空挺迎撃作戦、始動! マスター名:天川流星

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛/危険
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00



「おや、あの飛行機……随分低く飛んでるのぉ?」

 正午過ぎ。照り返す陽光の下で鍬をふるっていた老人は、眉をしかめて空をにらむ。この頃老眼で遠くのものが見えなくなってきたが、そんな彼の目でも形が分かるほどそれは低く飛んでいた。

「なんじゃ、爆弾みたいなの積んどるが……おぉい、みんなぁ!」

 老人の呼び声に、周りで作業をしていた人々もゆっくりと集合する。

「ほんとじゃ、ありゃ爆弾かのぉ?」
「爆弾にしては丸過ぎんか?」
「そもそもあれ……飛行機か? なんか形がおかしいぞ」

 言われてみれば。低く飛んできているそれは、翼が四枚もあるように見えた。そして、気のせいか……翼が動いているようにも見える。

「ありゃあ飛行機というか、トンボみたいじゃないかい?」

 誰かの言葉に、皆があぁと膝を叩く。言われてみればそうだ。収穫の時期になればよく見る赤トンボ。それと姿がよく似ている。というより……

「おい、あれ……みたいというより、ほんとにトンボじゃぞ!?」

 叫んだ瞬間。それが頭上をひゅんと通り過ぎる。巻き起こる風で被っていた麦わら帽子が宙を舞う。

 その一瞬、間違いなく見えた。昆虫特有の、巨大な複眼。生理的嫌悪感をもたらす顎。いくつもの体節からなる腹部。さらには……

「あの爆弾みたいなの……ダンゴムシじゃったな……」
「しかも、大砲つけとったぞ……」

 六本の腕でがっしりと掴んでいたのは、明らかに丸まったダンゴムシ。それも、背からは一門の大口径砲が伸びていた。

 無論のこと、そんな昆虫が存在するはずもない。つまりは、ナイトメアだ。

「え、えらいことじゃ……あ、あのまま進んだら街に行ってしまうぞ!」
「そりゃイカン! 街にはわしの孫が……!」
「と、とにかく通報じゃ、急げ急げ!」
「なんか撮った方が役に立つかの!?」

 今時逆に珍しいガラケーを取りだし。あるものは慌てて電話をかけ、あるものは写真や動画を撮り始める。




「??緊急事態です。トンボ型のナイトメアがダンゴムシ型のナイトメアを輸送しつつ都市部へ向かっています」

 移動するキャリアーのブリーフィングルーム。そこに立つオペレーターが情報端末を操作し、画像を表示する。そこに映し出されたのは、妙にピンボケしたトンボの写真。よくよく見れば、何かを運んでいるようにも見える。

「画像の提供者によると、トンボの大きさは約3m。ダンゴムシは約1m。ただしダンゴムシは丸まっています」

 つまり、体を伸ばせば1.5m級だろうか。巨大なダンゴムシの姿を想像したライセンサーが、大変嫌そうに眉をしかめる。


「これだけの大荷物を持っている割には、想定よりも飛行速度が速いです。最も、ライセンサーが捉えられない程とは思いませんが」

 オペレーターの言葉に、ライセンサー達は自信ありげな笑みを浮かべる。が……

「ただし。相手は高度約30mを維持しながら接近しています。こちらでも捕えようとしたのですが……」

 次の画面に映るのは、木を足場に飛びかかるライセンサーと、それを少しふらつきながらも翼で叩き落とすトンボ型の動画。さらに、ダンゴムシの砲撃を慌てて躱すライセンサーの動画。

「トンボ型の羽はブレードになっています。下手に飛びかかれば真っ二つにされてしまいますね。挙句にダンゴムシ型は輸送されながらでもこちらに砲撃を行ってきます」

 ライセンサー達が、顎に手を当て考え込む。高度30mとなれば、近接攻撃は一切届かないと考えても良いだろう。さて、どう攻撃を通したものか……


●目標
ナイトメアの殲滅。
トンボ型ナイトメア・ダンゴ虫型ナイトメア、そのどちらかが逃走した場合作戦失敗。

●登場
・ナイトメア『トンボ型』
 トンボのような見た目のナイトメア。3m級であり、やや大型の為注意。
 高い機動力と鋭い羽根を活かし、一撃離脱攻撃を行ってくる。
 ダンゴムシ型を抱えている間は高度30m程度を維持し、ダンゴムシ型を降ろす際に高度5m程度まで降りてきます。
 ダンゴムシ型を降ろすと回避力が上昇するため注意が必要です。


・ナイトメア『ダンゴ虫型』
 ダンゴ虫のような見た目のナイトメア。1.5m級であり、少し小さめ。
 見た目の通り典型的な重装甲タイプであり鈍足なため、単体で逃走は不可能。ただしトンボ型と一緒にいる場合……
 背中に大口径砲を一門装備している他、トンボ型に輸送されている際は丸まっていたことから危険を感じると丸くなる事が出来ると考えられています。
 勿論重い。人間一人よりは明らかに重いです。つまり……


●状況
郊外。あまり人が通らず、放棄された畑や細い道路がある。すでにSALF隊員によって周囲は封鎖済み。


蜻蛉撃破優先
行動は回復優先。味方生命力半分以下でヒール。使用時はロッドに持ち替え
一斉攻撃時はPショット使用
蜻蛉を射程内に入れながら木や建物の陰に隠れ機を伺う
味方の位置を確認し蜻蛉の注意が陽動役に向いた隙を突いて合図を出し一斉攻撃
一斉攻撃で撃ち落とせない、降下して来なければ都市に近づかせないよう進行方向を変えるよう攻撃又は威嚇射撃
味方と攻撃が途切れないよう攻撃とリロードタイミング注意する
ダンゴ虫を降ろす隙を狙い再度合図し一斉攻撃
一斉攻撃の直後、羽根に気を付けつつ蜻蛉に乗ろうとする
「少し失礼するわね!
成功すれば羽根又は頭の近い方にPショットでダイレクトアタック
飛行能力を奪うか味方の射撃の邪魔になるようなら降りる。振り落とされた時は受け身を取る
地上のダンゴ虫は大砲に気を付けつつ
チャンスがあれば下からの攻撃に弱そうだと武器を使い梃子の原理でひっくり変えそうとする
「うふふー、上はとっても堅そうだけれど下はどうかしら!
大砲が邪魔で完全に返らなくても下に攻撃出来る程度返ればいい
返すのが無理なら甲羅の間、目の柔らかそうな部位を狙う
☆アドリブ歓迎

【交流】
呼称:~様
口調・仕草:基本的に畏まった言動、メイド作法

【目的】
☆ナイトメアの排除
○射撃組の補助の為、敵の注意を惹きつけ隙を作る
○敵を翻弄し、味方への被害を抑制する

【行動】
・陽動係
飛行するトンボ型の注意を引きつける為、進行方向上の開けた場所で自身の姿を見せつつ待ち伏せる
『飛鳥翔』の音が鳴る特性を利用し、自身を標的とさせることにより注意を惹きつけ、仲間の射撃効果向上を図る
「それでは、作戦開始です」
陽動目的の射撃の為狙いはトンボの顔だが、有効打狙いで『ポイントショット』使用
「弓はあまり得意ではありませんが、注意を惹く程度であれば…」

トンボorダンゴムシが自身を標的にしたことを確認次第、「五月雨」に持ち替え、回避行動へ
回避は陽動を意識し、最小限の動きで回避を試み
理想は当たりそうで当たらない、御しやすい獲物であると思い込ませるのが最良
「どうぞいらしてくださいませ。私、ダンスには少々自信がございますよ」

トンボ撃墜後は追い打ちに加勢
「五月雨」による『旋空連牙』で早期撃破を狙う
「加勢致します。お手伝いならお任せくださいませ」

トンボ撃破後はダンゴムシ対応へ
基本は撹乱目的で、ヒット・アンド・アウェイ志向
砲撃には特に気をつけ、砲口が向けられないように位置取り
「当たればひとたまりもありませんね。当たれば、ですが…」
どうせこっちに向かってくるんだ
射程に入るまで待って、撃ち落とすだけの簡単な仕事だ

■行動
基本方針としては、敵を引き付けた後に逃げられる前に撃破する。
トンボが飛来したら、陽動役が注意を引く様に攻撃。
陽動により敵が体勢を崩す、又は地上まで降下してきた際は、合図に合わせて一斉攻撃。
撃破はトンボを優先し、上空に逃げられる前に撃破。
その後にダンゴムシの対処を行おう。俺個人の行動としては、狙撃を中心として立ち回る。
予め時間があれば、ギリースーツ等のカモフラージュ用装備を調達。
カモフラージュで身を隠し、クーパーT220の射程に敵が入るまで待つ。
樹木や小屋等の少しでも地上高が取れる場所が有れば、そこに陣取って敵との距離を縮められないか試みよう。

敵が射程に入り次第、いつでも撃てるように狙いながら味方の合図を待ち、
合図が有り次第味方とタイミングを合わせ、ポイントショットを使い狙撃。
基本は胴体狙いだが、敵が大勢を崩しているなら羽やその付け根を狙い、飛行能力を削げないか試す。
トンボが地上に降りれば、ミネルヴァP8000に持ち替え射撃戦に移行。
移動攻撃で距離を縮めながら攻撃する。
ダンゴムシに対しては装甲の隙間や継ぎ目等、攻撃が通りそうな場所を狙い攻撃。
砲口が狙えるようなら砲身内部に弾丸を撃ち込み、砲弾の誘爆ができないか試してみよう。
心情:人口密集地への攻撃か。他にもナイトメアによる攻撃が起こっているみたいだし、どこも大慌てね。今回の攻勢の犠牲者が少なくなればいいのだけれど。これだけの攻勢なのだから成功時の報酬はたんまり用意してもらえるかな?
目的:ダンゴムシ型及びトンボ型の撃破
準備:一斉射撃の合図があればそれに従う。
行動:木のある所で待ち伏せ、木の上や地面からの狙撃に徹する。ダメージ狙いで胴体を主に狙う。攻撃が自分に向かってきた場合は回避。陣形を維持しつつ追いかける。
メインの弾が無くなり次第サブに切り替え、サブは狙撃銃から使う。
場合によってはスキル「全力移動」を使用する。
戦闘終了時:持ってきたブラックチョコレートを食べる。
「台詞」
敵発見時:目標を確認、情報通りダンゴムシとトンボのみ。作戦通りに攻撃を開始します。
攻撃中:さっさと落ちなさい虫擬き
作戦成功時:目標の達成を確認、帰還します。さてと、他の戦況はどうなっているのか気になりますね。
作戦失敗時:作戦失敗、力不足でしたか.........。
◆心情
被害は出したくねぇしな。とはいえ、やれるだけのことをやるだけだな

◆準備
ナイトメアの進行方向、木のある場所で味方と待ち伏せ

◆スキル
ポイントショット使用、使用回数尽きた後は通常射撃

◆武器持ち替え
武器持ち替えステップで弾切れしていない武器に持ち替えて攻撃
優先順は スナイパーライフルZW-1SP→オートマチックBD4SP
全武器弾切れ後はオートマチックBD4SPをリロードして使うが、トンボ型が30m上空に居る場合スナイパーライフルZW-1SPをリロードして使う

◆行動
トンボ型を優先攻撃
攻撃方法は、春風の合図で味方と一斉射撃、味方と同時射撃、個別射撃、の優先順
可能なら味方の陽動後にトンボ型へ射撃
射撃は命中及びダメージ重視で胴体狙い、味方への誤射注意

自身の位置はトンボ型への攻撃射程内、可能なら自身とダンゴムシ型の間に濱崎かミラを挟む場所
濱崎かミラの行動直後に移動、但し上述の春風の合図を優先

トンボ型が高度5mに下降したら春風の合図でトンボに一斉射撃
トンボが単独で逃げる場合は全力移動スキルで先回りして射撃
トンボ撃破後はダンゴムシへ射撃攻撃
【心情】
「ここで逃がせば都市部への被害が避けられません。
市民の幸福のために何としてでも排除しましょう。」

【準備】
・作戦
狙撃役・壁役兼陽動役に別れて行動。
狙撃役は敵の進行ルート上にある林等に移動、
木の上に登る事で高度を稼ぎつつ狙撃準備。
その際ある程度散開できる位置にする事で砲撃による一網打尽を未然に防ぐ。
戦闘開始後、壁役が相手の真正面に展開しつつ接近する事で、
相手の注意を引いて敵の高度を下げる。
トンボ型の高度が下がり、注意を引いた瞬間に狙撃役が一斉攻撃、
を落下させて一時的に行動不能状態にさせる。
その後、狙撃役はそのままトンボ型を狙い続けて再び上昇される前に撃破を狙い、
トンボ型を撃破するまでダンゴムシ型は壁役が注意を引く。

・準備
木の上に登る事を想定してロープを準備。

【行動】
・トンボ型
木の上に登ってスナイパーライフルによる狙撃準備。
その際、他の敵に見つからないように注意。
合図を確認後、他の狙撃役と同時にトンボ型を狙撃。
攻撃時はスキルを利用して確実に仕留められるようにする。
そのままトンボ型が落下するまで一斉狙撃を継続して、
高度を取られて逃げられる前に撃破を狙う。
攻撃時は胴体を優先して攻撃。

・トンボ撃破後
ダンゴムシ型への攻撃効率を増加させるために銃を切り替え、
相手を射程に捉える事ができる位置まで移動して攻撃。
★アドリブ・絡み可
※矛盾点あれば他人に準じる
〇心情
「初めてのお仕事になるけれど…お師匠様にも、笑われないようにしないとね!」

〇目的
敵勢力撃破

〇行動
トンボ型の前に立ち陽動
狙撃銃でわざと外して撃ってみたり逃げてみたりして引き付ける
「トンボもこの大きさになると流石に気持ち悪いわね…?」
敵攻撃誘い、当たるか当たらないかのぎりぎり攻める
当たるなら当たるで武器で受けダメージ軽減
「囮は魅力的な獲物じゃないと、逃がしちゃったらいけないわよね」
敵降下時一斉攻撃
クレイモア+ライトバッシュでトンボ型優先し集中攻撃
羽根と頭を優先的につぶし逃走能力奪う
「囲んで叩くような野蛮な真似は好きじゃないけれど…お仕事だもの、ごめんなさいね!」
「これで決めるわ!」
ダンゴムシ型は砲&装甲の隙間を優先的に叩く
基本的にスキルの威力上乗せし短期決戦

ヒール時Pロッドに持ち替えて使用
「守るための力だから、こんなことだってできるのよね!」
万一味方狙われた場合自身を盾に守る
かばった場合ヒールで即回復
【心情】
「トンボもダンゴムシも、絶対撃ち取る。街には行かせないし、絶対逃がさないよ」

【戦闘】
・以下のことは避けるように戦闘を進める
1.上空のトンボへ有効打を与えられずそのまま都市へ侵入
2.ダンゴムシを下ろさせたが、トンボには逃亡される
3.倒せずに撤退

・以下の流れを念頭に戦闘を進める。
1.上空のトンボへダメージを与える
2.ダンゴムシを下ろさせる
3.ダンゴムシを下したトンボを逃がさずに撃破する
4.ダンゴムシを撃破する

〈戦闘での役目〉
・盾役として、敵の攻撃、特にダンゴムシの砲撃を受け止める。(ジャイアントシールド)
・トンボへの攻撃をしかけつつ、引き付ける(陽動)。
・射撃でトンボを攻撃
・地上に落ちたダンゴムシは大剣に持ち替えて滅多打ちにしてしとめる。
・春風 山吹(la2495)がトンボに飛び乗った時は援護射撃する。(トンボが再び高度を上げないように白兵武器で羽を潰すなどの方法で)

現場到着するとすぐに地形を確認。トンボが目指す街との距離なども。木々の立ち位置を把握し、射撃陣と動きをすり合わせ陽動に向かう。
仲間との連携を重視。
戦況を把握し、声掛けを怠らない。

●墜ちろカトンボ!

「……とよく言いますが。実は、トンボとカトンボは全く別な生き物で御座います」
「なん、だと……!?」

 晴れ渡った空の下。放棄されて、荒れ地と化した畑の真ん中。集まったライセンサーの間を、衝撃の事実が駆け巡る。
 そう、トンボとカトンボは別な生き物だ。そもそもカトンボとはガガンボという虫の別称であり、トンボのように大きな蚊という意味……いや、これ以上脇道に逸れるのは止そう。
 とにかく。街を狙うナイトメアを迎撃するべく集められたのは8名のライセンサー。それぞれがライフルや弓を携え、高空に対する備えは一通りできている。が……

「カトンボでもトンボでも良いけど……それを落とすには、射程がちょっと物足りないね」

 ガチン、と鋭い鉄の音。遊底が引かれ、薬室が初弾を咥えこむ。そうして射撃準備を整えつつ、濱崎カンナ(la0209)は嘆息した。
 そう。ライセンサー達が扱うEXISの最も大きな弱点は、非常に短い射程。現代火器ならば1km先の的だって狙撃できるが……
「どうせこっちに向かってくるんだ。射程に入るまで待って、撃ち落とすだけの簡単な作業だ」
 ケイン・マクレガー(la0698)はそう主張したが、ナイトメアは高度30mを飛行している。それに対してEXISの射程は、長いものでも僅か30m。なるほど、ナイトメアが直上に来れば当てられるかもしれないが、やはり不安が残ることには間違いない。

「つまり、木に登って高度を稼げば当たりますね」

 エレナ・アミエーラ(la2010)の言葉に、その通りとカンナが頷く。だが、当然高さ30mの木などこんな空き地付近に生えている筈がない。つまり、木に登って高度を稼いだとしても、後衛の攻撃範囲は非常に限定的なものとなってしまうのだ。

「陽動班と狙撃班の連携が、大変シビアになってしまいますね……」

 先ほどトンボとカトンボの差を見事に答えたリーゼロッテ・エルツベルガー(la0668)が、不安げにスカートの裾を握り込む。その背中を軽く叩いて励ますのは、先ほど聞いた豆知識に驚愕していた赤羽 恭弥(la0774)。

「そう慌てることもないさ。その辺りはちゃんと対策を考えている人が居る」

 そういって彼が示した先では、すでにカンナが地図を片手に地形の調査を開始していた。ペンで囲んだ幾つかの地点を指差しながら、狙撃班であるルク・ア・ドゥア(la0272)、陽動班であるミラ・ケートス(la0103)と話し合い、徐々にポイントを絞り込んでいく。


「あら、大きいとお顔が良く見えて素敵ね!」
 木の陰に隠れた数人のライセンサーの中で。春風 山吹(la2495)が歓喜の声を上げる。その目に映るのは、砲丸のような巨大ダンゴムシを抱えて飛来するトンボ型ナイトメアの姿。
「でも残念だけれど私達は相容れない関係だわ。他の方達に危害を加えるのは駄目よ……」
 そっと囁くようにして。ゆっくりと春風は腕を上げていく。それを確認し、狙撃班がそれぞれのライフルを構え直した。

「トンボもこの大きさになるとさすがに気持ち悪いわね……?」
 顔を引きつらせ。ミラは思わず半歩後ろに下がった。それにすぐさま気づき、自らを鼓舞するように一歩前に出る。
「囮は魅力的な獲物じゃないと、逃がしちゃったらいけないわよね」
 カンナと共にスナイパーライフルを掲げ、迫るトンボへと照準を定める。
「それでは、作戦開始です」
 矢を番え。弓を高々と構えたリーゼロッテの言葉を皮切りに。陽動班がトンボ目掛けて射撃を開始する。

『…………』

 トンボの無表情な複眼が、キロリと陽動班を睨みつけ。直後、射撃を躱すように加速した。

「ッ……! こちらは眼中にないってこと!?」

 トンボの狙いは、あくまでも市街地への空挺作戦。こちらのことは眼中にないということか。ミラがぐっと唇を噛んだ瞬間……

「危ない!」

 カンナが鋭い叫びと共に、ジャイアントシールドを構えて前に出る。そんな彼らの前に、まるでお返しとばかりにダンゴムシの砲撃が叩き付けられた。

「これは……」

 砲撃でえぐられた土塊が。砲弾の破片が。ライセンサー達のシールドを激しく叩く。誰も被害は受けていない。受けていないが……

「当たればひとたまりもありませんね。当たれば、ですが……」

 強がりなのか、本心なのか。服に付いた土埃を払い、リーゼロッテがほっと息を吐く。受けるには少し厳しい砲撃だが、回避型の彼女にとっては相性がいいと言えるだろう。

「でも、不味い! 砲撃で距離を取られた!」

 ミラの言う通り。すでにトンボは陽動班の射程をやすやすと突破し、街の方へと侵攻を開始している。まだ全力で追えば間に合うかもしれないが……まるで威嚇するかのように、ダンゴムシの砲身がこちらを向いたままだ。
 このまま追えば、先ほどの砲撃が連続で叩き込まれる。故に、陽動班は追撃の足を緩め……

「逃がさないわ!」

 春風が、腕を振った。それを合図に狙撃班のライフルが一斉に火を噴く。

『…………!!?』

 枝葉の中から突如叩き付けられた弾幕に、トンボが思わずと言った様子でよろけた。それによってダンゴムシが揺さぶられ、さらに飛行態勢が崩れる。

「さっさと落ちなさい、虫擬き」

 巨大な枝に寝そべるように狙撃態勢を取り。エレナは淡々と引き金を引き続ける。一度引き金が引かれるたびに、熱された薬莢が飛び出し、薬室が開き。そこへ、白く細い指に摘ままれた大口径専用弾がするりと仕舞いこまれる。

「想定より対象が頑強です。対象の離脱まで、残り30秒」

 ルク・ア・ドゥアもまた全身を枝葉に沈ませたまま、狙撃を継続する。内容とは裏腹に声から焦りは一切感じられない。そもそも彼女の場合人工生命体であり、感情とは無縁なのかもしれないが。

「羽の付け根を狙うぞ。そうすれば奴は飛べなくなる」

 ケインの言葉に、狙撃班が狙いを微調整する。それまでは胴体を狙った集中砲火だったが、狙いが逸れることを承知で羽に照準を絞ったのだ。

『…………!!』

 それが功を奏したのか。トンボ型が、とうとう高度を落とし始めた。が……

「気を付けろ、こっちに向かってくるぞ!」

 赤羽の言葉に、狙撃班が一斉に退避を開始した。間一髪、彼らが逃れた木々をトンボの羽が伐採していく。

「トンボに大きなダメージを確認……しかし……」

 邪魔にならないようにライフルを担ぎ、距離を取るエレナの額を汗が一筋流れる。彼女の視線の先、轟音と共に大木を圧し折りながら向かってくるのは。

「トンボじゃない方……ダンゴムシですね」

 丸めていた体を伸ばし。ダンゴムシが、走り始める。



●強制空挺


 トンボは、思ったよりも賢かったようだ。ダンゴムシを降ろす隙を狙われないように木々の中へ突入し、狙撃班の視線を切った。そこまでは見事だ。だが……

「少し失礼するわね!」

 首から下げたカメラを胸に弾ませ。飛び降りた反動で背に回していたライフルを振り回し。春風がトンボの胴体へと飛び移る。即座に振り落とされないよう足を胴体に絡め、抜いた勢いそのままに銃床で頭を殴りつける。

『…………!?』

 その一撃にトンボが大きく揺れた。抵抗しようと動かした羽の動きが緩くなり、その隙をついてライフルを頭部に向ける。

「さっきも言ったけど、素敵なお顔ね!」

 射撃。再装填。射撃。再装填。射撃……木々の狭間を、三度射撃音が駆け抜け……

『…………!!』

 トンボが、それでも動く。先ほどまでとは違う、激しい羽根の羽ばたきで一気に空へと離脱する動きだ。

「え、ちょっと……!?」

 勿論、春風を乗せたままで。如何にライセンサーと言えども、高度30mから叩き落とされでもしたら命の保証はない。さしもの春風も顔色を変えた瞬間。

「その子を、放せ……!!」

 カンナが叩き付けたクレイモアが、トンボの片羽根を圧し折った。

『…………!!!』

 トンボが痛みにもがく様に、声にならない悲鳴と共に墜落する。乗っていた春風も、短い悲鳴と共に地面をころりと転がった。

「狙撃班の攻撃で羽が弱っていたからよかった……下手したらダンゴムシ代わりにパラシュート無しダイビングをさせられるところだぞ」

「あ、危ないところだったわ……ありがとう」

 頭を振って枯れ葉を落とし、春風が苦笑いする。その様子にカンナも釣られて微笑んだ瞬間。

「不味い、抑えられない……!!」

 狙撃班の攻撃を全て弾き。立ちふさがろうとする陽動班を跳ね除け。トンボを守るためにダンゴムシが突進する。

「ッ……」

 咄嗟に。春風を背にかばい、カンナが盾を握った瞬間。ダンゴムシの砲撃が炸裂した。


●当たらなければどうということは……

「当たらなければどうということは無い、とは言うけれど」

「確かに言いますが……」

 後日。SALF職員によるインタビューに対し、ダンゴムシの砲撃を避け、或いは余波をいなし続けた陽動二人はこう語る。

「一発までなら、案外いけるものね」

「一撃までなら、当たっても死なないものですのね」




「カンナさん、しっかり! カンナさん!」

 砲撃が直撃し、爆発で盾は弾かれ。旋回しながら飛んだ盾は、傍にあった木の幹へと半分ほどその身を埋めた。
 それでも、濱崎カンナは絶命していなかった。意識は混濁し、立ち上がることもできないが。それでも下手な戦車の主砲並みに巨大なダンゴムシの一撃を耐え抜いたのだ。そんな彼女への追撃を逸らすため、ライセンサー達が一斉に動く。

「狙撃班、フォロー!」

「おう、分かってる! 皆、合わせてくれ!」

 あれだけの砲撃を受けた以上、もはやカンナのイマジナリーシールドは機能していないだろう。その状態では、下手すればダンゴムシに引っ掛けられただけでも致命傷だ。
 カンナを木陰へ引きずる春風をフォローするため、ミラと赤羽の声を合図に狙撃班がダンゴムシへと激しい弾幕を叩き付ける。

「でも……なんて硬さ」

 エレナが唸るのも仕方あるまい。装甲を連打する銃弾は、狙いが甘いものは弾かれ、狙いが的確であれば砕かれ。ダンゴムシに対して、致命傷どころか手傷を負わせることすらも出来ないのだ。

「或いは、砲口ならば……どうだ?」

 目に痛みが走るほどスコープを睨みつけ。集中のあまり、額に血管すらも浮かび。ケインの狙いすました一撃が、ダンゴムシの砲口へと突き刺さる。が……
 それすらも、無駄。金属と金属のぶつかる甲高い音が響いた直後、ダンゴムシによる応射がケイン目掛けて撃ち込まれる。

「っと……!!」

 咄嗟に、怪我を覚悟に木から飛び降りる。その行動が功を奏した。先ほどまで彼が居た位置を見事に砲弾が直撃し、炸裂。破片を周囲へとまき散らす。

「加害範囲外。殺傷範囲からは十分に離れています」

 それでもなお落ち着いて狙撃を続けるルク・ア・ドゥアの胆力はさすがと褒め称えるべきだろう。何しろ彼女の丸型フェイスモニターからほんの5mしか離れてない位置に、砲弾の破片が幾つも突き刺さっているのだから。
 しかし、いくら彼女の胆力が見事であろうと、このままでは非常にまずい。スナイパーは、決して打たれ強いクラスとは言えない。故に。

「ミラ、リーゼロッテ、頼む!」

 赤羽がライフルを担ぐと同時に、狙撃班もまた一斉に射撃姿勢を解いて立ち上がる。このままでは、狙撃班から死傷者が発生しかねない。

「守るための戦いは、得意なのよ!」

 気迫一発。ミラが振るうのは、己の丈よりさらに長い両刃の長剣。身を捻り、一歩踏み込んで姿勢を固め、ライセンサーの膂力と長剣の重みを以って叩き付けられるそれは。

『…………!!?』

 持ち主と長剣自身の可憐さに見合わぬ重厚な音と共に、ダンゴムシの装甲を凹ませた。勢いで跳ねる長剣の動きに合わせ、ミラが間合いを取り直せば。

「どうぞいらしてくださいませ。私、ダンスには自信がございますのよ」

 代わりにリーゼロッテが前に出て、ダンゴムシを挑発するように、華麗にステップを踏んで見せる。そうすれば、目論見通りダンゴムシの視線はミラとリーゼロッテに固定される。

「踊りましょう。先導はさせて頂きますわ」

 繰り出された砲撃を、風を感じるほどの距離で躱し。余波がその絹細工のような肌に傷をつけ。しかし、決して直撃はしない。その様子に苛立ったのか、ダンゴムシの動きがリーゼロッテしか考えていないものになっていく。

「まぁ、こんなことだってできるのよね!」

 さしものリーゼロッテも、全ての攻撃を避けることは出来ない。それをフォローするのがミラのヒールだ。削られたイマジナリーシールドが回復し、削られ、また回復し、削られ……

「なるほど、正面からの攻撃には強そうだが……後ろからは継ぎ目が丸見えだぞ」
 これだけの時間があれば、狙撃班は十分態勢を立て直し、有利な位置取りを行える。
 まさかここまで接近されているとはダンゴムシも思うまい。銃口が装甲とキスする程近づかれているとは。

「必中距離。そして、装甲貫通確定距離です」

 ルク・ア・ドゥアのセリフと共に、ケインがふぅとため息を吐く。先ほどは正面から攻撃せざるを得なかったため突進を防げなかったが……今なら違う。
 引き金が引かれ、サブマシンガンが大量の弾丸を吐き出す。薬莢が飛び跳ね、ダンゴムシの装甲に当たって跳ねる。

『!!』

 びくりと体を震わせ、ダンゴムシが砲撃を中止した。慌てて丸まろうとするが、バランスを崩し横倒しになる。そこへ。

「これで決まりだな」

 装甲のない腹へと、複数のライフルが突き付けられる。その照準越しの迷い無い瞳を、ダンゴムシの複眼が捉え。

「撃て!」

 一斉射撃が、ダンゴムシの腹を貫いた。

●作戦終了

「さて、俺は本業が忙しい……さっさと帰らせてもらうぜ」

 コートに付いた汚れを払い。ケインが煙草を咥え、火をつける。そんな彼に、ルク・ア・ドゥアがフェイスモニターを光らせながら問いかける。

「本業と言いますと、何をされているのですか?」

「……迷子の猫探し」

 ばつが悪そうにコートの襟を立てるケインに、ルク・ア・ドゥアは首を傾げた。はて、この人の本業とは……ペットショップの店員なのかもしれない。随分微笑ましい事だと判断できます。

「さてと、他の戦況はどうなっているのか気になりますね」

 迎えのキャリアに乗り込むケイン達を見送り。ポケットから取り出したブラックチョコレートを齧ったエレナが独り言ちる。同時多発的に行われたナイトメアの強襲。おそらく偶然のモノではあるまい。

「他だって上手くやってるだろうさ。そうでないと……」
 赤羽が拳を作る。他のライセンサー達はどうなのか。重傷を負ったものは居るのか。或いは死んだ者は……彼の脳裏を、倒れ伏したカンナと縋りつく春風の姿がちらつく。

「だが。一度戦ったんだ。戦えば、対策を立てられる……」

 そうして、強くなることが出来る。人間は、経験から強くなる生き物なのだから。

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