強敵接近中 迎撃準備開始 マスター名:アウトサイダーK

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●襲撃予定現場へ急行せよ

「では、依頼の確認を行います。今回の皆様への依頼は、ナイトメアの迎撃です」

 周囲には田んぼしかない田舎道をSALFの小型バスが飛ばしている。時折車体が跳ねる。
 きみ達は、窓から夕日が差しこむ車内に思い思いに座り、前方のテレビ画面に映るオペレーターからの通信を聞いている。

「迎撃対象はNU-001、通称ロック。全高3mの個体です。先程までに他のライセンサーの方々が仕掛けた攻勢により、そちらへ向かう敵勢力はこの1体にまで減じました」

 テレビ画面が切り替わる。
 道路沿いの監視カメラで撮影されている、厚い装甲をした大きなナイトメアが道路を踏みしめながら前進している様子が映される。
 装甲にはうっすらと傷が走っているようにも見えるが、動きに支障があるようには見えない。

「しかし、この1体は依然として前進を続けております。侵攻先と予測されているのは、現在皆様が向かっているシステム会社です。この会社をナイトメアの攻撃から守ってください」

 画面が戻り、オペレーターから、SALFが把握しているロックの特徴が読み上げられる。
 装甲による高い防御力。鋭利な爪による近接攻撃。レーザー照射による遠距離攻撃。
 経験の浅いライセンサー達で立ち向かうには強敵だということはオペレーターも承知しているようで、読み上げている間、終始緊張した面持ちをしていた。

「施設の職員、および周辺住民の避難は完了しています。ロックがそちらへ到着すると予測されるのは30分後です。それでは、幸運を祈ります」

●迎撃拠点

 きみ達が窓から外を見ると、薄暗い中、いつの間にか道の両脇に背の高い銀杏が植えられていることに気付く。
 バスは減速し、そして停車した。

 バスから降りたきみ達を、二階建てのこぢんまりとしたビルが出迎える。
 ビルの出入り口の左右に設置された大きなサーチライトが、「シュヴァルベシステム株式会社」と書かれた看板を煌々と照らしている。

 闇夜の迫る中、きみ達はロックに立ち向かう準備を整え、そして戦わねばらならない。


●目標
 ナイトメアNU-001(ロック)を迎撃し、シュヴァルベシステム株式会社を防衛する。

●敵
 ナイトメア「NU-001(ロック)」
 動きはそれほど速くないが、装甲による高い防御力、鋭利な爪による近接攻撃、レーザー照射による遠距離攻撃と、攻守に隙がない。
 SALFによるこの個体の評価は危険度4。
 対ナイトメア戦闘に慣れていないライセンサーが策もなく挑めば、たとえ10人がかりだとしても容易に蹴散らされてしまうだろう。
 ただし、知能は低いようだ。

・切り裂く
 爪を用いての物理攻撃。巨躯故に射程は2スクエアある。
・ガード
 装甲を固くし、攻撃を受けた際の防御を上げる。
・レーザーガン
 頭部の目のような器官からレーザーを発射する遠距離知覚攻撃。6スクエア先まで届く。

●状況
 東京都某所、田んぼの中にぽつんとあるシステム会社のビル。
 そのビルへと侵攻しているナイトメアを迎撃することがPC達の受けた依頼内容である。
 ナイトメアはぬかるんで移動しづらい田んぼを避け、樹高10mの銀杏並木の先、一本道の道路に沿ってやって来るだろう。
 ナイトメアが姿を見せるまで30分の猶予がある。現在はちょうど日が沈んだ薄明の時分であり、戦闘開始時には辺りは暗くなっているだろう。
 ビルの照明やその周囲の外灯は生きているため、戦闘に支障は出ない。

●マップ
田田田木☆木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田木□木田田田
田田田照□照田田田
[防衛対象ビル]

☆=NU-001(ロック)登場予定方向。
田=田んぼ。移動時の消費移動力2。
木=樹高10mの銀杏の木が植えられている。
□=舗装された道路。
照=サーチライト。


【作戦】
事前にロックの攻撃(射程6)が届かない位置の木に切れ込みを入れておきます。
また、倒す木の近くの木に隠れて潜伏しておきます。
ロックが通りかかったとき木を切り倒して道を塞ぐバリケードとして進路を塞ぎつつ
奇襲を仕掛けて戦闘を仕掛けます。
【戦闘】
自分は奇襲をかける際にロックの背後から奇襲できる位置に潜伏しておきます。
背後から奇襲を仕掛けた後は前衛としてロック前方の盾役の人たちと挟撃する形で戦闘を続行します。
攻撃は物理攻撃をメインに行います。
攻撃は回数が許す限り、最初はライトバッシュを使用して物理攻撃をします。
攻撃は基本は盾役の人がひきつけてる間に背後より行います。
可能ならば他の人の狙っている脚部を自分も集中狙いして機動力を削ぐのを狙います。
若し範囲内に巻き込む味方がいない場合はパワークラッシュを用いて範囲攻撃をしてより多くの足を一辺に狙います。
ロックが強制的に突破して護衛対象のビルに向かおうとする場合は脚部狙いを優先します。
被弾してピンチになり相手の爪攻撃を避ける場合や相手が田んぼに入ってしまった場合はメイン武器を一度武器をオートマチックBD4SPに切り替えて射撃攻撃を行います。
心情
私達の担当はおそらく全体から見れば重要度の少ない局地、大局には影響しないかもしれません、でもだからと言って好き勝手させるわけにはいけませんね、さあ、あのデカブツの足元を掬ってやりましょうか

目的
敵の侵攻阻止と目標の防衛

事前の準備
“倒木バリケードや木を衝突させる作戦”の準備を手伝う
『数学』スキルで木を狙った方向に狙った状態で倒せる角度、切込みの深さ、力加減等を計算できるのであれば実際に細工をしている仲間に伝え効率と確実性を高める
作業の進行度、配置や状況確認、何か異常を感じ取れば仲間に伝える

通信の準備
スマホとイヤホンマイクを使いトランシーバー代わり

戦闘
敵から3マス程ビル側に離れた位置から前衛を援護
敵の爪攻撃の射程に入らないよう前衛の味方がヒールの範囲内から大きく外れないように注意
敵や味方の状況に合わせ移動
敵の攻撃を引き受けている前衛や接近する味方の生命力に注意、必要に応じヒール
行動に余裕がある時はサブ武器に持ち替え脚部の装甲が薄い部分を射撃
敵を観察し遠距離攻撃のレーザーに注意
自分を狙っている時は遮蔽物に隠れるか回避を試み味方を狙っている時は通話で知らせる

戦闘中の台詞を一言
「動きは遅くて単調、大きさも中途半端……対策さえすれば木偶の坊みたいですね」

戦闘終了後
ホッとしながら味方の怪我など状況を確認し後日報告書を提出する
ナイトメア登場までに、味方と分担し、北から2スクエアと3スクエア両端の木に切れ込みを入れすぐに道側に倒せるように細工する。細工が終わり次第、北から4スクエアに自身を配置。
ナイトメアが北から2スクエアに到着する寸前に協力し北から3スクエア両端の木を倒しバリケードにする。
その後、味方が北から2スクエアの木を倒さなければ、自身で木を倒しナイトメアを下敷きにする。
その場で盾を構えて筋肉を締め重心を落とし後ろのスナイパーを死守。常に敵の注意を引くよう声や盾で音を出す。その場で敵の動きを観察し可能な限り味方を守り攻撃を受ける。
ナイトメアが田んぼに迂回するようなら全力移動で狙われた味方の射線に入る。爪による攻撃は正面から受けずに盾に角度をつけて爪を滑らすように受ける。
攻撃可能で隙があれば、ライトバッシュで脚部か目を攻撃する。倒すまでこの動きを徹底する。
隙があれば物理攻撃力の高い武器に持ち替え攻撃も積極的に、ただし守りを最優先。
目的はナイトメアの撃破。

ナイトメアが到着するまでの間にバリケードなどの迎撃の準備を行う。
道路脇の木を倒して障害物としてバリケードにしたり切り込みを入れるなどして倒れやすくして準備をする。

ナイトメアが姿を現したら味方と波状攻撃になるようにタイミングを合わせて攻撃を開始する。
相手の足を止めるためスナイパーライフルで相手の足の関節部分をポイントショットを使用して狙い撃ち、移動不能になるよう試みる。
バリケードや木の影を利用して身を隠して相手のレーザーに気を付ける。

田んぼに誘導できた場合は、また道路にもどらないように弾幕を張って応戦し、足を止めさせる。

前衛の味方に当てないようグループ通話で味方との連絡を密にしておく。
相手の足を移動不能にできた場合はレーザー発射口に狙いを切り替えてそちらを攻撃する。

相手が機能を停止するまで攻撃の手を緩めない。

爪攻撃が当たる距離まで接近されたら武器をマシンガンか拳銃に持ち替えて攻撃。
任務の遂行は勿論、自身や仲間の力/共闘の感触/NU-001の特性を確かめたい

■準備
戦域の確認/道路の状態や街路樹の間隔、周囲に広がる田んぼの水路や畦道の位置を記憶
通信の確保/スマホで皆とグループ通信設定。戦闘音避ける為、発信時以外はマイクオフ

■配置と行動指針
敵到着予定の6スクエア手前/レーザーの射程外に待機
射程に入り次第射撃攻撃開始/後退しつつレーザーの射出口を狙う
攻撃予備動作/耐久を観察→攻撃好機の予測を立てポイントショット
移動攻撃も使用しレーザー射程外を維持/間に合わない場合は街路樹で遮蔽
護鋼さんの盾も頼り「おおきに、助かります」
前衛負傷時は後退支援にSMGで弾幕

レーザー破壊か足止め予定位置を敵が超えたら作戦を脚破壊による足止めに移行
バランス崩さす為、皆の位置をふまえ左右どちらかか後ろ2本に狙い定め通信で共有

■銃
狙撃銃持ち替え連射
非常時に備え所持武器の残弾1以上を維持
現場到着後、最低でも周囲の状況を把握しておく。段差や水路のような足元の障害は明るい内に確認

木を斬り倒してバリケードに、ないしナイトメアを下敷きにして行動を妨害し、攻撃を仕掛ける策を実行。マップ上の上から三番目の左右の木をバリケードに、二番目の左右の木で下敷きにする予定
迅衛はあらかじめ切り込みを入れ、迅速に、そして任意の方向に倒れやすくしてある木を、ナイトメアの進行に合わせて斬り倒す
その後はナイトメアの横をすり抜け、背後から足関節を攻撃。機動力低下を狙う
こちらに対して的を絞られ、攻撃が集中しそうな場合は敢えて懐に飛び込み、頭部の目を狙う。レーザーの破壊と、仮に目であるなら命中精度の低下が狙い

上記の細工が実行に移せない場合はナイトメア出現前に木の影に潜み、通過したタイミングで背後から飛びかかり、味方を巻き込まないならパワークラッシュを叩き込む。その後は上記と同じように戦闘を行う
戦闘前
全体の方針としては銀杏の木を倒してバリゲートを作成して足止めしつつ攻撃すると言う事らしいので準備は他の人に任せて、某絵対象施設に逃げ遅れの人がいないか、または何か迎撃に使えそうなのものないのか(サーチライトの配線に細工してナイトメアが田んぼに落ちたときに感電させるようにできないか)、ナイトメアが施設を襲撃する原因の三点に絞って探索する。また敵が待ち伏せ地点に到達するまでサーチライトを切っておくことを進言する。

戦闘開始
サーチライトを点灯、ナイトメアのヘイトを前方に集める事により後方の注意を逸らして味方の攻撃の成功率をあげる。

戦闘開始後は防衛対象施設の屋上から目標を狙いつつ待機、不測の事態に備えて(敵の援軍、もしくは作戦失敗)遊撃手として行動する。攻撃方法は味方を囮にしつつ狙撃で目を潰して遠距離攻撃を無力化、次に後ろ脚部への狙撃で機動力を奪う。

尚、敵の反撃、作戦失敗時には味方の生存を基準にして行動する(ピンチの奴からバスに乗っけて逃げる)
何処にでもいる普通のちょっとやる気のない高校生
ライセンサーの初陣なので口調は

・戦闘前行動
ソードを手に工作する木の伐採、切り込みを入れる
30分では1本行けるかどうかなので切り倒す木を優先
手が空けば仲間の手伝い
常に時計をみてタイムキーパーを行い、開始五分前には全員を切り上げさせ陣形を形成する
この時、コンビニで買っておいた水を配って少し落ち着かせる
「いやぁ戦う前から疲れちゃうよね。」

・戦闘
ここでメディックスコートに袖を通す
それは誰も死なせないという小さい覚悟の証

後衛と前衛の間に位置し、序盤は後衛の回復と支援射撃
回復は1回だけ緊急用に
射撃時はレーザーを出す目を狙う
破壊後も脳の様な機能が頭にあるかもしれないので頭狙い

回数が尽きたら少し前よりに位置し、危険な前衛と一時的に入れ替わる用意
ヤバい場合は自分が前にでて時間を稼ぎ凌ぐ

木を倒す等のタイミングは幾月さんに任せる
必要に応じてソードで切り倒す

また誘導できそうなら田んぼ側に誘導
片足突っ込んだところで敵の腹に入り込み押し込むことで転倒を狙いたい
戦闘中敵の装甲に亀裂があり、あともう一押しが足りない
などという場合は積極的に前に出て剣をねじ込む、BD4を押し当て接射するなどで
内部の構造に直接損傷をねらう

戦闘終了後は落ち着くためにスマホゲーを始める
「あー、つかれた。リセマラしよ。」

●迎撃準備

 日が暮れ、薄明が空に残っている。
 防衛対象であるシュヴァルベシステム株式会社に繋がる一本道にて、8人のライセンサーはロック迎撃の準備を開始した。
 ロックが現在地へ来るまでの猶予は30分。それを一時たりとも無駄にしないために。
 バスの車内で既に作戦は立て終えている。
 ロックのレーザー攻撃の射程は30メートルだ。それがビルに届かない距離にロックがいる内に、道の両端に植えられている樹高10メートルの木々を4本倒し、足止めや下敷きにしての妨害を行う。

 青島 瑠璃(la2383)は、ビルから見て右側の木を倒す準備に向かった。大太刀、獅子王を手に、木の幹に切れ込みを入れていく。今倒すのではなく、ロック出現と合わせて倒せるようにするための処置だ。
 その隣の木に対して、周囲の状況をざっと見て回った鬼 迅衛(la0556)が向き合った。大剣、スタークレイモアを振るい、力強く木に切れ込みを刻む。
「す、すごく強力な敵だと聞きました。はじめてのお仕事ですのにいきなり大変ですね……」
 控えめな声音で青島が鬼に話しかける。
「で、でもわたくし達が力を合わせればきっと大丈夫です。がんばりましょう!」
「そうよのぉ。かかかっ、ようやくの戦か、待ちくたびれたわ」
 青島の言葉に応えながら、鬼は待ち望んでいた戦いがもうすぐ始まることへの歓喜を自制し、作戦遂行のために木を刻んでいく。

 ビルから見て左側の木には、アシュレー・ウォルサム(la0006)、磐堂 瑛士(la2663)、護鋼 刀夜(la2104)の3名が向かった。
 護鋼は獅子王を器用に操り、黒いスーツをなびかせながら、黙々と木の幹に切れ込みを入れていく。
 その隣の木に対して、磐堂はソードで立ち向かいつつ、腕時計を見ていた。
「10分経過。あと20分だよ」
 ロックが来るまであまり時間がない。もしも作業中にロックが来襲でもしたら総崩れになるだろう。それを避けるためにタイムキープをしているのだ。
 そんな磐堂に、アシュレーが軽い調子で声をかける。
「それを同時にするのは大変じゃないかな。木を切る作業は俺がやるよ。その剣を貸してくれたらだけど」
 同意した磐堂はアシュレーに自分の剣を渡し、タイムキーパー役に専念し始めた。逐次、仲間達に残り時間を告げていく。

 その様子を、4本全ての木が見渡せる道の真ん中に立って、幾月 真白(la0236)が監督している。
「護鋼さんはあと10センチ上から、斜め下へ切れ込みを追加してください」
 幾月には数学の素養がある。その知識を用いて、木を道の方へ倒したいときに倒すため、どのように木を切っていけばいいのかを指示していた。

 そうやって準備を進める仲間達を、少し離れた所から眞銅イチイ(la0121)が眺めていた。
「たった1体のナイトメアのせいで……こんだけ大きなるまで育ったんに……」
 ぽつりと呟いてから、頭を振り、これから戦場となるこの場所の地理を把握していく。戦う上で邪魔になるものがないか確認しているのだ。
 作業が進んでいるのかどうか、もう一度仲間達の方を見てみて、ふと気付く。
「あれ? 厳島さんは?」

 シュヴァルベシステム株式会社のビル内、1階。
 厳島恭一(la1940)は「誰かいませんか?」と柔らかく言葉を発しながら、ビル内部を歩いている。
 人の気配はない。逃げ遅れた人はいないようだ。
 なぜナイトメアはこのビルを襲おうとしているのか。そんな興味が湧いた厳島はさらにビル内部を調べてみようとするが、重要そうな部屋への入り口は固く閉ざされていた。カードキーがなければ内部には入れないようだ。
 諦めてビルから出た厳島の目に留まったのは、社名の看板を照らしているサーチライト。一計を案じた彼は、その明かりの電源を側面に見つけ、切った。

 ロックの襲撃予定時刻が間近に迫っている。
 腕時計を見ていたためにすぐそれに気付いた磐堂は、戦闘の準備をするよう仲間達に声をかけた。
 分担して作業をしたため、4本の木に切れ込みを入れる作業は完了した。
 あとは反対側から力を加えれば、道路側目がけて倒れるだろう。
 ライセンサー達は各自、ロックを迎え撃つのによいと判断した場所に身を潜める。

 磐堂は、同じ木の陰に身を寄せた幾月に話しかけた。
「いやぁ戦う前から疲れちゃうよね」
 戦闘が差し迫っている。磐堂はやや緊張した様子で、コンビニで買っておいた水を差し出した。
 そのとき、地響きが8人の耳に届いた。最初は小さく。次第に大きく。さらに大きく。
 医者の白衣にも似たメディクスコートに磐堂は袖を通す。
 誰も死なせないという小さな覚悟を胸に。


●開戦

 空から明るさが消え去り、夜が来た。
 ビルの明かりや街路灯により、道沿いの様子を視認するのに支障はないのが救いだろうか。

 それが1歩進む度、地面が震え、えぐれる。
 道の向こうから、全高3メートルを誇るロックが現れた。
 青緑色の装甲に覆われた巨躯がビルへ近付いていく。

 強敵の接近を感じても余裕を崩さず、アシュレーは口を開いた。
「ずいぶんと無粋なお客さんだね。たっぷりとおもてなししておかえりいただこうか」
 スマートフォンのグループ通話機能とイヤホンマイクで構築された通信網により、彼の軽口が仲間に届く。

 ロックは前進を続け、ビルまであと50メートルの地点に差し掛かった。
「今です」と幾月がマイクを通じて仲間に合図を送る。

 それを聞いて真っ先に動き出したのは鬼だ。
 ロックの現在地より少しビル側にある木陰に潜んでいた彼はクレイモアを振るった。大剣が2本の木にぶち当たる。切れ込みが刻まれていたそれらが倒れていく。
 次いで磐堂が、道路を挟んで反対側にある木の後ろまで進み出た。
 ソードを振りかざし目の前の木に斬りかかる。

 あっと言う間に、ロックのすぐ前方が2本の倒木で塞がれた。前進を遮るバリケードだ。
 そしてもう1本の木がロックの頭上目がけて倒れる。鈍重なロックはそれを避けることができず、木の直撃を受けた。足が止まる。
 ナイトメアはリジェクション・フィールドを有しており、通常兵器は効果がない。直撃した木もロックに損傷を与えることはなかったが、その質量により足止めをするという役目は果たしている。

 次に動いたのは、ビル入り口のサーチライトの側に潜んでいた厳島だ。
 消していたサーチライトを点灯し、ロックの頭部に照射する。ロックの注意を前方に引き付け、後方からの奇襲を予定している仲間の行動が楽になるように。

 ロックの意識が前方へ集中した隙を見計らい、護鋼は潜んでいた最後の木へ盾を構えて体当たりした。
 初老ながら鍛え上げられた肉体により、4本目の木もロックの方へ倒れていく。

 合わせて2本の木の下敷きになったロックは、耳をつんざかんほどの雄叫びを上げた。
 倒木によるダメージはない。しかし動きは阻害されている。ロックは装甲に覆われた腕を振るい、自分に覆いかぶさる木の片方を田んぼの中へ投げ捨てた。


●熱戦

「これが、ないとめあか。面妖よなぁ。しかし、殺し甲斐はありそうだ……!」
 鬼が人里へ降りてきてからずっと待ち望んでいた、思う存分自らの技を振るう機会。初めてのそれを目の前にして、彼は狂おしいまでの喜びを抑えるのを止めた。美麗な相貌に凶悪な笑みが浮かぶ。
 切り株となった木の横を通り抜け、ロックの背後へ。駆けた勢いを殺さずに、クレイモアで後ろ足を斬りつける。
 ロックの硬い装甲の感触に、鬼の口角は吊り上がった。

 他のライセンサー達も、ロックが満足に動けぬ内にと一気に攻勢をかけた。
 ロックよりビル側、その鋭い爪がぎりぎり届かない距離の木陰に潜んでいた幾月は、クーパーT200を構えて射撃を行った。
 しかし、当てるにはコツがいると言われる銃ゆえか、外れてしまう。眉が悔しそうにひそめられた。
 それをカバーするように、アシュレーがスナイパーライフルZW-1でポイントショットを放つ。
「狙い撃たせてもらうよ。残業はしたくないからね」
 磨き抜かれたスナイパーの技術は、その狙いを的確に撃ち抜く。ロックが何とか前へ進もうと脚を上げたその瞬間を見逃さない。脚の関節を狙い撃ち、前進を阻止する。

 ロックの背後にある木の陰に潜んでいた青島は、間近でクレイモアを振るう鬼の戦う様子を見て、自分もと奮起した。
「そ、そこまでです。これ以上何も……あなた達に奪われるわけにはいかないんです! 覚悟してください!」
 ロックの注意が前方に向いている中で飛び出し、奇襲を仕掛ける。狙いを定め、ライトバッシュで確実に脚へ獅子王を振り下ろした。
 ロックの脚へのダメージが蓄積していく。

 磐堂はロックの爪が届かないよう、幾月がいる地点まで後退し戻る。そして振り返り、オートマチックBD4を真っ直ぐ構え、目を狙って射撃。だが、狙いが小さかったからか、それとも彼の動きを捉えられていたのか、ロックは頭部を横に動かしてそれを避けた。

 護鋼は味方に向けられた注意を自分に引き付けようと、ロックの前へ躍り出た。背後には木のバリケード。背水の陣だが、味方を守れるのであれば彼にとっては何のためらいにもならなかった。
「あなたの相手は私です!」
 声を上げ、敵の標的を自分にしようとする。

 その声を聞きながら、眞銅は手持ちのスナイパーライフルZW-1の射程ぎりぎりからポイントショットを放った。
 スコープの真ん中に捉えるのは、レーザー発射口と聞いている目のような器官。狙い誤らず命中し、ロックはややのけぞった。

 一気呵成に攻め寄せられ、その上満足に動けぬ境遇にある。ロックはまるでかんしゃくを起こしたかのように、自分に倒れてきているもう1本の木を腕で吹き飛ばした。そのまま、近くにいる護鋼を爪でなぎ払う。
 避けきれぬとみた護鋼はその攻撃を、真正面から受け止めるのではなく、熟練の技術をもって盾で受け流した。それでも殺しきれなかった衝撃がイマジナリーシールドを削り取る。想像力で形成される盾に負荷を受けたように彼は感じた。意志の力で耐えきり、しっかりと2本の脚で立ち、仲間の盾として踏みとどまる。

 その攻撃がなされている間に、厳島はサーチライトから離れ、眞銅と同じ位置まで前進。
「厳島さん。どこにおったんや?」
 厳島は眞銅の疑問を聞きながら、ロックが攻撃した後の隙をついて、目を狙ってポイントショットを撃ち出す。
「Humpty Dumpty sat on a wall」
 呟くように歌いながら撃ち出された銃弾は、狙い通りロックの目の一つに命中。
 これまで蓄積されてきたダメージと合わさり、その目にひびが入った。

 鬼の狂喜は収まる気配がない。クレイモアを大きく力強く振るい、背後からロックの脚を崩しにかかる。
 青島もそれに続いてライトバッシュを再度使い、同じく脚部を攻撃した。力押しでロックの体勢を崩させる。

 冷静に戦局を見ている幾月は護鋼へヒールを使った。イマジナリーシールドが修復されていく。

 敵の機動力は奪われた。次は脅威の排除だ。
 眞銅はもう一つのスナイパーライフルZW-1に持ち替え、引き続き目を狙う。ポイントショットにより撃ち抜かれた目の一つが、無惨に砕け散った。
 護鋼のシールドがしっかり補修されたことを確認した磐堂は、再び射撃を試みる。今度は命中し、ロックのリジェクション・フィールドを貫き、ダメージを与えた。


●レーザー

 ロックは痛みにうめき声を上げながら、残りの目からレーザーを放とうと力を溜める。
 幾月はロックの頭の向きから、その狙いが眞銅であることを看破。通話で警戒を呼びかけた。
「今度こそ守ってみせます……」
 護鋼はそう呟くや、盾を構え、ロックから眞銅へのレーザーの射線を遮った。
 ロックのレーザーが放たれ、護鋼に直撃する。
 イマジナリーシールドが干渉を受け、護鋼は目眩に襲われた。それでも精神力で耐え抜く。自分の背後には仲間がいるのだ、倒れるわけにはいかない。

「おおきに、助かります」
 通話で眞銅が護鋼に礼を述べているのを聞きながら、磐堂はヒールを唱えた。護鋼のシールドに働きかけ、修復していく。誰も死なせない。そう誓ったから。

 ロックの攻撃を耐え抜いた護鋼に背中を押されるように、ライセンサー達はさらなる攻勢に出た。
 厳島がオートマチックBD4で狙撃をする。
 鬼が危険な目をさらに潰そうと、大きく跳躍して肉薄し、頭部にクレイモアで斬りかかる。

「対策さえすれば木偶の坊みたいですね」
 そう言って幾月が、続いて青島、眞銅もそれぞれの得物でロックを攻撃する。
 目に見えてロックの動きが悪くなってきた。

 決着をつけるときと見た護鋼も、大剣に持ち替え、攻撃を仕掛ける。
「Couldn't put Humpty together again」
 厳島も呟くように歌いながらロックを射撃する。
 一丸になっての攻撃により、ロックの装甲に傷がどんどん増えていく。

「いい加減おねんねの時間だよ。二度と起きないとつくけどね」
 リロードを終えたアシュレーは、軽口を叩きながらも真剣な様子でスナイパーライフルの狙いを定めた。
 ロックの装甲の隙間を狙い、ポイントショットを放つ。
 銃声。静寂。巨体が横へ崩れ落ちた。
 しばし待ってもロックが動き出す気配はない。ライセンサー達は勝利したのだ。


●終戦

 一つの損害もなく守られたシュヴァルベシステム株式会社や街路灯からの明かりが、戦いを終えたライセンサー達に光を投げかけている。

 青島はヒーローのように戦えたと静かに興奮している。
 アシュレーはラストショットを決められて満足げだ。
 幾月はほっとしながら、護鋼に怪我がないかを確認している。
 護鋼はすっかり普段の柔和な雰囲気に戻り、大丈夫だと述べた。
 眞銅は自分を庇ってくれた護鋼に改めて礼を言いつつ、倒されてしまった4本の木を悼んでいる。
 鬼は戦闘が終わったばかりであるのに、既に次の戦いを求めていた。
 厳島は、まだまだ自分には力が必要だと実感し、硬く手を握りしめた。
 磐堂は死が身近にあったことから落ち着くために、スマホゲームのリセマラをしている。

 初めてのナイトメアとの戦い。初めての勝利。ライセンサー達は思い思いの形でその余韻を過ごしていた。
 そうして、静かになった夜は更けていく。

成功度
大成功

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

一覧に戻る
推奨ブラウザ:GoogleChrome最新バージョン