回っちまうのは変わらねえか…それでも救うだけだ)
【目標】
ナイトメアの殲滅及び要救助者の保護
【準備】
互いのスマホや携帯が作戦中でも味方同士と手放しで通話できるように設定し、現場での情報共有を徹底する
【行動】
主に公園内で救助を行う味方に、敵が近づかないよう囮として立ち回る
味方と役割が重複する時は、自身が先に囮として動けるか、味方の生命が自身より少ない場合、自身が囮を担当する
囮または遊撃として行動する場合、敵とはA&H FD5Aの最大射程を維持して攻撃する
囮として行動する際に、A&H FD5Aで敵を引き付けられない場合はラウンドシールドに武器を変更して攻撃する
敵を必ず引き付けなくてはならない場合は、装備をジャイアントシールドに変更してシールドを叩いて音を出したり大声を出して敵を挑発する
生命が60%を下回った自身もしくは味方に対して囮や遊撃としての行動を阻害しなければヒールを使用する
生命が40%を下回った味方には他の味方が生命を回復できない場合、囮や遊撃としての行動を放棄して回復する旨を伝えてからヒールを使用する
【優先】
この行動を行う際、周囲の仲間に自身が囮・遊撃から外れて動くことを伝える
要救助者が移動する際に、ジャイアントシールドを構えて角度を合わせて要救助者が犠牲者を見ないようにする
必要であれば全力移動を使用する
■目的
緊急通報に基づき任務を遂行する
■準備
水、塩分タブレット、保冷剤等を買っておき、治療セットの中に収めておく
「暑い最中でございます。応急処置にも使えるやもしれません」
「タブレットなどは甘みもあります。パニックになりかけている方への多少のリラックス効果も期待出来るかと思考致します」
■行動
●救助誘導防衛班

班員に同行
公園内の建築物がトイレしか無いことから、仮に逃げ込んでいた場合はそこしか無いと思考
別働班が敵を引き付けてくれているうちに素早く確認へ
その際、窓などがあればそちらから「救助に来た事」、「敵がいるので声を出さぬよう」声をかける

救助に入った後はにっこり顔(文字)で安心させたい
敵に見つからずに入れた場合は出来るだけ先に水分やタブレット、保冷剤の配布を行いたい。軽い怪我には応急処置を

脱出させる際は盾を構えかばう体勢
動けない救助者がいる場合は移動補助側につく

戦闘時にはヒーラーとして回復、必要であれば盾での防御支援を行う
●目的
要救助者の捜索と救助を最優先
要救助者の救助と安全確保の後にナイトメアを殲滅

●推測
要救助者からの救難報告はなく、近所からの報告で被害者が一人と言う事に、公園ならもう少し人がいるはでは?他に被害者はいなかったのか?と違和感を持つ。
捜索内で、玩具や持ち物、被害者と見られる一名の痕などを見つけた場合、まだ何処かにいると推測、隠れ潜みやすいトイレに焦点を当てようとする

●行動
捜索・救助班として行動
囮班に敵を任せ、こちらは迅速に捜索
「期待に応えた仕事をこなしてみせますわ!だから…、ここは任せましたわっ!」

無事トイレを見つけた場合、優しく呼びかけ。
「もし、誰かいらっしゃる?いらっしゃったら軽くノックして」
要救助者を安心させ、同じ捜索飯と行動を合わせて静かに避難するよう誘導
万が一敵に遭遇した場合は、殿や盾となり防御主体で耐え、隙が出来ればライトバッシュでカウンター。
「安心なさい、貴方達には指一本とて触れさせませんわ」

要救助者の安全確保後、囮班の援護に向かう。
「救助完了でしてよ。これよりわたくしも、血のロンドを舞いましてよ?(瞳孔が縦に割れ)」
囮班で負傷している人がいれば、盾役を引き受けて、仲間と連携撃破を意識。

討伐完了後、救助者と会えれば声をかける。
「貴方達、よく頑張りましたわ!そして、生きてくれてよかった…」
【心情、目的】
子供の犠牲にとても怒っている。でも避難状況は未確認でまだ要救助者がいるなら助けたい

【準備】
SALF職員へ要救助者がいる可能性を想定し救助者を公園外へ誘導後、保護対応を要請しておく

【行動】
皆と固まって公園へ突入。最初の犠牲者を救助し周囲の状況を確認。遊具やバッグから複数人がいた可能性があり隠れているかもと考え隠れられるトイレを目指す
敵を『引き付ける役』として行動、味方と距離に注意し救助班を援護、トイレ内確認中は周囲を防衛
敵は強襲能力が高そうで初撃は爪裂きに注意、可能であれば羽を狙って機動力が削ぐ、ライトバッシュ使用
要救助者発見後公園外へ誘導時、救助誘導担当が向かう方へ敵接近を牽制
動けない救助者がいた場合担いで移動等フォローに入るが自分は身長が低いので無理と考え他に人がいない場合のみ向かう
要救助者が公園離脱後は協力し積極攻撃
戦闘終了後、可能なら救助出来た人へ気遣うように声をかける

●現場へ
 ライセンサー達は、通報のあった公園へと向かっていた。
 犠牲者がいるという情報が彼らの気持ちを急く。
(世界が違っても後手に回っちまうのは変わらねえか……それでも救うだけだ)
 目名倉 一己(la0392)はスモークのかかったフルフェイスのヘルメットの下で、その表情を引き締めた。
 放浪者である目名倉は、元の世界でも何度も経験してきた後手後手の対応に歯がゆさを禁じえないのだ。
「子供を襲うなんて許せないっす! ぶっ飛ばしてやるっす!」
 見た目は完全にウサギのぬいぐるみのようなヴァルキュリア、白玉 纏(la0406)が鼻息荒く言う。
 ウサギでも小さくても、やる気は人一倍だ。
 うん、と白玉の言葉に同意をしたのが劉 黒晶(la2079)。
 劉は白い縞のある猫耳と尾が特徴の放浪者で、困っている人を放っておけないという性格はライセンサーに向いていると言ってもいいだろう。
「せめてこれ以上犠牲者を出さないよう急ぐとしよう。大丈夫。何とかなる……いや、してみせるさ」
 後半のセリフは自分自身に言っているようだった。
 幾分緊張しているが、やれる。仲間がいるのだから。
 ワーズ サワースノウ(la2386)はそんな劉を元気づけるようにうなずく。
「敵を倒せばそれだけ犠牲者が減ることになります。それができるのはわたし達だけです」
 ワーズはまだ子供だけれども、ライセンサーとして立派な正義心を持っていた。人のために戦いたいという思いに年齢など関係ないのだ。
「これ以上、悲しい思いをする人を増やしたくはないもの。そのために、わたしは全力で戦うわ。それがわたしの、存在意義だから!」
 少女型ヴァルキュリアのティリア(la2492)も、決意を込めてぐっと拳を握る。
 感情と共に目まぐるしく輝きを変えるエメラルドの瞳は、今は力強い光を秘めていた。
「皆さん、そろそろ到着でござるよ。準備はいいでござるか?」
 と猫型獣人の白勢の柚子丸(la2167)が皆に呼びかける。柚子丸は忍術を使う放浪者だ。
 全身真っ黒い毛並みの中で瞳だけが黄色く目立っており、それが名前の由来らしい。
 もしもに備えて救急車の手配もすませたし、スマホもハンズフリーで全員が話せるようにした。
「作戦もしっかり頭に入っているし、いつでもいいですわ」
 アレイシア ラインハート(la0367)がさらりと流れる金髪をかきあげた。
 アレイシアも見た目はこちらの人間と変わらないが、異世界からの放浪者である。こちらの世界で人を救う喜びを見出し、ライセンサーとなった。
「準備万端です。メイドたるものお仕事は完璧にこなさねばなりませんから」
 AI(la1079)は要救助者がいた時のために、スポーツドリンクや塩分タブレット、タオルに包んだ氷などを入れたバッグと救急治療セットを自分の前に持つ。
 本当なら経口補水液や保冷剤を用意したかったが、手近な所では入手できなかったので仕方がない。これでも役に立つはずだ。
 AIは一風変わったヴァルキュリアで、頭部が旧型のテレビになっていた。画面に目や口の記号が表示されて表情を表す。実はその下にちゃんと人の顔があるのだが、なぜテレビを被っているのか、それは誰も知らない。

 こうして、ライセンサー達は現場へと到着した。

●子供達はどこに
 公園の東側の出入り口付近には、カマドウマとハエを醜悪にミックスしたナイトメアが二体うろついている。
「先に行くぞ!」
「突撃します!」
 劉とワーズが全力移動で皆より一足早く駆け抜けた。
 敵の接近に気づいたナイトメアがこちらを向く。その顔面目掛けて、劉はグランツソードを思い切り突き出した。
「くらえっ!」
 槍のような形状の刀身が深々と突き刺さり、一体撃破した。
 続けてワーズも目の前の一体に薙刀『風切』で横薙ぎに切り払う。
「邪魔です!」
 ナイトメアは抵抗する間もなく、体を真っ二つにされて倒れた。
 二人はナイトメアの死骸に一瞥もくれず、そのまま公園内へと入る。
 芝生の広場にはナイトメアがざっと5、6匹点在していた。
 白玉、ティリアも彼らの後から公園に入り、敵を確認する。
「敵を中央に集めましょう!」
 ワーズが声を上げ、皆すぐに動いた。
「さあ、お前達の相手はこっちだ!」
 劉が敵に向かって挑発すると、ナイトメアはすぐに釣れた。
 新たな獲物――ライセンサー達へと跳んで来る。
 その時、白玉は倒れた子供に食らいついている一体に気付いた。
「あいつ!!」
 弾かれたように走り出す。
「やめるっす!!」
 食事中のナイトメアに、白玉は怒りを込めたライトバッシュを繰り出した。
 強烈な一撃を受け、ナイトメアは仰向けに転がり動かなくなる。
「しっかりするっす!」
 白玉は子供の様子を見るが、既に手遅れだった。その傷の酷さから、だいぶ前にはもう亡くなっていたと思われる。
「可哀想に……!」
 でも、今は悲しみに浸っている暇はない。
「ごめんっす」
 ひとまず亡骸を公園の隅に引きずって安置した後、白玉はやるべきことをやりに行くのだった。

 劉達が中央に集めた敵を囲むように立ち回ると、アレイシア、AI、柚子丸、目名倉が公園内に入る。
 情報では避難状況が不明だったので、他にも人がいないか確認するためだ。
「期待に応えた仕事をしてみせますわ! だから……、ここは任せましたわっ!」
 アレイシア達は敵を戦闘班に任せ、周囲をよく観察する。
 いい天気で、何もしなくても汗が吹き出てくる暑さだ。
「遊びの道具が散乱しているでござる。荷物もベンチに置きっぱなしでござるし、人は結構いたようでござる」
 柚子丸が指摘した道具類、それだけ見れば持ち物を置いて逃げたとも取れる。だが、とアレイシアは推理する。
「近所からの通報しかなかったのは不自然じゃないかしら? 一人犠牲になっているということは既にナイトメアはここにいたはず。すんなり逃げられたとは考えにくいですわ。だったら人はどうするか」
 アレイシアの自問のような意見に応えたのはAIだ。
「隠れようとするでしょう」
「ここで隠れられる所と言えば」
 目名倉の言葉に導かれるように、皆の視線が北側のトイレに向いた。
「この暑さで長時間狭いトイレの中にいれば、重篤な熱中症になりかねません」
「早く助けるでござるよ!」
 目名倉達はトイレへと急いだ。
 アレイシアとAIが女子トイレへ、柚子丸が男子トイレへ声をかける。
 その間目名倉はジャイアントシールドを構え周囲の警戒だ。
「救助に来たライセンサーでござる! 誰かおりますか!?」
「私達はライセンサーです。救助に来ました」
 柚子丸とAIの呼びかけに、個室から帆奈や子供達が出てきた。
「来てくれたんだ!」
「助かったー!」
 皆口々に喜んでいたが、汗だくで疲労はピークに達していた。男子の一番小さい子と、母親の抱いている女の子の具合が悪いようだが、どうにか意識はある。
 アレイシアがホッとした声を出した。
「貴方達、生きててくれて良かった……」
「これをお使いください。少しは楽になるでしょう」
 AIがてきぱきとスポーツドリンクと塩分タブレット、氷を全員に配る。
「あ、ありがとうございます」
 テレビ頭のAIに一瞬驚きはしたものの、色んな疑問を全て飲み込み母親は礼を述べる。
 画面に出ている顔記号は笑顔だし、ライセンサーなら何も問題はない。
「よく頑張ったでござるな! 焦らずに、皆で分けてお飲みくだされ」
 柚子丸が全員に配布物が行き渡るようケアするなどして、子供達は少し元気を取り戻したようだった。
 皆がひとまず落ち着くと、AIが言う。
「皆様、これから安全な所まで移動いたします。ですがまだ周囲に敵がおります故、できるだけお静かに」
 テレビ画面の顔がちょっとだけ真面目になると、子供達は皆おとなしくうなずいた。
「皆で脱出するでござるよ! この先に救急車が待機しているはずなので、もう少し頑張るでござる」
 柚子丸は帆奈の弟達を励ましながら、具合の悪い男子に肩を貸して移動することにした。

 AIを先頭に、小学生達、親子、柚子丸、帆奈、殿はアレイシア、護衛に目名倉という形で避難を開始する。
 しかしさすがに大人数での移動なので、ナイトメアの目を引いてしまった。
 一匹がこちらに寄って来る。
 そのナイトメアの足が一瞬のうちに斬り飛ばされたかと思うと、胴体に剣が突き立つ。
 ティリアと劉の攻撃だった。
「ふふん、ここは通さないのよ!」
「絶対に行かせない。こっちに構わず早く避難を!」
「皆様、ご武運を。さ、急ぎましょう」
 AIはぺこりと一礼して子供達を促す。
 公園を出てすぐ、一体のナイトメアが突然物陰から現れた!
 アレイシアに後足で強烈なキックを見舞おうとしている。
 その射線に目名倉が入った。
「させません!」
 大盾でキックを受け止める。真正面から受けたので十数メートル後退させられた。だが大したダメージではない。
「アレイシアさん、フォロー頼みます!」
「子供達には指一本とて触れさせませんわ!」
 アレイシアが前に出、ライトバッシュを放った。
 獅子王での一撃は見事ナイトメアの体を切り裂いて、息の根を止めたのだった。
 その間にAIは無事に帆奈達を救急車まで避難させ、体調の悪い男子と親子は搬送されて行った。

●心置きなく
 救助を終えた四人が公園で劉達と合流する。
「これよりわたくしも、血の輪廻を舞いましてよ?」
 ニヤリとアレイシアが笑うと、元々は吸血鬼なのを思わせるかのように赤い瞳の中で瞳孔がきゅっと縦に割れた。
 アレイシアの大振りな攻撃に誘われ、ナイトメアが襲いかかってくる。
 アレイシアが身を翻してそれをかわすと、そこには既に移動済みの劉が待ち構えていた。
 この世界にも困っている人がいて。自分の力が役に立つのなら。
 何度でもこの剣を振るおう。
 劉は剣を振り上げた。
「これで終わりだ!」
 祖父からもらったマフラーをなびかせグランツソードを一閃、ライトバッシュが決まり、ナイトメアは体に穴を開けて息絶えた。

 ティリアはジャンプしたナイトメアの爪攻撃をくらう。だがシールドはまだまだ持つ。
「この程度! 絶対に、絶対に負けないんだから!」
 体勢を整えるティリアの後ろから、そのナイトメアの羽を柚子丸が狙いすましていた。
 SALFに入り兄と呼べる存在に出会い、自分は成長できたと思う。
 友や仲間達を与えてくれたこの世界を守るために。
「兄ちゃんの分も僕が戦う……僕は柚子丸、月光のヒーローの弟だ!」
 ポイントショットで集中力を高め、迷いなくスナイパーライフルZW-1SPの引き金を引く。
 弾丸は過たずナイトメアの羽を吹き飛ばした。
「もらったわ!」
 動きの鈍った虫の怪物に、すかさずティリアが金色に輝く刃を持つスタークレイモアSPを振りかぶる。
 容赦のないパワークラッシュを叩きつけ、仕留めるのだった。

 目名倉は常に敵との距離を保ち、持ち替えたA&H FD5Aの射程ギリギリから攻撃していた。
 きっちり記憶している敵情報を元に、味方が有利になるよう弱体化させることに専念する。
「もうお前達の好きにはさせない」
 サブマシンガンが火を噴き、ちょろちょろと移動するナイトメアの後ろ足を撃ち抜いた。
 バランスを崩しすっ転ぶナイトメア。
「今がチャンスっすね!」
 白玉が毛玉弾丸と化してナイトメアに突っ込んで行く。
「これでもくらうっす!!」
 小太刀『五月雨』の蒼い色が閃き、放ったライトバッシュはナイトメアを撃破した。

「あなた達のしたことは許せません。報いを受けるべきです」
 ワーズが薙刀を操る。
 小柄な身の丈には大きすぎる武器だが、日頃から鍛えているワーズにとっては苦でもない。
 ワーズは薙刀を旋風を起こすかのごとく使いこなし、ナイトメアの体を切り刻んだ。
 だがまだナイトメアは倒れない。最後の抵抗のつもりか、ワーズに攻撃を仕掛けようとする。
 そこへティリアが駆けつける。
「往生際が悪いわね!」
 ナイトメアの標的がティリアに変わった。
 虫の怪物は残った力を振り絞り、後足蹴りの構えを見せる。
 一瞬の判断の遅れが命取り。
 思わずティリアは笑っていた。
「戦いって、命を削るのって、どうしてこんなにわくわくするのかしら?」
 そしてナイトメアが攻撃をする前に、ティリアはパワークラッシュで相手を粉砕した。

●戻った平穏
「回復はお任せを」
 目名倉とティリアは念のため、AIのヒールで消耗したシールドを回復してもらう。
 もう動くものはいない。
 周囲を見回したワーズは大きく安堵のため息をついて、その場に座り込んだ。
「はあ~~~、良かったぁ~、終わったー!」
 戦闘中は大人びた言動をしていたが、緊張が解ければ年相応の少女なのだ。

 ナイトメア討伐の報告を受けた帆奈達は、荷物を取りに公園まで戻って来た。
「バッグの中に携帯入れたままだったから、連絡できなかったんです。でも早く見つけてもらえて良かった! でなかったら私達皆具合悪くなっちゃってたかも。本当にありがとうございました! ほら、あんた達もちゃんとお礼言って!」
 帆奈と弟達は一列に並んで、ライセンサーに頭を下げる。
「「ありがとうございました!」」
 劉や柚子丸、アレイシアも満足そうだ。
 目名倉ももちろん助けることができて嬉しいと思っている。
 何か気の利いたことを言おうとして……、結局口下手な面が出てしまい何も言えなかった。ヘルメットのおかげでそんな目名倉の様子は知られずじまいであったが。
「またナイトメアが現れてもわたし達がやっつけるわ! 絶対守るから! 約束よ!」
 実際に彼らを守ってくれたティリアの言葉は、子供達にとってはとても頼もしく聞こえただろう。
「無事で良かったっすよ」
 白玉が赤く丸い瞳で子供達を見上げると、
「ウサギさんもそんなにちっちゃくてカワイイのにありがとぉ~!」
『動いてしゃべるウサギ』に感動した帆奈ががばと抱きついた。
「ぬお、おぉ!? ……まぁ、今回は大変だったろうし、特別っす」
 戸惑いながらも、白玉はモフモフされるのを承諾する。
 すると、他の子達も気になっていたのか、我も我もと皆で撫で回し始めた。
「わー、ふかふかだ!」
「思ったよりやわらかいね」
「ふぁっ、ちょ、ま! 誰か助けてっす~!」
「そんなことより、お仕事を完遂したご褒美としてチョコパイを頂きたいですね」
 白玉のピンチをまるっと無視してのたまうAI。
 AIはチョコパイが大好物なのだ。それはもう、報酬でもらいたいほど。
「あ、いいですね、チョコパイ! わたしもお菓子大好きです! ぜひ食べに行きましょう!」
 すっかり少女の顔になりAIに賛成するワーズに、皆は笑った。

 子供達とライセンサーの楽しげな笑い声は、平穏を取り戻した住宅街の空に晴れやかに広がるのだった。

成功度
大成功
  

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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