赤ずきんのリンゴにご注意を マスター名:楠原日野

形態
ショート
難易度
普通
ジャンル
防衛
人数
68
相談期間
3
プレイング締切
08/30 24:00
完成予定
09/19 24:00

●山林中腹

「ふぅ~ん、あれが『こっちの東京』ね~。あんまぱっとしないわ~」

 編みカゴを片手に、赤いずきんを被った栗毛髪の少女が高い木の枝に立っている。そしておでこに当てた右手をひさしにして、眼下に広がる東京一帯を見下ろしていた。

 下から吹き上げる風が長いスカートを煽り、はためかせるが、少女は意に介さない。膝より少し上の太股のホルダーにちらりと、黒くてゴツい、およそ少女に似つかわしくないものが見え隠れする。

 少女が飛び降り、軽やかに着地する――かと思えば、膝を軽く曲げるだけで力任せに着地した。

「ん~とぉ、東京のどこを探せって言われてるわけじゃないし~。ここから適当に転がしておけば~、いいわよね~?」

 そう言う少女の前には腰の高さくらいのリンゴが、列をなしていた。リンゴらしからぬ大きさもそうだが、目と鼻のようなくぼみや出っ張りがあり、さらにギザギザの歯が並んでいる口までついているので、それがただのリンゴではないのは明白だった。

 正確な言い方かわからないが、無表情なリンゴは横一列に4個並んでおり、それが間隔を開けて三列。

 列の間に少女が割り込む。

 リンゴの後ろに立った少女から黒いもやが溢れ、赤かったずきんが黒く染まっていく。ほんわかとしていた少女の顔も目はつり上がり、唇の端はそれ以上につり上がって、下卑た笑みを浮かべていた。

「おら、いってこい!」

 黒いずきんの少女が、次々にリンゴを蹴りつける。

 転がり始めたリンゴは勢いをつけ、途中にある木を構わずなぎ倒すか、食らいつきへし折っていく。穴ぼこを乗り越える際に少しは減速するものの、多少の起伏をものともせず、まっすぐに山の斜面を転がっていくのだった。

 リンゴを見送った黒ずきんの少女はくるりと背を向ける。

「さ、やるだけやったんだ。文句はねーだろ。帰ろ帰ろ」

(弱いもんイジメは大好きだけどよ、ありんこ踏みつぶして楽しむ趣味はねーんだよな)

 ちらりとだけ後ろを振り返って、邪悪な笑みを浮かべた。

「せめて殺す価値があるくらいには育てよ、てめーら」




 リンゴ達が転がり始めてすぐ、SALFへと通報があった。

 一直線に木を蹂躙しているだけあって、とてもよく目立つ。近隣の住民がその異変にすぐ気づいて、即通報という流れである。

 現状、まだ被害はないものの、そのままでは民家や工場などに被害を及ぼすことが明白であるため、SALFは数人のライセンサーに任せる事にしたのであった。
 

●目的
・リンゴ型ナイトメアの殲滅
・麓の民家、工場への被害を極力出さない(3匹取りこぼせば作戦は大失敗)

●場所
・東京近郊の山林

●敵情報
・ナイトメア『リンゴ型』×12
  初登場のため、データがない
  見て取れる情報として、1Tで10sq、まっすぐに転がってくる
  50cmの大きさしかないが、進路上の木々をなぎ倒す。そのさい、口の部分と木が接触するときだけ噛みついている模様

●情報・補足
・リンゴ型は横4sq分の幅を、斜めに等間隔で並んで転がってくる
・隊列は一辺を4体として、 \/\ これを縦にしたような並び、先頭から最後のリンゴまで縦11sq離れている
・上からでは追いつけない可能性が高いため、下での待ち伏せor横からの強襲or上空からパラシュート降下のどれかを個々で選べる
・上空(キャリアー)からの降下は任意の場所に降りられるが、移動ステップがスキップされる
・落下ダメージ覚悟で上空1~2sqでパラシュートを切り離し、ロマン溢れるリンゴへのダイレクトアタック降下が可能
・ダイレクトアタックの場合、近接物理攻撃上昇(切り離した高さによってさらに変化)、命中に大幅なマイナス補正
・リンゴの軌道は地形的にも今後、曲がる事は無いとSALFからは伝えらえている
・多少の起伏はものともしないが、穴ぼこでは僅かな減速が確認されている
・結構な斜面のため、登りで移動力が低下。下りでは移動力+1だが回避にマイナス補正(回避行動直前の移動が下方向の時に発生)
・抜かされると、普通に移動していては追いつけない。いざという時の全力移動推奨
・反応値は低いため、よほどのことがない限りはライセンサーが任意の行動順で行動可
・正面から受け止めようとするとただの人間では轢き殺されるだけだが、ライセンサーならもしかすると……?

麓の人が為、薙ぎ倒されている木の為、頑張ろう
集まった仲間の様子も気になる

道中作戦打合せ
矛盾点は他の仲間の意見の方を尊重
50m走と思えば…丸いリンゴだし、摩擦少なめ、加速度も?とにかく時間を無駄にはできない
余裕ありそうなら、追いかけやすいよう窪み作成の為、スコップを持っていきたい。SALFへ貸与申請or途中で購入

戦闘
民家等に近いのから順に倒す事賛成
早く、確実に、僕たちより麓の方には近づけない

なるべく木も山の自然も破壊したくないから、現地でリンゴの落下速度や方向等確認したら
皆でどの位置で戦闘開始するか決めてスタンバイ
登りながら、途中で窪み堀りつつ前進
スコップをぐっとさしてえいっと20㎝も掘れば?
50㎝掘れるなら嵌るかも。落ちたら蓋しちゃえば、時間稼ぎになるか

リンゴが来たらラウンドシールド構え
敵が倒れるまで盾で押し止めておく
敵が止まれば攻撃しやすいし、噛みつきも防げそう
僕はショートソードで攻撃
横に一度に2個落ちてくるから、エルロードさんとは別の列を担当
仲間の怪我には
リンゴ対応もあるから、移動を見込んで早めのヒール
声掛け合い、常に次のリンゴを意識して
抜かれたら全力移動で回り込み

終わったら穴は埋め戻し
木は残念だけど新たな命が芽生えるはず
被害を拡げずに済んだなら上々なのかな
ナイスプレーは褒め讃え
>心情
リンゴ狩りは秋の味覚とお聞きしましたが気の早いリンゴがいたものですね。
何処になっていたのでしょうか

>事前準備
スコップの用意をお願いします、準備が出来そうな時間があれば溝を掘っておきます

>行動
後衛を担当致します。リンゴの予想到達地点
目標確認、居住地域、工場地域への突破を阻止します
最も突破の可能性が高い敵を優先し射程の長い武器で攻撃
味方が捕まえ、下への侵攻が止まった目標は、
優先度を低くします。

武器を交換しリロードの隙をずらす、
リロードのタイミングは同じスナイパーである、クラーク様とずらします

「リンゴを射るには弓と聴いておりますが、私は銃でやって見せましょう」(味方が捕まえているリンゴへの攻撃)>戦闘終了後
お店のアップパイにしようかと思いましたが、それは本物のリンゴですることに致しましょう。
○目的
ナイトメアの殲滅
被害を最小限に抑える
「…軽い怪我程度ならいずれ治癒するもんだ。が、人の財産ってのはそうもいかんだろ」

○行動

敵の側面からの強襲狙い
標的は自分が仕掛ける側面に寄った物のうち一番前を進む個体を狙う
最初の攻撃は敵との相対速度を合わせて一撃
その後、回り込んで進路を自分の体で塞ぐように獅子王を構え【旋空連牙】で斬る
「…ガキの頃にやらされた野球で、ゴロを拾う時に言われたな…取れなくても身体で止めろ、前に落とせって…な!」

後続の敵から背後をつかれないよう、敵は極力真正面に捉え、転がり落ちてくる敵の勢いを利用し、攻撃力の不足を補い迎撃
【全力移動】は抜かれてしまった場合の対策に温存。

敵に当たる際には声を上げて味方に意思表示。
ブッキングでの事故や対応のロスを極力避ける。
「こいつは俺で対応する!余裕があるならフォロー頼む。行くぞ!」
目的
リンゴ型のナイトメアを迅速に殲滅する
周辺の被害を最小限に抑える

行動
「陣形を崩されることも考えねばな。
待ち伏せまで時間的な余裕があり、敵進行の妨害する罠を作り、視界と足場が良好な場所、か」
「趣味が悪い。さすがは悪夢と呼ばれる存在だ」
キャリアーのパイロット・本部データから周辺の情報を貰う
迅速に敵の進行ルートに向かう
下に降下して待ち伏せをする
待ち伏せする場所は視界確保と安定した足場がある所を優先的に選定する
時間的に余裕があれば穴を掘り敵進行を妨げるのを手伝う
戦闘時は最前線で敵の進行を妨害する
可能ならば敵の進路を塞ぐようにする
攻撃より防御を優先して盾を構えて敵の攻撃を受け止める
敵の優先攻撃対象は、陣形を抜けそうな敵>損傷が高い敵>前線の敵>その他とする
状況を見て攻撃対象を伝える
敵が前衛を抜けた時は最優先で撃破するように指示を出す
味方の位置取りは後衛の三人が十字砲火が出来そうな位置を考慮する
ヒール・銃の射程から3spぐらい離れるように伝えて、味方同士で支援がし易い陣形を取る
味方の損傷と敵攻撃の威力を観察してヒールで回復を行う
敵の切り札を考慮して余裕ある回復を行う
回復が不要ならば攻撃を行う
前衛を抜けた敵がいても焦らず後衛で対応が可能であれば任せる
全力移動で陣形を崩すのは最終手段とする

台詞アドリブ歓迎
「さあ、初仕事に取り掛かりますか?」

○行動

作戦前に可能な限り皆と話して、お互いの動きなどを確認しておく。
持ち込めるのならば、シャベルを持ってくる。

下での待ち伏せ班。
同じく正面から待ち受けるファーンさんと協力して一番近い距離にいる標的に対してライフルによる射撃。
ライフルによる射撃が間に合わない場合はハンドガンに持ち替えて攻撃。
前衛や横から襲撃したりする人達の動きに注意する。

スキル「ポイントショット」は積極的に使っていく。

敵に防衛線を抜けられた場合はスキル「全力移動」を使用して敵の前に出て、迎撃する。
最悪の場合は受け止めている間に別の人物に攻撃して貰う。

周辺状況の把握に留意するとともに、仲間の状態にも気を配る。
援護が必要であれば援護し、何かしらあれば声に出して皆に伝える。

できうる限り、周囲への被害は最小に抑える様に立ち回る。

時間があればLiathさんの提案により、リンゴの進行速度を遅くする為にくぼみを作っておく。

「……アレですね、こんな化け物みたいなリンゴじゃなくて、普通のリンゴが食べたいですね。」
「仕事終わったら、皆で何か食べに行ったりしません?」
【心情】
『命懸けの林檎狩り、やってやるぜ』
【目的】
敵の排除
【準備】
スコップを借りれないか申請する
【作戦】
山林の下方で待ち伏せ、可能であれば仲間に協力して林檎が下りて来るであろうポイントに穴を掘り窪みを作る
【行動】
敵が近付けば相対距離と仲間の位置を見て場所が被らない様にしながら正面に移動し、ザンクツィオンハンマーに持ち替えて目の前の地面を抉る様に攻撃して起伏が出来ないかも試す
敵が目前に来たらデュエルナイトソードに持ち替えライトバッシュを使用、そのまま剣を前に構えて腰を落とし食いつきが剣に来るようにしながら敵を正面から押し止める様にする
目前の敵を狙い、撃破出来れば次を通さない様にしつつ、正面の敵が居なくなるまで抑え続ける
その際ライトバッシュを使えるだけ使う
正面が空いたらすぐさま最寄りの敵を狙いに行く
抜けられていた場合スナイパーライフルに持ち替えて全力移動で追い掛けて届けば撃つ
諦めず追いつくまで全力移動し、弾が切れればミネルヴァに持ち替えて撃ち、追いつければデュエルナイトソードで斬り掛かる
この世界で、この躰で初めての本格的な戦闘だ。主や相棒、そして俺の操縦士だった彼に恥じない戦いをしなければ…

行動
下でリンゴを待ち構えて前衛で受け止める。ラウンドシールドで押さえ込んだらライトバッシュで攻撃を加えていく形になるか。
抜かれた場合は全力移動で追いかける。が、極力抜かれない様に連携を取っていきたい所だ。
準備:
予めスコップを申請
敵が来るまで味方と共にスコップで窪みを作る
窪みを作った箇所は予め全員に伝えておく

行動:
横からの強襲狙い
味方の傍に位置
敵を攻撃1~2回程度で倒せる場合は味方と違う敵を中心に狙う
敵が3回以上攻撃に耐える場合は味方が狙う敵を集中
優先は先頭の敵から順番に狙う
武器は敵と1sqまで接近できる場合は獅子王
2sq以上離れてしまう場合は飛鳥翔に持ち替え
味方の射線を塞いだりしないよう移動し立ち位置を工夫

強襲時にライトバッシュ使用
その後、敵の壁となる味方が敵に抜かれたり
壁となる味方が苦戦している場合にライトバッシュ使用
全力移動は味方全員が敵に抜かれた場合に追走用として使用
敵に抜かれた時
他の味方が追走して攻撃する時は、自分が敵を正面で抑え味方に攻撃してもらう
味方が抑える場合は自分が攻撃
敵を抑える時は獅子王を側面に構え
武器を間に挟んでクッション代わりとする
敵の正面から両手で受け止め足と腰でしっかりと支える
味方と同じ敵を狙う場合は挟撃の形で叩く
ただし敵に背後を見せないように注意
余裕がある時は辺りの状況を確認
位置や消耗度など敵や味方の状況を伝え
味方がスムーズに行動を行えるようにする

台詞:
「イケメンな方が多いようですね……はっ!いかんいかん」
「抜かせるかこの野郎ォー!」
「まさに友情の勝利ですね!」

●移動中

「リンゴ狩りは秋の味覚とお聞きしましたが、気の早いリンゴがいたものですね。何処になっていたのでしょうか」

 メイド服にミスマッチするスナイパーライフルを磨きながら、ファーン=セカンド(la1002)が冗句とも取れる言葉を発すると、クラーク・アシュレイ(la0685)が「未熟で硬そうですね」と笑う。

「リンゴ相手とはいえ、今日はとりあえず、よろしく」

 小さく頭を下げながらも、命がけのリンゴ狩り、やってやるぜと心密かに闘志を燃やす、吼遠 迦春(la0268)。

 RD・ラッド・キャンベル(la0305)がポツリと漏らした、「姿形がどうあれ、本質は変わらない」という言葉には、不思議と重みがあった。

 本部から貰った周辺の資料を熟読していたシオン・エルロード(la1531)がリンゴと聞き、最後のページにある想像以上にリンゴそっくりな画像に顔を曇らせ、「趣味が悪い。さすがは悪夢と呼ばれる存在だ」と吐き捨てる。

 シオンがめくった資料の裏も何か画像があったらしく、立って静かに待ち構えていたLiath(la0545)(リイア)が突然、膝をついて食い入るようにその資料へと近づき、鼻息荒くして立ち上がった。

「リンゴを乏しめる事も許し難いですが、なによりもどんぐりの木をなぎ倒すその行為! 断じて許せません! どんぐりはこの地、いや、この世界の財産なのですから!」

「……軽い怪我程度ならいずれ治癒するもんだ。が、人の財産ってのはそうもいかんだろ」

 どんぐりが財産かはともかくと、それまでどことなく投げやりな表情で外をぼんやりと見つめていた狭間 久志(la0848)が、少しばかりの反応を見せる。

 リイアがスコップを掲げ「どんぐりこそ至高の財産ではありませんかっ」と、さらにヒートアップする中、五月女 真央(la0802)はやや端の方で1人密かに黙って座っていた。黙ってはいるが、その目は吟味するように忙しなく動いている。

「イケメンな方が多いようですね……はっ! いかんいかん」

 垂れてはいないが、口元を拭う真央であった。

「それはともかくだ。陣形を崩されることも考えねばな。待ち伏せまで時間的な余裕があり、敵進行の妨害する罠を作り、視界と足場が良好な場所、か――このあたりに良いポイントがある。ここで構わないか?」

 シオンの提案に異を唱える者もいなく、滞りなく打合わせが終わった頃にはそのポイント上空へと差し掛かっていた。パラシュートで次々と降下を始め、補助で最後まで残っていたクラークも扉の縁に足をかける。

「さあ、初仕事に取り掛かりますか?」




 待ち伏せポイントの少し手前で、リイアがスコップをぐっと地面に突き立て「えいっ」と土を掘り起こすと、ファーン、シオン、クラーク、迦春、真央がそこをさらに深く、広げていく。時間的猶予がそれほどなかったにせよ、あっという間にリンゴが落ちるには十分な深さの溝ができあがった。

「これくらいでいいでしょう。あまり自然を荒らすものではありません」

 リイアが溝の端に刺したスコップを刺し頷き、陣形を崩された際の予防線としては十分であろうと、シオンもそこで手を止めた。刺したスコップに真央は手を添え、空いた手を掲げて「そうですね!」と言う。

「みなさ~ん、ここに窪みあるから覚えておいてくださいね!」

「使わない事に越したことはないが、覚えておこう――さて、もういく分の余裕もない。俺は先に待機しておく」

 走って登っていく久志の後を、「僕もご一緒しまっす!」と真央がウキウキしながらついていった。

 久志と真央の後を追う様に少し登ると途端に視界が開け、そこよりさらに上から、木が順に倒れて来るのが見える。そして赤いその姿も。

「……アレですね、こんな化け物みたいなリンゴじゃなくて、普通のリンゴが食べたいですね」

「アップルパイなどいかがでしょうか、クラーク様」

 ファーンへ「いいですね。仕事終わったら、皆で何か食べに行ったりしません?」とクラークは笑みを向け、スナイパーライフルをリロードする2人は射線確保のためにも左右へと分かれた。その直後、木の倒れる音に紛れ、鈍い音が地面を振動させる。

「食うか食われるか、本物の狩りだ」

 巨大な槌を地面に打ち付け目の前の地面をへこませてから後ろへ投げると、ガードの付いた両刃の直刀へと持ち替える迦春。

 リイアが「食べるわけにもいきませんが、食べさせるわけにもいきません」と円形の盾を構える。同じ盾のはずだが小さく見える盾を身体へ密着させるようにして、ラッドも構える。

(この世界で、この躰で初めての本格的な戦闘だ。主や相棒、そして俺の操縦士だった彼に恥じない戦いをしなければ……)

「断じて、ここを抜かさせはしない。それが俺という存在だ」

「そうだ。抜かれてはならない。被害を受けるのは一般の者達だ。民衆の避難が完了しているとも限らないと心して、侮る事無くここで全てを食い止めるぞ……!」

 落ち着いているはずのシオンだが、この世界での初陣にその言葉が徐々に熱く、力強くなっていた。

 ――接敵まで、あと数秒。

「他所様の世界に邪魔してるんだ。居座ってる分、義理は果たさないとな……」

 ポツリと久志が漏らす。

(此処は自分の世界ではない。俺には帰りを待ってくれる家族も仲間も居ない。この世界にとっての異物に過ぎない――そういう意味ではナイトメアとさして変わらんか……)

「なら、放浪者とナイトメアが潰し合うのが世界的にはロスが少なくていいのかね……」

「よくはわかりませんが、イケメンを失うのは全世界共通の損失だと思うのです!」

 真央の言葉を素直に受け止めることができないほどにやさぐれた久志だが、それでもわずかに救われた気はしたのか、「どうも」と短く述べ、リンゴの側面へと飛びだした。

「こいつは俺で対応する! 余裕があるならフォロー頼む。行くぞ!」

 傾斜を斜めに下りながら一番近くて先頭を転がるリンゴに向かい、漆黒の柄を顔の前で水平に構え大太刀を抜いた。回転の方向に合わせ緋色に輝く刀身を上から浴びせる。

 手ごたえがあり果肉を削ぎ落したが、転がり続けるリンゴ。

 回転から弾かれた刀身を手前に引き寄せ、その勢いで反転するとリンゴの正面へと躍り出る。刀身に肩を押し当て、身体全体で受け止めた。

「……ガキの頃にやらされた野球で、ゴロを拾う時に言われたな…取れなくても身体で止めろ、前に落とせって……な!」

 止まったリンゴにリンゴが衝突するというタイミングで、「抜かせるかこの野郎ォー!」と突進してきた真央が狙いを定め、緋色の刀身を真っ直ぐに振り下ろす。

 的確に中心を捉え刀身がリンゴの半分にまで食い込み、さらに体重を乗せられた刀身はリンゴを真っ二つに斬り分けるのだった。

「よっしゃー!」

 リイアの「ナイスです!と褒め称える声がして真央が喜ぶのも束の間、迫りくるリンゴに気づき大太刀で受け止め荷重に合わせて腕を畳み、衝撃を和らげる。真央にぶつかったリンゴはそのまま真央を乗り越えていく。乗り越えたリンゴだけでなく、久志が止めたリンゴ以外もどんどん山を下る。

 だが下ではリイア、シオン、迦春、ラッドが待ち構えていた。

「世の為人の為どんぐりの為! 頑張ります!」

「ここを抜かせるわけにはいかん、気張るぞ!」

「やってやるさ」

「リンゴの一つ二つ止められずして……守りの機体だなぞと名乗れるものか!」

 リイアとシオンとラッドが、足で地面を抉りながらも盾で受け止めた。ラッドに至っては言葉通り、縦にまとまって転がっていた2個まとめてである。

 迦春の手前では槌でできた窪みのおかげで一瞬だけ減速し、そこへ直刀を真っ直ぐに振り下ろす。半ばまで刃が到達するも、そこで止まってしまう。噛みつきを警戒して刃を食いこませたまま迦春は腰を落として、リンゴを身体で受け止める。

(受け止められても噛みつきができるように、物理法則を無視して自転はするか……さすがはナイトメアといったところか)

 受け止めつつも、シオンが冷静に分析する。

「リンゴを射るには弓と聴いておりますが、私は銃でやって見せましょう」

 神経を研ぎ澄ませ、ファーンの放ったライフルの一撃がリンゴを射抜く。当たりどころが良いのか、射抜くどころかリンゴは木端微塵に弾け飛ぶ。

「当たりどころの問題でしょうか。自分も負けていられませんね」

 クラークも神経を研ぎ澄ませると、迦春が止めているリンゴに迫るリンゴを撃ち抜いた。こちらも木端微塵に弾け飛ぶのだった。

「下がってもらおうか」

 ラッドが盾でリンゴを力任せに押し返し、わずかにできあがった隙でランスを構えて踏み込んだ。真っ直ぐに突き出されたランスはリンゴを深く貫く。それでもガチガチと歯を鳴らすので、まだ生きていた。

 受け止めながらも細身の剣を抜いたリイアが、「自然を破壊する行為、断じて許すわけにはいきません!」と剣を突き立てる。そこへシオンが「俺も手伝おう」と、紫陽花のように仄かな蒼が揺れる波紋の小太刀を抜いて、リイアが剣を突き立てたリンゴを横から突き刺した。刃と刀身が同じ方向に動かされ、リンゴは2つへと分かれるのだった、

(ある程度の火力さえあれば一撃、そうでなくともだいたい二撃か。それほどタフさはないな)

 小太刀を納刀し、分析するシオン。

 自転を続けるリンゴの牙が、久志、シオン、ラッドのイマジナリーシールドを削り取ろうとする。特に2体を受け止めたラッドの消耗は激しく、分散しきれていないダメージが頬に牙を擦りつけたような細かな痕が何本も作り上げていた。

 後ろに目を走らせた久志。すぐに正面のリンゴへと戻す。

「悪いけど、これで終わらせてもらうから」

 密着したリンゴをわずかに押し戻し、高速の刀身がリンゴに十字を描いた。見事4つ切りにされたリンゴが地面に転がるその横で、真央がもう1個のリンゴをまたも一撃で真っ二つにしていた。それを尻目に、久志は前からもう転がってこないのを確認してから山を下る。

 シオンが目の前のリンゴに小太刀を振りおろし半ばまで食い込ませると、リイアが「次はぼくが手助けする番です」と言って小太刀へ当てるように剣を振りおろし、勢いついた小太刀がリンゴを両断した。

 目の前のリンゴを処理したシオンの前にもう一個が襲い掛かってくるのを、盾で受け止めてから叫んだ。

「これは俺が止めておく。他を優先して撃破するのだ!」

「そろそろこっちも終わらせるぜ」

 迦春は柄を逆手に握り直し、直刀を少し引き抜いて足をかけると、体重も乗せて腕力任せにリンゴを2つに割る。割った所でもう一個のリンゴが迦春に迫っており、また刀身と身体で受け止めた。

 ラッドが貫いているリンゴにも、もう一個追突する。擦りつけたような頬の痕から血が滲み出る。

「俺も守りばかりと思うな」

 シールドの消耗を気にする事無く力強く踏み込んで、ランスをさらに深く突き立ててリンゴを大きく穿った。それでこと切れたのか、穿たれたリンゴは2つに分かれて転がるのだった。

 その後ろに控えていたリンゴがラッドに襲い掛かろうと転がってくる。

「こちらもう一発、ご用意させていただきました」

 リロードしていないスナイパーライフルを地面に捨て、もう一丁のスナイパーライフルでファーンはラッドに迫るリンゴを一撃で粉砕する。

(残り2体――こちらを狙うべきですね)

 リロードするべきか考えたクラークはハンドガンを引き抜き、あえてシオンが止めているリンゴを狙い撃った。弾で小さく穿たれた穴に久志が緋色の刀身を突き刺し貫通させると、一気に斬り落とす。

 それとほぼ同時に「最後の1個、もーらい!」と、ラッドが止めていたリンゴを真央が真っ二つにするのであった――




「一致団結で勝利! まさに友情の勝利ですね!」

 ブイッとする真央へ、「素晴らしき力だな」とシオンが笑う。

 リイア達と共にリンゴの残骸を掘った溝に埋めながら、ファーンは頬に手を当てて頭を横に振る。

「お店のアップパイにしようかと思いましたが、それは本物のリンゴですることに致しましょう」

「店ですか。それならこのあと祝勝会ということで、そのアップルパイをいただきに行きませんか、みんなで」

「いいですね。ここで一緒の依頼を受けたのも何かの『縁』ですし、『縁』は大事にしたいですね」

 迦春の提案にクラークも乗っかると、ファーンも「是非にいらしてください」とニコリ。

「僕も行くよ! 縁は大事にしないといけませんもんね! とくにイケメンと――おっと」

 真央が慌てて口を塞ぐが、あえて誰も言及しない優しさ。

「ま、腹が減っているのも確かだし」

「良いのではないか。初仕事だったと言う事もあるのだし、ゲン担ぎとしても申し分ない」

 久志とシオンの言葉に真央が2人の間へと飛び付き、2人に腕を絡めて率先して歩き出す。みなが山を下り始めたので、リイアが「私もご一緒したいです」とついていく途中、振り返る。

 なぎ倒された木々に、顔を曇らせた。

(木は残念だけど新たな命が芽生えるはず。被害を拡げずに済んだなら上々なのかな)

 そう自分に言い聞かせ、後を追った。

 和気あいあいとしている中、ラッドだけはニコリともせずにいた。

(リンゴ程度にこの有様では、到底満足できん)

「盾の部隊として名高い騎士の乗機だったんだ。特性は変わっていないつもりだが、まだまだこれでは足りんな」

 リイアにヒールを貰いイマジナリーシールドの強固さは戻っても治らない頬の傷を、そっと撫でるラッドであった――




「なんだ、あれくれーならそこそこ余裕か」

 遠くで高みの見物をしていた黒頭巾の少女が木から飛び降りる。

「反対側に放置してきたあれも、どうなってるかわかんねーな。辛勝程度であいつらの勝ちかね――ま、それならそれで、もう少しばかり上等な奴、けしかけてみても楽しいかもな」

 少女が邪悪に笑う。

「この世界の正義さん達よ、もっともっと、アタシを楽しませてくれよ?」






赤ずきんのリンゴにご注意を 終

成功度
大成功

MVP一覧

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

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