血煙高田馬場 マスター名:茶務夏

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●狙われている部品と襲われる人々に対する、水月ハルカの解答
 新宿区西早稲田は、言わずと知れた学生街だ。そして建学以前はここも含めて高田馬場と呼ばれており、堀部安兵衛のいわゆる「高田馬場の決闘」も、この西早稲田のエリアでなされたものであった。
 その決闘の現場に近い、早稲田通りのとある古本屋。築百年は経過していそうなボロ屋に足を踏み入れ、古本と古雑誌が乱雑に積み上げられた狭い通路を抜け、店の奥のレジを乗り越え、畳の間に上がり込んでそのうちの一畳をめくり上げると、店に似つかわしくないモダンな金属製の蓋がある。
 ライセンサー水月ハルカはその蓋を引き上げると、地下深くへ伸びていく階段を下りていった。
 残された蓋が、そしてそればかりか畳までも、自動的に元の位置へ戻っていき、後には潰れそうな古本屋が佇むばかり。

 地下には、なかなか広大な未来的空間が広がっていた。
「おや、外はかなり厄介そうだね」
 出迎えた白衣の中年男性??ラボ所長が、ハルカの姿を一目見て言う。
 ナイトメアの侵攻はかなりの規模だった。ここへ来るまでも何度となく人を襲う雑魚との戦闘をこなしていて、いくらか傷も負っている。
「君が腕利きという話は聞いているが、さすがに一人ではきつくないかい?」
「仲間は後から来ます。私は都内で別の任務をこなしたところだったので、勝手ながら先行させてもらいました」
 ヒールで自らを癒やしながら少女は応じた。
「ご依頼の試作品は完成に向けた最終工程に入ったところでね」
 所長(しかし助手などはいない、一人親方みたいなものである)は守るべき品について説明する。
 彼の示す先には、直径二メートルほどの巨大で頑丈そうな水槽があった。紫色をした半透明の溶液に満たされ、その中に十個ほどの同じ種類の部品が入っている。
「今はこの溶液に浸けて長時間安定させ、定着させなければならない。一分以上の振動はご法度で、この研究室内ならまだしも、持ち出して移動させるなんて論外だ」
「つまり籠城せざるを得ないわけですか」
「何か不満でも?」
「……敵は、この部品に類するものを都内各所で狙っている可能性が高いと、聞き及んでおります」
「ああ、この大騒ぎの最中に君たちが護衛に派遣されてきたのはそういう理由か」
 所長は合点が行ったように肯き、先を促す。
「そしてどうも、ナイトメアのその探索の過程で一般人が被害に遭っているようでした。これを持ち出せるなら、敵を惹きつける囮としてうってつけと思ったのですが」
「気持ちはわかるが、この部品も重要なものだし、囮には同意できないな。何より、君が危険すぎるだろう」
「優先順位としては??」
 そこまで言いかけたハルカは剣を抜く。身を強張らせる所長を無視し、水槽に飛びつこうとしていたものを斬った。
 一メートル弱の、虻のようなナイトメアだ。剣をかわそうとしたが及ばず、両断されて床に転がる。
「すでに突き止められているようです」
「どこから……排気孔からか。多少ルートは入り組ませておいたんだが」
 所長は頭を小さく強く掻く。
「この調子で湧かれると、部品と所長、ともに護衛するのは困難に思います。それに地上であれば、私と仲間以外にも、さらなる増援の到着が期待できます。……部品を外へ搬出するための仕掛けはあるのでは?」
「……了解。その方が僕も安全だしね。ただ、危険になったら逃げるように」

●血風吹きすさぶ中、現れたのは
 西早稲田のとある神社。
 その一角の地面にパカリと穴が開き、地下から水槽と水月ハルカがせり上がって来た。ハルカの周囲には予備の武装として数振りの剣といくつかのハンドガンが置かれている。
「目当てのものはここだ。寄り道などせず、かかってこい」
 ハルカの言葉が理解できたわけでもないだろうが、虻型が三体、さっそく飛んで来た。

 ナイトメアどもの真意は定かならねど、ハルカは己の推測に確信を深めていく。蜜に惹かれる蜂のように、二種類のナイトメアがこの部品に寄って来る。
 倒しやすいが数が多い虻型と、やや手こずらせる昆虫人間型。後者は二メートルほどの長身で、鉤爪や顎の攻撃は当たると痛い。
 ただ、このナイトメアどもに連携という発想がないのはありがたかった。
 斬り倒し、撃ち落とし、斬り捨てて、撃ち殺し、暇を見つけては自身を回復し。ハルカ一人でもどうにか対処できた状態で、屍の山を築いていける。
 しかし、次第に出現ペースが上がってきていた。
 これだけ群がってきたからか、先ほど情報収集中と思しきライセンサーも遠巻きに見かけた。ただナイトメアはここだけでもない。もうしばらくは遊軍の増援を当てにせず、凌ぎきらねば。
 こちらの銃撃をかわして水槽の上でホバリングを始めた虻型を、どうにか真っ二つにする。だがその隙を昆虫人間型に突かれ、脇腹に一撃食らった。
「くうっ!」
 よろけた足を軸に無理矢理回転し、そいつの首を刎ね飛ばす。
 しかしそこへ、新手の昆虫人間型が別方向から迫って来た。
「!」
 さすがに痛手を覚悟して身構えるが、訪れるはずの激痛はない。
 崩れていた体勢を立て直して向き直ると、新手はすでに倒されていて、そこには待ち望んでいた他のライセンサーたちがいた。



 他のライセンサー、つまり、君たちだ。
「……遅いぞ」
 血まみれのハルカは満身創痍に見えるが、それでも君たちに笑ってみせた。


●目標
 部品の防衛(失敗にならない最低条件。ナイトメアは部品の奪取あるいは破壊のような行動を試みる。十個の部品のうち、一個でも無事なら失敗は免れる。なおナイトメアは水槽の破壊や溶液の抜き取りはおこなわない)
 ナイトメアの殲滅(ナイトメアはいずれも、生命力が九割以上減少した状態でターン冒頭を迎えると逃走に転じる。逃走に成功すると、PCには危害を加えない代わりに逃げ遅れた一般人を襲う)

●敵勢力
虻型
 飛行可能だが高度は二メートル程度。移動力4。針で刺してくる(射程1)。回避力やや高め。生命力と防御力は極めて低く、ライセンサーのどんな攻撃でも当たれば一撃で倒せる。危険度1。放置しておくと、部品を持ってどこかへ消えようとする(PL情報)。

昆虫人間型
 移動力3。鉤爪や顎で攻撃し(射程いずれも1)、攻撃力高め。生命力と防御力はやや高く、一撃で倒せない恐れあり。危険度3。放置しておくと、部品を壊すような行動を取る(PL情報)。

●味方NPC
水月ハルカ
 装備はソードとハンドガン。生命力は七割減少状態。スキルは使いきっている。剣の腕は高く、昆虫人間型も当てれば一撃で倒せる。射撃の命中はやや低い。基本的にPCの指示に従う。

略図(一スクエア二メートル五十センチ四方=「移動力」の二倍のスクエアを移動可能)
123456789
◆◆◆××××××A
◆◆◆□□□□□×B
◆◆◆□□□□□×C
×□□□□□□□×D
×□□□水□□□×E
×□□□ハ□□□×F
×□□□□□□▲▲G
×□□□□□□▲▲H
×××××××▲▲I
◆:拝殿
▲:社務所
PCの初期配置は自由。
一ターン目開始時に虻型5、昆虫人間型1、二ターン目開始時に虻型6、昆虫人間型2、三ターン開始時以降は毎回虻型7、昆虫人間型3がマップ外周(×)にランダムで出現。
しばらく粘っているとライセンサーの増援があり、戦闘終了(※PL情報:六ターン目終了後)。


【心情】
やっと体を張って守れるようになったんだ。
失って堪るかよ…!

【行動】
ハルカの無事に安堵。
彼女の回復後、攻撃力の高さを活かし昆虫人間型を優先的に狙うよう依頼。

初期配置はA5。
仲間を守る壁役。
ライトバッシュで昆虫
人間型の肩から反対側の足へ向けて斜めに斬りつけ、足の損傷を狙い、水槽へ向かうのを防ぐ。
虻は仲間に任せ昆虫人間型専念。
仲間と連携し各個撃破を狙う。
スキルを使いきり全力で戦う。

戦いながらもA、B、C方面を注視し、
援軍の昆虫人間型が出没したら仲間に大声で知らせる。

範囲攻撃の出来る仲間が戦線離脱しないよう特に気にかける。
範囲攻撃使用の合図で範囲外に退避。
応戦中だった昆虫人間型が味方の範囲攻撃を受けて尚生存していたら駆けつけ撃破。

壁役として持ちこたえられるよう、生命が減ってきたら仲間に回復を要請。
複数の昆虫人間型に囲まれた時は、水槽に向かうのを防ぐ為に付近や遠距離攻撃可能な仲間に援護を依頼。迫り来る増援の多さに守られ失うばかりだった過去が甦る。
沸き起こるのは恐怖ではなく闘争心。
そして絶対に皆を守り抜く決意。

「てめぇらが全滅するまで諦めねぇ。
逃がさねぇからな!」

目の前の敵より逃亡する敵を優先しフォースアローで攻撃
仲間の危機にもフォースアローで敵を牽制

「部品は何度でも作れる。
けど人の命はそうはいかねぇんだよ!」
待たせてごめんなさい。
水月さんの働きは、無駄にはさせないから。

私の初期配置はE4。
水槽を背に庇うように構える。
主に南と西の方向に現れた敵の対処をする。
ただし、もし別の方面に敵が集中した場合は、そっちの援護も。

虻型を優先して攻撃。着実に一体ずつ仕留めていく。
もし水槽の上に付かれたら、そいつを優先して狙う。
また、敵が逃走状態になった時、自分が攻撃しないと取り逃がすという時には、逃走する前に撃つ。
2ターン以降は毎回ポイントショットのスキルを使用して攻撃。
リロードは行わず、銃の弾が切れたらサブ装備から別の銃を入れ替えて対応。

(大丈夫、一体一体は大したことは無い。この時の為に訓練を重ねてきたのだもの…落ち着いて狙えば、当てられる!)

私自身はE4の位置から動かず、常にその場で行動。
もし昆虫人間型が水槽に接触しそうになったら体を張ってでも阻止。

くっ、さすがに数が……だけど、こんなところで負けるもんですか!

(無事終わったら)
なかなかキツイ初陣だったわね、これは…
でもきっとこの先、もっと辛い状況なんていくらでもあるでしょうし、こんなところで弱音を吐いてられないわよね。

水月さんみたいに、一人でも多数の相手に立ち回れるようになれるのは、まだまだ先かな。
【心情】
(セツナならできるセルナなら……あ)
初陣の緊張状態からの血まみれハルカで半分思考が飛ぶ
とにかくナイトメアを倒し部品を守らなければと無意識に心の支えとしていた漫画キャラをトレースして行動開始

【行動】
初期配置はE6
水槽周辺で敵排除&北と東方面を警戒し敵出現時に味方と情報共有
基本虻型から部品を守るように動き近づくものから優先し排除
ただし虫人型が部品破壊時は複数壊される前にそちら優先
事前阻止出来ず部品を持ち去られた場合は深追いせず他の敵の阻止優先
仲間が範囲攻撃を試みるなら敵の誘導や範囲内からの退避などで合わせる
戦闘は命中重視でポイントショット+オートマチックとフォースアロー+魔導書を中心に
余裕が無いのでリロードは極力避け武器切り替えで対応
スナイパーライフル、移動射撃は上記でカバーできない状況に備え温存

基本は上記だが敵が市街に逃げるようとし他の仲間では阻止ないなら水槽を離れてでも撃破を優先する
これはトレースではなく刹那自身の意思
●事前
パワークラッシュ使用時の合図声がけを決めておく
巻き込み破壊注意

●準備
…虫、とりあえず持っていってみるか
(殺虫剤を持っていっておきます、持っていける規約に反して無いかなとコンビニ販売してますので)

●戦闘
G4に配置
基本虻対応を行う

戦闘開始はタバコに火を付けて吸いながら

まず殺虫剤を試す、効かなければタバコの火を付けて簡易火炎放射器代わりに虻に向けて使用
こういう戦い方もあるさね

その後は剣で対応
虻が集まるまでは剣のみ
複数集まったところでパワークラッシュを声をかけてから使用する
その場合なるべく水槽から離れるよう引き寄せてから攻撃を

部品をもった虻が目についたら優先的に攻撃、移動攻撃も使用

一応隠し玉もあるさね(ハンドガン逃げる虻攻撃)
G5に配置。
武器の槍のリーチを利用して南西方面の防衛に当たる。円錐形の槍の刺突のほかにも横薙ぎ縦薙ぎ払いで叩き落としもする。

基本的にはアブ型を相手取り、倒し損ねた敵のとどめをさしにいく。逃走を図る敵は優先的に。
必要があれば持ち場を離れ仲間の援護に向かう。
守りの手が薄くなれば水槽に張り付き防衛にも回る遊撃隊をする。
もし出現地点が集中し他の仲間が間に合わなそうなら一人でも壁になるだろう。

仲間の範囲攻撃の声がかかったらすぐにどく。

優先順位は逃走を図る敵→アブ型→範囲攻撃持ちの仲間の援護→昆虫人間の足止め
【目的】
部品の防衛とナイトメアの殲滅。
「水月の意図を汲んでやりたいところだが…少し厳しいか?」

【作戦】
水槽を囲む形での防衛戦。
俺の初期配置は略図で言う所のF2になる。
メインターゲットは昆虫人間型。出現場所が水槽の反対側等の場合は虻型に切り替えもあり得る。

到着直後に、周囲の警戒をしつつ水月ハルカをヒールで回復。
昆虫人間型の相手をお願いしたい。
「お疲れの所申し訳ないが、アレの相手を頼めるかな?」

基本的には昆虫人間型を倒すつもりで戦うが、対処しきれないと判断した場合は、倒すのではなく引き付けや足止めを重視した行動に変更する。
これは時間稼ぎが目的ではなく、水槽に向かう敵を減らし後方が飽和するのを極力防ぐのが目的になる。
それでも対処しきれない数が水槽に群がったら、敵増援よりもそちらを優先する。

【戦闘】
基本戦闘スタイルは耐えて殴る。
メインで使用する武器はスタークレイモア。
昆虫人間型を攻撃するときはライトバッシュを使用。
足止め目的になってからは相手の足を狙った攻撃にする。

オートマチックBD4は咄嗟に攻撃しにくい上空にいる敵や、撤退する敵に対して使用。

獅子王は水槽の近く等、クレイモアを振り回し難い状況の時に切り替えて使用。
命中を重視したい場合にもこちらになる。
「悪いな。武器としては、こっちの方が得意でね。」

生命が1割を切ったらヒールを使う。
【心情】
先輩ライセンサーの水月ハルカに協力する。
そのためにこの依頼に参加したんだ。
俺も戦力になること、証明してやる!

【目的】
水月ハルカに協力要請。部品防衛。

【準備】
使用スキル、装備の確認。

【行動】
戦闘配置はF6。水槽を囲む、水月に近い位置なので。
彼女が動いたら、代わりにその位置に。
周りの状況を確認。その後、水月の負傷具合確認。
「俺は五代 真。これが初陣のライセンサーだ」
回復する仲間と一緒にヒール使用。
フル活用し、水月がある程度動けるようになるまで回復。
「あんたの戦力が必要不可欠だ」

範囲攻撃スキルを使う仲間には「使う前に声かけてくれよな」と一言。
水月に、昆虫人間の特徴や弱点をわかる範囲で教えてもらう。
昆虫人間を集中攻撃。
「邪魔させねえ!」
動きを見極めてから攻撃。
「連続攻撃食らい続けて、どこまで耐えられるかねぇ」
旋空連牙で連撃。
乱入してきた虻は追い払う。

依頼が終わったら、戦闘した周辺を確認。
整備や後片付けが必要なようならする。
水月、あんたは早く帰って静養しな。まだ傷だらけなんだから。
また会えるの、楽しみにしているぜ。
さてと…ちゃっちゃと片づけるか。
「では反撃開始ですね。あの方達にここへ来た事を悔やませてあげませんと」

・目的
部品及び水槽の防衛
可能であればナイトメアの殲滅

・初期位置
B5

・行動及び戦闘
基本的には前に出ての前衛攻撃役が主なお仕事となります。
薙刀での近・中距離戦を軸に、エネルギーガンでの牽制を織り交ぜていくのが戦法となりますね。
初動は初期位置から周囲の敵を確認し、数が多い方へ向かう形となります。
周囲に怪我をしている味方が居るならヒールで支援していきましょう。
それと、何よりも水槽や部品に危害が加わらない様にしませんとね。ナイトメアによる破壊や簒奪の手が近い様ならエネルギーガンで注意を引き阻止します。

撃破の優先順位は虻が第一、次に昆虫人間となります。
虻は動きが早く飛んでいるので厄介ですね、単体に対してはエネルギーガンでの牽制で動きを止めつつ薙刀で潰していきます。
複数体を巻き込める位置にある場合はパワークラッシュで一気にブッ飛ばします。
その際は味方や水槽を巻き込まないようにしつつ、周りにも注意を促しておきましょう。
「畜生道の者に差し伸べられる手はありませんの、御免なさいね?」

昆虫人間に対しては小細工抜きのガチンコの近接戦ですね。
相手の間合いに入らない様一定の距離を保ちながら薙刀で攻撃を加えていきましょう。
「昔を思い出しますね…幾つになっても、こういった場は楽しい物です」


 放浪者ノラ・フリスト(la2037)に戦闘経験はない。こちらの世界もまだ不慣れで、神社の建物にも異国情緒を強く感じる。
 それでも彼女は、困っている人がいるなら手を伸ばす。そこに迷いなんてない。
「遅くなってごめんね! 今助けるから!」

(無事でよかった)
 単独で先行していたハルカが倒れずにいたことに、セシル(la0642)はそっと安堵する。
 敵から彼女と水槽を庇うように周囲に展開する自分たち八人。つい思い出すのは、力を得る前の自分。異世界の王子ながら、体が弱く周囲にただ守られるだけだった自分。
 だが、「遅いぞ」などと憎まれ口を叩く彼女は、過去の自分とはかなり違う。
「言うじゃねえか」
 言葉を返して、剣を構えた。

「では反撃開始ですね。あの方たちにここへ来たことを悔やませてあげませんと」
 北と東へ対処できる場所で薙刀を持つ甕星 ヒカル(la0091)は、穏やかな声で微笑みながら言う。長髪長身のたおやかな女性であり、武器を手にした立ち姿すら絵になる美しさ。
 なのにその声音には、周囲を不思議と戦慄させる凄みがあった。

 各人が己を高ぶらせ、あるいは妙に場慣れした雰囲気を漂わせて戦闘に臨む。そんな中、こちらも初陣の華厳院 刹那(la0221)だけは混乱状態にあった。
(……あ)
 緊張状態で現場に到着し、出迎えたのは血まみれ姿のハルカ。半分思考が飛ぶ。
 刹那は蝶よ花よと育てられた箱入り娘。荒事が日常のライセンサーには不向きと誰もが止めた。
 今も、刹那本来の性格なら気を失いそうな場面なのだが……
「遅いかどうかは知らん。だが――今が悪夢(ヨル)の明ける刻だ」
 何度も何度も読み返した漫画『マジックガンナーセツナ』一巻の名台詞。それを多少変えてハルカに告げると、刹那はセツナのごとく手慣れた様子で銃を抜いた。

(ここへ来るまでの打ち合わせの時とは雰囲気がずいぶん違うような)
 最前まで男装ながらもおっとりとしていた刹那の変貌を不思議に思いながら、ソレイユ・フラム(la0139)は水槽を挟んで刹那の反対側、南と西からの敵に備えた配置につく。
「待たせてごめんなさい。水月さんの働きは、無駄にはさせないから」
 サブマシンガンを構えた彼女の背後には、臨時に支給されたスナイパーライフルも数丁あった。

「殲滅戦争、腕が鳴るねぇ」
 火煉・W・紅露(la0004)は、白いものが混じった赤毛のライオンヘアを揺らして楽し気に笑う。眼帯や二メートル近い長身と相まって迫力満点だ。
 そんな彼女は煙草に火を点けてくわえ、西へ展開した虻型ナイトメアの前へ無造作に出ると、煙草の火を前にかざして来る途中で購入した殺虫剤をスプレーする。簡易火炎放射器の炎が虻を包んだ。
「こういう戦い方もあるさね……効かないか」
 虻は平然と飛ぶ。ナイトメアに通常の攻撃は効果がないからこそ、ライセンサーやアサルトコアの存在が不可欠なのだ。
 火煉は改めて大剣を抜くと、獰猛な笑みを浮かべた。

「俺は五代 真(la2482)。これが初陣だ」
 バンダナの青年は、ガルシア・ペレイロ(la0370)とともに、ハルカにヒールを用いる。
「礼を言う。これでまだ戦える」
 ハルカは言うが、傷自体が癒えたわけではない。ヒールはイマジナリーシールドの損耗を回復させるだけなのだ。
「あんたの戦力は必要不可欠だ。それと、情報もな」
 真は水月に、敵の特徴や弱点をわかる範囲で手早く教えてもらう。
「お疲れのところ申し訳ないが、アレの相手を頼めるかな?」
 訊き出したところで、ガルシアは昆虫人間型ナイトメアをハルカに示した。先ほどハルカを襲おうとしていたところをガルシアらは不意打ちの同時攻撃で落としたが、単独で倒せる自信はない。一撃で倒し続けてきたと言うハルカに厄介な相手を任せない手はなかった。
「もちろんだ。奴らを殲滅してみせる」
(水月の意図を汲んでやりたいところだが……少し厳しいか?)
 ガルシアは内心で呟いた。
 今のところ、敵は昆虫人間が一体に虻が五体。しかし少し遠くに目をやれば、ベルトコンベアに並ぶ製品のように一定のペースで、後続のナイトメアが近づいてくる。

 虻は宙を飛んではいるが、高度は人の目線と同じかそれより少し上というところ。少し前に出たヒカルとセシルは危なげなく斬り捨てる。

(大丈夫、一体一体は大したことない。この時のために訓練を重ねてきたのだもの……落ち着いて狙えば、当てられる!)
 ソレイユもまた、着実に虻を仕留めていた。射撃姿勢は正しく、長い金髪すら揺るぎもしない。
(彼女は、大丈夫かな)
 虻の撃墜を確認すると、意識はわずか、反対側に立つ者へ向いた。

(セツナならできる、セツナなら)
 刹那はセツナの行動を必死にトレースする。ナイトメアを倒し部品を守るという現実の任務を果たすべく、架空のキャラの服装のみならず言動まで真似る。
「黄泉への旅路に迷うことはない。この弾痕が道標だ」
 ポイントショットも駆使して、虻を射抜いた。

 ハルカが昆虫人間を倒し、当面の敵は虻が一体。
 ノラも続けと槍を振るうが。
「!?」
 初の実戦で緊張したか踏み込みは浅く、虻にギリギリのところでかわされる。
 その虻は、ライセンサーが四囲を固めている水槽の直上へと移動し、部品を品定めするようにホバリングをし始めた。


「今度は二体出やがったぜ! 北と東だ!」
 警戒すべき敵である昆虫人間の出現を、セシルは大声で報せる。
「一気にブッ飛ばしますわ。皆様、お下がりください」
 ヒカルの言葉にハルカらが戦場を移動し、別の地点に現れた敵を倒していく。
 彼女の周囲には昆虫人間と複数の虻。神社の建物からも適度に離れている。
「昔を思い出しますね……いくつになっても、こういった場は楽しいものです」
 いささか「やんちゃ」だった高校時代までを思い出し、美女は艶然と微笑んだ。
 そして繰り出すはパワークラッシュ! 薙刀が芸術的な曲線を描き、軌道上の敵を力強く薙ぎ払う!
 昆虫人間にかなりの傷を与え、虻どもは一掃してみせた。
「畜生道の者に差し伸べられる手はありませんの、御免なさいね?」

「ノラ」
 強面のガルシアに声を掛けられ、ノラはつい身構えてしまう。水槽上の虻は真が落としたが、それでもミスを怒鳴られでもするのだろうか。桃色の髪を片側に結わえたしっぽが、心なしか萎れた気がした。
「俺たちのスキルは飾りじゃないぞ」
 それだけ言うと、ガルシアはヒカルがダメージを与えた昆虫人間に詰め寄った。力の入った的確な一撃は、ライトバッシュによるもので、弱っていた敵を両断した。
「そ、そっか!」
 ノラは再び槍を構えた。そこに、ガルシア同様ライトバッシュのスキルを込める。
 突き出した槍は、新手の虻を今度こそ貫いた。


 南西では火煉の、北東ではヒカルのパワークラッシュが猛威を振るった。昆虫人間は三体、虻は七体出てくるようになったが、この二人だけで虻六体を沈め、昆虫人間三体にダメージを与えている。
 ソレイユが最後の虻を落とし、セシルがライトバッシュで昆虫人間を一体倒した後、それは起こった。
 ガルシアが西の敵をライトバッシュで攻める。
「連続攻撃食らい続けて、どこまで耐えられるかねぇ」
 真が旋空連牙で東の敵へ連撃を仕掛ける。
 しかし、どちらもわずかに倒すには至らなかった。
 すると、一心に水槽を目指していた昆虫人間が動きを変え、じりじりと後ずさりし始めていった。

(撤退させられるなら、それはそれでありだろう)
 ガルシアはそっと息をついた。
(怯えが見えない)
 一方、守られる形ではあったが数多の戦場を経験していたセシルは、敵の雰囲気に不審を感じ取った。
 あれは屈服した者の姿ではない。退いて、何かをして力を取り戻し、機を見て反撃を窺う者の姿――
「てめぇらが全滅するまで逃がさねぇ、逃がさねぇからな!」
 剣を振るった直後ですぐには動けない。それでも、強い言葉が口を突いて出た。

 その言葉に、残る二人が反応した。
(逃げたナイトメアは何をする? 一般人を狙っちゃわない?)
 ノラは自身の直観に従う。
(あれを逃がしてはいけない)
 セツナのトレースではなく、刹那自身の意思がそう感じる。
「逃がさないよ!」
 ノラの槍が西の敵を穿った。
「我が想念――我が力、敵を撃ちぬく魔弾よ」
 刹那のフォースアローが東の敵に突き刺さった。
(え、あれ? リボルバーを使った風だけど、今のは装備変更した魔導書から力を引き出してたよね?)
 常に銃を使う体を装う刹那のこだわりに、ソレイユだけが困惑させられていた。

「ひとまず出る幕なしか、頼もしいな」
 ハルカが傷の痛みに少し顔をしかめながら、笑った。


「ま、こんなこともあらぁね」
 敵の出現は北と東に集中し、非常に暇になった火煉は唯一手近な一体の虻に襲い掛かる。
 虻は意外にも機敏な動きで剣をかわそうとするが、そこに火煉の口から煙草が飛んだ。動きが鈍ったところを斬り落とす。
「まったく、カトンボはカトンボらしく落ちるといいさ! いい男にいい女にゃ虫は似合わねぇってね」

 北東のヒカルは今回も虻を落としまくり、昆虫人間一体にも打撃を加える。そこをセシルが追撃し、倒してみせた。

 ソレイユと刹那は、愛銃のポイントショットで虻を落とす。そして二人とも装備を交換、刹那は魔導書装備にリボルバーを小道具とし、ソレイユは支給のスナイパーライフルを手にした。

 真は東側の昆虫人間を、普通に攻撃していく。
(スキルも使えばいいってもんじゃねえんだな)
 さっき二回ともヒットした旋空連牙は、しかし合計しても一回の通常攻撃より威力を減じていた。破壊力や命中力を犠牲にする度合いが、現時点ではまだ大きすぎる。

「ガルシアさん、あたしが行くから追撃お願い!」
 弱った東側の敵を見ながらノラが言う。
「お、おう」
 横に薙いだ槍が敵を捉え、その後を追った剣が唐竹割りにした。


 一転、南西から敵勢が押し寄せてきた。
「ここはあたしの出番さね!」
 火煉が吼えて、剣を振り回す。騒がしいのは敵の気を惹く狙いもあるのだが、そちらはあいにく効果を上げていない。
「だぁもう、ブンブンうるさいさね! あっちこっち飛ぶんじゃないよ!」
 剣が虻どもを微塵切りにし、昆虫人間を痛めつけていく。

「これにて、打ち止めです」
 四回目のパワークラッシュを放ったヒカルが言った。しかし敵が途切れる気配はない。
(さすがに数が……だけど、こんなところで負けるもんですか!)
 ソレイユは虻を撃ち落とすと、次のライフルに交換した。今はリロードしている暇などない。
 刹那は再度のフォースアロー。しかし手の中のリボルバーが滑り、それに釣られてか攻撃まで逸れてしまう。
(セツナはこんなミスしないのに!)

 セシルが真との連携で西の敵を倒す。ハルカが南の敵を倒す。
 しかし東から敵が水槽に迫って来て、ガルシアよりも反応が早い。
 ノラは少し悩んだ末、武器を盾に持ち替えて、水槽の前に立ちはだかり、何もしないことを選択した。
(下手に攻撃すると、また逃げてしまうかもしれない。それくらいなら!)
 昆虫人間がなら望み通りにとばかりに鉤爪を振り上げる。ノラは盾を前に出して防御に専念する。
 ごそりとイメージのバリアが削られる。しかし、ノラ自身は無傷で立っていた。
 食い止められた敵は、ガルシアがきっちりと倒した。


「これが最後の大盤振る舞いさね!」
 火煉がパワークラッシュで虻たちを沈める。ヒカルが、セシルが、真が、敵を倒していく。
 しかし疲れが出てきたか、ノラの槍は外れた。そして刹那も、射撃自体は正確だったが、虻が奇跡のような回避を見せる。
「俺たちは完全無欠の英雄なんかじゃない」
 ガルシアはそう言い、刹那が逃した敵を斬る。
「ただまあ、まずは歩いて転ばにゃ、いずれ速く走ることもできんよな」
 ソレイユは虻を撃ち落とし、三丁目のスナイパーライフルを準備した。そんな彼女に生き残った昆虫人間が襲い来るが、問題なく回避する。
 しかし、水槽直上にも虻が一体。二体残したのは初めてだ。そして範囲攻撃の手段は失われ、さらに敵が群がる未来しか見えない。

(やっと体を張って守れるようになったんだ……失ってたまるかよ!)
 なおも途切れる気配のない敵を前に、セシルの脳裏に失うばかりだった過去が蘇るが、沸き起こるのは恐怖ではなく闘争心。そして絶対に皆を守り抜く決意。その「皆」に含まれているのは、周りの仲間ばかりではなく、このナイトメアに脅かされる危険性のある一般人も含まれている。
 この部品がこいつらを惹きつけるうちは、彼らは安全だ。なら限界までここで粘ってみせよう。
「部品は何度でも作れる。けど人の命はそうはいかねぇんだよ!」
「同感だ」
 ハルカが笑った。

 と、ナイトメアが別方向からの猛攻に薙ぎ倒されていく。
「ライセンサーの増援か……」
 幕切れは唐突。しかし、部品はすべて死守し、敵の逃走を許さなかったことで一般人への被害も防げた。望みうる最高の結果を上げたと言えるだろう。


「水月、あんたは早く帰って静養しな。まだ傷だらけなんだから」
「そうだな。世話になった」
「また会えるの、楽しみにしているぜ」
 ハルカと言葉を交わして別れ、真は戦闘中我慢していた煙草を手にした。
「火煉さん、火、いいっすか」
 声を掛けられ、火煉は新たにくわえた煙草の火を貸す。

「なかなかキツイ初陣だったわね、これは……。でもきっとこの先、もっと辛い状況なんていくらでもあるでしょうし、こんな程度で弱音を吐いてられないわよね」
 ソレイユはついさっきまでの戦闘を振り返り、独りごちる。
 そして、自分よりもっと大変そうな子の様子を見た。
「戦えた……できてしまったんですね。そうです、わたしでは無理でもセツナなら――」
 普段の調子に戻りつつある刹那は、まとめていた髪も下ろして黒く長い髪を風になびかせていた。
 その周りには、ノラやヒカルがどこかしらシンパシーを感じているのか集まってケアしている。
「ま、私も身に覚えはあるしね」
 クールさをちょっと装っているソレイユも、その輪に加わった。
「化粧を施すことで力を増す戦士は俺の国にもいたな」
「鎧うことは珍しくもない」
 セシルと意外に繊細なガルシアも、思うところがあるのだろう。少女たちを見守る目は温かかった。

成功度
大成功

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重体者一覧

重体者はいませんでした。

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